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蒼き閃滅のドラゴンハート  作者: ドラソード
プロローグ
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第13話 呪血の覚醒

第13話

呪血の覚醒


辺りに瘴気が立ち込める。気が付くと辺りの人の気配が全くなくなり光という光が無くなっていた。ただ薄暗くぼんやりと続く暗闇に包まれた道のど真ん中に俺と自称刑事の男は構えている。


「不幸だったな少年、本当は話を聞くだけ聞いて帰らせるつもりだったんだが・・・この悪魔のせいでそうはならなくなった」


「いやいいんだ、むしろあいつらもこんな状態に出くわしたんだろうし・・・俺だけ仲間外れも尺に触るから」


辺りを囲んでいる影の塊の一体が隼人に向かい飛びかかる、途端その影のど真ん中に弾を撃ち込み迎撃する。男は周りの影の塊を狙い一体一体撃ち落としていく。


「抵抗しようと無駄でして?その私からこぼれ落ちたカスをいくら倒そうと無限に湧いて出ますから。本体の私を倒さない限り貴方方に勝ち目は無いと思われます 。果たして見つけられますかね?」


「馬鹿め、どうやら貴様はわかっていないようだな、誰を相手に回したのか」


「誰?そう言われましても所詮は少し特殊な銃器を使うだけの魔物ハンターと何も知らない子供1人で私を倒すのは少し現実味が無い話ですね?」


魔物ハンター、やはり刑事などではなかったか、というかやはり誰が見ても刑事だとは絶対思わないというか思えないだろ。


「ただの少し特殊な銃器を扱うだけ、か。少し甘く見くびられたな。わかった、貴様には絶望をくれてやる。『悪魔に悪夢を見せてやる』」


次の瞬間男が握っていた拳銃と更にもう一つの拳銃が出現した。今良く見てみると先程の拳銃もそうだが見た目が普通の銃とは違い紅い光が走っており淡く光っている。


対魔力注入(エンチャント)開始、どうやら悪魔は学習が嫌いのようだな、悪魔の割に俺の名前を知らないとは舐められた物だ」


「そもそも無知なのはどちらでしょうか?悪魔には近代兵器が効きにくいのは魔物ハンターとあれば知っているはずでは?」


「普通の魔物ハンターなら、な」


次の瞬間男は両腕を開き銃を構えた。


「少年、蜂の巣になりたくなきゃしゃがんどきな」


俺は言われた通りしゃがんだ、と次の瞬間男は飛び上がりその場で銃を乱射した。辺りに紅い光が乱れ狂い周りを囲んでいた影の塊を全て打ち払った。


「やった・・・のか?」


「そんな訳あるか、今のは全て幻影だ。恐らく近くに居るはずの本体を倒さなければ幻影は永久に湧き続ける」


「ご名答、まあ想像よりは少しは強い感じですね?まあそれでも果たしてまだ湧き続ける私の幻影を払いながら本物の私の所にたどり着けますか?」


また新たに周囲に瘴気が満ち幻影が現れる。こちらは2人、しかも片方は本物の戦闘などしたことはない。勝ち目は有るのだろうか。


「本体か・・・全く、そんなハッタリが俺に通じるとでも思ったか?」


男は銃に弾を装填し直した。すると近くの幻影に弾を撃ち込む、途端に男は黙り込み目を閉じた。


「なるほどな・・・」


「この状況の打開策でも模索できました?」


「今この幻影の時間を遡り本体の場所を特定した、本体は近くの神社に居座っている」


「時間を遡る・・・?」


「今撃ち込んだ弾は『時喰弾』と呼ばれる物だ。撃ち込んだ物の時間を奪いその物の記憶を見る事が出来る。つまり幻影の発生した経緯を見て過去を辿っていけば本体にたどり着く訳だ」


時間を奪う、なんだか隆誠が好きそうな物ばかりだな先程から。とりあえず今目の前で何が起きているのか、そもそもこの悪魔や男は何なのか、この日常の裏で何が起きていたのか、情報量が多過ぎて反応に困る。


