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illusory desire  作者: 橘 劫
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悪魔や巫女が大乱れ。そこはただの喫茶店じゃない!?


   プロローグ

ここは東京。日本国会議事堂の地下。そこには、何人かの科学者らしき人物が存在した。

近くにガラスの残骸と液が流れ出ていた

ざわざわと騒がしく一人の科学者らしき人物が言葉を発した。

「間違いないのか?」

すると別の科学者らしき人物が返した。

「ああ、確かにNo,129が記録されている。」

「チッ、あの殺戮マシーンか。」

舌を打った。おそらくそれほどまでにたちが悪いのだろう。

近くに死体も転がっている。銃創や斬られ、首や手足が離れているのもある。それぞれ同じ服を着てある。ここの作業員と思われる。空薬莢がそこらじゅうに散らばっている。凄まじい戦闘をものがたっていた。それ以上にすごいのは死臭と火薬の匂いが混ざっているにもかかわらず、それを気にせず原因究明をしている科学者達だった。

「うむ、こうなった以上国民の情報が頼りだ。指名手配犯ということにして、全国に呼び掛けておこう。」

「しかし、名がNo,129というのはいかんな。名前を変えて配布するべきだとおもう。」

「そうだな。名はどうする?」

「そうだな、仮にスウにしておこう。」

それを言い放つととっとと出て行った。更にその後何名かで耳打ち話をした。そして、全員出て行ったあと、獣が目を見開き死体をあさり食っていた。数分後、辺りは死体こそはなくなったが紅い血によって更に血生臭くなった。

 Ⅰ By herself

数年後、埼玉県のある喫茶店にて。

「にゃはは、ここまでおいで~」

陽気な声が朝っぱらから聞こえる。ちなみに時刻は午前4時35分。不良の活動時期や、老人の起きる時間にぴったりだ。その声を発した主は軽いフットワークと背中に付いている羽根らしきもので障害物や脚力の微調整を行って逃げている。一方追いかけているほうは、障害物、というより店で使うテーブルやイスだが。しかし、それをなんの躊躇いもなくそれが行動範囲で邪魔と認定されると蹴りつけた。幸い店は「CLOSE」を下げていたので誰にもばれなかった。

「こら、Mistあれほど勝手に年代もののワインを飲むなといっているだろ。」

楽しそうに笑っている少女はMistという。

アイスグリーンの長髪を自然のままにし、白いコートを身に羽織っている。

はちゃめちゃに動いてる所為で、コートがめくれ、下着が露になっていた。

どうやら、きているのは白いコートのみである。

「Whiteがあんなに美味しそうに宣伝するんだも~ん。それに宿主様にも言ったよぉ~。」

「なに、それって、俺のせいでもあるってのか?それに宿主野郎はいいかげんだから信用するなと何度も言っているだろう。」

いっぽう、追いかけているのはWhiteという。

レストランのボーイといった格好をしており、その服装は整えてある。

短い白髪で、顔も均整に整っている。その表情般若のごとく、怒りが露出されている。

いつまた争いがあってもいい状況だ。そうなるとまた更に被害が増える。そんなの知ったこっちゃねぇという雰囲気がぐんぐんと大きくなってきた。Mistは鎌を下段に構えた。Whiteはファイティング・ポーズを取った。Mistは悪魔と人間の子孫、Whiteは流派はまったくの我流だが、全ての格闘技に通用する力を持っている。しかもフットワークは音よりも速いといわれ、パンチ力は重力よりも重いといわれている。しかし、Whiteの真の骨頂はキック力だ。しかし、どれほどの威力かは不明になっている。全ての相手がパンチ一発で終わるからである。そう、ここの喫茶店の従業員は少し変わっている。名前も変わっている。全てを決めたのは二人が言っている宿主らしい。1Rのゴングが心の中で鳴り響き、一気に二人が間合いをつめようとした瞬間、

「はい、それまでです。」

紅いはかまを着た少女、俗に言う巫女さんの服を着た少女が、Mistの鎌を日本刀で受け止め、Whiteのキックを鞘の先をスネに当てている。

「貴様ら、主に逆らったら俺が許さねーぞ。」

革ジャンに黒いズボンを身につけ右手に銃を構えて冷たい目を放つ男がWhiteの後ろに立っていた。Whiteは正直驚いた。今まで誰にも背中を取られたことがなかった。背中を取られることは、格闘家にとって死を意味する。それはMistにも同じことが言えた。鎌を受け止められたことは腕が未熟たる証拠。悪魔にとってこれ以上の屈辱はない。それに完全なる鎌の技は相手が誰であろうが見切れないのだ。Mistは自分の技にはそれなりの自信があった。しかし、この一瞬でその自信は崩れ去った。巫女さんの服を着た少女は戦意がないのを肌で感じ取ると刀を締まった。

「さて、主様にどう伝えましょうか?」

「Red、たあいのないことだ。ありのままに伝えればいい。」

「しかし、そうなるとCool貴方とともに監督不行き届きということで罰をうけることになります。」

その言葉を聞いた瞬間、Coolは青ざめた。そして、銃を落とした。そこまで嫌な罰なのだろう。

「何故、俺達が?」

Redが少しため息をついて、

「それはですね、私がここの支配人、貴方が料理長ですから。」

Coolは少し、思い出し、

「そうだった…。」

そして、グッドタイミングにその宿主が帰ってきた。(Redたちにとってはバッドタイミングだが。)Redたちは少し、慌てた。しかし、慌てたところで何も変わらない。宿主は賭博をやってきたようだ。しかも負けてきたらしい。これほど悪条件が揃うことはしょっちゅうだが、その度にCool達に罰を与えてきた。宿主の名は澤蛎(さわかき) 祐尭(ゆうたか)(さわかき ひろたか)。この名を知らぬ国民はいないだろう。ぼさぼさの髪形に、いつも黒いセーターに、ジーパンを身につけている。教科書にも出ている有名人だ。彼の実績は指名手配犯を10年で25人捕まえた人間だ。しかも、警察では手におえない奴らばかりだ。その中に妖怪や物の怪が入っているとかいないとか。しかし、3年前の話。今は博打によく行く親父みたいになっている。っていうか完全な屁のくさい親父!?しかし、面倒見はすごくいい。Mistたちはこいつによって育てられた。祐尭はこの散らかりようで一目でピーンときた。

「おい、Mist、White、Red、Cool、お前ら全員に話がある。」

Mistを除くみんなが恐怖に陥った。そりゃそうだ。どんな罰があるのかが分からないからである。前は、100度の高熱の鉄板の上で座禅させられた。その中でみんなが踊り狂ったのは言うまでもない。

一番すごいと思ったのは、群馬県に捨てられ2時間以内に帰ってこなかったら給料なしという罰ゲームだ。Mistは7分で着いた。羽で飛んだからである。みんなが帰ってきたときは、祐尭とMistが生まれたときの姿で寝ていた。祐尭は覚えておらず、Mistはとぼけている。ただ、宿主様って激しいの、と可愛く言った。どれくらい可愛いというといっちゃった後で、さっきの台詞を言われたら、またあそこがたつ。絶対に。それくらい可愛い。祐尭の部屋に入ると、

「まず、仲間が増える。」

唐突に言った。

「増える?」

「ああ、俺の足になる存在だ。」

「足ですか?」

「うむ、はいって来い。」

この一言で最初にCoolに負けず劣らずの冷たい眼で、なぜか大きな袋を持った男が入ってきた。次に、黒い服でツインテールの少女がきた。

「ほら、自己紹介しろ。」

「Lostと申す。」

「Clayです。」

祐尭が続けて、

「こいつら、二人ともレイプされていたところを俺が助けた。」

普通にやばいことをいっている。まあ、いつものことだが。

「まあ、とりあえず力は分け与えといた。」

彼はハンティング能力を最大限に開花させる力を持っている。彼はこれを奇跡と読んでいる。

「彼らをどうするんですか?」

Redが訊ねた。

「とりあえず、ここで働かせてお前達のもう一つの裏任務の助手になってもらう。」

この発言は全員驚いた。

「な~に、心配すんな。」

「何を?」

「俺の術を教え込んでいる。それなり役に立つぞ。」

みんな、押し黙った。何も、考えてのことではない。祐尭の術はみんな喉から手が出るほど欲しい殺人術だ。それを何処の馬の骨か分からない奴に教えたことに対する反抗だ。それを察した祐尭がこういった。これが事件のきっかけになるとも知らずに。

Ⅱ useless profit

場面が変わって、裏路地。ぐでんぐでんに酔っ払った男達二人の前に一人の少女が立ちはだかった。白いコートを身につけている。しかも下の切れ目というものが、下着が見えるか見えないかすごく微妙なところだ。容姿は、アイスグリーンの髪で眼鏡を身に着けている。ある所を除いたら彼女は普通の娘だ。しかし、右手には普通なら手に入らないものが光っていた。それは西洋では、死神が持つといわれているもの、鎌だ。その不気味な黒光りによって酔っ払っていた二人は我に返った。少女が二人に顔を合わせ笑顔で、

「黒川秀社長と、藤川叶さん、ですね?」

と、問うた。二人は動揺を隠せきれなかった。口調が慌しい。

「き、君は誰だ!?わ、私達に一体何の用だ?!」

彼女は笑顔を変えず鎌を構え、

「貴方達の犯した犯罪を償わせるために登場しました。」

口調の何処かに冷酷さを隠すかのような陽気さで話した。二人は、より一層慌て、

「な、何のことだね?わ、私達は何も、やましい事は…。」

少女は笑顔を少し緩め、ポケットをあさり、紙切れを広げた。ちなみにこれを出して自慰行為をさせるということではない。社長達は、赤かった顔が、一気に青ざめた。もう、すぐそこの賑やかな音と光など別世界になった。黒川社長と藤川ヒラは背広を広げ、常備してあったガン(ここではポケットに入る種類に入る)を持ち、

「知ってしまったら仕方がない。すまんがあの世に行ってもらうよ。」

二人が照準を合わせようとした時には、既に彼女は視界に入っていなかった。二人が周りを詮索していると上から黒い羽根が落ちてきた。二人が上を向くとそこには俄かに信じ難いものが目に映った。さっきの少女が、黒い羽を身に纏い空を飛んでいた。そして、その姿の顔にもう笑顔はなく冷酷で躊躇いもなく人を殺せる顔が代わりに浮き出ていた。二人が上に照準を向け、発砲しかけた瞬間、背後から白髪の男が顔を出した。その気配に気付いた藤川ヒラが向いたとき、藤川が倒れた。彼の容態に気付いた社長が、

「おい、どうした?しっかりしろ!!ふじか…わ…君。」

社長も倒れた。二人とも意識が遠のいたみたいだ。少女が降りてくると、

「ずる~い。White私の獲物だったのにぃ。」

手を離したWhiteには血が全身にこびり付いていた。特に両手に付いている血量は全身の中で一番多い。

「タッグ対決だろ。だったら別に問題ない。目的は果たした。」

両手の血をタオルで拭いた。少女は眼鏡を外した。その姿は、Mist、その顔だった。ポケットに眼鏡をしまい、鎌を背中に戻した。一息つくと、

「でもぉ~、いくらタッグだからってぇ~。」

「これを獲れば目標が達成されるんだろう。」

Whiteが両手を第二間接まで曲げ、上げた。すると、紫と赤色の炎が出てきた。Mistは少し、愛しそうに見つめ、

「あ~ん、きれ~い。私も保管した~い。」

と、猫撫で声で言った。Whiteは少し、遠い目で見つめ、

「お前に保管させたら、喰らうだろ。お前に2個預かせたら、次の日お前の胃に治まっていたことがあったおかげで余計な魂を集める羽目になったんだ。」

Mistは少し萎縮し、

「う~、確かにそんなこともあったけどぉ~、美味いんだもん。それにフルーツは私が見つけたじゃない。」

フルーツとは彼らの隠語で、「標的」を意味する。

「まあ、確かに詮索能力の鋭さは、ピカ1だが、今回は時間がないということを忘れたのか?」

「知っているよぅ~。私も宿主様直々の仕事はしたいよ。絶対楽しいし、魂もつまみ食いできると思うし。」

「さて、かえるか。」

Whiteが90度角度を翻した。

「あ~、無視したでしょっ!?ひど~い。」

Mistは半泣き状態でWhiteの背中を追った。いくら、悪魔といえどまだ子供。ぱたぱたと走った。

Whiteが歩いている途中足を止めた。MistもWhiteが足を止めた理由を察知し構えた。

「Mist、手を出さないでくれ。」

Mistは反論しようとしたが、Whiteの今までと比べ物にならない闘気がそれを打ち止めた。Mistは自分に被害が当たらないように、被害範囲を予想し、それよりはなれた。

数分の沈黙後、騒音が急に耳に入った。Whiteが一つ目の目標を撃破した。右手のストレートで。目標の身体を貫いていた。

黒い服で隠されていたが、Whiteの打撃によって機械の部分が曝け出された。

つまり、相手はロボットだ。しかし、Whiteのパンチはロボットをも破壊させてしまう。

キックはそれ以上に威力があると思われる。さっきの奴は囮だったのか倒した後、同じような奴が数体出現した。

Whiteは慌てる事無く構えなおした。一気に攻めてきた。Whiteは獣の四足歩行のような構えになり、鋭く何かを見つめた。

「White、あの技の実験台にするつもりだったんだ。私も実験台さ~がそう。」

Mistはビルの屋上に座って傍観していた。Mistは鎌の手入れをしていた。Whiteは敵が目標のエリアに入ると跳躍し

「innocent honor。」

と呟き、着地をした。そして、

「Mist、帰るぞ。」

と、一言言うとMistが出てきた。

「White、完成した?」

「ああ、ほぼな。」

Mistは少し笑い、

「よかったねぇ~。」

Whiteは少し紅くなって歩いていた。Mistもそのことに気付き、含み笑いをした。そして、人ごみに紛れた。

ロボットは、少し、時が経った後、スクラップになった。神でないと分からないが、あの後、0,001秒ごとに一発ロボットに蹴りを入れていた。

つまり、Whiteの蹴りはパンチ等の比ではない、ということだ。ロボットがスクラップになり、Mistたちが去った後、一人、このロボットの残骸に近づいた。

黒い服にフードを纏っているため顔はわからないが、腕がほっそりとしているため、おそらく女と思われる。残骸の一部を拾い、何か呟き涙らしきものが流れていた。そして元に戻し、消えていった。

   Ⅲ destroy oneself

またまた戻って祐尭の部屋。みんな集合していた。

「さて、今回の俺直々の依頼を受けるのは、…。」

みんなが息を呑む。

「RedとCoolのタッグだ。」

普通の発表だった。普通ならドラムと照明が出てくるが、無駄なので省略。っていうかただ作られていないだけ。Redたちは深々と礼をした。

「ふつつかものですがよろしく。」

「よろしく頼む。」

二人を除く全員はレストランの仕事に向かった。祐尭が深いため息を出した。

「実はなぁ~、今回の依頼は質が悪い。とてつもなく。」

二人は首筋に冷や汗をかいた。あの祐尭がいう程だ。すごく辛いのか嫌なのか、どちらにしてもやばいのは間違いない。

「まず、二人についてきて欲しい所がある。」

ふと立ち上がり障子を開けると、隠し階段が口をあけていた。二人は口を開けた。祐尭は気にする事無く普通に入っていった。慌ててRed達はついていった。そして、ある部屋に着いた。

「ここは…。」

「依頼人がこの先にいる。」

そう言うと、祐尭は扉を開けた。

「さあ、心して行け。」

二人を入れると、扉を閉じた。Redたちは依頼人を探すが、人影が見当たらない。しかし、すぐに顔を出した。どうやら幻想映像だ。Coolは、絶句した。この技を使える人間は数億人に一人の確率だ。才能のあったもの、修行を重ねたもの、それぞれだが手に入る確率は零に等しい。自分の知り合いでこの術を使えるのは主だけだからでる。その依頼人に二人は見覚えがあった。それは、

「中村さん。」

彼は近くのアパートに住み、レストランの常連客の中村幸季だった。表柄は漫画家になっているが、本当は予備校の先生だ。

なんでも、漫画家としてより、予備校としての収入が多いらしい。

生活費の足しにと始めた職業が功を奏すというのはあながちありえない話ではない。

「今回の依頼を話す。」

そこには、レストランのお客さんで明るく愚痴を言う姿はなく憎しみに身を染め朽ちた人間だ。RedとCoolは腰をかけた。

「ある人を探して欲しい。」

「誰ですか?」

話を進めた。

すると、一枚の写真を見せた。そこには、フリルがすごく身についた服を着て素晴らしい笑みをこぼして服が白く濡れて下半身周辺は何も身に付けていない可愛い人間が写っていた。

