綾side
短いです。
いつもも短いけど今回特に。
思いつかなかった………
「ああ。いいよ気にしなくて…うん。気にしなくて」
お礼を言うとなんでもないことのように返してくる同級生の男の子。
顔は下を向いていて表情が見えないけれど、本当に気にしなくていいと思っているんだろう。
「ねぇ……桐谷くん。
これから、一緒に行動するわけでしょ?」
彼から目をはずし、空を見上げながら彼の返事を待つ。
「……うん……そうだね…」
「だったらさ…………涼くんって呼んでもいい…?」
「…………え?」
「だって不便じゃない?……これから一緒に行動する仲なんだからさ、お互いに下の名前でさ……?」
空を見上げたままでも隣の彼の空気が変わったのがわかる。
慌ててるというか、どこかそわそわとしている。
その挙動に口元が自然と緩んでしまうのが自分でもわかる。
おそらく彼からは見えていないだろう。
………………仕方ないよね?
だって、お昼はヒーローみたいにかっこよく襲ってきたモンスターを倒して、私たちの誰よりも状況を把握して導いてくれたのに、名前で呼ぶということだけでそわそわとしていることに微笑ましく思ってしまう。
「えっと………綾さん……とか…?」
どこかオドオドと聞いてくる彼に笑いを抑えきれずクスッと笑う。
「さん付けって……さっきと距離感変わってないじゃない?」
「じゃあ……綾ちゃん?」
「う〜ん………呼び捨てでもいいんだけど……まあ、ひとまずはそれでいいかな?」
私もくん付けで呼ぶつもりだしね。
「じゃ、じゃあ……綾ちゃんで?」
「うん。じゃあ、私も涼くんで。」
話したいこと話せたので石から立ち上がり、涼くんの正面に立つ。
涼くんはまだ石に座ったままなので見下ろす形になっていてほとんど私の顔は見えないことだろう。
まあ、そのほうが都合がいいので。
私が立ち上がった気配を感じてこちらを見上げ、彼の視線が私に向いたのを確認し、
「今日は助けてくれてありがとう。
カッコよかったよ……涼くん、おやすみ。」
とだけ言って踵を返し、家に向かった。
振り返る直前に見えた涼くんの顔は驚いたような顔だった。
…………多分、私の頰が少し熱いのは気づかれてないだろう。
読んでいただきありがとうございます