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蒼き閃滅のドラゴンハート  作者: ドラソード
成長と苦悩編
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第17話 魔狼

第17話

魔狼


練習試合の終わりは男が障壁に打ち付けられて吐いた声にならない声によって訪れた。試合開始20秒弱、呆気ない終わりだった。


まず練習試合が始まると同時に悠里の強烈な突きが飛ぶ。あまりにもの威力に怯み驚いた隊員の男は反射的に本気を出し悠里にカウンターを食り出す、が普通の人間なら当たっていたであろうその重みがありながら威力があるその拳は空を掴む。

すかさず悠里は瞬間的に4、5初ほど拳を食らわす。守りを取れない男はもろに拳を食らい地面でのびている


「試合終了ね」


悠里は物足りなさそうにこちらに歩いてくる。その姿に周りでトレーニングをしていた隊員達が悠里に対して一斉に目を向ける。その隊員の目には驚きとも、恐怖とも見える表情が見て取れる。


「まだこれでも満足しない?」


悠里は司令に問いかける。もはやこの前までの元気な女の子のイメージなんて欠片も無い。


「力を扱う物には責任が伴う・・・その責任を君は理解しているのか」


「当たり前じゃない、これが、この行動が意味していることも引き起こすことも分かっている」


「・・・ようこそ、我が悪魔狩りの集い、セイグリットへ。君の入隊を歓迎する」


俺は彼女を止めることができなかった、ついに引き返せなくなった。

これから彼女も危険に晒されてしまう。

これが望んでいた事なのだろうか。不思議、未知の冒険、正義の味方、勇者か。そんな夢物語なんてゲームじゃあるまいし、それに無意味に人が死んで欲しいわけじゃない。


俺はあまりにものストレスや恐怖、悔いや様々な事ですぐにでも壊れそうだ。いっそあの男に楽にして貰っていた方が良かったとすら思ってくる。


「悠里、お前本当にこれで良かったのか?」


俺は問いかける。しかし彼女はむしろ笑顔でこちらに答えを返してきた。


「良かったも何も、これでようやく私も何か役に立てるのよ。それに誰かの為に戦える、隆成や竜剣さん、あの少年みたいに犠牲者が増えていくのを見ているだけじゃなくて守る事ができる、そして誰かの為に力を使える、これが嬉しくない訳無いじゃない!!」


彼女の笑みがとても眩しかった。


そうか、俺が絶望し引きこもり、戦う事を恐怖し逃げていた時彼女は誰かの為に戦いたくて、守りたくて、何も出来ない自分に悲しんでいたのか。

まるで俺とは正反対だった、自分の恐怖していた事が恥ずかしい。俺には最強の力とやらがありながら戦いを放棄しようとしていた。その事実が自分に突き刺さる。


「悠里、俺は」


『敵性反応魔力増大、市街地に悪魔出現。繰り返します市街地にブラックハウンドと思われる個体が出現しました。』


そう言いかけた時、警報が鳴り響いた。部屋に篭っていた時にも警報が何回か鳴っていたのを思い出す。

警報が鳴り止むと辺りが急に騒がしくなる。


「奴か・・・」


「奴?」


俺はこの数日間の事を知らない。俺が帰ってきた後も何か進展があったのだろうか。


「君と竜剣が帰還した夜、都内の街内に新手の悪魔が現れ被害者が出た。その悪魔は今までに目撃された事が無い新種でその犬の様な姿からブラックハウンドと名付け追い、交戦をした」


「いや、確か悪魔はまだ表立った行動をしていない筈では。そんな行動をしたら目立って悪魔達にとって不利になるのでは」


「ああ、私達としても予想外だった。悪魔側の準備が揃ってきているのか、もしくはこれも向こう側の作戦なのか」


悪魔側の準備が揃ってきている、つまりは事態は既に最悪な方向へと動き始めている、と言うことなのだろうか。


「私に行かせて」


悠里の方から口を開いた。早速出撃すると言うのだろうか。


「既にこちら側の被害も出ていて君も今回の個体の強さは知っているはずだ。それでも行くと言うのか?」


「構わないわ、わんころ位軽くひねり潰してやるわ」


「なら俺も」


「駄目よ、隆成はしっかり休んでいて。あんた万全の状態じゃないじゃない、それにリザードマンだってボロボロだし、むしろそんな状態じゃ二人とも危ないわ」


悠里に止めらてしまった。もはやこうなったら悠里の言う事を素直に聞くしかない。


「大丈夫、隆成。安心していて。悪魔位軽くぶっ飛ばしてやるから。それに危なくなったら死ぬ気で逃げるし、死にゃしないわよ」


「わかった、絶対に生きて帰ってきてな」


「お安い御用よ。見てなさい、久しぶりに本気を出せるって思ったら何か凄いやる気が湧いて来たし体も何だか軽い。この調子でちゃちゃっと行ってくるわ」


こうして彼女と司令は行ってしまった。俺はその手に握られた半壊したリザードマンを見てまずは悠里の事もそうだが自分の調子を整える事から始めることにした。

時刻を確認すると夜の10時、外の景色が見れないとなかなか時間感覚がわからなくなるものだ、どうやら少々寝すぎていたようだな。


俺に出来ることは一つ、その目覚めきっていない体を起こし、まずは戦えるように準備をする事だった。


次回、新たな敵ブラックハウンドと悠里がワイルドに戦います。そしてこのままだと意気地無しの主人公になってしまう隆成は果たしてどうなるのか、ご期待ください。

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