第12話 動き始める運命の歯車
遅くなりました・・・修学旅行やちょっとした胃腸炎に苦しめられており投稿が遅れました。ここから隼人も話に関わっていくのでようやくキャラが出揃った感じですかね。
第12話
動き始める運命の歯車
近頃何だか辺りが騒がしい。
一昨日だってそうだ、また隆誠達に誘われて何時もの街の不思議探しとやらをするのかと思いきや悠里は謎の黒服を追っかけて勝手にどこかに行ってしまうし、急に隆誠が血相を変えて今日は帰れって言ってきたり。
他にも街で謎の焼死体事件があったり、度々目撃されていて噂になりつつある謎の黒服の不審者の存在。恐らく何かしらの関連があるのだろうか、まさか宇宙人でも見つけたんじゃ無いだろうな・・・あいつら。
それに辺りでは中学生等の失踪も相次いでいると聞く。あいつらに限っては巻き込まれるとは思わないかな。生憎あの後連絡が取れていなくて益々この手の想像に加速がかかる。
それにしても暇で考える事がなかったり退屈だと人間こんなくだらないことを考えてしまう物だ。
「暇」と言った。やる事が無いわけではない。むしろやる事ができてやらされてはいるのだがその仕事内容の小ささに逆に暇しているのだ。
そう、俺はある目的の為にとある場所に向かわされていた。その目的、場所、それは
「全く、目的の物はどこのコーナーにあるんだ」
そう、俺は近所のスーパーにお使いを頼まれていた。こんな中学生にもなったのにも関わらずだ、バカバカしい話だろう。
話は数十分前に遡る、夏休みが始まり宿題に少しずつ手をつけながら休憩がてら自室で趣味の拳銃の整備を行っていた。拳銃とは言っても俗に言われるサバゲー等で使われる模造品のエアガンやモデルガンと言われるものの類の物だ。
昔からこういった武器の類が好きで良く休日には整備をしたり壁に作った的等を撃って試射したりもする。 まあ周りからは白い目で見られる事がほとんどだが。
そんな有意義な時間を過ごしていたら突如親から「ちょっと急に親戚が来ることになったからお使いよろしく」との事だ。まあ実の所夏休みはまだまだ先は長く時間的に先はあるから別に構いはしなかったのだが。
だがいざ出かけてみるとやはり普通につまらない。暇をする。考えてみると別に家に帰ったからって何かやることがあるかと言われたらまた何も無いが簡単に言うと面倒臭い、それだけだ。
どうもこうも考えながら俺は店内を巡り様々な物品を集めていった。料理やもてなしにはあまり詳しくないが肉やら野菜やら沢山ある。将来大人になり一人暮らしを始めたらこの料理の1つ1つの重要性や意味なども分かるのだろうか。
そんなこんなで考え事をしながら店内を歩いていた所別に疲れていたとかそんな訳でもないが誰かとぶつかってしまった。相手は男で夏場には暑苦しいだけであろう季節外れなコートを身に纏い顔を覆うような帽子を深く被っていた。身長は180位だろうか、店内でも異質な雰囲気を纏っておりこちらが謝ると無言で立ち去っていった。
普通の、現代の日本には不釣り合いな格好、明らかに怪しい。あの格好で外を歩いていたならば速攻で通報されそうな気もする。
会計を済まし俺は店外に出た。時刻は6時過ぎ、夏至が近く外はまだ充分に明るく蝉がうるさい。まあ誰もが思い描く夏の絵面だ。路地等に入らない限り人通りも少なく無く比較的賑やかだ。
俺は目的を終え家への帰路に向かった。道中は普通の住宅街だが所々に高い建物もあり若干影になる場所がある。俺はそのいつもの道を普通に歩いていく。
そして家の近くに来た頃だろうか、なにやらいつもとは違う何かを感じた。
「付けられているか・・・」
咄嗟にわかった。背後に何者かが着けていると。相手の目的は?何故俺を?疑問は尽きない。そもそも相手は男か?女か?俺はどうするべきか、そう考えた結果俺は行動にでた。
「あんたの目的は?あんたは誰だ」
無謀ともとれる行動、相手が仮にこちらを誘拐なり殺しに来ているのならこのまま行けば確実に殺られる。現在相手との距離は5メートル程、少しの距離ならば走って逃げる事もできる。さらにちょうどこの先に走れば人通りの多い道路に出られる。足の速さにも自信があり勝算があった。だからこそ相手の目的を聞いてみたくなったのだ。こんな平凡な中学生を尾行する不審者の目的を。
だが男は意外にもこちらを追う様子は無く、変わりに話しかけてきた。
「君に1つ聞きたい」
「別に心当たりも無いし何も知らない、あんたは誰だ?」
男に問いかける。と言うか本当に身に覚えが無い。
「私はある少年を探している、お前程の年齢の少女連れの少年だ」
俺は咄嗟に驚き振り返った。そこには先程スーパーの中でぶつかったあの異質な雰囲気を纏ったコートの男が居た。
「その前に聞きたい、もう一度聞くがあんたは誰だ」
「刑事だ、最近この辺りで度重なる焼死体の発見や謎の黒服の不審者の情報を聞き極秘裏で派遣されてきた。そして例の少年と少女の近くに君が度々居るのがわかり事情を聞きたく情報を聞いて回っている」