「この方は?」

Redは問い掛けた。幸季は眉をしかめ、

「スウ。」

「スゥ?」

「スウ。」

「この方を探して欲しい…と。」

幸季は深く頷きながら、

「そう。」

Coolは、ここで口を開けた。なぜか、銃口を向けながら、

「貴様、何が目的だ?」

RedはCoolの異変に動揺を隠せなかった。Coolは滅多な事ではないと銃を人に撃たない。

ましてや、向けることなどまったくしない。向けることがあるとしたら、よっぽどの邪気を持つものではないと向けない。

それにそれ程の邪気を持つ者ならRed自身すぐに気付くはずである。

それなのに、だ。Coolは銃を下ろす気はない。むしろ撃つのを何の躊躇いもなく思う、その顔だ。

Coolは昔暗殺から掃除まで行っていた普通の人間だった。

ただ意識がない、興味がない、人間が持つべき物を全て切り捨てている、それだけしか違わない。

Coolの考えていることを分かるのはRedと宿主の二人だけだ。Redは従来の巫女の力で読心術が出来る。

宿主は、普通に分かり合える、すぐに表情に出ているよ、といっているが全然さっぱり分からない。

何処にあの顔から喜怒哀楽を読み取れるの?と言うくらい無表情だ。。

「中村、貴様本当のことを言え。貴様の表情が乱れている。嘘をつかない限り、人の顔は変わらない、…はずだ。」

幸季は顔を変えず、

「好きな人だから、だよ。」

Coolも、銃を下ろす気は毛頭にない。ハンマーを起こした。しかし、

「まって、Cool。」

Redが止めた。Coolは銃をRedに向けた。

「Red、貴様こいつに味方するとでも言うのか?それなら容赦はしない。俺の「misfortune」の生贄になってもらう。巫女の生き血はすごく能力(ちから)に応用されるからな。」

Redは顔を堅くし、

「貴方は人に愛されたことがないから分からないかもしれないけど、愛していた人が消えたら悲しいのよ!!」

Coolは「misfortune」を下ろさない。更に、

“ズキュ~~~ン”

発砲した。Redは間一髪刀で照準を見極めそこに刀を合わせ弾いた。しかし、その流れ弾が中村に当たってしまった。ここで、思い出して欲しい。幸季は幻想映像だ。上級者以外の奴が使う場合、幻想ではなく精神という文字に変えられてしまう。つまり、幸季が上級者なら助かる。しかし、精神だった場合は本体に多大な負担がかかる。幸季は消えた。おそらく本体に戻ったのであろう。Redは今回のCoolの行動を許さなかった。いや、許せなかった。Redは刀を構えた。

「Cool、何故発砲したの?」

間合いを詰めた。近距離になれば銃は使えない。そう思ったRedは少しずつCoolに分からせないように詰めた。

「さっき言ったはずだ。」

Coolは冷たく言い放った。

「それに、…あれ男だ。」

「えっ…。」

Redは絶句した。そして、もう一度じっくりと見てみると……あった。男にはあって女にはあってはいけない物下半身にぶらぶら下がっているもの。しかし、よくみないと分からない。あの一瞬でよくCoolは分かったなと誉めてあげたくなる。Redは刀を締まった。一息ついて、顔を覚えた。女みたいな顔立ちと、あと、何か妙な違和感を感じた。もちろん、下半身にぶらぶら下がっている物ではないよ。それは、人間とは遠くかけ離れている物をこの人は持っている。それだけしか分からない。ただそれが何なのかそのときの二人にはあまり分からなかった。その違いが雌雄を決するのと同時に大きな事件に巻き込まれてしまうことに。

それは、誰にも読めなかった。運命というものを読むことが出来る奴それは神以外ありえない存在だ。少なくともそんなことが出来る奴がいたら、もう世界は終わる。その馬鹿のせいで歯車が崩れるからである。

    Ⅳ First investigation

店内は今、すごく賑やかで騒がしい。それもそうだ。昼間時なのでかきいれどきなのだ。しかし、客は変わっていた。

人はあまり見せず、代わりにクリーチャーが席に付いている。

一人の男性がトイレに向かった。その後戻ってこなかった。トイレの中にはその人の内臓や臓腑もあり、肉片や多量の血がトイレにこびり付いていた。

店の店員は、よく来る客のことを考えその人の好きなものを頼めるよう全ての料理のレシピを暗記している。いわゆるリクエスト注文である。そして材料の保存場所は店の隠し地下である。この場所を知っているのは少ない。

大抵の人は、注文を聞くと材料を探し、ない場合は調達係に聞く。そして、届けてもらう。この調達係が、Clayである。そして、調理の指揮を務めるのが前にも書いたCoolである。彼らには、祐尭の友達や、気が合った人の注文には、細心の注意をはらなわねばならない。裏注文を頼む場合があるからである。たとえば、祐尭の古き友達、猷魏の場合、

「ワカメ汁。」

「具は?」

「証人。」

ここで、教えておこう。証人、つまり子供の隠語である。(この店内では)

ワカメ汁とは、女の性器である。

「番号は?」

「9.」

「おまけは?」

「首輪。」

ここで豆知識。もし、鞭と言ってしまったらマゾの人、首輪がサドを表している。なしと言ったら、普通のセックスとなる。

「食後は?」

「アイスコーヒーミルク入りを。」

これで、裏注文完了である。性欲処理班の出番である。と、まあこんな感じに進んでいる店である。いろいろ注文の仕方はあるが、こういう企画を発案したのが、Mistと祐尭である。しかも、Mistの裸体謎事件の後である。性欲処理班はMistが闇から選りすぐりの物を選んできたという。

こんな店をよく国が放っておくのもすごいと思う。

そして、店の仕事は終わりMist達の本当の仕事はこれからだ。

Redは依頼された人探しを成功させるために情報収集を始めた。裏の情報屋は収集範囲が広い。

更に、手段を選ばないため警察がいくら頑張っても手に入らない情報をたやすく手に入れる。

しかし、その情報屋を落とすためには、いろいろと困難がある。

それだけの世界に生きてきた以上汚れた世界や人間を多く見てきた奴らだ。

そいつらを信用させるだけで数日はかかる。ここで役に立つのはCoolの名だ。

この名を出すだけで、全ての裏の情報屋は無償で聞きたい情報を提供、収拾してくれる。

Coolは顔が広い。表は政治家の国会議員、裏は最強の殺し屋までだ。

しかも、一度あっただけでそいつの弱点や弱みを見つける詮索能力は伊達じゃない。

だから、見返りとして敵が多い。Coolはその刺客をひとつひとつ虱潰しに消している。

証拠はおろか、そこで争った後すらも綺麗に消している。

すごい記憶と清掃能力を持たないと微妙な痕跡が残ってしまう。

Coolはその座標をミリ単位で正確無比に予測、記憶し、そこを修復、隠滅、破壊をしてかくしている。

死体や遺体は跡形もなく消しているので、後で役所等で住民票を盗めば完全に抹殺完了である。

Coolは全てにおいて特に殺しにおいては、一部の隙もない。

もはや、ホームズの推理小説に出てくる犯罪界のナポレオン、モリアーティ教授の血を引いているのか、というほどの完璧さだ。

彼の本当の力を発揮するのは、戦場だ。

彼の銃は自由に補充ができ、殺傷力をコントロールできる。

ここで話を戻そう。Redは情報屋に聞いてみたが全滅だった。

彼らの情報網をかいくぐり何処に隠れているのか、それすらも分からない。

情報屋に聞けば最低限聞けるだろうと思っていた自分が浅はかだったと思い知らされた瞬間だった。

しかし、なんにしても零からのスタートに変わりはない。Redは他に何処から聞こうか考えた。

一つだけ浮かんだ。だが、その考えは少し、抵抗があった。

ひょっとしたらという可能性もある。その方法、宿主に聞くこと。

Redは以前祐尭に襲われた。その理由を聞くと、処女を奪いたかったから、という欲望にかられた一言だった。

もし、一人で行ったら襲われるかもしれない、という不安があった。

Coolにいっても一人で行けと突き放されると思う。

だからといって、ずっとこのままになって依頼を放棄したということになってしまう。

そっちのほうが遥かにやばい。と、いうわけで仕方なく祐尭のところにいくしかない。

Redの長い黒髪が風になびいている。そして去ろうとした時、二匹のクリーチャーが襲ってきた。

Redは臆する事無く構える事無く歩いていた。クリーチャーは俊敏な速さでRedに近づき通り過ぎた。

その瞬間、クリーチャーの身体が二つに分かれた。

クリーチャーは意味が分からずそのまま何も知らず死んでいった。

Redは振り返らず、街に出て行った。

そして、待っていたのはCoolだった。

Coolは何もいわず、ただRedをみて、肩を叩いた。

RedとCoolは二人一緒に店に帰っていった。それを空から見ている人影があった。その口から紡がれた言葉は、

「stupid love.」

Ⅴ get up late secretary

祐尭の部屋の扉の前にRedが立っていた。ノックしようか悩んでいるようだ。

「Red、早く入って来い。」

Redは、少し戸惑い部屋に入っていった。そして、その中でRedは衝撃の光景を見た。

祐尭は服を着替えている最中で、ちょうど、裸族とかしていた。

Redは顔を赤面し、目を背けた。しばらく経って、

「もう開けてもいいぞ。」

Redは恐る恐る目を開けるとそこには、いつもの姿の祐尭がいた。

Redは胸を撫で下ろし、腰をおろし、単刀直入に用件を話し始めた。

「主様、中村さんの依頼についてですが…。」

祐尭は少し動揺した。しかし、微塵にも顔に出さず

「何だ?」

タバコに火をつけ吸い始めた。

「何か、情報を教えてくれませんか?」

「ふむ。」

祐尭が少し、悩んだ後ある封筒を渡した。

「それには、スゥの目撃例と情報が載ってある。だが、それは二年前のものだが、な。」

「いえ、これだけで十分です。有難うございました。」

封筒を懐にしまい、部屋を出た。

Redは自分の部屋に行くと、封筒の中に入っていた記事に目を通した。

「2023年6月23日、静岡県天城山にて捜索手配が出ているスゥらしき人影あり。」

更に別の記事に目を通した。

「2023年6月24日、北海道国後島にても、スゥらしき人物目撃。」

一息出した後、

「妙だ。スゥの動きが…。一体何を考えているんだ。」

次の記事に目を通した。

「2023年8月18日山口県関門橋にてスゥを保護。しかし、一瞬の隙で逃走。」

最後の記事に目を通した。

「2023年10月15日沖縄県石垣島にてスゥを目撃。蜜柑を食べていた。」

Redは記事に目を通した後、冥想を始めた。

今日一日のことを全て整理する瞬間でもあった。

Redとしては自分の存在が全てを許してくれるか、その答えを見つけるために生きている。

その答えを見つけたときこそ自分という存在があってもいい場所なのだ。

その場所をも探す運命がある。

運命、この言葉は自分の全てを決める言葉。未来という舞台に用意されている台本、そして自分が翻弄され変えられない人生のイベント。全ての生物には、生と死の二つのイベントが生還したとき決まっている。

だが、この運命という言葉は愛しくなり、酷く非情な言葉にも見える。だがその全ては自分の感性がどれだけの素晴らしさを持っているか、これだけを持っていれば分からない。

冥想を終え、

「Cool、勝手に入らないで。」

「ああ、悪い。」

Redの前にCoolが立っていた。Redは胡座を解き正座にした。

「何か?」

「何かつかんだか?」

Redは手を広げ、

「全然。」

「こっちはあっているかどうか分からないが、スゥについての情報を掴んでいる奴を見つけた。」

Red声を荒げ、

「本当ですか?」

「ああ、しかしこれが厄介でな場所が佐賀県なんだよ。佐賀といえば霊的な結界や他国の妖怪で近づきにくい。」

「まあ、妖怪のほうは私の力で何とか消滅させましょう。しかし、結界は…。」

「Red、お前は記憶喪失でも起こったのか?あいつなら結界を破れるだろう。」

「あの方…ですか。」

Redは少し困った顔を出し、

「まあ、確かに生理的に好きじゃないのは分かるが、その代わり主の罰ゲームを受けるのか?しかも今回の依頼は主の友達だぞ。いつもにましてすごい罰ゲームを期待されるぞ。」

Coolは脅しとも取れる口調で話した。

Redはその言葉を聞くと押し黙った。彼女も十分に理解しているのだろう。

「でも、タッグだからもう一人加えるというのは反則じゃないの?」

そういうとCoolは、

「その心配は要らない。主には許可をもらっている。更には、そいつのパートナーにも許可をもらっている。

こういっていたよ、こっちも願ったり叶ったりだ、と」

評判が悪い上にパートナーにでさえ嫌われている奴です。

「そうですか。」

はたして、結界を斬れるのは誰なのか?

      Ⅵ Lower gunpowder

佐賀。この地名を聞くと誰一人としていい気分にはならないだろう。

日本一の恐怖の地名だからである。妖怪、霊獣、悪魔、亡霊、死霊が

蔓延っているからである。昔は稲作地域でもあり活気あふれる地帯だった。だが、日本政府は2018年佐賀を見捨てた。そして、そこに住んでいた人々は逃げ惑い、喰われ、そして佐賀の糧になった。それ以来若い人たちは遊び半分で、真相を確かめるために佐賀に来る。

