第7話『悪感』
「昨日はホントに悪かった!」
「もういいって(苦笑)
大体は私情で抜けた俺が悪かったんだから。」
「でも、行けって言ったのは俺だし…」
今は朝練中。朝練は監督もコーチも来ないからほとんど自主練になっている。
俺に謝っているのは昨日、俺を庇えなかったやつで俺は気にしてないっていうのに謝ってくる、結構律儀なやつだ。
名前は会津鈴音という。
「大丈夫だって。ホントに気にしてないから。」
「……ホントにごめん。」
「もう謝んなって!な?」
「……おう。」
はぁ。
やっと止まった。
鈴音は俺とは違うクラスで、
確か、風見と一緒なクラスだったはずだ。
鈴音は大概誰とも仲良く出来て、クラスや部活ではムードメーカーのようなものだ。
「鈴音じゃん!うちのクラスに用事?」
「鈴音くん…!」
「桐椰に、愛華ちゃん!」
菊野桐椰さん。
うちのクラスの学級委員で女子だ。
女子バスケ部に所属していて副部長でエースをやっている。
ただ、なんというか男勝りで気性が荒い。
怒らせると物凄く怖い。
そしてその隣に居るのが白沢愛華ちゃん。
桐椰さんと親友らしく、いつも一緒にいる。
うちの学校で一番可愛いのは?と聞かれたら真っ先に出てくるような子だ。
確か、男子サッカーのマネージャーをしていたはずだ。
本人達が気づいてるのかどうかは知らないが、この3人は三角関係にある。
桐椰さんも、愛華ちゃんも2人共、鈴音の事が好き、らしい。
噂だから何とも言えないが。
俺は別に愛華ちゃんを好きとか、桐椰さんを好いてるとかないから関係ないのだが
愛華ちゃんファンがどう思ってるかは、大体検討がつくだろう。
「もうチャイムなるぞ?」
そう言って、俺の近くで話していた連中を散らす。
鈴音達はまだ、桐椰さんの自席付近で話しているがチャイムが鳴ったためそれぞれに散る。
先生が来ない、とチャイムが鳴り終わって数分後、全員がザワつく。
どうしたのだろうか。
他のクラスからは朝のHRをやっている声が聞こえるため、先生達全員の用事でない事は確かだ。
うちのクラスの担任で野球部の顧問を務めている、村上明晴先生、通称『太陽先生』は体育会系の先生で、いつも明るい元気な先生だ。
今までも遅刻したなんて聞いたこともないし、そんな事をする先生ではない。
「……旭。」
夜灯が俺を呼ぶ。
今日は夜灯も連れ来ては居たものの指輪の中に入り出てこなかったため、どうしたのかと困っていたのだが。
「何か、近づいてくるぞ。」
「!!」
夜灯はそう言い、警戒態勢を取る。
只事では無いのかもしれないと思い、俺も少し警戒する。
何が、起こるんだ…?