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「10」

 何故かカウンターの中でワイングラスを拭いている。


 しかも、隣にいるマスターは黙ったまま。




 気まずい。


 先ほどコーヒーの事で話しかけたが「ああ、趣味でね……」で終わった。




 早い、早すぎる。

 終わるのが早すぎる。



 俊哉にBARがなんとかという話をされた後、普通に白シャツと黒のサロンを渡されて何故か色々な説明を受けて今に至る。



 実に摩訶不思議。



 しかしながら、ここのお店の構造はすごい。

 コーヒーカップの置いてあったカウンターは、スライド式になっており、後ろからウイスキーやリキュールのボトル、ワイングラス、ウイスキーグラスなどが出てきた。

 先ほどの雰囲気とは打って変わり、大人のBARに大変身だ。



「………………」



 でも、気まずいものは気まずい。

 佑君が帰ると、まりちゃんも上にあると言って部屋に戻っていった。

 俊哉、早く帰ってこないだろうか。

 そんな事を考えているときだった。



「……きみは、何回目なんだい」


「……え?」


「こちらの世界、きみは何回目なんだい」


「なんの、話しを」



 急に口を開いたかと思うと、マスターは俺にそんな事を聞いてくる。

 この人は、何を知っていてその話題を振っているのだろうか。こちらの世界とは何を示しているのだろう。

 しかし、もしこの人が何かを知っているのだとしたら。試しに回数くらいは言っても良いのかもしれない。

 冗談で言っているのだとしたら、こちらも付き合っただけと言えばいい。


「……さ、3回目ですかね」


「3回か、では向こうの世界の法則は知っているかな」


「……法則」


 これ以上話すとなると冗談というにはなかなか難しくなるのではないか。でも俺は、法則は何も知らない。


「いえ、知りません」


「そうか……」


「………………」


「………………」


 いや、教えてくれないのかい。

 なんだなんだ、ここまで言ったら教えてくれるんじゃないのか、普通は。気になって夜も眠れなくなってしまいそうだ。

 そもそも本気で俺に聞いてきていたのか。

 そんな文句を頭の中でぐるぐると考えているとマスターが奥から何かを取り出した。それを布巾で履き始める。

 そして、また、口を開いた。


「この世界が繰り返している、正確には、もう一つの世界と共に繰り返すような世界になっているというのはわかっているね」


「……!」


 まさかの、完全なる断定で入ってこられた。

 でも、この人が初対面の相手に冗談でここまで話す人とは思えない。

 ここは、肯定するのが正解なんだと頭が言っている。


「………えっと、…はい」


「向こうの世界は何の世界だったかな?」


「それは……俊哉の作ったゲームの世界?ですね」


「そうだね、こちらの世界のある物語が反映されていただろう、でもね、こちらの根本は変えることができないんだよ」


「どういう事ですか?」


「なぜ、繰り返していると思う?」


「それは……なんとなく、俊哉の恋が叶わないからだと……」


「そうだね、君の場合はその可能性も高い」


「……きみの場合は、その可能性、も?」


 一体どういう事だろうか。

 まず、こちらの根本は変えることはできないというのは、何を意味しているのか。

 そして、俺の場合というのは、どういうことなんだ。他のパターンもあるというのか?

 分からない事が分からないまま話がどんどんと進んでいく。


「ここの世界は色々な世界と繋がっているんだよ」


「色々な世界と、というと……」


「ここは、神の実験所ということだよ。だから、気をつけなさいね」


「……マスター、何を言って、」


「…………さぁ、そろそろ開店時間だ」


「ちょ、……」



 これ以上話す事は無いかのようにマスターは入り口の扉な向かって行き、奥から取り出した‘オープン’の看板を扉に下げた。

 その後はマスターと話すことはなく、普通に仕事は終わった。



 多くの謎だけを残してこの会話は終了してしまったのだ。








「勉強、分かりやすかったってさ」


「え?たすく君?」


「そう、また教えてもらえるの楽しみだって」


「ほんと!へへ、ちょっと嬉しいね」


 ニヤニヤと顔を歪めた俺と真顔のままの俊哉は帰り道をゆっくり歩いていた。

 ニヤつく顔の下で俺は頭の中の思考をとても頑張ってまとめていく。


 マスターからの話しはまた次の機会にでも聞けるのだろう。しかし、もしかしたらこれは、こちらの世界での議題なのかもしれない。と考え始めた。


 そうなると、本当にやる事が増える。

 まず、色々な世界と繋がっているということは、違う世界から来た人達も居るのかもしれない……という事なのかもしれない。

 もしくは、違う世界に飛ぶ、とか?



 全然分からないが、警戒するに越したことは無さそうだ。


 周りの人物の言葉遣いとか、行動とか、そういった事を気にしながら生活しなければいけないのか。


「………………」


「どうした?」


「いや?やらなきゃいけない事が、多くなるなーって」


「へー、協力出来ることは言えよ」


「…………うん、ありがとう」



 1番協力してほしくて、1番バレてはいけない人物である俊哉が俺に協力することに対しては前向きなのは、もどかしいけど良いことだ。


 こちらの世界での根本というのは何を示しているのか。

 それについてはまだ分からないけど、でも、変えられる部分がある事は知っている。


 マスターに教えてもらうのが1番早いけれど、あの人が自分の味方なのかは分からない。

 他にも知っている人物がいるかもしれない事も考えて一旦聞き出すのはやめておこう。



 大学での勉強に加え、部活にバイトに家庭教師。


 とっても充実した大学生活が送れそうだ…………。



お読みいただきありがとうございます!



一応あの小学生2人はあのラブラブな2人でした。

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