そして佐賀の糧になる。もはや佐賀のせいで犠牲になる人は数知れない。いつしか佐賀は人が近づかなくなった。

「…とまあ、こんな地域なんです。結界はつい最近政府が作ったそうです。」

Redが説明を終えた。

「ふん、妖怪や霊類はお前が成仏させ、霊的な獣は俺が抹殺する。そして悪魔はこいつの顔を見せれば避けるんだろう」

そして三人めの顔を見た。

「White、一人で大丈夫かなぁ~?」

長髪で銀髪白いコートを着た少女Mistが心配そうに言った。

「お前と違ってあいつは冷静だ。心配ない。」

Coolがため息と交じらせながら言った。

「それって、私いつも冷静じゃないってこと!?」

Mistが声を荒げた。

「そうだろ。」

「ひど~い。Cool、私いつも冷静だよ。何処が冷静じゃないっていうの?」

「ここが。」

Coolは一言そういった。

「はいはい、雑談はこれ位にしてください。」

Redが制止した。

「ここか。」

Coolがいった。Redも続けて、

「ここです。結界が強く結ばれています。」

「Mist、やってくれ。」

Coolがそう言うと、Mistが構え

「オッケー、いくよ。」

Mistが鎌を一太刀、斬った。

「結界が薄れてきています。やはり文献にかいてあった通りでしたね。Blood家の鎌に斬れる物はない、と。」

「うん、だけど腕によって切れる限界は違うんだ。人間の作った結界は私が幼児期の時でも斬れるよ。

腕を上げれば軽く斬るだけで地球の半分を斬る事もできるってダディーから聞いたけど。」

Redは、印と呪符を持って臨戦態勢をとった。

Coolも銃が締まっているホルスターに手を近づけいつでも取れるように構えた。

Mistも鎌を下段に構えた。

しばしの沈黙、

しかしすぐに銃声と金属音、そして奇声で掻き消された。

その音が鳴り響き終わった後、数十体の死体が転がった。血の匂いがたちこめた。

「この程度か、弱すぎる。」

Coolが発砲して、冷たく言った。

「霊等の者は全て除霊しました。」

Redも印を解き刀に持ち替え体勢を立て直した。

Mistが先陣を切って奥へ奥へと潜入した。

「この地図の通りならもうすぐその人物の住居が見えるはずだ。」

Mistが、

「あっ、あれじゃない?」

「他に家もない、あれだろう。」

「じゃあ、挨拶に行きますか。」

三人がある館に向かった。

そして、館の敷地内に入ると番犬にはふさわしい二体のケルベロスが玄関で出迎えた。

ただし、殺意と闘争心丸出しの意識がおまけについている。欲求不満している顔に見える。

Coolが銃を構え、

「ここは俺に任せてくれ。」

玄関の門を開け速攻に攻撃を仕掛けてきた。Coolは目をつぶってケルベロスの身体が近づき、後数ミリの差という所で

Coolは目を見開き、跳んでくる起動と少しずらしよけ、鼻に裏拳を二体とも与えた。ケルベロスは一瞬身を崩し足を片方折った。

しかし、それでも尚ケルベロスはCoolに立ち向かってくる。

ケルベロスは学習をしたのか、少し距離をおきながら牙をむいている。Coolは銃の照準を合わせた。

Coolは少し身を屈めた。重心を安定させるためである。ケルベロスは半歩下がり、一気に跳び噛み付いてきた。

ほんの一瞬の差であった。ケルベロスの口の奥に弾が入りそのまままっすぐ弾道は行き身体を貫通した。もう一体の方は、

少し角度を急転させたが斜めから通り心臓から胃を通りそして貫通した。

そして、二体ともそのまま倒れた。

「はい、終了。」

「ご苦労様。」

Redが声をかけた。

「その言葉は、この任務を終えた後だ。」

「じゃ、行こうかぁ~。」

Mistが大きな声をあげた。

二体の死体を踏んで館へ向かった。

そして正門を通り庭を行き扉の前に着いた。

勝手にドアを開けた。そして、Coolが大声で、

「おい、スゥについて話を聞きたい。誰か出て来い。」

発声し終わったあと、Coolは突然後ろに吹き飛んだ。

その後、彼の服に発火が始まった。

Coolは慌てるでもなく冷静に対処した。右頬が少し赤みを帯びている。

「派手な挨拶をしてくれるな。さて、これは何ですか、ここの主人さんよぉ~。」

Coolが冷たく低い声で右手に掴んであった人形を見せた。

式神を一瞬で見抜きその心臓を抜き身体を壊したのである。

すると奥から何者かが出現した。何も言わず、ただすぅっと立っているだけである。

「やっと現れましたね。」

Redは刀を構えた。その館の主らしき人物は三人を見回して、

「久しぶりだね、Mist.」

「えっ。」

Mistは困惑した。見覚えがないからである。

「魔界にいた時君とよく争っていた私、忘れた?」

穏やかで暗くそして殺気を押し殺した声で問い掛けた。

Mistは少し思考した。答えは

「忘れた。」

問い掛けた者は静かに頷き右手を少し上げた。すると焔が出てきた。紅く、そして美しい。

表情は殺気をたっぷりと染み込ませた顔に変わっていた。

そして、ほんの一瞬の後Redの前に動き焔を混ぜた拳を顔面に発射した。

Redは対応しきれずもろに喰らった。

「Mist、まだ思い出しきれないか?」

Mistはまた少し考え、手をポンッと押し、

「君は、Neo?」

「思い出したようだね。」

戦闘態勢を解いた。

Redも立ちあがり埃をはたいた。

「Mist、紹介してくれない?」

「彼女は、Neo。私とよく順位を争っていたの。」

Neoと呼ばれた少女は続けて、

「結局、勝つことはできなかったけどね。」

Redが、

「Mistって成績良かったのですか?」

Neoは首を横に振り、

「いつもビリから二番目。」

「つまり…。」

「私がビリ。」

と、Neoが言った。

「にゃはは~、そんなこともあったねぇ~。」

Mistは笑って誤魔化した。

「さて、雑談もこれ位にしましょう。」

Coolが核心に迫った。

「Neoとやら、お前に聞きたいことがある。」

Neoはため息を一つだし

「スゥについて、ですね。」

Coolが少し、眉をひそめ、

「そうだ。」

Mistが、

「Neo、読心術が出来るんだよ。そして、心に語りかけるテレパスも出来るよ。」

「無駄な自慢はやめてくれ。」

「Neoさん、貴方の知っていること全てを話してもらいます。黙秘は無駄ですよ。私も読心術が出来ますから。」

Neoは少し顔を歪め、

「分かりました。少し長くなるかもしれません。」

そういって、指をパチンとしてみんなの前に飲み物を差し出した。

Neoは自分の前においてあるカップを手にとり一口含んだ。

「スウは今滋賀県御在所山で生活をしています。」

単刀直入に申した。

「もう少しスゥについて詳しい情報をもらえますか。」

Redが身を乗り出し聞いた。

Neoは少し考え、

「一つ聞いていいですか?」

「ああ。」

Coolが代表して答えた。

「貴方達が探しているのは中村が連れているあの子供か、それとも史上最強と呼ばれるサイボーグか。」

「中村が連れているガキだ。」

Neoは少しため息を出し、

「そっちですか。私が知っているのは史上最強絶対無敵№129ナノマシーンカスタム零号機・ドールセーバーなのです。」

「史上さい…何っ?」

Mistが舌を噛んだ。

「史上最強絶対無敵№129ナノマシーンカスタム零号機・ドールセーバー。」

Neoが言い直した。

「そんな記憶力があるのに、何故いつもビリだったんだ。」

Coolが何気に聞いた。

「試験はいつも実技でしたので。」

「Neoはぶっちぎりに体力なかったもんねぇ~。」

Neoは話を続けた。

「そして、一応そっちのスウのことも聞いていきますか?」

「主様がそういうことに興味を持っていますのでそうします。」

Redが促した。Neoは少し暗い顔をし、

「まず、最初に一言言っておきたいのはスウにあまい感情を持たないことです。」

Neoが断言をしたように言った。Redが、

「何故ですか?」

「それは、スウは冷徹な決断と、素早く正確な攻撃を仕掛けることが出来、常人が挑んだ場合、一分とも足らず

灰になります。」

「へぇ~、強そう。」

Mistが気の抜けた声を出した。

それを無視して話は続いた。

「更に言うなら史上最強の軍隊と呼ばれたSWATをわずか2分23秒で全てを跡形もなく吹き飛ばしました。」

Coolが少し息を呑んだ。臨場感が沸いてきたからである。

「SWAT、か。」

「それでも、スゥはまだ未完成品です。もし、完成してしまったらもう誰も止めることは出来ません。」

Redが聞いた。

「ではスゥが完成したらSWATはいったいどれくらいで、滅ぶのでしょうか?」

Neoは少し考え

「約一分。」

「ばかな!!」

Coolが驚いた。

「それが、スウの実力なんです。」

「しかし、何故そのようなマシーンが!?」

Redが更に続けて聞いた。

「昔第二次世界大戦があり、日本は敗戦したのは覚えていますよね。」

「ええ。」

「実は、スウは第二次世界大戦で日本の攻撃の要でした。彼が出る戦争に負けはなし、とまでいわれました。

裏の政府機関で、昭和が生み出した怪物、といったところでしょう。」

Coolが聞きなおした。

「それなら政府が管理をしているはずだ。何故、滋賀に等。」

「スウは科学者達の話を聞いてしまったんですよ。自分たちが何のために作られたのか。」

「そうか。やはり政府は当てにならんな。」

「そうですね。私が政府に潜入した時いろいろな話を聞きましたよ。もはや政府は必要ありません。」

「当たり前といえば当たり前か。」

「それで、逃げ出したんですね。」

Redが肩を落としながら言った。

Neoも深く頷きながら、

「自分たちは戦いにしか期待されていない。それだけやりただ政府のために糧になる、こんなことが嬉しいはずがありません。」

「当然だ!!」

Coolが震えながら言った。怒りが体中にめぐっているようだ。

「スゥは俺に似ている。」

「そうですね。」

Redが相槌を打った。

Coolは幼少の時から家族、日本に多大な期待をもたれていた。

それ故に家族、日本から酷い仕打ちを受けてきた。

しかも、学校にはたとえ病気になっても休ませてくれなかった。

テストの点数が満点ではなかった場合、お仕置きといい竹刀や鞭でたくさん打たれた。もちろんSMをやっているはずがないが。

俺は大歓迎だが…。

睡眠時間はもちろん食事時間も大幅にカットされた。

そんな時祐尭がCoolの家に訪れた。

そして、五分後リビングはCoolの両親の墓場になった。血みどろの壁に内臓が露出した体が一人、首から上のない人間が一人

Coolはそんな時出てきた。祐尭は二つの死体の中心にいた。ドアを開けた瞬間、Coolは腰をぬかした。

祐尭はそんなCoolを見て手刀を構えた。そして、空をきった。

そして、Coolの顔を覗き込んで

「俺のところに来るか?」

Coolは頷くことしか出来なかった。

拒めば殺されると思った。

しかし、付いて来ると家の中の地獄のような日々とは180度違う楽な日々だった。

そんな中CoolはRedに会った。Redは読心術でCoolの過去を知った。

そして、二人は友達になったのである。

Coolはできるだけ力をつけた。そのために暗殺から掃除を受け持ったのである。

その結果非情さ、戦術、技力を高く上げた。そして、現在にいたる。

「そっちのスゥも任務遂行のために、同時進行させましょう。」

Redが提案した。

「当然だ。」

Coolは即答した。

「私もさんせぇ~。」

Mistも答えた。

「それはいけません。」

ただ一人、Neoだけが異を唱えた。

「私は無駄な命の削り合いはお勧めしません。情報を聞くだけで手を退いてもらいます。」

Redがここで食い下がった。

「このような面白い話を主様が放っておくはずがありません。」

Neoが少し、身体を後ろに反らせた。

「でしたら、ここで貴方達には死んでもらいます。」

Neoが鎌を構え、その手の中に焔を混ぜていた。

「大丈夫だよぉ~、Neoって体力無かったんだから。五分くらいで息切れすると思うよぉ~。」

Coolが冷静に、

「油断は禁物だ。それにお前も体力がないんだろ。」

Mistが半泣きになり、

「そうなんだよぅ、ごめん、あまり手伝えないかも。」

「かまわん、おれとRedだけで十分だ。」

「Mist,それに皆さんおおいな間違いがあります。確かに私はいつもMistに負けていました。それは十年前の話。

今は、体力を多くつけています。」

「あ~、わたしがNeoと一緒になったの小学校の一年の時だけだった。」

「それを早くいえっ!!」

RedとCoolが同時に言った。

「ごめ~ん。」

「さて、まずMist、君にリベンジ戦だ。」

「いいよぉ~。」

っておい、お前体力無かったんじゃ…。

お互いに羽の角度を少しずつ急にかえていった。

すぐに空中戦に持ち込めるように準備をしている。

どちらかが動けば、すぐに荒れるだろう。

肌ではなく。かといって、そんな事気にする暇もないが…。

先に動いたのはNeoだった。足を踏み込んで

間合いを詰めた。Mistは鎌を上に向け棒を振って避けた。

そして、大きく後ろに退いた。

「それで避けたつもりか!?」

Neoが鎌を大きく振り、

「dangerous knight!」

地面に鎌の切っ先を斬り付けた。

すると、Mistに向かって大きなまっすぐに地殻変動が進んできた。

「おっと、あぶない。」

羽で空中に逃げた。

すると、地殻変動がMistの真下で止まり、そこから白い大きな蛇が飛び出してきた。

Mistに向かってまっすぐ大きな口を開けて来ている。

Mistは静かに鎌を白蛇に向けた。

鎌のところまで来てそこから真っ二つに割れた。

「さすが、魔力の量は昔よりかは増えていますね。」

「ただ単に能天気にすごしてきたわけじゃないからね。」

Mistは鎌を下段に構えた。

「それはこちらも同じ。」

Neoも構えた。ただし、鎌と刀だ。

「それは…?」

「北辰一刀流。そして、わが一族Hunting家に伝わる古武術。それを独自にミックスすることに成功した。

それが“field 一双流”。」

鎌と刀を交差させ、一気に魔力を凝縮し集中させた。

その周りは結界を張られている。

「Neo、それじゃこっちから行くよ。」

Mistが鎌を構えたまま、俊足でNeoに向かった。

「無駄だよ。」

むろん、結界によって足止めされる。

「何で?」

Mistは未だに意味不明な顔をしているようだ。

「君には見えないのかい?結界の姿が?」

Neoは充電完了した。

刀を構え、鎌をしまった。

結界を解き、戸惑っているMistに向かい突進した。

「我が奥義、鍼・騎虎幻獣死燐東海林撃しん・きこげんじゅうしりんしょうじげき!!」

刀を光速で斬った。むろん神ではないMistには見えるはずもなく、斬られてしまった。

ざしゅっ!!!!

「いったぁ~い。」

いまなお、間抜けな声がある。

Neoを更に怒らせるには十分な動機だ。

「無駄に長いよぉ、その技。」

更に火に油を注ぐような発言をした。

「Mist、幼馴染のよしみで、手加減しようかと思ったが、廃止します。」

「いいよぉ~、べつにぃ~。」

Mistは鎌を改めて構えた。ただし今度は上段に構えた。

「Neo、本気で行くよ。」

「それはこちらも同じだ。」

お互いの静寂間、沈黙、それはすぐに掻き消された。

「禁じ手・甘美な輪廻回路!!」

Neoが焔を混ぜ、刀を突いた。

Mistはその光速の速さを奇跡的に避け、

「いくよ、裏奥義・氷獄曲第一小節静寂の孤独感。」

Mistは鎌を振った。その一撃目をNeoはもろに喰らった。

「うぐっ!!」

Neoは突いた刀を横に薙いた。

Mistは対応しきれず、かすった。

「ちょっ、えっち!!」

服が切れ、乳房をもろに曝け出した。

「なあ、Red。」

「皆まで言わなくていいです。どうせ私は胸がないですよ。」

Coolは含み笑いをした。

「よく自覚しているじゃないか?」

どごっ!!!!

Redのエルボーを鳩尾にくらった。

「ごほっごほっ、殺す気か?」

「気にしていることを平然と言うからです。」

Coolは腹を抱え、

「どちらに分があると思う?」

「Mistですね。覚醒すらしきれない半人前のNeoじゃ、力不足でしょう。」

「お前、本気でやったろう?」

「いえ。」

Mist達の闘いに目を戻した。

MistはNeoに一撃目をくらわせると二撃目、三撃目と次々と食らわせた。

その度に胸が大きく揺れている。

「なっ、み、見えない。」

Neoはただ棒の様に食らっている。

殺傷が多くなってきた。血が夥しい(おびただ)ほどに流れてきた。

「Neo、私は止める気はないよ。」

何撃も食らわせている、まるで踊っているかのように・・・。

最後にNeoを浮かせ、一気に振り落とした。

ざしゅうぅぅぅ

「な、ぜ・・・」

Neoは力を振り絞って口を動かした。

「それはねぇ~、私には還る場所があるから。」

「そ、んな、こと、で。」

「Neo,二つ選択権があるよ。」

「Mistとレズるか、胸を触るかどっちか?」

ぼすっ!!!!!!!

