第22話 1からの始まり
第22話
1からの始まり
あの夜から丁度2週間程が経った。そして俺と悠里がここに来てからは後少しで一ヶ月が経つ。
随分と基地にも慣れむしろ毎日の繰り返しの戦闘訓練に飽き飽きとしてきていた。
結局あの後は隼人も無事に、ここの所属となってしまった。とは言っても俺達とは扱いが違う。
隼人の場合は歓迎されたと言うよりはむしろ再びあの狼男と言うか狼悪魔になって街中で暴れないように監視されている面の方が強い。
隼人の魂属、それは異形の呪血。過去の先祖等に人外の種族あった場合に発現する事の多い身体変化系の魂属らしい。
特に隼人の場合は本人も身に覚えが無いらしいがそこそこ純度の高い狼人間の血が流れていたそうで強い怒りや生存本能により能力が発現した為に力があの様な形になり、街中で暴れていたとの話だった。
あまりにもの魔力の高さ、強さから悪魔と反応が似ており魔力探知機が悪魔として判断していたとの事だ。
恐らくあの仮面の男はその暴走した隼人を何かしらの方法で操り利用していたのだろう。
一方悠里に発現した魂属は力量増幅機関、うんシンプルだ。
まあ自らの力を増幅させることができる能力らしいが悠里の場合はそれが衝撃波を起こすと言う形で現れたらしい。その為暴走した隼人と互角に張り合えるほどの力を有したのではとの事だ。
後仮面の男が放った銃弾を弾いていたのも当たった瞬間に全て衝撃波で弾いていたからだと思われる。
ただこの能力自体はそこまで強い力では無く悠里自身の身体能力があってこそあの力が発揮できるらしい。
ちなみにそれぞれの魂属の名前をつけたのは皆本人である。俺ならばもう少し良い名前を付けてやったと言うのに皆
『自分でつけるから良い』
だとか
『 隆成が付けると厨二病でダサい』
だとか散々な言われだ。厨二病で悪かったな。
まあ結局そんな感じで晴れて偶然が重なったとは言え3人で再び集まる事ができた。
正直望んでいた形では無いが各自悪魔の目的も知り悪魔を許せない等の事で皆これから悪魔と戦っていく事で意見が一致した。
それからは特に悪魔の目立った出現も無く話もトントン拍子で進んでいき毎日悪魔と戦うための戦闘技術訓練や悪魔や能力者、魔法についての知識を学び過ごしていたといった感じだ。
「今日の訓練終わり、さあ飯だ飯、食堂行くぞ悠里、隼人!!」
「あんた・・・いくら立ち直ったからってあれからテンション異常に高いわね。こっちはこんな所まで来て勉強しなきゃいけないってので本当に疲れっぱなしよ・・・」
「まったく悠里の言う通りだ。そんな調子じゃまた悪魔にやられるぞ」
あれからは毎日がなかなか楽しい。いや、楽しいって表現は語弊を受けそうだが今までの孤独に戦っている感覚が無くて前向きになれる。
「それにさ、隆成は立ち直ったとしても竜剣さんは結局のところまだ危険な域は脱していないんでしょ?」
「まあな、でも最近毎日面会しに行っているが最近カプセルに浮かぶ竜剣さんの表情が何か生き生きしていてさ、話によると少しずつ状態は良くなっているらしいんだとよ」
俺はあれから暇があるとすぐに竜剣の元へと通っている。結局はあの時の出来事は消えない事実だ。だからこそ再び会え成長したことを見せられるまではそうしようと決めたのだ。
「まあ、俺にはようやく戦う意味ってのが見えたというかさ、悠里の戦う姿や覚悟を見て少し憧れを持ったと言うかさ」
「そ、そんな直に言われると・・・少し照れるわね」
「俺としては隆成や悠里が無事だっただけでも良かったんだがな」
そんな感じで和やかに会話をしていた所誰がが俺の事を呼んだ。振り返るとそこには珍しく研究室から出てきている真希奈の姿があった。
「あんた、楽しそうに食事に行こうとしていたけど・・・例の話忘れて無いよねぇ?」
「何の話だ・・・あっ」
「まったくだわ、あんたの頭には何が入ってるのかしら。もしかしたら能力の元でも入ってるんじゃ無いかしら・・・だったらあんたの事を解剖してみる必要があるわね・・・」
