星空鑑賞と………
家をでると外はひっそりと静まりかえっていて、月と星の明かりだけなのでやや暗い。
家の裏にまわると切り株や座れそうなそこそこの大きさの石があったりとなんとなく雰囲気がいい。
それをしばらくぼぅっと眺めてから、剣を握り構えて、振り抜く。
ブンッと風切り音が聞こえ、体が勝手に動くような感覚。スキルとステータスの効果だろう。結構重いはずの剣が軽々と振れる。
「…………ふぅ」
どれくらいの時間、剣を振っていたのだろうか。
最初は振られている感じがぬけなかった動きもだんだんと手に馴染んできて、少しずつ思ったように体を動かすことができるようになってきた。
額についた汗を拭いながら、一旦休憩をと思い近くの切り株に腰掛け、空を眺める。
空には、満天の星空があった。
自分の家は都会というほどでもなかったがそこまで自然がある場所ではなかったのでここまで綺麗な明るい星空を見たのは初めてだった。
思わず、無言で見入ってしまう。
しばらくぼーっと眺めていると後ろのほうから音が聞こえてきたので振り返ると、佐藤さんがいた。
「桐谷くん………ちょっといいかな?」
こちらに近づきながら彼女はコテッと首を傾げ笑いかけてくる。
その髪は風呂に入ったのだろう。
濡れていて肩までの黒髪のうちの一部が頰に張り付いていて、ドキドキしてくる。
「うん………えっと、なにか?」
内心の動揺を表に出さないように気をつけながら答える。
「隣……座ってもいい?」
嫌なわけがないのでコクリと頷きながら、すこし端に腰をずらす。
彼女はスペースが空いたのを見とどけると、間にひとり分入れそうな隙間をつくりながら隣に腰かける。
彼女が隣に座るとき、濡れた髪が揺れ、ふんわりといい香りがしてくるような気さえしてくる。
………なんかすごく色っぽいんだもん。
「剣……振ってたの?」
彼女は異性とのこういう状況に特別意識したりすることはないんだろうが、俺は正直緊張してやばい。
意識するなという方が無理だ。
彼女の質問にたいした返しも思いつかず頷く自分。
「汗……すごくかいてるもんね……」
彼女がグッと顔を寄せ近づけてくる。
夜のまわりに誰もいない静かな場所。
そんなとこでお風呂あがりの可愛い同級生と2人きり。
ドクドクと心臓の鼓動が高まり、彼女に聞こえてしまうんじゃないかと心配になる。
「えっと………もしかして、汗臭かったりする…?」
内心を誤魔化すように話しかける。
………あまり効果はないが。
「ううん………まじめだなぁって思っただけ。
私なんか、いっかい魔法使えたら、すごいなって思っただけで練習なんかしてないし」
「いや……俺の場合はまじめなんじゃなくて……ほら、明日はモンスターを狩らないといけないんだし、
一応…男なわけだからがんばらないとなって思ってさ」
ちっぽけなプライドだけどさ。
可愛い子にいいとこ見せたいとか、足手まといになりたくないとか。
「……うん。今日……助けてくれたもんね」
彼女がニコッと笑いかけてくれるが、女経験がない俺に気の利いた返しが思いつくはずもなく、曖昧な笑みを浮かべながら頭をかく。
…………お互い無言。
2人で星を眺めているが俺の内心は何か話しかける話題がないかと必死に頭を働かせている。
「空………綺麗だね」
「う、うん。そうだね」
返事に詰まってしまう。
そんななかでも、俺の心臓はどんどん高鳴っていってそれと同時にこの状況が嬉しくもある。
「ねぇ………桐谷くん。」
不意に彼女が空から目をはずし、こちらをじっと真剣な瞳で見つめてくる。
そのいつもとは違った真剣な顔に緊張は高まり、自然と背筋がピンッと伸びる。
彼女の唇が開き………
「………ありがと。」
「…………ん?」
………お礼を言われた。
「………助けてくれたこと。」
「あ、あぁ。そのことね……」
「うん。ゴブリンに向かってこられて怖かったから………あと、そのあとも色々と教えてくれたりしてありがとうってしっかり伝えたくて………」
「ああ。いいよ気にしなくて…うん。気にしなくて」
今の俺の頰は絶対に紅くなっているのが自分でもわかった。
恥ずかしさでいっぱいで自然と顔がうつむいてしまう。
……………告白と勘違いしてしまうなんて。
なんでこんなに精密描写になったんだろう。
もっとさらっと描くつもりだったのに………
なんかノってきちゃったというか気づいたら……
読んでいただきありがとうございます