傷口の一つに拳を打った。

「あの世に逝きかけた。」

「バージンは宿主様に捧げるの!!」

Mistが怒りをあらわにした。

Neo、その他数名があまりの豹変振りに硬直した。

「で、選択肢は?」

Mistは膨れた顔をしながら、

「ここで逝かせてやりたいわよ。」

「それはやめてください。」

Neoは上半身を起こし、

「まったく、短気なんだから。」

「選択は二つに一つ・・・。」

指でジェスチャーした。

「一つはここで朽ちるか…」

「もう一つは・・・」

「もう一つは私達についてくるか、どっちか?」

「ふ~ん。」

  Ⅶ Hirotaka’s idea

「にゃるほど。そんなことがあったのか。」

祐尭はMistの服を繕いながら云った。

むろん、Mistは裸である。

Coolは外に出てもらっている。

「それにしても、まさかHunting家に生き残りがいたとは。」

過去の文献によると、Hunting家というのは、人間と悪魔の混血児であるという。

しかし、混血ゆえか、そのいずれも短命で人生を終えている。

ショート黒髪、白いシャツに半ジーパンを着た女、Neoが

「私、これからどうしたら…?」

と訊ねた。

「まず、この服の修理代を出してもらおうと思う。」

Neoは軽い口調で、

「それくらいでしたら出せますよ。」

祐尭はまっていた言葉のように、

「この服は特注でな、糸とかもそんじょそこらの奴じゃ駄目で、その他交通費などを合わせると、

合計二十三万だ。」

Neoは表情を変えず、

「分かりました。」

祐尭は満足そうに、

「いいよ、おいてやる。ただし、…」

「クシュン!!」

Mistがくしゃみを出した。

「宿主様、早く直してください。」

祐尭は糸を切ると、

「ほら、出来たぞ。」

「有難うございます。」

早速袖を通すと、Mistはいつもと違うフィット感を感じた。

よく確かめると、顔を真っ赤にしながら

「宿主様!これ胸がきわどいじゃないですか!!」

祐尭は冷笑を浮かべながら、

「いいじゃねぇ~か、とてもよく似合ってるぜ。」

Mistに着せた服は、先ほどの戦闘で切れた部分を

少し修復を施し、もう片方にも同じ事をした。

もちろん、胸が見えないはずがなかった。

そこら辺が祐尭が親父くさい趣味なのである。

「でもこれ、戦闘中にきていたら胸が落ちますぅ。」

祐尭は、頷きながら、

「当たり前だ。見せるようにしているんだから。」

Mistは顔面蒼白になり、

「ひどいですぅ!私のこと遊びだったんですね!毎夜いつもいっぱい

ご奉仕していたのに!」

祐尭はっと思い出したように、

「Mist、まさか最近俺が夢精するようになったのはお前が忍び込んで

フェ○○○をしていたからだな!?」

Mistは普通に、

「そうですよ。私は宿主様一筋ですから。命令されればなんでもします。」

祐尭は、

「そうか。じゃあ今からそれを着て仕事をしろ。」

「はい、分かりました。」

あっさり承諾した。

「とっとと仕事につけ。」

そう云うとMistは外に出て行った。

「さて、Neo」

祐尭はNeoに目を向けた。

「お前のやった任務遂行の妨害、これは予定に入れてなかった、が

貴様の行ったこと本来は処分するんだが、条件をクリアーすれば許す。」

「その条件は?」

「贖罪、それか俺とやるか?」

Neoは少し考え、

「一方をやればここにいてもいいんですか?」

「もちろん。」

「それでは貴方とやらせていただきます。」

そう云うと、せっせと服を脱ぎ始めたNeo。

「ふうん、経験は?」

「ありません。」

Neoは服を脱ぎ終えた。

「では、始めましょうか?」

祐尭はNeoに近づき、

「激しくいくぞ。」

Neoは顔を赤らめ、

「はい・・・。」

祐尭はNeoを抱きしめた。

そのジャストタイミングに、

「主殿、話があ…!!」

Lostが入ってきた。

そして、状況を一瞬で把握し、

「邪魔しました。」

さっさと出て行った。

「やめよう。」

さっきのLostの出現で

祐尭は興ざめした。

「こんな中途半端でいいんですか?」

祐尭は、

「後でじっくり料理するさ。」

「いつでもどうぞ。」

祐尭は、

「それじゃ、任務続行だ。」

「私もいきます。」

「連れて行くつもりだが」

 Ⅷ misfortune be piled up

祐尭はNeo、その他全員を連れて滋賀県御在所山についた。

「感じるか?」

祐尭はみんなに聞いた。

「ええ、とんでもない力を秘めた者の獲物を見つけるときの冷徹な視線を…」

Redが相槌を打った。

「ああ、感じる。」

Mistも同意した。ただ、なんかどちらかというと喘ぎ声のような声で

Coolはその存在を掻き消すような虚勢を張っている声で云った。

「だが澤蛎、作戦は考えてあるんだよな?」

Coolは祐尭に訊ねた。

「あるわけないじゃん。」

と、普通に云った。

祐尭を除く皆が凍りついた。もちろん山に登って下との気温差もあるが

一番の理由は祐尭の能天気さにあった。

「おい、固まっている場合じゃないぞ。」

祐尭が話した。皆も身構えた。

「Red、位置をつかめるか?」

「無理です!!素早すぎて見えません。」

確かに祐尭達の周りに人の気配がある。だが気付いた時に既に違う場所に移動している。

文字通りの瞬間移動だ。そして、その刹那、

「うごっ!!!!!!」

Clayが訳も分からず後方に吹っ飛んだ。その反動で後ろにいたLost諸とも吹っ飛んだ。

「なにっ!?」

Coolが一瞬隙を作った。その瞬間を吹っ飛ばした本人は見逃さず、

ガサッ、

Coolは音のした方向に銃口を向け、神速を越える瞬時の判断と座標の修正を行い、

トリガーを引いた。しかし、その動いた生物は一瞬で身を屈め、更にスピードを速めた。

Coolはその動きを見逃さず、更に座標を修正した。照準を定め、

ズキュ~ン

発砲した。その弾は見事に頭に直撃した。

「やったか?」

Coolは銃を下ろさず、まだ身構えていた。あくまで死ぬまで油断は出来ないという。

「Coolは音」からここまでのやりとりの時間、0,1秒。明らかに人間の限界の中の極限を越えた戦いだ。

しかし、その物体は頭から血こそ出ているが、大したダメージを受けていなかった。

「ばかな、弾は9mmマグナム弾を使用した。装甲車を貫通できるほどの弾だぞ。それをたったあれだけの軽傷なんて。」

その生物は小さく口を動かした。

「傷を付けられた。本気で行く。」

明らかに最初とは雰囲気が違っていた。例えるならジャムにカビがあるかないかを匂いで分かるほど腐っているのが分かる。

それぐらい雰囲気が違う。

「傷を付けたのはお前か?」

Coolに目を向けた。Coolは目線をそらさず、銃口を向けた。

だが、その目の前でさっき付けられた傷をCoolの目の前で治療した。

Coolは銃をポンプアクション式のショットガンに変えた。

「この中に入っている弾は、いくらお前でも避けようがないぞ。一発撃つごとに半径5mに毒を混ぜた鉄の粒子が発射される。

それが身体に侵入すると血液を通り、酸素をとる組織がこの毒ごと持ち…。」

ザシュッ!!!

生物がCoolの心臓を貫き身体を貫通した。

「説明がうざい。」

そして手を抜き取った後、噴水の様に多量の血が吹き出た。

「犠牲者は三名か。やばいな。」

祐尭は日本刀を構えた。祐尭もまた剣術は我流だ。あらゆる流派の長所を取り込んだ、だけ分かっている。

それって無敵じゃん…。

「久しぶりだな、スゥ。」

スゥと呼ばれたものは、Coolを貫いた手を祐尭に向け、

「負け犬か、何の用かな?」

祐尭は顔を変えず、切っ先をスゥに向けた。

「負け犬とは酷い。確かに一度も勝負事に勝ったことはないが、脅威的な存在にはなった。」

スゥは身構えた。

「別にお前を脅威的と思ったことは微塵もない。それに今のお前はかすり傷すら俺に与えられない。」

「さあ、それはどうかな?」

祐尭も構えた。

「刀と武道どっちがいい?」

スゥは、

「刀だね。」

スゥも何処から取り出したのか、刀を構えた。

「またあの時のように一瞬で決めてやる。」

スゥは刀の切っ先を裕尭に向けた。祐尭もスゥに切っ先を向けた。

「五年前以来だな。」

祐尭が云った。

「あの時のお前は、俺のパシリだったな。」

「いくぞ!!」

祐尭が先に仕掛けてきた。スゥは冷静に角度を読み防御した。

「変わらないな、五年前と。」

「やっぱし?」

「今度はこっちからいくぞ。」

刀を一振り、そしてその刹那、祐尭の懐に入り込み、

躯裂(くれつ)獄鏖(ごくおう)!!」

刀を祐尭に向けて一振りした。祐尭は間一髪さばいた。しかし、スゥはその反動を利用し、

反対側に斬った。祐尭は見極め、受け止めた。

「ほう、防御力は上がっているみたいだな。」

スゥは祐尭との距離を離し、改めて体勢を持ち直した。

「あぶねぇ。」

祐尭は刀を下段に構えた。スゥは上段に構えた。

「いくぞ。」

祐尭はその一言を云った後、スゥに斬りかかった。

「!!」

光速を超えた速さで一太刀。

「グゥッ!!」

腹部から、血が滴り落ちてきた。

祐尭は弧を描き、そして刀をスゥの首元に刃を向けた。

「所詮は偽者か、本当のスゥなら、否、完全体に変貌したスウなら今の攻撃を見極められた。まさかこの五年間で

腕が衰えたわけじゃあるまい。」

スゥは腹部を抑え、よろめいた。祐尭は眉一つ動かさず、刀を振り上げた。

「さすがは祐尭、私を偽者と見破るとは…。」

その一言がスゥの最後の言葉だった。祐尭はスゥの首を斬った。

「まさかこんな馬鹿がいるとは…。」

祐尭は刀をしまった。真っ先に近づいたのはMistだった。

「宿主様、偽者って?」

「ああ、あいつはスウじゃねぇ。十中八九スウが作り出した幻影だ。」

「あの強さで幻影なのか?」

WhiteがMistの隣に立って云った。祐尭は

「ああ、本物なら俺でも勝てない。だが、俺が会得できなかった奥義をお前らが会得したらスウに限りなく近い戦力になる。」

「宿主様が会得できなかった奥義?」

「その名も『智戒(ともかい)神帝(しんてい)』俺と幸季と、そしてスウの三人で考えた流派の最終奥義。」

「どんな技なんですか?」

Redが訊ねた。

「さっきお前らも見たと思うが、さっきの幻影が出した技『躯裂(くれつ)獄鏖(ごくおう)』。これも俺たちの流派の技だ。

躯裂獄鏖は自らの力で身体を貫く一撃必殺技だ。だが智戒神帝は自らが神となり万物を司り万物の力

で自分のテリトリーの中にいる全ての生物を抹殺できる。まさに神の苦渋の選択というわけだ。」

「ちょっと待ってください。」

Redが制止した。

「もし、その話が本当なら主様はスウは…。」

「ああ、俺も幸季も政府達に捕まっていた奴らさ。」

ここで、Mistが、

「じゃあ、スウみたいに長い名前があるの?」

能天気に訊ねた。祐尭は少し考え、

「確か、No,36エキスパートカスタム・ウォータードールだったけかな?」

「主様、ではその最終奥義スウは覚えているんですか?」

「ああ、俺以外は全員覚えている。」

「主野郎、どうやら雑談は終了するしかないぞ。」

Whiteが構えた。祐尭たちも構えた。

「久しぶりだな、澤祐。」

その声の主は、さっき祐尭が倒したスゥに限りなく近い面影だ。

「ああ、五年ぶりだなスウ。」

「私に勝つ気でいるのかい?まったくその単細胞は昔から変わってないな。」

「残念ながら俺はお前と戦う気はない。」

「別に、残念じゃないさ。」

祐尭は刀を構えた。Mistたちも構えた。

「私に勝負を挑むなら、私の従える忠実な部下を全員倒したらいいよ。」

「いいだろう。」

スウは指笛を鳴らした。すると周りから六人の人がスウの周りに集まった。

「さて、お手並み拝見と行こうか。」

そう云うと、すぅっと消えていった。

「さて、どうやろうか?」

祐尭は少し思考すると、

「みんな、逃げるぞ!!」

「えっ!?」

あまりの意外な考えに皆硬直した。しかし、祐尭は既に姿が見えなくなるほど光速で逃げていた。

皆も硬直がとけて、逃げた。めいいっぱい逃げた。

そして、逃げ切った後、

「皆無事か?」

祐尭が尋ねた。皆息を切らしながら、無事だといった。

「しかし、これからどうするんですか?」

Redが訊ねた。Whiteが一計を案じたのか、

「主野郎・・・」

「何だ?」

「幸季を連れてきたら・・・」

祐尭は、

「それは無理だな。」

そう、断言した。

「幸季はスウを愛してたんだ。彼に知らせず、本物を破壊しようと思う。」

皆は沈黙を出した。祐尭は刀を出した。そして、Redに近づき、そして、

「この刀をお前にやる。大事に使えよ。」

Redは驚いた。確かに祐尭の刀は欲しかった。直訴したこともあった。それを今のタイミングにわたされると、

何ともいいようがない微妙な心境だ。

「有難うございます。」

祐尭の刀をRedが握ると、持った腕が重力にそって落ちた。

「お、重い・・・。」

「そりゃあ、五tあるからな。」

皆驚愕した。そんな刀を軽く今までぶんぶん振り回してた祐尭に対して・・・

「使いきれませんよ。そんな重いの。」

「大丈夫だって、二三日持つ練習すればもてるから。」

「信用しきれませんよ。」

「さて、皆さっき云った奥義を伝授しようと思う。」

皆静寂を保った。そして、

「まず、当分の間、座禅をしてもらう。」

皆、有無を云わず、座禅をした。

「それを三日間、やれ。」

皆、返事をしなかった。既に一人の世界に入っている。

「残り、四人か・・・」

次の日、皆まだ、座禅を続けていた。祐尭は朝食を近くの動物を殺しそれを食った。

そして、昼頃残りの肉を食って、コーヒーを作り、それを飲んでいた。

そして、夜寝た。

後、敬称略

座禅を終えた。皆は目がギンギンになっていた。

「はい、会得終了。」

「速っ!!」

こんなすぐに会得できるとは思わなかった。

「皆、能力が格段と、上がったはずだ。」

皆疑いの目をしていたがものは試し、練習をしてみた。

すると、Redは今まで持てなかった祐尭の刀を軽々と持ち上げられた。

「う、そ・・・」

一振り振ってみた。今度は刃の風が作り出され、何本もの木が薙ぎ倒された。

「すげぇ・・・」

Whiteが感嘆をあげた。今度は自分の脚力を一本の幹に試した。

「innocent honor…」

神速を超える超神速で幹を蹴り上げた。蹴った場所の幹が粉々になり、空中に浮き上がった。

「みんな、確かめたようだな・・・」

祐尭の頭上にさっきWhiteが蹴り上げた幹が落ちてきた。

「おい、宿主野郎!!あぶねぇ!!!」

そういった刹那、祐尭の頭上の幹は祐尭の頭ギリギリで折れた。

「これが奥義の基本だ。」

祐尭は、それだけを云い残し、去って行った。

「宿主様!!」

Mistが呼び止めた。だが、そこにはもう、祐尭の姿はなかった。

「きっと、戻ってきます。コーヒー入れて待っててください。」

大声で云った。しかし、届いたかどうか分からない。

「おい、Mist。」

Whiteが声をかけた。Mistはただ、立っているだけだった。

そんな中、肩が震えていた。ただ、一つ祐尭の存在が消えるだけでここまで変わるものか、

Mistは震えを止め、いつも通りの笑顔で

「さあ、スウを倒しに行こう。」

いつもなんら変わらない、言葉だった。だが、

みんなには分かった。この戦いで戻れることはない、ということを・・・

だが、そんな中でMistは笑っていた。不安を押し殺してまで、皆を元気にするメリットはあまりない。

「Mist、いいのか?」

Whiteが訊ねた。Mistは笑いを落とさなかった。

「何が・・・?」

いつもの天然ボケが炸裂したが、こんな状況で笑う奴などいなかった。

突っ込む奴もいなかった。それはある意味芸人殺しの冥利に尽きるが…

「さて、いくか・・・」

WhiteもMistに同意した。

「そうですね。」

Redも同意した。

「最後まで付き合いましょう。」

Neoも参加した。

「じゃあ、リベンジといきますか!」

Mistを先頭に山奥に向かった。

Ⅸ Final Battle

Mist達が奥まで、歩を進めていると、

「皆、気付いてる?」

小さな声で云った。皆は小さく頷き、

「早く仕掛けてくればいいのにねぇ・・・」

「慎重な奴なんだろ。放っておけ。」

そう云った瞬間、そのついてきた張本人が姿をあらわした。その格好は能舞台に出演する役者みたいな格好だった。更に翁の面をつけていて、素顔が分からない。そんな中扇子をMistたちに向け、

「ここから先は通させぬぞ・・・」

しゃがれた声だ。まるでミイラが云ってるみたいだ。

「否が応でも、通させてもらう・・・」

Whiteがそう答えた。しかし、能面をつけた奴は扇子を広げ、ゆっくりと舞い始めた・・・

Redははっと思い出した・・・

「まさか、黄泉の世界と繫げる気!?」

「どういうこと?」

Mistが訊ねた。Redは刀を構え、皆に構えるよう命じた。尋常じゃなかったので皆Redの云うとおりにした。そして、

「能は黄泉の世界とここの世界を繫げる呪術。そうなればかつて世界を震撼させたいろんな奴が現れます。」

「なら、そうなるまえにくたばらせるまで!」

Whiteが突っ込んでいった。気を高め一気にサバットの要領で決めるつもりだ・・・

「無理です!止めなさいWhite!能の舞は聖なる踊り。神によってその距離が阻まれてしまいます。」

Redが後ろから声をあげた。しかしWhiteはスピードを落とさず、

「なら、神に背くまで!!そして神がこの世界を滅ぼすというならその神に裁きを俺たちが与える!!」

舞っている奴に、近づき一閃、蹴りをぶち込んだ。もろに喰らい、よろめいた。

「やったか!?」

「もう、おそい・・・」

男がそう云った。男の後ろに、黒い大きな穴が拡がっていた。その中には魑魅魍魎がいた。

残念ながら女の子はいない。(男たちすまん!!)

「遅かった?」

Redは落胆した。刀を落とし、肩を落とした。その肩をMistが軽く叩いた。

「落ち込んでいる暇はないよ。戦う準備をしないと・・・」

「そうですね。」

Redは刀を拾い構えた。Mistも上段に構え、Neoも日本刀に焔を宿した。

「出でよ、この世に恨みつらみを持つ者よ。今、時が満たれり。」

扇子を一振りした。すると黒き穴から何者かが召還された。その容姿には見覚えがあった。

「Cool・・・」

Redがそう呟いた。確かにそこにはCoolの姿があった。だが、銃も持たず、ただいるだけだった。Coolは顔をあげ、

「我、世界を還す者。阻む者は、死あるのみ」

「なら、死を選ぶ!」

Whiteが戦闘を仕掛けた。Coolは冷静に読んだ。その角度を正確に薙ぎいた。そこからできる隙を正確に突いた。

「なっ!」

Whiteは突かれた方向に吹っ飛んだ。Coolは背中から刀を取り出した。その切っ先をRedに向けた。

「Red、貴様によって殺された万物の代表として、貴様を殺す。」

「何故私?」

全く見覚えのないRedにとって、八つ当たりにしか聞こえなかった。かといって、はいそうですか、すみませんといったらむかつくだろう。そこで、更に思考した。

「生類憐みの令を出したのを忘れたか?」

「そんなのもうこの世に存在しませんよ。」

読めた・・・。そんなふざけた条約を出したのは、徳川五代将軍・徳川綱吉だ。それはいいとして、

今度はこのバカをどう倒すか、無駄な力を極力出さず、最小の力で終わらせるにはどうすればいいか、考えた。

「覚悟!」

Coolは刀を振り翳した。Redは微動だにせずただ考えていた。距離が間合いに変わった瞬間、

「ここだ!戦凍(せんこう)殺怨(さつえん)!!」

少しの風が起きた。Redの切っ先に水滴があった。Coolは微動だにしなかった。Redは刀の水を払うために一振りした。

「Cool、還るべき場所がない貴方は、何処にも還れない。無に還る以外には…。だから今は安らかに眠ってください。」

刀を鞘にしまうと、Coolは血の勢いでまるで踊っているかのようにのた打ち回り倒れた。

Redは遺体に向かって祈った。その後、能楽師に向かって刀の矛先を向け、

「次は貴方です。作り出された世界は崩壊しました。もう勝ち目はないでしょう。」

能楽師は、急に笑い出した。何のことだか分からないMist達は戸惑ったが、

「単なるこけおどしだ。行くぞ。」

Whiteは今度こそとどめをさそうとまた行った。今度はあっさり入った。能楽師は普通に倒れ二度と動くことはなかった。

「何だ口ほどにもない…。」

Whiteは構えを解いて、みんなの元に戻った。

「進みますよ。」

Redは歩き出した。それに続いて皆も歩き出した。

そして、また数時間後、

「お腹空いたよぉ~。」

Mistは情けない声を出した。それにつられて周りも腹の音が鳴った。

「困りましたね。持ってた食糧も底をついてますし。近くの雑草が食べれればいいのですが。」

Redは無茶なことを云った。大体、雑草を人間が食えたら、東南アジアの食糧危機は救える。

「もう少しで、町が見えるはずですが…」

Redは地図と照らし合わせながら、進んでいる。しかし、いくら進んでも町は見えない。

かれこれ更に二時間進んでいるのに見えない。そして、Redはあることに気付いた。

「地図を逆に見てました。すいません。」

つまり、西を東に、北を南に見ていたのである。それでずっと見当違いに方向に向かっていたのである。

しかし誰も怒る奴はいなかった。その怒る力も皆残っていなかった。

俗に云う、背中と腹の皮はくっつきそうである、ということである。

「あ~ん、こんな事ならさっき肉食べるんじゃなかったよ~。」

Mistが情けない声で恐ろしいことを云った。皆殺気混じりの熱い視線をMistに向けた。

「Mist、さっきっていつ食べたの?」

Redが殺気を隠して、優しい声で訊ねた。

「えっと、Redがおしっこしてた時、かな?」

ボコッ!!