「ヒィッ、止めてくれ、悪かった、思い出したわ、そういや例のアレの話が今日だったんだな。すまんな悠里、隼人。先に行っていてくれ」
俺は真希奈に無理やり連れていかれる形で研究室へと連れていかれた。
「・・・で、隼人や悠里の調子はどうなのよ」
「まあ、悠里は能力の使い方にもう慣れてきている感じかな、隼人は能力を使うとまた暴走しかねないから違った形での戦闘手段が欲しいって事で今は様々な銃器の扱い方を学んでいるらしいな」
実際悠里の方はもう既に練習用のデコイを破壊しまくってると言うかますます力、破壊力に磨きがかかっている。
司令も彼女の力と成長には期待しているらしくあれからと言うもの司令と悠里は普通に会話をする程度にはなった。
隼人の方は元からサバゲーの趣味があった、と言うか近代兵器大好きミリタリ少年だったお陰でさあ大変、実物の銃器を合法的に扱えるとなり必死に扱いの練習をしている。
しかも銃器の扱いにはすぐに慣れたそうで今は訓練所の射撃場でひたすら的を的確に撃ち抜く練習をしている。
「そう、まあ私は本当は中学生の子供に銃器とかを持たせるのはあまり好きじゃないんだけどこんな事は言ってられない状況だしね」
「でダーインスレイヴの欠片の話とやらはどうだった感じなんだ?」
「まあ向こうが持っていたパーツはあんたが最初に倒した悪魔が持っていたスーツケースの中に数個と竜剣が回収した一つって感じね」
「じゃあ全部のパーツを奪えたって感じなのか?」
「まあね、少なくとも悪魔が持っていた全ての欠片は奪えたとは思うんだけど悪魔側も全ては確保して居なかったようね、どちらにしろ司令の焦りにあんたと竜剣は巻き込まれたって感じね」
とんだ災難だったわけか。
まあ司令が焦る気持ちと言うのも少しわかる気がする。
話によると昔この基地がタイムマシンとして作用していた頃はある程度過去改変等融通が効いたらしい。だが燃料切れ、隊員の不足からそう言った細かな事もできなくなってしまったとの話だ。
即ち一発勝負、そんな緊張感で10年やってきてタイムリミットまであと少しとか言ったらそれは誰でも焦りはする物だ。
「で、これからの感じはどうなっていくんだ?」
「しばらくは手がかりもないし次の時間の分岐点までは時間がある。とりあえず出来ることと言えば戦力の強化とあの謎の仮面の男を探す位かしらね。ダーインスレイヴの残りも場所が解らない訳だし」
「なるほどな。てかダーインスレイヴの欠片は探知する事とかは出来ないのか?」
「残念ながら欠片単位でかなり小さくバラバラに散らばっているから特定は難しいわね。最悪海外の可能性もあるし、唯一奴らは探知方法を持っているらしいけど・・・」
「大変だな・・・」
「まあとりあえずわかってる話の範囲はそのくらいかね。隼人の能力の件とかまだまだ不明な点は山ほどあるけど片付いたらまた呼ぶわ」
「了解、ありがとう」
「あ、待って、あんたを呼んだのはこんな世間話をするためじゃなかった」
そうして部屋を出ていこうとした所真希奈に呼び止められた。
「お前も記憶力ガバガバじゃないかよ・・・」
「うるさいわね、そんな事言ってるとあげないわよ」
「ん、何かあるのか」
そう言うとパソコンの近くにあった機械を動かし始めた。すると研究室の奥の機械の箱状の物がゆっくりと開き始めた。
「完成したわよ、あんたの相棒の完成品」
「お、じゃあリザードマンの修理が終わったのか」
「修理、舐めてくれるじゃない。2週間かけて改良し直したのよ。完成品を通り越して改造品になった位にはもはや別物ね」
その機械の内部から現れた剣、それはリザードマンとは全く違う姿になっていた。更に洗練された姿になっており、刀身はより大きく、持ち手も更に扱いやすく改良されていた。
「そうね、これがあんたの新たな相棒、名付けて」
『新型機甲兵器:機剣「ワイバーン」よ』