第6話『指輪(リング)』
「はぁ。」
あの後は後から来た監督やコーチにこっぴどく怒られた。
それに、ここにも沢山、付喪神がいることもわかった。
コーチ達に怒られてる間もずっと付喪神について考えていてもっと怒られた。
行けと言ってくれたやつもフォローする事は難しいらしくチラチラこっちを見てはペコペコ頭を下げていた。
まぁ、悪いとは思っていたのだろうし俺の私事情で抜けたのでそのせいで怒られて逆ギレしたりはしなかった。
今は家にある自分の部屋にいて、ベットに寝っ転がっている。
今日は一日で色々な事があり過ぎた。
付喪神や、付喪神師。
災付喪神や、正付喪神。
信じられないものばかりであの体験をする前の俺なら信じるなんてまず、無かっただろう。
体験したから、体験したなら、信じるしかない。
「つっかれた……。」
「旭ー!お風呂入りなさいよー!」
「後で入るー!」
眠たい……。
「おい。」
「だから、後で入るっ…て……。」
まて、待て待て待て!?
な、なんで……
「なんでいる!?」
「うるさいのだよ。人間。」
「夜灯…だよな。」
「そうだ。名を名乗れ、人間。」
「の、野宮、旭……。」
「旭、だな。」
「あ、う、うん……。」
なんだ、
なんなんだ、この状況!!
というか、なんでいるんだ!?
「おい、夜灯。何でここにいる。」
「なんでと言われても…、付喪神はついているものから半径10mしか離れられないからな。」
「!!」
じゃあ、指輪は!?
俺はバッグの中をくまなく探した。
指輪はバッグ奥の奥の方に入っていた。
なんでこのバッグに入れっぱなしだったのかは知らないが、五年ぶりに見つけたためか凄く汚れているのがわかる。
「洗わなきゃな。」
「洗ったらちゃんと乾かすのだぞ。錆びてしまう。」
「わかってるよ、夜灯。」
さてと、風呂いこ。
ガチャ
バタンッ
「旭……。その名、何処で……?」
「ふふんっ。」
どうだと言わんばかりに俺は夜灯に洗い終わった指輪を見せる。
見つけた時とは比べ物にならないくらいピカピカだ。
「なんだ、それ位綺麗だったんだ。当然の結果だろう。」
…どうやら夜灯は褒めてはくれないようだ。
俺は少し拗ねて布団に潜った。
「我も入れろ。」
「なんだよ、付喪神は布団なんか入らなくても寒くないだろ。」
「寒くはないが、別にいいだろう?」
「いいけど……。」
付喪神って、実体化でも出来るのだろうか。
触れるのだが…。
「……なんなんだ。」
「いや、触れるんだと思って…。」
「触れるからってそんなに触るな。気持ちが悪い。」
「きもっ……。わかったよ。」
俺は夜灯を触るのをやめ、眠りについた。
明日からはもっと付喪神が見える生活が始まるのだという事を考えながら
俺はぐっすりと眠った。