「いったぁ~い。」

Redが赤い顔になって、拳を垂直にMistの頭上に振り下ろした。

「そんなことは云わないで下さい!!」

頭をさすりながら、Mistは涙を出しながら、

「Redが云えって、云うから云ったじゃん。」

「せめてもう少し遠慮がちに云ってください。」

二人のやりとりをNeoは冷静に

「そういえば、そのときMistなんかよそよそしていたな。」

「みんなに見つかると、取り分減ると思って。」

ここでMistが悪魔の血が宿っていると思う恐ろしいところである。

自分のことしか考えられない悪魔の悲しい性である。

「まあ、いいでしょう。それより、どうやって肉を見つけたんですか?」

Mistは頬に指を当て、

「なんか皿に盛られていた。」

「明らかにおかしいと思わなかったんですか?」

Mistは真剣に考え、

「全然。」

にこやかに且つ爽やかに云った。Redは怒りを通り越して呆れてしまった。他の奴らも同じ様子だ。

「しばらく休みましょう。」

その提案は誰も反対しなかった。みんな近くの木陰に休んだ。暫く、ゆっくりしていると、

ガサッ、

皆身構えた。しかし数分ぐらいたっても、相手は出てこなかった。構えを緩めると、

ガサッ、

また構えた。しかしまた身を潜めた。今度は少しも気を緩めないように動かなかった。

静寂が続く…

風が吹く、お互いに間合いギリギリ距離で退かなかった。

が、その刹那、

「もらった!!」

草むらから何かが出現し、Neoの右脇にいれた。(拳を)

Neoは何とか急所は避けたもののかなりのダメージを受けた。

よろめくNeoに更に出てきた物体は攻撃を加えようとした。しかし、

Mistの攻撃によりそれは阻止された。その結果、動きを封じられ姿をあらわした。

「お前は…」

Whiteがふと漏らした。

「Black?」

Whiteと同じ出で立ちで違う箇所が髪の色が黒色であるくらいしかない物体は、

「White、まだ生きていたか…」

それらしい返答が答えてきた。Whiteは一歩前に進み、

「貴様、あの時滅びたはず…。」

なんか二人で過去にタイムスリップしてる感じだが、放っといて先に進めよう。

Mistの鎌から離れ、Whiteに迅速に近づき、

「少しは腕を上げただろうな!?White」

見事な蹴りを顔にぶち込んだ。Whiteは対応しきれず、もろに喰らった。

「ぐはっ!!」

ほぼ、顎のところを蹴ったので、少し、意識がはっきりしなかった。

「く、くそっ。」

鼻から牛乳…じゃねぇ、血が滴り落ちてきた。少し赤みを帯びている。

「White、未だに弱点は克服しきれてないな。」

「うるせぇ~よ。」

「云ったそばからまた油断。」

再び蹴りを、今度は腹に打ち込んだ。寸分の狂いもない急所を狙っている。

常人なら間違いなく悶絶、あるいは気絶をしているだろう。しかし、

Whiteは常人を超えた常人だ。でも結局は常人なので喰らった。

「ぐうっ…」

少しは防御したが、蹴りの速さに追いつけず威力を少しもらってしまった。

「ほう、少しは防御を覚えたようだな。だが…」

蹴った脚をそり返し、もう片脚で脳天に蹴り落とした。

さすがに、Whiteもこれは見切ったらしく、素早く相手の脚を放し、後ずさり、行き場のなくなったけりは地面に叩かれ、

その後、Whiteは冷静に落ちてきた顔に見事な軌道でぶち込んだ。

「くらえっ!!」

どごっ、と見事な音がした…。だが、それは腕による骨のきしみにすぎなかった。

「甘い…。」

Whiteの脚を掴みそれを潰した…

「うおっ!!」

「これで、使い物にはならなくなったな…。」

足を引きずりながら、構え直した。Blackは構えを変形(?)させた。

「知るがいい。最強の格闘家の蹴りというのを…。所詮貴様は俺の影に過ぎない。影はオリジナルによって滅びるがいい!!」

足の筋肉が一瞬にして発達したのか、ドーピング(薬によって筋力アップすること)でもしたのか、足の筋肉が服に透けて現れた。

「もうすぐ、貴様に怯える事は無くなる…。」

「はあっ、はあっ、やれるものならやってみろ。」

息を荒くしながらでも、いつものでかい態度を出した。

「この前と同じ轍はふまぬ。完全なる勝利をもらうぞ。」

「一つ聞かせてくれ。何故孤高のプライドを持つお前がスウの手下になどなった!?」

Blackは甲高く笑った。それをただ呆然と見るしか出来なかった。

「貴様が俺に説いたことを実行しているだけだが…」

「俺が説いたこと・・・だと?」

「孤独の拳ははただ悪徳しか残さない。しかし、仲間のために振るならそれは後悔も残るが未来が約束される、と。」

「ふざけるな!!スウが仲間だとでもいいたいのか!?そのためには昔慕った仲間でも殺すというのか?!」

構えを今まで誰も見たことが無い構えに変えた。しかし隙が無く、完璧なる構えといってもいい。

脚の怪我さえなければ。

「そうだ。俺の未来をスウは約束してくれた。だから俺はあいつのためにこの拳を血に染める。」

「Black、おまえは決して屈服などしないと思った。だが、今のおまえは未来に怯えた負け犬だ!!」

「俺が、負け犬、だと…」

顔を般若のように変え、怒りを露にした。

「いいだろう。貴様には俺の奥義を見舞って二度と生まれ変わることが無いよう、魂まで粉々にしてやる。」

「今のおまえの力では二度と俺に勝てない。こんな奴の影をやってたと思うと馬鹿らしくなってきた。」

「黙れ!!」

Blackが先制をしてきた。

「くらえ、虎死嘆胆!!」

光速に近い蹴りを全ての急所にうった。しかし、その刹那前に、Whiteは空を飛んだ。

怪我した脚が邪魔をし、多少の跳躍の低さは否めない。

「やはり、ほんの一瞬鈍っている。これが真実の蹴りだ!!innocent❀honor」

もぅ片方の脚で、Blackの首元へけりを見舞った。

ドゴッ!!、鈍い音の後、首から上の無いBlackが倒れた。

そして、先ほど蹴った足で無事に着地を果たした。

「Black、おまえは良きライバルとして葬っておく。」

Mistたちのところへ戻った。

「おか~。」

Mistが最初に声をかけた。Whiteは冷静に、怪我をした脚を抱えながら、

「おう。」

MistはWhiteの性格を知っている。だからこそ、あえて脚の怪我には触れなかった。

「じゃ、いこ~か~。」

一方、スウたちのほうは

「そうか、Blackとゼータは死んだか。」

スウは云った。すると部下たちは、

「しかし、予定通りにことは進んでいます。」

「そうか、その後はおまえ達の行動しだいだ。良き報告を待っているぞ。Salt。」

Saltと呼ばれた者は、冷笑を浮かべ

「お任せください。完全なる復活まで私は悪魔に魂を売り渡します。」

「よく言った。では頼んだぞ…」

そう云うと、Saltはふぅっと消えた。

「Sugarよ、Saltの援護に行ってくれ。」

「御心のままに…」

そして、行った。スウは、一人頭をうなでながら、

「全ては計画通り。あとは、生贄の魂。」

そして、Mistたちに戻る。

「はっくしゅん!!」

Mistがくしゃみをした。

「誰か噂してるのかなぁ~?」

「だとしたら、お前は馬鹿だな、て云う内容だろうな…」

Whiteが冷静に云った。もちろん当の本人は、

「う~、返し言葉が無い。」

何気に認めてはいるようだ。俺としては、この寒い中コート一枚しか着ていないというのが原因と思うが…

「敵は後三人です、おそらくこれまでより強いでしょう。」

Redが仮説を挙げた。だが的をついている意見だとみんな思っているらしい。

「そろそろ、出てくる頃合だな。」

Neoがふと呟いた。こういうときに小説は便利で本当に出てくるのである。

「ようこそ、Secret Gardenへ。」

Mistたちの前には二人の少女が立っていた。パッと見祐尭の趣味に合っている。

まず、Mistに似ている少女が、

「お初お目にかかります。Sugarといいます。」

礼儀正しく、お辞儀までやった。Mistたちもまた礼儀正しく返した。

Sugarの隣の少女は明らかに不自然な(なり)をしてた。御札が身体の所狭しと張られ、鎖で身体の自由まで奪われている。

「初めまして、Saltと申します。そちらにMistという方がいらっしゃいますか?」

「はい、私ですけど…」

Mistが一歩抜きん出た。何の疑いも無く。Sugarが微笑んだ後、

「ではその命もらいます…」

Mistに向かって先制してきた。Mistは鎌を構え、臨戦を覚悟した。

しかし、その臨戦をSaltが許さなかった。ナイフをMistの脳天に向けて投げた。

その矛先にNeoの鞘が刺さった。

「せっかくMistがやる気を出してるのに、それに水を注しては駄目ですよ。」

「邪魔立てするんですか?いいでしょう、私の力をほんの少し見せましょう。」

そう云うと、頭に張ってあった札二枚と胸の札一枚を剥がした。

すると、Saltの片眼の色が変わり、左腕が一回り大きくなった。Neoはその光景に平然と、

「このゾクゾク感は親を殺す時以来だな…」

「では行きます。」

鎖に繫がれているからだとはとても思えない身体で、ナイフを素早く投げてきた。

Neoはその全てに軌道に刀を向け、回避した。

「なかなかやりますね。」

「伊達に銃弾を避ける練習はしていませんよ。」

「なら、少々早くしましょう。」

ナイフを持つ手に力を込め、

「生贄の咎!!」

ナイフが四方八方から飛んできた。しかも前より速さは比にならない。

「無駄なことを…」

Neoは不敵な笑みをこぼし、刀を締まった。

「…King Of Neptune…」

一閃、飛んできたナイフが空で落ちた。だがNeoは一歩も動いていない、と常人の肉眼は見えるだろう。

「あの一瞬で、私のナイフ全ての軌道を変えて相殺したわけか…。」

「よく見えました…」

パチパチと拍手をした。そんな中Saltは少し思考をした後、今戦っているSugarを

「お~い、Sugarちょっとタッグプレイをしよう♡!!」

Mistの攻撃を軽く流し、Saltの元に戻ると、MistもNeoの元へ戻った。

「Salt、彼女なかなか死んでくれないの…」

「あ、そうなの?じゃあ、Sugarもちょっと強くなろうね。」

そう云うと、SaltはSugarの服のボタンを外し、上半身をはだけさせ、

「じゃあ、ちょっと失礼するよ…」

おもむろにSugarのまだ発達しきれていない胸を揉み始めました。Sugarもその行為に対して敏感に

反応している。顔も紅くながら感じている。

「貴方の性感帯を刺激する役目は本当に楽しい。」

Saltは揉むスピードを早くした。Sugarも喘ぎ声も荒々しくなってきた。

「はぁっ、ああん、ソ、ルトォ~、もっと、もっとぉ~。」

Mistたちはただ呆然と見ていた。あまりの光景に立ち竦んでいた。だが、Mistたちも

全く興味が無いわけでもない。むしろ、やりたい盛りらしい。その結果、Mistたちの女たちは

下半身が濡れてきた。しかも替えの下着すら持ってきていない。つまり、帰るまで濡れ濡れの下着でなくてはならない

ということだ。そうじゃなくて、少なからずとも感じてはいるということだ。

「シュガ~、ここは好きかな?」

Sugarの乳房の先にある桜色の乳首の周りを弄り始めた。

「そ、んな、とこっ、ソル、ああん、ト、いじ、られたら、イッ、ちゃう、よぉ~。」

「イッた瞬間のSugarの声を訊くの好きだもん。」

「ああっ、ああん、あああ~ん。」

揉むだけ揉んだ後、今度は口をつけた。俗にいう、胸をしゃぶる、という行為だ。

「ああ、Saltの、口の、熱気が、伝わってくる、よぉ~。」

顔はもう完全に紅潮した。目頭にはうっすら涙を浮かべている。

「ああっ、だめぇ、イクぅ~~~~~~!!」

そう叫んだ後、Sugarはその場に倒れた。Saltはつけていた口を外し、

「さて、準備完了、と。」

そう云って、Mistたちのほうへ向いた。

「どうでした?私達のレズシーン。」

「濃厚すぎだよぉ~、充分手淫が出来た。」

「それはよかった。じゃあ、それが冥土の土産になりましたね…」

快楽の余韻に浸っていたSugarが立ち上がり、Mistのほうへ向いた。

「じゃあ、今度は本気で行くよ…。」

Saltも、

「まさか本気で封印を解く羽目になろうとは…」

Sugarは服のボタンを付け直し、顔を少しの間、腕で隠した。その後、

Sugarの顔に血の様に赤い色が民族化粧のように彩られていた。

Saltの方は、御札を全て剥がし、鎖を外した。

すると、顔の皮膚は爛れ、右腕は腐食したのかちぎれ、銃が顔を出した。

更に全身に眼が現れた。隙間ないほどに…

「これはまだ完全体の一歩手前。Mistの魂を捧げ、私にその能力を取り込んだら完全体なのだ!!」

「Salt、じゃあ、いつも通りに行くよ…」

SugarはMistに向かって、拳を出した。

そしてSaltが威嚇射撃の如く、空に向かって発砲した。Sugarは、それを合図として受け取り、

拳を突き上げた。Mistは拳を軽く流した。が、空に発砲したはずの銃弾がMistの動きを見たかのごとく寸分狂わない

座標で来た。Mistはさすがに対応しきれず、もろに喰らった。だが、最低限の防御は出来ていた。弾頭全てに鎌で避けた。

しかし、結果的にはそれで弾が壊れ、粒子になり、散弾銃の役目がおき、Mistの身体全てに打ち込まれた。

「クッ…、浅はかだった。」

「無駄なことをしたねぇ。Mist。私達の連携プレイはそう簡単に崩せないよ。」

Sugarがせせら笑った。Neoはさすがにむっとした。日本刀をここで抜いた。

Mistの時すら抜かなかったNeoの真剣の光はあまり血を吸っていないのか、黒光りがかなり際立っている。

「久し振りに本気を出す羽目になろうとは…。いまだ誰も知らない真の力見せてやるよ。」

「Neoの本気か?資料にもないから、参考にさせてもらうよ。Salt準備いい?」

SugarがSaltの方へ向いた。Saltは受け止める準備をし始めた。

「Saltの身体全てが亜空間へつながっている。つまり全ての攻撃を無効化にしてしまうんだよ。」

「準備完了だよ。Sugar。」

Neoは臆しなかった。それどころか、逆にチャンスを掴んだといわんばかりの不敵な笑みを浮かべた。

「じゃあ、その亜空間ごと切り裂けば問題ないっていうことだよね?」

「それは無理というものですよ。亜空間は二十劫という大きさです。そんな鈍ら刀で切り裂けるかな?」

Neoは笑顔を絶やさず、

「Mistにばかり目を向けたことがそもそも失敗だったんですよ。今、そのことを証明してあげる。」

刀を構えた。Neoは笑顔を消し、刀に霊気を溜めた。

「Salt、Neoのほうは任せたよ。」

「わかった。Mistのほうは頼んだよ。」

「Neo~、早く終わらせてよぅ。」

Mist得意の困った口調攻撃が来た。Neoは平然と、

「五分くれたら、終わる。」

「はやくしてよ~。」

SugarがそのMistの横顔に強烈なエルボーを食らわした。

「何処を見ているの?」

Mistはもろに吹っ飛んだ。顔から地面に叩きつけられたため、地面とキスをしてしまった。

Mistは起き上がり、

「いったぁ~い。久し振りに痛い目にあった。」

喰らった箇所に手を当て、さすりさすりした。

「さて、貴方のその亜空間とやらが何処まで耐え切れるかみものですね。」

「斬れるものなら斬ってみろ。」

「じゃあ、いくよ。」

Neoは素早い動きで、相手の間合いを取り、

「我が奥義・幻舞迅葬斬。」

一閃、幾つもの斬撃は見られるもののSaltは仁王立ちしていた。

「こんなもので勝てるの?」

「どうかな?」

日本刀を鞘に収めた瞬間、Saltの内面から、爆発音とともに、ボコボコッと

体が変形した。

「ば、かな…」

Saltは、内面からの攻撃によって、切り刻まれ、死亡した。

「いい忘れましたけど、私の技に斬れない物はありません。銀河系を真っ二つにすることも可能なんです。」

「Neo、こっちも手早くたたむねぇ~。」

といってるそばから、既にSugarは、息切れをしていた、

「何て速さなの?」

実はずっと逃げ回っていたらしい。にこやかに且つ楽しそうに…

「Neo~、私がやっぱり片付けるよ。純情そうな子だから・・・」

「魂を鎌に喰わせるのか…、勝手にしてください」

「Sugarだっけ?大丈夫ちょっと痛みが来るだけだから」

鎌をSugarのほうへ向け、呪文を唱えていた。

すると、Sugarは全身を震わせ、背中を空へ向けた、

「何かが、何かが抜けようとしている!!やめろ!!」

時既に遅し、魂を完全に肉体に離れさせた。

「完了、さあ、生贄だよ。」

魂に鎌が触れた瞬間、一瞬にして、消えた。

「また、威力が上がったよぅ。」

鎌が魂を喰らったことによって、鎌の黒光りがかなり際立っている。

Redが一部始終を見終え、軽く拍手しながら、

「ご苦労様です。後二、三日歩けば、スウの要塞に近づくと思います。

皆さん、最終決戦に向けての余念はありませんね?」

皆、一も二もなく、

「当然!!」

 Ⅶ Service Unit’s sad history

「とうとう、Salt達までもが天へ還ったか……」

頭を垂れ、うな垂れている。その名は、スウ。

彼もまた、祐尭と同じ政府たちのモルモットだったのは前にも述べたが(理由も含めて)、

今回は違う切り口から行こうと思う。なお、スウのモデルとは一切関係ありません。(いくつか真実ですが・・・)

