英気補う図書館話
菫「まあ、考えてみりゃ自分の弟妹の年齢だしね」
南「ん?今週……」
柚「なんだ、なんだ。その顔は」
南「バイトやん」
全員沈黙。
その後に合わせたかのようにため息の合唱が始まった。
美「…予想できたオチだよね、うん」
陽「じゃあその子とはどうすんのさ」
南「とりあえず「予定がありました、ごめんなさい」って打っておく」
ぽちぽちと文字を打って五分後には返事が来た。
もし大丈夫なら今日でもどうですか?
あそこは夜、ディナーありましたよね
カランコロンにディナーがあることを知ってるなんて相当な常連か?
南「やばい、逃げ道ないぞ」
陽「逃げ道を考えてる時点でアウトだよね」
菫「いいじゃーん!行ってしまえよー!」
美「そうそう!別に南子ちゃんが恋心持って誘ってるわけじゃないし!向こうにあるかもしれないから傷つくのは向こうじゃん!!」
南「あ…そう考えたら心が軽くなった」
柚「さすが。裏がすでに表」
陽「いや、傷つくも何も向こうに恋心なんてあるか?」
菫「とりあえずは、どこでカウンセラーの資格を持ったか聞くべきじゃない?」
柚「ことの発端はそれだしね」
南「今日行ってくる」
その一言でバラバラにしゃべっていたみんなが私の顔を見た。
今まで見たことない顔をしてるのかもしれない。
みんなのこんな顔を見たことない。
柚「あ、明日は大雪かもしれない」
南「開口直後にその言葉か!嫌なことはさっさと終わらせたいんだ!!」
陽「いや槍だよ、槍降ってくる」
菫「…私より酷い扱いを受けてるね」
南「うん、なんだか悲しきね」
とりあえず「大丈夫です」って打っておこう。
柚「でも、南子の私服からじゃカウンセラーだってわからないよね」
陽「どっちかっていうと菫子さんの方がぽいよね。大人っぽいというか落ち着いてる」
南「今日…扱いひどいね」
正直なんともいえない。
いつもダボダボなジーンズやワイドパンツ、ガウチョにジョガー。
上も大きめなスエットやダボダボセーター。
どう見てもカウンセラーには見えない。
南「別にいいもん…。隠してるんだし…」
陽「まあ個性というかアレなんだし」
美「あ、返信きた?」
南「よく気がつくね…。私はわからんかったよ」
なら今日の6時半に駅で待ち合わせましょう。
6時半…今は5時半だから6時に出れば間に合うかな。
菫「なんだって?」
南「6時半に待ち合わせましょうって。待ち合わせって懐かしい響きだな、と思いまして」
陽「あー確かに。私たちで遊び行く時は時間決めて「じゃあ何時集合で」だしね」
美「暗黙の了解で駅ってわかってるしね」
南「それね、他の人とご飯行くこと自体がひさしぶりかも」
柚「…まだ顔も知らないのにギリギリに行くの?」
南「………」
美「言われてみれば。少し早めに行ったら?」
南「うーん。でもなー。できることならもう少しここで話してたいし」
美「分かるなー。バイト前とか出来るだけここで話して英気?補いたいし」
柚「ここで補われる英気って何よ」
まあ、嫌なことから逃げるのが人間の本能だからね。
そうなってしまうのは仕方のないことだ。
だから美紅がそういう理由は私にはよくわかる。
菫「こうやってグダグダできてるってことはもう落ち着けるってことだよね」
南「まだ会ってから1年半くらいなのに。今までならそのくらいの期間じゃここまでならない」
柚「あー確かに。1年半ってよく考えたら部活の子くらいだよね」
陽「1年でクラス替えしちゃうからね。1年半も関わり持つってそういうことになるのか。……歳をとるのは早いね」
菫「それ結構、心にグサってくるね…」
南「…もう行かなきゃ。明日また報告するわ」
柚「いってらっしゃーい!!」
美「柚木ちゃんめっちゃハイテンション」
陽「がんばれー」
みんな他人事だから軽く考えてるんだ!!
……でもまあ、他人の恋路は蜜の味だもんね。
それは私が一番わかってるもん。
次回、とうとう出会っちゃう!?砂糖の故障さん!!
随分と桜が咲いて来ましたね。
あ、ご入学おめでとうござます。
新入生の若さにビビりながら私は実験の多さに心が折れています。
みなさん、新学期を楽しんでください