「 場所が解ったのならば話は早い、さっさと止めを刺しに行くぞ」


「いや、でも・・・俺は・・・」


「じゃあなんだ?この場に残って悪魔に殺されるのか?」


「いや・・・しかし・・・」


「戦場ではその一瞬が命取りになる。お前が望んで居なくてもここは既に戦場だ、行くぞ」


俺は男に腕を引っ張られる形で連れていかれた。途中やはり幻影が現れこちらに攻撃してきたがそれらを全て男は拳銃一丁だけで対応し撃ち落とした。


「あんた・・・名前は?」


「名乗る名前など無い、あえて言うなら『不可視の紅き疾風』《スカーレット・ブライン・ゲイル》とでも名乗っておくか。ブラインでいい」


「・・・解った、ブライン」


俺達はひたすら走り続け近所にある小さな神社にたどり着いた。住宅街の奥にひっそりとあり普段は人の気配はほとんど無いが今は夜とあるだけに更に寂れた雰囲気を出している。そしてその神社の中心に紫に光る異質な存在が目立った。


「驚きました、ここまでも速くにこの場所を割り当てるとは、言う通り本当に凄い魔物ハンターなんだと思いました。すごいすごい。まあ別に見つかったからといい負けが決まった訳じゃないですし。むしろ貴方方の絶望は・・・まだこれから始まる」


次の瞬間悪魔はこちらに向かって歩き始めた。先程までの声では全くわからなかったが見た目は女に近い。しかし悪魔と名乗るだけあり頭には角が生えており背中には黒く威圧的な翼が生えている。


「私の名前はそうですね・・・まあ名乗る名前と呼ばれる物もあまり無いですし、まあ強いて言うなら悪魔王の秘書とでも言っておきましょうか」


悪魔王の秘書と名乗るその悪魔は不敵な笑みを浮かべている。先程までの幻影のように楽には先に進めない、雰囲気だけでそれはわかる。


「悪魔王の秘書、か。大層なご身分だな。だったらこんな遠回しな事をせず最初から殺れば良いじゃないか」


「まあ何でしょう、悪魔はそう簡単に対象を殺しません。それに先程は見られたら対象を生かしては帰さないと言っていましたが貴方方を観ていたら少しは楽しませて貰えると思ったので、すぐに殺すのは止めに決めました」


「下衆が、悪魔風情に遊ばれる程人間廃っては居ない」


「そうですか、では」


次の瞬間悪魔の姿が消え目の前に現れ腕を振りかぶっていた。その細身の身体からは想像もできない力、速さだった。無理だ、そう諦めかけた時俺はブラインに突き飛ばされ攻撃は回避された。しかし変わりにブラインが攻撃を受け数メートル吹き飛ばされた挙句塀にぶつかりのめり込んだ。


「嘘・・・だろ」


先程までそこに居た人間がものの数秒で吹き飛ばされ居なくなった。死んだ、普通はそう思う。しかしブラインは塀の瓦礫の中から再び立ち上がった。


「痛てぇじゃねぇか・・・全く、普通の人間なら死んでたぞ」


そう言っているブラインの姿は今までの人の姿では無く誰もがよく言う『悪魔』の様な姿になっていた。


「面白い力・・・ですわね、先程までは人間の魂であったのに今はまるで悪魔その物の魂の力を感じますわ」


黒い頑丈な鎧で覆われた体に燃え盛る角、湾曲した爪、その姿は馬に跨がる黒騎士とも、空を翔ける悪魔の様にも見える。しかし相変わらず手に持っているのは先程までの旧型の拳銃である。