彼のプロフィールは一切不明である。

ただ、オリジナルは宇宙の混沌たる、星と星との衝撃の中に、スウの細胞が生まれてきていたのである。

そして一つの固形生物が誕生、即ちスウである。

彼は地球に移住し、全ての生けとし生ける者全ての運命を司っていた。

しかし、歴史は段々彼の存在を認めなくなってきたのである。

そして、彼の存在を完全に抹殺する事態が起きたのである。

「魔女狩り」

魔女狩りとは云っても、女だけではない。妖しき者、薬を扱う者、教会に入らない者、政府にとっては忌まわしき存在。

全てが、処刑されている、一種の大量虐殺である。

この中に、スウも混じっている。しかし、彼は命からがら、闇との契約を交し、体という器を失いはしたが、

魂を別の器に入れ替えた。そして、二代目スウが誕生したのである。

二代目スウは、日本での幕府を滅ぼそうと考えている朝廷の一人、坂本竜馬である。

しかし、彼は表に姿が現れることはなかった。それは坂本竜馬が、何者にも負けない強靱な精神力があった。

それ故に、彼はスウを封殺しようと試みたが、所詮、人間が叶う筈もなく、しかし、魔力の根源の一つを司る、

「嫉妬」を消す代わりに、自らの命を落とした。

スウは、今回の反省を踏まえ、生を受ける前の受精卵に憑依をした。

生まれる前から、スウという性格を植え付けられていたので、完全な純・スウが誕生した。

三代目スウは、普通の人とはかけ離れた、いうなれば、変な感じの人って感じだが、

不思議なことにそういう人ほど、人間的な価値でいうと認められるのである。

しかし、かれは、動物的な価値とはかけ離れていたため、異性と付き合うことはあまりなかった。

中学の時、三代目スウは祐尭と幸季の前世に出会っている。すぐに打ち解けた、がスウは二人に対して、何かやりきれない気持ちでいた。あるいは、予測していたのかもしれない。この二人とはいつか、戦わねばならない、という運命かもしれない、と

そして、三代目スウも人としての人生を終え、祐尭たちもまた死に、輪廻の輪を掻い潜り、新たに生まれた。

それが今の、祐尭、幸季、スウが出来たのである。

もっとも、生まれてたのは、全てバイオ液の中で、容器に缶詰のように詰められていた。

そんなことをスウは思い出していた。

そんな中、六賢者の最後の一人の少女が現れた。歳は十代後半の面影と身長である。顔は幼さを残したベストマッチな顔である。

それにスウが気付き、

「kanonか、何の用だ?」

Kanonと呼ばれた少女は、一度お辞儀をし、

「スウ様、Mist班たちはそろそろ我らが牙城につくと思われます。」

「ああ、分かっている。」

スウは、立ち上がり、Kanonを抱いた。Kanonも最初は戸惑ったが、すぐに受け入れ、じっとしていた。

抱いていた手を離し、少し距離をおきKanonの唇を奪った。

Kanonも受け入れ、目を閉じ、奪われた幸福感に浸っていた…。唇を離し、

「Kanon、もはや、六賢者もお前一人だけになった…。この戦いが終わったら、ふたりでひっそりと暮らそう。」

Kanonは驚いた顔をしたかと思ったら、顔を紅くし、蚊が鳴く様な声で…

「…はい…」

スウは、体をほぐし、Mistたちを出迎える準備を整えた。

Kanonはスウの邪魔になるとでも思ったのか、また奥に引っ込んだ…

「澤祐、お前の大事な者全てを粉々に壊してやる。貴様が俺にしたように…」

拳をポキポキ慣らした。

 Ⅷ darkness crystal

「Red、此処か?」

Whiteが、見上げていった。彼の足はRedによって治療はされていた。

しかしRedによって、技の多用を禁じられた。そしたらもぅ歩けなくなるという警告をして。

その目の先には、農家みたいな家があった。俗にいう、ぼろっちぃ家である。

「なんか、こう、お城みたいなもんを想像したんだが・・・」

「私もそう思っていましたが…、裏切られました。」

しばし、ぼ~っと観ていました。ふと、Mistが、

「いいかげん、はいろ~。」

「そうですね、見ても分からないですし・・・」

Mistは笑顔を作り、

「きっまり~。じゃあいくよ~。」

そう云うと、鎌を振り上げ、下ろした。家はもちろん真っ二つになった。

「なっ!?」

Mistを除く、みんなが唖然とした。Mistは一仕事を終えて、すっきりした、というような顔になっていた。

「White~、ジュース頂戴。」

と、手をさしのべしてきた。

「ああ、ちょっと待ってろ、って、何やってるんだ!?それにコントでもするつもりか!?」

Mistは可愛く、頬に人差し指をあてて、

「コントかぁ~、やろうか?」

と、Mistは乗り気だ。WhiteはそんなMistに呆れてしまった。

「ショ~ト・コント、お化け屋敷~、とか云えるね?」

「いわねぇ~よ。」

と、即Whiteが云うと、Mistが少し驚いた顔をし、

「まだ、ボケてないよ?」

「お前が、ボケようが、ボケまいが、こっちは最初ッから、やる気なんかねぇってんだ!!」

そういうと、Mistは眼を悲しませ、

「そんな、そんなのないよ!!White、私、楽しくコントしようと思ってたのに、思ってたのに…」

そう云いながら、Mistは大粒の涙をこぼしていた。この状態は果たして、誰が悪いのでしょうか?

貴方の真実は!?、という感じである。もちろん満場一致でWhiteが悪いと目線で訴えている。

「ちょ、ちょっと待て。俺が悪いのか?」

「ひっく、えっく。Whiteのばかぁ~。」

しゃくり泣きながら、精一杯の声で云った。Whiteは今の状態をどうするかでいっぱいで、危うく

スウ暗殺の件を忘れかけた。しかし、女性の涙ほど、男達を動揺させるものは早々ない。

「White、見損ないましたよ。」

Redのこの一言で、会心の一撃を喰らってしまった。

「分かったよ。コントをすればいいんだろ!?すれば!!」

Mistの顔がこの一言で、180度変わり、

「本当?White、頑張って笑いをとろうね。」

満面の笑みでそう云った。Whiteは顔を赤らめながら、

「ったく、早く、この件を終わらせようぜ。」

「っと、そうでしたね。家を破壊したんですが、スウの気配はありませんね。」

「ちょっと待って。下に何かあるよ。」

Neoが見つけたのは地下通路に通じる入り口だった。まあ、よくあるパターンである。

「行って見るしかないな。」

ドアを開けると、階段があった。またまたよくあるパターンである。

その階段を下りると、そこにはゲームで見たような王室があった。

「ひゅ~、こんなにひろいんか。」

妙な関西弁が混じってしまった。

「ようこそ、我が牙城へ。」

Mistたちの背後から声が聞こえた。皆が、後ろを振り向くと、

Kanonがいた。

「スウ様がお待ちです。私についてきてください。」

Kanonが先頭をきって、歩き出した。

「Red、信じていいんだろうか?」

Whiteが訊ねた。

「悪心はありません。恐らく、彼女もスウに慕う人の一人でしょう。」

Red達もついていった。すると、途中でKanonが足を止めた。

「皆さん、ここで退いて貰えませんか?スウ様には、私から話しておきます。」

この言葉を聞いた、Whiteは、

「敵を目の前に逃亡なんぞできるか!!」

「私もその案には賛成できませんね。」

Kanonは少し残念そうに、

「そうですか、もう何をいっても無駄のようですね。」

再び、歩き始めたKanon。ついていくRed達。

「つきました。ここです。」

ついた先は、鍾乳洞のような場所であった。その奥には、

「御苦労、Kanon。もう下がっていい。」

スウがイスに座っていた。スウの言葉どおりKanonは下がった。

「とうとう、会えたなスウ。汝を探して艱難辛苦、盲亀の浮木優曇華の花を咲きたる心地がしてるぜ。」

Whiteは、Blackの時に晒した構えを構えた。

「ふむ、修絶の構えか。その構えは、俺たちにとっては基本でしかない。若造目が…」

「その言葉、攻撃を受けた後も云えるかな!?」

スウはその場から動こうとしない。Whiteは脚の怪我をおして、戦いに挑んでいるのだ。

ここでもまだ尾を引いていたが、彼のプライドがそれを阻んだ。

「無駄なことを…」

「喰らえ、innocent✾honor!!」

怪我をしていても、技のキレは衰えていなかった。神速の速さで蹴りを入れた。しかし、スウは全ての軌道を受け流し、

「攻撃とはこういうものですよ。Pure☆Flame。」

Whiteとは比べ物にならない速さで、空気との摩擦によって生じた炎をおりまぜ、腹部にヒットさせた。

そして、スウの殴った方向にぶっ飛んで壁にめり込んだ。

「White~、大丈夫~?」

Mistが情けない声できいた。壁からWhiteが出てきた。

「あ、ああ。なんとかな。」

「ほう、よくぞ受け止められたものだ。」

スウは拍手をした。

「冥土の土産に、私が少し本気で相手になりましょう。」

というと、スウは立ち上がった。軽く屈伸をして、Whiteと同じ構えをした。

「さあ、まとめてかかってきな。」

手でくいくいとした。

「Mist、援護を頼みます。私は、この日本刀の封印を解きます。」

「わかったぁ。」

Mistが下段の構えをした。Whiteと合流し、あわせて攻撃を仕掛けた。

「右、34,5度。左、46,9度。炎、水の防御、発動…」

「スウ、これならどうだ!?」

「え~い。」

鎌を振り、Whiteの蹴りが繰り出された。しかし、スウに当たる手前で、まるで見えない壁があるかのように、

止められてしまった。それと同時に、全身に、黒青い炎と、氷結しかけた水が

それぞれに発生した。

「な、何!?」

「燃えちゃうよぉ」

それぞれ対処したが、Whiteはずぶ濡れで服が重くなり、Mistは服が燃えてしまい、全裸になってしまった。

「あ~あ、宿主様に怒られちゃうよぉ。」

「Mist、とりあえず、何か着ろ。」

「え?……きゃぁぁ!!」

手で身体を隠したが、それはそれでまたいやらしい。襲いたくなる衝動がギンギンきた。

「ほらよ。」

Mistのほうを向かずに、きていたシャツを渡した。

「つめたぁ~い。」

「文句をいうな!!俺だって寒いのに」

「でも、動きやすい。ありがとう、White。」

笑顔で礼を云った。Whiteは照れながら、スウのほうへ向いた。

「よっ、ご両人。」

スウが二人に茶化した。二人とも、少し顔を紅くした。一方Redは

「目覚めよ、破魔煉獄刀。」

刀身を出し、そう呟いた。すると、黒光りの刀が血に染まったかのように紅くなった。

「破魔煉獄刀、私の封印も解いてください。五行・修羅姫」

容姿は目つきが鋭くなっただけで変わらないが、明らかに放っているオーラが違っていた。

「まさか、この姿で戦うことになるとは…」

「修羅姫、聞いたことがあるぞ。貴様が最強の巫女だったのか!!」

「スウ、貴方を無間地獄へ送ります。大人しく死になさい。」

しかしスウはいつもの表情を取り戻した。そして、

「戦闘力、320000か。なるほど素晴らしい、周りの雑魚とはえらい違いだ。」

ス○ウターばりの、戦闘力の数値を言い出した。まるで、フリ○ザみたいだ。

「その計算からすると、貴様らには約20%。つまりMaxの2割で、貴様らをゴミにすることが出来るんだ。」

「ほう、つまらない冗談だな。」

Whiteが構えた。Mistも下段に構えた。スウは冷笑を浮かべ、

「楽しませてもらうよ、この戦いを・・・」

しばしの沈黙、お互いの気の弾けあいが行われているのであろう

(こいつ、ハッタリじゃねぇ!!)

Whiteがそう思った瞬間、一瞬の閃光が起こって、地に伏せた。

「がっ、な、何が…」

スウはWhiteがたっていた場所にいた。みんな、見つけることが出来なかった。

正確には、反応が出来なかった。

「う、そ…」

スウはこちらを向いた。Mistは身を固めて微動だにせず、

しかし、スウはにっこりと微笑み、

「隙だらけですよ。それでは、私に触ることすらできない。」

気付けば、Mistの目の前に移動し、その刹那、景色が弾けた。

顔面に拳を食らった。鎌の柄で直撃は免れたが、余暇の攻撃が、今までと比べ物にならない威力だった。

「いったぁ~」

「雑魚はこれで当分動けまい。修羅姫、まずお前から片付けてやる。」

「私はそう簡単にくたばりませんよ。」

煉獄刀を抜刀術で構え、間合いの威嚇をはじめた。スウは、その間合いのギリギリに立っていた。

「いきますよ!!」

スウは間合いに入り込んできた。修羅姫はスウに向かって、

「いきますよ、浄・聖・臨!!」

刀を抜く勢いの速さで、素早く、スウに切りかかった。

「甘い!!がら空きだぜ!!」

足が地を離れ、修羅姫にとび蹴りを喰らわせようとした。しかし、

「無駄ですよ。」

スウのけりは、何者かが軌道を変えるように避けられた。

「な、何!?」

「今から貴方は私に触れることも出来ませんよ・・・」

スウは、諦めず、修羅姫に向かって攻撃を仕掛け続けた。しかし、その全てが外れてしまった。

「クッ…」

修羅姫は、迎撃をする素振りすらない。まるで何かを待っているような感じだ。

「スウは、気付いていないのか?あれでは…」

Whiteがそう呟いた。

「今だ!!斬!!」

(しまった!!防御が…!)

