第2話『開いてる』
ダンダンッ
バスケットボールの音がこだまする。
今日も司書さんにはボロ負けし、風見との勝負も36勝36敗になった。
バスケ部の二年生である俺達はバスケ初心者だった一年生に練習をつけている
三年生が引退したからといって一年生が急速に成長することも、二年生の誰かが三年生を越すほど上手くなるなんて漫画や小説みたいな事は全くもってなく、三年生が全員、スタメンだった俺達の部活の戦力は落ちていく一方だった。
しかし、最近では皆、自分自身の出来ることをやっていて、出来る技も増えているように思う。
そして、練習時間もかれこれ四十分ほど経過した頃だ。
「キャプテーン、次の指示はー?」
「あぁ、悪い!次、2on2!」
「「「はい!!」」」
ガタガタッ
部員全員が返事をしたところで体育館のドアが開いた。
「野宮!」
「風見!?」
俺と風見はクラスも違うし、部活も違うので接点は昼休みの図書室しかない。
だから、俺と風見はそこまで仲良しこよし、という訳では無いのだ。その為、バスケ部の奴らは目を丸くしているし、実際、俺だって驚いている。
だが、そんな考えは次の風見の一言で消えた
「あの部屋が、あの部屋が開いてる!!」
「はっ」
嘘だろ、とは言えなかった。
風見が大好きなサッカー放り出してまでここに来たことも確証の一部になったが、何より風見の目が本気だった。
「な、なんで?司書さんは?」
「わかんね。俺が、タオル、教室に忘れたから取りに来たら図書室開いてて、あの部屋の扉が少しだけ、開いてた。」
どうしよう。
確かに気になる。
だけど、キャプテンとして部活を優先させない訳にも…
「行ってこい、キャプテン!」
「!!」
そう言ったのはよく図書室で俺達と司書さんのトランプ戦争を見ている奴だった。
「悪い!!」
ダッ
俺と風見は一斉に走り出した。
廊下を走り、階段を駆け登る。
ガラッ
「ほ、んとに…」
開いている。
少しの隙間だが開いている。鍵がかかってないのは明らかだ。しかし、あの司書さんが鍵をかけ忘れるなんてあるものなのか。何かの罠かなんかじゃないのか。
俺が凄く考え混んでいるにも関わらず風見は俺を押しながら
「行くぞ!」
なんて、目を輝かせながら言っている。
俺が今考えてるだろ、とは思ったが、まぁ、ここまで来たのだ。
入らないなんて選択肢は無いだろう。
「入るぞ。」
俺は意を決して秘密の部屋の中に足を踏み入れた。