「運が悪かったな、貴様が相手に回したのは少し変わった力を持った魔物ハンターではない、俺は悪魔殺(デビルキラー)しの殺戮悪魔(キラーデビル)だ」


「悪魔殺しの殺戮悪魔・・・なるほど、あなたはあの不可視の紅き疾風でしたか、把握しました」


次の瞬間ブラインは先程の悪魔と同じ程の速度で悪魔の真正面に瞬間移動し顔面をその銃で吹き飛ばした。

やったか!?と思いたいが多分あの悪魔の強さからして頭を吹き飛ばされた位では死なないであろう。


ブラインは続けて悪魔を蹴りあげ今度は空中に浮かんだその悪魔目掛け紅い無数の閃光を撃ち出す。途端に悪魔の肉体は細切れになって行く。そしてブラインは撃つのをやめ落ちてきた悪魔だった肉片を蹴り飛ばし吹き飛ばした。やがて神社の端まで飛び転がった。


「全く、面倒臭い野郎だ」


「やった・・・のか?」


恐る恐る聞いてみる。あれはどこからどう見ても死体蹴(オーバーキル)りだった。流石に俺も死んだ、と思った。しかし返ってきた返事は違った。


「悪魔があの程度で死ぬと思うか?ましてや悪魔王の秘書なんて身分の奴がだ」


その表情に笑みなど1つも無くむしろ焦りが見えていた。俺は先程の悪魔の死体があったと思われる方を向く。するとそこには平然と起き上がっている悪魔の影があった。


「悪魔殺し、名前だけですね。確かに貴方の放った銃弾1発1発には対悪魔の術式がかけてあった、当たれば普通の悪魔ならば一撃でも死ぬのには問題ない威力です。しかしその対魔の術式を解除さえしてしまえばただの鉛玉です」


悪魔はこちらに微笑みかけてくる。その笑みはまるで殺意が無く、こちらを全く危機として見ていないことが取れる。


「では、今度はこちらからやらせて貰いましょうか。久々に楽しませてもらいましたしお礼です」


悪魔はにっこりと微笑み次の瞬間指先に紫に光り輝く球体を創り出した。やがて指先から離れたそれは巨大化し夜の空を照らした。

その光はまるで満月の様に宙に浮かんでいる、見ていると意識が吸われていく。次の瞬間だろうか、ブラインの叫び声が響く。だが身体が全く動かない。


魅了(チャーム)の魔力か、魔属耐性が無いものには効きが特に強い。あの光玉を潰さないことには・・・」


「させませんわよ」


悪魔がもう片方の指から光を放ったのが見えた。すぐにそれはブラインを貫き跪かせた。


「ではそろそろ・・・終わりとしましょうか」


次の瞬間、光玉が強く光り輝くと同時に破裂するのが見えた。そして辺り一面に光の矢が降り注ぐ。

ブラインはその場から動けず必死に矢を防いでいる。

やがてその矢の1本がこちらへと飛んできた。矢が自らの胸を貫いたのがわかった。途端意識が戻り焼けるような痛みと苦しさにその場に倒れる。


矢が完全に降り切ってしばらくは立っただろうか。そこには男の顔が見える。向こうには角と翼が生えた影が見える。頭は既に物事を考えられる状態では無く自分が何者かさえ解らなくなってきた。


「隆・・・誠、悠里・・・」


ただ無意識のうちにそう口に出していた。死にたくない。まだ何も知らない、まだ何も始まっちゃいない。ただそれだけしか思えなかった。


「・・・死にたくない・・・」


気が付くと俺は立てる状態ではとても無い筈だがその場に立っていた。身体が熱い。やがて頭の中には1つの言葉が浮かび上がってきた。そしてそれは1つの文として出来上がり不思議と口に発していた。


『その呪いは解かれる事無し、闇より深き漆黒、鮮血より紅き真紅。その爪は希望を絶ちその牙は他を喰らい肉とする、やがてこの身以外に立ちうる者は無し、真なる孤高。我が魂属は呪いより至りし狼』


途端意識が、理性闇に落ちていく。胸の痛みこそ消えたが代わりに死ぬほどの空腹と怒りにも、悲しみにも似た感情が襲ってくる。


喰らえ。


殺せ。


破壊しろ。


本能が赴くままに。


自分以外を。


喰らい尽くせ。


やがて目の前は闇に落ち、果てしない暗黒空間の中に俺は立っていた。




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