スウは反応に遅れ、肩に切り傷を作られた。しかし、それ以上の接触は許さず、後退した。

「まさか、この瞬間を待っていたとは…」

「スウ、貴方らしからぬ失敗ですね。これが恐れられたスウとは…、拍子抜けです。」

「ク…フ、フフフフ」

スウは、笑った。

「何がおかしい?」

「お前ほどの素晴らしい力に会うのは久し振りだ。だが、そのおかげで、私の長年眠っていた力が復活してしまったのだ。」

修羅姫は眉をひそめ、

「面白い冗談ですね。」

刀を構えなおした。スウは、まっすぐ、修羅姫を見据え、

「冥土の土産に教えてやろう。俺が何故、その力を使わなかったのか…。

俺は、変身をすると、力の制御が出来なくなる。そしたら無益な殺生もやるかもしれない。俺はそんな殺戮者になりたくはない。以前は澤裕が抑制役に回ってくれたが、もはや、レベルアップした俺を止める者は誰もいない。マックスで行かせて貰うよ。」

スウは、気を高めた。容姿は変わらないものの、気迫が、修羅姫を襲った。

あまりの気迫に修羅姫は一瞬たじろいだ。Mistたちは金縛りにあったかのように、

動けないでいた。修羅姫は周りにオーラを発し、気迫を中和していた。

「ここまでさせたんだ。せいぜい、失望させるなよ。」

「私も、本気で行かせて貰いますよ。」

お互いの気迫が、押し合い続け、一種のカオスが誕生してきた。

しかし、お互いが気迫を消した、そのほんのちょっとした時でした。

「!!」

気がついたときには、修羅姫とスウがぶつかり合っていた。そう、神速を越えた超神速VS超神速という感じである。

「中々の太刀筋だ。だが、それでは今の俺に傷をつけれるかな?」

「その不敵な笑み、いつまで持つんでしょうねぇ…」

二人とも離れ、ある程度距離をとり、見合わせた。

不思議なことに、Mist達は何も出来ずにいた。明らかに次元が違うのを感じているからである。

「あの二人、本当にこの世界の住民?なんて格闘センスなの…」

Neoはそう呟いた。Mistは、ただ、二人の闘いに惹かれていった。Whiteは、憤りを感じていた。MistとWhiteは本来好戦的なタイプなのである。しかし、その中での性格が不一致である。Mistはたえず、実戦で繰り返し、技を極め、傍聴の時は技をコピーする臨機応変型、Whiteは自分の中での正義に応じて行動し、自分のやりたいことがやれないと、すぐ怒る、自閉症型(?)となるのである。だから何回か摩擦があったが、そのおかげでお互いの倫理を確かめあえ、タッグらしいタッグが組めたのである。野球で云うならバッテリーみたいなものである。お互いを磨きあって、更に精進するのが彼らのやり方であったが、今、目の前にはどうあがいても、勝てない相手がいる。そして、その技術を盗めるかもしれない。Mistにとっては、ありがたいことだ。まるで鴨が葱を背負っているようなものだ。映画館に行って、偶然店前に無料チケットが落ちているようなものだ。まだ分からない奴、諦めるか辞書で調べろ。Whiteは自分ではどうにもならないことが唯々、悔やんでいる。戦わずして、分かる相手の圧倒的な実力は、見ていることしか出来ない、格闘家にとっては目の前にいる、強大な相手に振り向きもされないとは悲しく、そして、怒れることである。Mistはスウの放つ気迫を何とか押し返し、立ち上がった。WhiteもNeoも続いて立ち上がった。しかし、立った瞬間からだのいたる方向から気迫の針が襲ってきた。Mist達はそれらを、はねのけた。さすがは、好戦主義といったところであろう強い者を見るたびに力が増幅するのは、そのせいかもしれない。命がけのスリルを楽しみたいのはハンターや格闘家の習性である。「皆、大丈夫~?」

Mistの相変わらずの情けない声が訊ねた。張っていた気が抜けるような声だ。スウと修羅姫は、お互い、精神との闘いに直面していた。お互いが一歩も譲らぬ、攻防戦。精神が肉体を凌駕したとき、痛みを感じない、ただのゾンビになるのである。修羅姫はもはや余裕を見せる笑みを失っていた。スウの押し出す気迫が恐ろしく強力なのである。距離が近ければ近いほど、スウの押し出す気迫に潰されそうである。対してスウももはや感情というプログラムを完全に切っていた。ただ目の前にいるのは、完全に任務を遂行するためならどんな手も(いと)わない、マシーンと化していた。

(先手必勝!!)

先に仕掛けてきたのはスウだった。気迫を身体から流動させたまま、修羅姫に向かっていった。修羅姫も迎撃をしようとするが、スウの気迫で思うように体が動けなかった。何とか、防御の構えに出来たが、スウの攻撃を貰った瞬間、完全に防御してたはずの身体に衝撃が走った。まるで内部破壊でもされたかのようだ。スウは、修羅姫の怯んだ隙をついて更に攻撃を加えた。今度はもろにあたってしまい、スウの攻撃した方向に吹っ飛んでいった。修羅姫は、壁にぶつかり、めり込んだ。Mist達はただ見ているだけだった。三人とも、スウを見ているだけだった。修羅姫はすぐに壁から顔を出し、地面に足をつけ、服の汚れを取り払った。

「驚きましたよ。この私に埃をつけるとは…」

「なら、今度は死ぬか?」

スウは、修羅姫に向かってきた。修羅姫は対処すべく、オーラを一気に放出して、スウの気迫を完全に打ち消していた。今度は、スウの攻撃を受け流すことに成功した。しかし、空を切ってかわすので、切り裂いた後のようなものが出来てしまった。

「そんなに近くては、身を滅ぼしますよ。」

「その前にお前を滅ぼせばいいだけのこと…」

修羅姫は、スウの拳を受け流し続け、一気に、総攻撃をボディーに向かわせた。“ザシュッ!!”といい音はしたものの深いダメージは与えられていない。筋肉が内臓までの侵入を塞いでいるからだ。スウは、この一瞬を見逃さず、一気に蹴りを横腹に当てた。すると、さすがの修羅姫も小さな声をあげ、空を浮いた。

「今だ!!」

修羅姫は落ちる反動を利用し、一気に空中斬り!!って感じでスウに切りかかった。スウは落ち着き払って、修羅姫を見上げ、

「無駄だ!!Holy♀Future!!」

修羅姫の刀が、スウに接触するその時、スウは一瞬で修羅姫の後ろをつき、一気に地面に向かって、蹴った。

「どうかな?修羅姫…」

修羅姫に乗っかったまま、下にいる者に訊ねた。

「さすがにちょっと痛かったですよ。スウ!!」

すぐさま、スウを落とし、一気にスウへ斬りかかった。刀の切っ先に、焔を宿しているが、空気との摩擦で生じたのであろう。そして、スウは、うまく、受身を取って、体勢を立て直そうと後退したが、修羅姫の刀が、スウの喉下を切り裂こうとした。スウはそれを間一髪で避け、無事に体勢を立て直された。修羅姫は、抜刀術の構えをし、空気を読んだ。修羅姫の世界ができあがった。スウは、多少驚いたが、特に気にすることもなく、修羅姫を見据えた。しばしの沈黙…、だが、修羅姫からかかってきた。スウは、あまりにも意外な行動に驚き、防御に遅れた。

「今度こそ、Bloody Angel。」

隙をついた一打にあわせ、そこからできる隙を更に攻撃をし、そのまた更にできた隙を攻撃をし始めた。寸分の狂いもなく、このチャンスを修羅姫の奴が逃すはずがない。さらにまた、人体急所を徹底的に攻撃した。スウは何も抵抗せず、ただ受けていた。段々、スウが着ていた服もぼろぼろになっていき、終いには、スウの肉体が曝け出された。その身体は、完璧なボディーバランスがスウのポテンシャルをすさまじく語っていた。修羅姫の攻撃はまだ続く。

「修羅姫はおそらくこれで決着をつけるつもりだろう…体力の限界を超えてもいいダメージのはずだ。」

Whiteは、冷静に状況を分析した。

「そうですね。それに少しずつですが、スウの気が減っていってます。」

Neoもスウの気を感じ取った。だがこれで、スウが倒れるとも限らない。まだ、なにかがスウは隠し持っているとNeoは何処かで感じていた。修羅姫が最後に、腹部に刀を突き刺した。それ相応の出血があった。刀をスウから放すと、紐の切れた人形のように倒れた。スウの周りの地面が血に染まった。

「やった、のか?」

Whiteが、半疑問系で云った。

「いえ、まだスウには潜在能力の力を出し切っていません。おそらく…」

Neoは言葉を濁した。ただ、それは自分の意志ではない。スウの新たに発生させたオーラが全ての脳から筋肉への伝達信号を妨げた。要は、金縛りが起こったのである。スウは、立ち上がった。今までの眼とは違い、獣の獲物を見据える鋭く、冷たい眼であった。もはや、スウの顔からは余裕を感じ取られなかった。

「お遊びは終わりだ…」

もう、倒れてもいいほどの出血とダメージである。それなのに、倒れないのは、譲れないものがあるからであろう。そこは、人間としての、典型的な底力の出現条件である。スウは還るべき場所と待っている人がいる。スウの特殊能力、治癒能力で、基本的な能力は戻った。今度でスウの真価が問われる時だ。

「行くぞ!!修羅姫!!」

瞬発力と跳躍力のミックスで速くそして高く飛んだ。地下室じゃなかったけ?という突っ込みは御了承ください。忘れている方はそのまま忘れてください。作者を思って忘れてください。ってなわけで、続き…

「今こそ眠る偉大なる我が力、我が問いに答え、千の時を越え、三千世界を超え、人の諸悪の根源を蓄積させたアビリティーパワーを、今、この力を契りと共に憑依せん!!」(古語的)

スウの周りに淡い光が包み込んだ。すると、スウの服が喪服からタキシードに変わった。淡い光がスウの中へ入り込んでいった。スウは完全に淡い光を吸収した後、ゆっくりと地に足をつかせた。黄昏ていた。そして、修羅姫のほうへ向くと、

「さあ、始めようか!!」

鋭い視線と闘気を修羅姫にぶつけた。修羅姫は闘気だけで、後ろに引き下がった。闘気の空気が鎌鼬を作り出し、修羅姫の身体を傷つけていた。

「ただ服が変わっただけなのに、どうして修羅姫は逃げてるの?」

Mistが疑問を持ったので訊ねた。

「気を探ってみろ。今までのが、可愛かったぐらいだぜ。」

「あ、ほんとだ…」

Mistは素直に且つすっとぼけた感じで驚いた。修羅姫はスウの闘気に負けまいと気を練って身体にまとわりつかせた。しかし、その念を貫き通して、さらに攻撃は続いた。修羅姫は、スウとの決戦を早く終わらせるために、一気に飛び掛った。

「スウ、覚悟!!」

スウに向かって、斬りかかった。スウは避けなかった。ニコニコしながら、身構えもしなかった。スウの足首の周りから、風が出てきた。しかし、あまりにも小さく一瞬なので、修羅姫は気付かなかった。スウは、修羅姫を見据え、

「crazy beast of pray…」

スウの足首から発生した風が全身に広がり、スウの衣のようになった。修羅姫の刀が風の衣に触れたとき、修羅姫の身体にまとわりついた。

「な、何なの!?」

「もはやお前になす術はない!!」

そう云うと、風で動けなくなった、修羅姫を殴りつけた。無論、もろに顔面が赤くなった。それだけでスウの攻撃が止む事もなくまるで、それが洗礼のようにサンドバッグみたいに殴られ続けた。

「これで、最期だ!!躯・裂・獄・王!!」

手を修羅姫の心臓部分に突いた。修羅姫は抵抗することもなく、素直に、スウの手が突き刺さった。そして、修羅姫の身体を貫き通した。動くのに邪魔だった風の衣は剥がれ、ただ支えてるのはスウの手だけである。スウは、修羅姫から手を離し、まるでゴミのようにそこら辺に投げ捨てた。

「後は、雑魚だけか…手早くたたんでやる。」

Whiteは、ただ見ていることしか出来なかった。だから、その償いをしようと、

「スウ、今度は俺が相手だ!!」

スウは、Whiteを見て、ほくそえんだ。

「ほう、恐竜にミジンコ一匹で勝てると思っているのか?」

「さあ、俺にもわからねぇよ。だがな、ミジンコにはミジンコのやり方ってのがあるんだよ!!」

「いいだろう…、三分でカタをつけてやる!!」

スウは、すぐに闘気を出現させ、修羅姫のときと同じように、鎌鼬をだし、一気にWhiteを威嚇した。Whiteは、全ての鎌鼬をギリギリで避けた。四方八方と一口で云ってもWhiteにとってはそんなのは空間の一つでしかない。Whiteは、四方八方三方(・・)まで、反応し、全ての座標から情報で突破口を見開いている。Whiteは、ある意味、スウより格闘センスが高いかもしれない。

「スウ、覚悟!!極・軸・仙・聖」

彼の精神はもはや肉体を凌駕していた。

脚の怪我をおして、技を繰り出していた。Redの警告を無視し、今、この戦いに全集中をしていた。

連打のパンチとキックを繰り出した。スウは、見透かしたかのように、全てをテンポよく避けた。

(クソッ!!!まるで雲と戦っているようだ。)

Whiteは、スウに殴りつけたその全て攻撃からの僅かな風の刃をかすらせた。スウも、拳や脚を避けることは出来ても、そこから自然発生する刃までは、完全にかわせないでいた。その結果、少しずつの出血が、段々、疲労という名の蛇がまとわり付き始めた。

常人ではそういう風な展開になっていく。スウは、一応、人間型ロボットだ。と、云う訳で、疲労というものが存在しない。彼のエネルギー補給方法は、光合成だけだが、エネルギータンクの深さは、従来のロボットの何億倍もある。三十分の光合成で、一年は光にあたる必要はないのである。さて、Whiteはというと普通を超えた人間である。人間なので、限界がじわじわと来る。

「無駄だ!!そんな攻撃では俺の服に触れることすら出来んぞ!!極軸仙聖は、本来全ての格闘技の頂点を極めた者しか使えん。お前のような自意識過剰の奴には使えん。我々が創り出した流派をそう安々と、マスターできるか!」

「そうかもしれんな…だが俺は、主野郎の教えてくれた道の先の示すものを見るために今、俺は進んでいるんだ!!例え、スウであろうと俺の正義を曲げることは許さねぇ!!」

「その精神、褒めてはやるが、それだけでは、勝つことはおろか、伝説にはなれんぞ。」

スウは、構えを解き、獣のように、四つん這いになった。

「White、すぐにあの世に送ってやる…」

Whiteに、飛びついた。Whiteは戸惑い、スウにくっつかれた。そして、Whiteの首に噛み付いた。スウの犬歯が鋭くなっており、Whiteの皮膚から、肉まですんなり、入っていった。そして、一気に肉を喰らった。

「ぐうっ!!」

Whiteは、スウの顔を殴りつけ、何とかはなれた。

「まずいな、人間の肉は…」

スウは肉片をはき捨てた。Whiteとは食い取られた箇所を抑え、スウを睨みつけた。

「そのまま、朽ち果てろ!!」

「嫌だね、スウ、俺を殺してから、NeoとMistの相手をしな。」

Whiteは、傷をおさえながら、脚蹴りの準備をするために構えた。スウは、微笑を浮かべながら、

「よかろう、そんなに死に急ぐのなら、地獄への片道切符をプレゼントしてやる!!」

(もう、俺は体がもたん…Mist、約束、果たせなくて、ゴメンな…)

スウは一気にWhiteに飛び掛った。拳を食いちぎった箇所を狙って打った。Whiteは、予見できる範囲だったので、避けることが出来た。スウの一瞬の隙に、生命エネルギーを使い切るまでの大きなオーラを脚に集中させた。そして、修羅姫がつけた一番出血量が多い場所に照準を合わせた。

「これが、俺の最大最強の技だ!(びょう)(れん)(たん)()。」

スウは、対処しようと防御をとった。しかし、完全にはよけられず、腕でかばって対処したが、Whiteの蹴りは、その腕もろとも、わき腹に入り込み、一気にそこが、破壊された。スウは、Whiteの二打撃目を完全に避け切るために、もう一度来る蹴りを、見極め逃げた。Whiteの蹴りは空を切った。もはやWhiteはその蹴りに対応する力も残っていない。その蹴りが終わったと同時にWhiteはゆっくりと倒れた。スウは、破壊された部分を、治癒能力で治した。しかし、スウも限界に近かった。治癒は最低限はしたものの、完全に回復することはなかった。

「Mist、後は、頼んだぞ…」

Whiteはそう云い残して、息絶えた。スウは、二人を見据え、

「残念だが、もう貴様らと時間を共にする余裕がなくなった。もう、潰す…」

Mistは俯いていた。そして、小さな声で泣いていた。Neoはそれを察し、

「Mist、心の整理をつけておいて。私は、それまでに時間を稼ぐわ。悪魔と闇の契約を思い出して…」

Neoは羽を広げ、行動範囲を広げた。日本刀を抜き鎌と融合させた。前後からの刃の黒光りが目立つ、Neoのオリジナルの刀が創り出された。Neoは、薙刀を持つように構え、顔だけをMistに向け、

「Mist、私がやられた時、何もせず、やられるだけだったら、魂を消滅させるからね…」

「………」

顔をスウに向けた。

「では、お手柔らかにお願いします…」

「手ほどきをする真似はせんぞ。」

スウは、日本刀を取り出した。そして、居合の構えをし、

「冥土の土産だ。俺直々の剣術で粉々にしてやる…」

「分かりました。私の技を見てやってください。見切れればの話ですが…」

スウは、静寂を保った。Neoも気迫のテリトリーを拡げた。幾分スウよりかは劣るが、完全に踏み込んだら死は免れないだろう…恐らく、Neoは、今までの戦いの中で培ってきた知識の集大成をここで披露し、Mistの為にもするのであろう。スウもまた、精神統一をし、自らの気を一打撃に賭け様としている。

(Mist、これが、代々伝わるHunting家の運命か…私たちが光を見ることは許されないのか…答えは私たちが示すんだ!!)

Neoは固めていた、テリトリーを広範囲に一気に拡げた。スウもそれを察知し、迎撃の準備をした。

しかし、スウの刀を抜く寸前でNeoの攻撃がスウを傷つけた。スウは何も知らされることもなく、地に伏せた。スウは、すぐに起き上がり、Neoへ向けて、斬った。それでもNeoはスウが動くと同時に素早く後ろをついた。

「もう、貴方の攻撃は受けたくありません。ここで貴方と朽ち果てます。」

Neoは、ここで溜めていた魔力を一気に刀に注入した。すると刀が、まるで何人もの血を大量に吸ってきたかのように、赤く染まった。更にNeoは自分の腕を傷つけ、更に紅き血を染み込ませた。結果、その血と共鳴し、更に赤く染まった。

「これが、最期。殲滅破壊技・死の悦び!!」

Neoは、スウのWhiteがつけた傷に向けて、刀を棒を振り回すのように、回転させ、斬撃も何発もつけた。スウも、もはや対抗する力も残っておらず、そのまま身を任せた。Neoも自ら傷めた傷を庇いながら、スウを傷つけている。Mistはただ見ているだけだった。

「スウ、覚悟!!」

最後に、力いっぱい振った刀は、スウの右腕を切り離した。Neoは刀を振り終わると同時に刀を落とし、身体を何とか保たせた。ただでさえ、スウの気迫に押しつぶされそうだったのに、真正面から突っ込んでダメージを与えただけでも表彰もんだった。Neoは、立ち上がったが、肩で息をしていた。スウは、切り離された腕のなれの果てを見た。残った腕だけで日本刀を握り締め、

「片腕で、最大、奥義、智・戒・神・帝を出してやる…」

スウは、溜めておいた気を刀と一体化させたように刀にもオーラが移った。NeoはMistのほうを向いて、

「Mist!!まだ手続きが出来ないの!?」

Mistは、俯いていた顔をあげ、にこやかな笑顔で、

「OK~、今、始めるよ~。」

Mistは、本を取り出し、片手で、印を結んだ。

「我、今闇の盟約の名の元に、悪魔と悪魔の契りを今、ここで許されたし。今こそ、堕天使・ルシフェルの力をここに集わせたまえ…」

MistとNeoの体が、上から降って来た淡い光に包まれた。すると、Neoの傷や疲労がみるみる治っていった。淡い光が消えたと同時に、MistとNeoは背中合せに構えた。その後ろには黒い翼を身につけた、人間がいた。否、人間の容姿なのだろう。MistとNeoに手を差し伸べ、触れた瞬間、すぐに消えた。

「悪魔のご加護によって、私たちは、新たなる覚醒へと導かれた。スウ、私たちが、人間如きに涙するとでも思ったか!!?」

「スウ、私は、貴方を許さない…。絶対にみんなの分まで戦ってみせる!!」

スウは、もうぼろぼろもいいところの傷だ。

「ふっ、ならば、その力で私の最大奥義を破ってみるがいい!!智・戒・神・帝」

スウの体から、オーラが拡がっていった。すると、その近くにいた生物全てが、炎に包まれ焼死した。やがて、Mist達の所まで範囲が及びかけた瞬間、

「Neo~、防御壁作るからちょっと待ってて…」

「早くね…」

Mistの鎌を空に掲げた。すると、Mistの前に何かの紋章が出てきた。それは古代文字で記されていて何と書いてあるのか分からない。しかし、Mistの言葉に反応して、その紋章は段々大きくなっていった。そして、大きな光の壁となった。

「おっけ~、これで大丈夫だよ。」

Neoはさっき創り出した、薙刀のような刀を鞘に戻してただ柄だけを握って、

「今度は、私が貴方を殺す番ですね…悪魔のしつこさを思い知らせてあげます…」

再び、刀を抜いた。すると、今度は刀の形が変形して、鎌の形になった。しかし、従来の鎌の形と違うのは、先端に、槍が埋め込まれていることだ。つまり、前方に敵がいた場合、行動範囲が広がり、敵はきょどるというわけだ。急所をつけば、確実な死が待っている…しかし、外せば苦痛を与えてしまい嫌な死に方になる。どうでもいいですが…余談でした。

スウのオーラがMistたちにも及んだ。しかし、Mistの創り出した光の壁によって、そのオーラが侵入しなかった。

「バ、バカな…我が奥義は完全無欠の奥義。回避できる防御などあるはずがない!!」

MistとNeoはお互い顔を合せて、笑い出した。

「暗黒の天使の能力が貴方のような下賎な者に通用するはずがないでしょう…」

「もう、俺も年貢の納め時だというのか!?俺は認めん!!認めないぞ!!」

スウが気を取り乱したせいか、拡散していたオーラが突然消え失せた。Neoは当然、この隙を逃す訳でもなく、

「スウ、もう片腕を貰いますよ!!無限流奥義・一突きショット!!」

Neoの鎌の先端の槍を、スウの残った腕を突いた。そして貫通した。

「ぐうっ…」

そして、それを斬るようにして、振り落とした。スウのオーラによって守られていたはずが、もはや、その防御も成立していなかった。スウはただのロボットに等しかった。スウの腕は素直に斬りおとされた。

「それでは、もう奥義は使えませんね…スウ、私達は人間のように優しくありません。死ぬべき者は、死んでもらいます。もちろん、魂をも破壊し、二度と再生しないように粉々にします。」

スウは、観念したのか、

「そうか…私の負けか…」

荒っぽい口調が消えどこか優しい口調に変わった。その口調は今までのスウからは決してありえない口調だった。顔も苦痛に歪んでいた顔から穏やかな顔に変わった。とても、殺戮者のような顔には見えなかった。むしろ、平和を愛している顔にも見えた。

だが、Mistたちは気を緩めなかった。

「そうです。スウ、貴方には死んでもらいます…」

そう云い放ち、スウに向けて斬りかかろうとした瞬間、

「待ってください!!」

誰かの声が聞こえた。その方向を見ると、Kanonが立っていた。Kanonはスウの元へ駆け寄ってきて、

「スウ様、話と違うじゃないですか!?説明してください。」

スウは、Kanonへ向けて、笑顔で、

「私の天命がここまでだった、ということだ…下がっていろ」

「そんな…」

Kanonはスウに半ばおされて、スウの後ろに下がった。

「では、覚悟してください…」

Neoはスウへ改めて、斬りかかった。

““ザシュッッッ!!”“

スウの首が、弧を描きそして地面に横たわった。その返り血がNeoにもMistにも、そしてKanonにも飛び散った。その噴き出した鮮血は、噴水の様に高く上がった。やがて、Kanonは泣き崩れた。NeoとMistは振り向きもせず、修羅姫とWhiteの遺体を埋めようとした。

が、しかし

その遺体が何処にもなかった。スウの気迫に寄って飛ばされたか、少なくともスウと戦った部屋には遺体がなかった。何処にも穴は空いていなかった。Mistたちは何がどうなってるのかわからなかった。そして突然、閉まっていた筈の扉が開いた。その先には、

「あれ?もう終わったのか?予定では丁度なのに…」

祐尭がいた。MistとNeoは唖然とした。あまりにも意外すぎる人物にそうすることしか出来なかった。呆けた二人を見て、

「どうした?欠伸なんかして…みっともない。」

Mistは今までの緊張が取れて、へたり込んだ。Neoは刀を締まって、傷付いた身体を何とか支えて祐尭に近づいていった。

「祐尭さん、何故、ここに?」

Neoの質問を軽く聞き流して、首から上のないスウの死体へ向かった。Kanonの横に座って、

「全く、これが史上最強と謳われたスウかよ・・・見る影もねぇな。」

そう云うと、スウの胸に手を当てた。そして、目をつぶり、

「今、時を操る時空の精霊よ、貴殿に願いを申し上げる。今ここに時を終えた生ける者のときを再び、活動させたまえ。ただし、我らのように、スウもカスタムの力を残し、人間として生きるようにしてくれ。」

すると、光の中から女神が出てきた。Kanonの持っていたスウの首が身体に合わさっていき、傷も完全に塞がっていた。

全ての治療が完了した後、スウが息を吹き返した。Mistたちは何が起こったかわからず、

「宿主様?今、何をしたの?」

「え?スウの治療。」

平然といってのけた。当然、Mistたちは慌てて、

「な、何をするの~?せっかく、倒したのに~。」

「あ~、そうか…お前らで最後か。」

何かを云いたそう表情になった。

「教えてやるよ。今回のことは全部、俺が作ったお前らのおしおきなんだよ。」

「………………………はい?」

「だから、おしおき。」

「でも、宿主様!!皆、皆死んじゃったんですよ!!おしおきでも拷問に等しいです…」

Mistが泣き顔になった瞬間、

「誰が死んだって?」

すごく聞きなれた声が聞こえた。Mistは聞き間違うはずがなかった。声が聞こえた場所を振り向くとそこにはWhite他数名が立っていた。Mistは今まで我慢していた涙が一気に溢れ出した。そして、その後、Whiteに抱きついた。

「祐尭さん、これは一体…」

Neoが訊ねた。祐尭は少し、含み笑いをし、

「俺を誰だと思っている?」

「祐尭さんです。」

「う…まあそのプロセスを説明するとだな…」

つまりはこういうわけである。

この事件がおこるきっかけはいつもと変わらぬ祐尭のストレス解消である。しかし、いつも同じぐらいのやり方ではMist以外がへばるだけである。だから、今回はMistを重点的に苛め抜こうと考えたのである。しかし、ちょっとやそっとではくたばらないのが悪魔の特長、ならば、精神的にやるしかないと思い立った。次に考える点は、精神を支配する像を作り上げること。この点を考えるのが非常に難しかった。Mistの心を支配する者が存在するのかどうかわからないので手の施しようがなかったからである。さて、どうしたものかと考えた結果、仲間全員を死なせることを決意したのである。そうすれば、いくら悪魔といえども心が揺らぐだろうと思った。しかし、皆は演技が下手である。それでは元も子もない。だから、皆には言わず、リアルの演技をしてもらった。とまあ、そんなことを思いながら家路に着くと、案の定のありさまを見て、実行に移したのだった。

「はい、めでたしめでたし。」

「はい、ってちがいます。では、何故、スウを…」

「ああ、当たり前だろ。ダチだからな」

Neoは意外な答えが返ってきたので驚いた。そんな時、スウが目をあけた。祐尭はそれに気付き、

「おう、スウ気がついたか?しっかし、お前がやられるとは計算に入れてなかったぞ。」

スウに向かって明るい声を出した。スウは、上半身を起こし、

「こんなに強いとは思ってもみなくってな、久々に本気で戦ってしまったよ。まあ、幸季が持って行ったあの写真の撮影が一番抵抗いったけどな。」

「はは、あれか。俺も見たときはウケたぞ。とうとうお前もデビューか、って思った。」

「殺すぞ。全く、貴様らのメンバーを死なせて二度と復活させないようとしたのに…」

祐尭はスウを見下げ、

「そんなことをしても無駄なのは先刻承知だろう…。俺が時の精霊を従わせてるのは知ってるくせに。」

「まあな、そう云うなら俺にだって根源の精霊を従わせてるのは知ってるだろう。命の根源まで破壊したら直せまい。」

「ちっ、相変わらず抜け目のない奴だな。まあ、一応これで俺たちの計画通りにことは運んだ。だろ?」

スウは少し頷き、

「ああ、問題はない。もう、話してもいい頃合だし、私の部下達も戻ってくる。」

「主様、どういうことですか?」

耐えかねて、Redが訊ねた。祐尭とスウはRedの方へ向いて、

「実はな、おしおきもかねてスウみたいに討伐隊を作ることに決めたんだ。もちろん、相手は日本の政府だ。政府は我々がいなくなったことで新たなサイボーグを創り出している。おそらく我々より数段上のな…」

「だから、我々をサポートする討伐隊を結成しようと三人で考えた、のだが、こいつが未だに作ってねぇって云うもんだから俺たちが一肌脱いで、協力してやったというわけ。まあ、演技をするのには苦労したがな…」

続けて祐尭が、

「で、Neoの立ち入りが予想外だったこと以外は殆ど予想通りにみんな動いてくれたよ。とりあえず、討伐隊には既に三人は決まっている。」

「誰ですか?それは…」

「紹介しよう。純、契、聖だ。」

祐尭が名前をいうと、祐尭の背後に三つの人影が出てきた。一人は、眼鏡をかけた男、眼には輝きが一筋もなかった。手には武器なのか、かぎてこうが両手に備わっていた。もう一人は女の子で神々しいくらいに可愛い笑顔をMist達に送った。髪の毛は肩まであり、無意味にもそこにリボンをつけている。おそらく、精神年齢はMistとあまり変わらないだろう。手には武器は何ももっていないように、見えた。

「あ~、ちなみに契は一度踏み入れた土地に隙間なく、ピアノ線を張り巡らすから気をつけて歩かないと、切り刻まれたような形でバラバラになるぞ。」

そう云うと、一瞬でMistたちの周りに光の線が所々浮き出てきた。うかつに触ると切れそうなぐらい細い。

そして、最後の一人は同じく女の子で額に何か刺青みたいなものがある。髪はショートで、内はねである。物静かな感じで、感情を出すことが苦手な感じだ。手には、小太刀が二刀ある。構えは独特で、一つは、ちゃんと持っているが、もう一つは逆に持っている。まあ、分からない奴はSVCの○を思い出せ。

「さ、一人ずつ自己紹介しな…」

祐尭がそう促すと、

「純…」

男がそう云った。

「聖です。宜しく❤」

ピアノ線を持っている女の子がそう云って、お辞儀をした。

「契、と呼んでください。」

最後の女の子がそう云った。祐尭が付け加えて、

「こいつらは、俺たちに引けを取らないくらい強い実力だ。こいつらと同等の能力がないと何の意味もない。」

「で、主様が選んだ討伐隊のメンバーは…」

「ああ、MistとNeoだ。」

祐尭がそう云った瞬間、

「やったぁ~、じゃあこれまで以上の魂がもらえるんだぁ。」

「ありがとうございます。」

しかし、納得いかない者もいた。

「おい、宿主野郎、どういう偏見で選んだんだ…」

Whiteが怒り交じりの声をぶつけた。その他も同じような感情に包まれていた。祐尭は声を低くし、

「この二人とお前らの決定的な違いを教えてやろう。それは「才能」だ。」

「才能?」

祐尭は更に続けた。口を開こうとしたと同時に、スウ達の討伐隊・つまりSaltたちが帰って来た。そのことは気にせず、話は進んだ。

「そうだ。お前達はいくら頑張っても、努力だけでは無理だ。努力の先の道には何が必要か、それは生まれつき持った戦いの才能なのだ。極限の限界といっても才能によって差が生じる。MistとNeoは俺から見ても潜在能力がとてつもなく奥が深いと思う。Redが修羅姫に転身したのは、おそらくそこまでだろう。」

Redは唇をかんだ。あまりにも的を射た意見だからである。確かに、Red自身修羅姫に転身すると、自分の能力が高まったのは分かるが、更に高まることがなかった。自分の力がここまでか、と思いしらされた。さらに祐尭のこの言葉で、自分に対する不満は高まっていった。

「さて、Red達には重要な任務を受けてもらう。情報収集を任せる。もちろん証拠を残さずな。」

「御意…」

Red達は全員出て行った。討伐隊を残して、祐尭とスウは話を続けた。

「うるさい奴らは消えたし、話を続けよう。」

スウが、

「まあ、今回の重要な題は『幸季の処理』だな。」

「だな。あいつが最近音沙汰なしだな、と思ったら討伐隊の編成がまだ終わってない上に、一人に裏切られてしまった。よほどショックだったろうに…」

「そんなに嘆いている暇はない。どう処理するか。」

「あいつは、人に流されるのを極端に嫌っていたからな。早く、編成を終わって欲しいが…」

「何にせよ、あいつが立ち直ってもらわないと、こちらも動けん。精霊の力を一つにする時が、最大のボス「ブリザード・チェイサー」を封印する時だ。それまでの伏線という意味で、政府に揺さぶりをかけ、内部破壊を目指すぞ。」

「ああ、そのつもりだ」

 Ⅸ Secret government


また、国会議事堂の地下の基地。そこには、天使がいた。その隣には、冒頭で語った獣が寝ていた。天使のその手には大太刀が光っていた。否、天使では語弊があるかもしれない。鳥の羽をつけた人間のようなもの、といっておこう。

「さて、そろそろ出来損ないたちが動き始める頃だ。いでよ、黒衣の天使たち。」

そう、獣が呟くと、四つの影が出来た。その人たち全てには鳥の羽がついていた。

「幻惑のレイ、参上。」

一人の顔の整った格好いい男が云った。背丈は、祐尭と同じくらい。ヘアースタイルは若者向けのスタイルだ。服は、ウェイターの服を着ていた。歳は、全員10代後半っていう感じだ。次に、

「憎悪のサン、ここに…」

今度は、髪が地までつきそうな長さだ。身長は女にしては、ちょっと大きいぐらいだ。スタイルも抜群で、ボン、キュッ、バン!!という言葉で納得がいく。声は透き通っていて、服はスリットのきわどい、服を着ていた。そこから出てくる脚は生唾ものである。「怨恨のレナ…」

更に女の子が出てきた。四人の中では一番年が幼いと思われる。しかし、眼光からは幼いという雰囲気を醸し出していない。むしろ、人を殺すのを当たり前のような眼をしていた。服は、ワンピースを着ていた。手には、小刀を持ち合わせていた。

「欲望のカイ。」

今度は、男が出てきた。今度は、髪がレイと違うが決まっている。服は黒い服で包まれていた。全てが揃うと、

「ここに揃いました。御用でしょうか?ヴァルキリー様。」

四人は、ヴァルキリーの前に膝をついた。

「そろそろ、厄介な先輩方が動き出す。そいつらを殲滅せよ。それが今回の命令だ。」

「御心のままに…」

そう云うと、また影と同化し消えた。

「さて、この戦争、どちらが生き残るかな…楽しみだ。」


   to be continued



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