刑事、言われてみるとそうだ。その見た目は確かにそうとも取れる。だがいくら何でも時代を間違えてはいないだろうか。現代でこんな刑事見たことないぞ。
それにしてもあいつらは何をやらかした。あいつらはいつも不思議さがしとやらをしているから必然とそういう物の近くに行ってしまって危険な目に会うのはよく知っている。だが自称だが刑事が出てくる話になると馬鹿をした、と言った話のレベルじゃないだろう。
「刑事・・・本当なのか?」
「納得しないようであれば警察手帳を見せるが」
「いや、結構だ」
むしろ最近の隆誠達の隠し事といい気になって居た。この機会だ、色々聞いてみるのもいいかもしれない。
「先程の反応だと君はその少年と少女に心当たりがあるのか?」
「ああ、その通りだ」
辺りが段々と暗くなり始めてきた。
「では聞こう、その友達は何か特殊な力を持っていたり何かに巻き込まれてしまった等とは聞いている、もしくは覚えは無いだろうか?」
「特殊な力・・・?」
一瞬笑いそうになってしまった。先程まで真剣に隆誠や悠里に何があった、むしろ何をやらかしたと真剣に考えていていざ出て来た質問が特殊な力を持っていたりしないか?何を言っているんだこの刑事は。
「刑事さんにはすいませんが心当たりはありません」
「そうか、では話を変えよう。先日街中のとあるビルの地下で謎の爆発音がしたと報告があった。そのビルに謎の黒服とその後しばらくしてから少女が入っていくのが近隣の防犯カメラから確認された」
こちらの反応を無視して話を続けて行くなこの刑事・・・少々強引じゃないか?まあ話の内容は恐らくあの日の話か、すぐにあの一昨日の一件だと解った。
「その後すぐに今度は少年と20代前後の男が走ってビルに入っていくのも確認された」
「それが能力等と何の関係が」
「その後誰も出てこなかった」
「何が言いたい」
つまりあいつらは結局あの後黒服を追いかけてどうかしちまったと言うことなのだろうか。結局ただ事では済まないことに巻き込まれたと言うことになるのか。
「いや、話はそれだけでは無い」
男の話は続く、だがここからの話が先程までの憶測の話を覆すことになった。
気がつけば時間は過ぎ辺りは夜の闇に包まれ始めていた。
「その黒服の男は元々海外からのスパイ容疑でマークされていた、しかしある日を堺にその男は消息を断ち行方がわからなくなった。そして後日死体となり発見された、ここまでは普通の話だ」
「まて、話がわからなくなってきた・・・それでは今回の黒服はどうなる。まさか死体が動いているとでも言いたいのか」
「その通りだ、黒服は死にそして蘇っている」
何を言って居るんだ、何を言っているのかわからない。そんな嘘みたいなゲームみたいな話がある訳が無い。ここはゲームの世界でもアニメの世界でもない本物の現実だ。この自称刑事の男は何を企んでいる。
「そうだ、黒服は俗に言うゾンビの様な何かとなりそこに存在していた。何者かに操られているかの様に、そしてその蘇った黒服を追っていた所あの時間、あの場の話にたどり着いた」
「・・・」
「馬鹿馬鹿しい話だろう。私はこの話を知りすぐに独断でそのビルの地下へと入った、するとそこには多数の瓦礫と血痕、そして普通では有り得ないような傷を負い燃え尽き胴体に穴の空いた黒服の死体を見つけた。君の友達の痕跡は完全に消えていた。未だ行方不明だ」
頭の整理が着かない。訳がわからない。夢かこれは、いや違う、現実だ。考える事と現実から目を逸らすな。今の話が事実なのかはまだわからない、この男が実際何者なのかもわからない。
だが隆誠の話はどうなる。本当にあいつらは今行方不明になっているのだろうか。だとしたらこの男の言っていた話の信憑性はどうしたらいいんだ。
「私が君に話を聞いた理由は一つ、どちらにしろ君の友人は現在危険な状態下に置かれている可能性が十分に高い、速くその少年の元へ行き保護しなければ最悪黒服の仲間に殺されるなりとにかく死に直結する可能性すらありうる」
「いきなりこんな話をされて信じられる訳が・・・」
だが次の瞬間俺と男は異変に気が付いた。周囲に謎の気配を感じた、だが遅かった。次の瞬間建物の影から黒い塊がこちらに飛んできた。
「・・・ッ!!、執行人の猟犬!!」
次の瞬間男の手には古風な銃が握られておりその塊を撃った。途端撃ち出された弾丸は紅い閃光となり塊を貫いた。影の塊は途端に霧となり消えていった。
「どうやら状態は思った以上に酷く事態の動きが速いか・・・」
辺りに再び影の塊が湧く。
「どうやら最近私達の身辺を嗅ぎ回っている子供と女と侍の男が居ると聞いていましたが嗅ぎ回っているのはそれだけではありませんでしたか・・・」
「盗み聞きとは流石やる事が悪魔らしいな・・・」
悪魔、今男はそう言った。俺は、俺達はどうやら最悪の事態に巻き込まれているのか?そう咄嗟に解った。生物としての本能が最大の危険信号を出している。
「饒舌に話せこの量の瘴気を操るあたりかなりの中級、いやそれ以上の悪魔か、目的は何だ?」
「目的も何も・・・我々の存在を知るものは誰1人生かして返すな、そういう命令でしてね」
「そうか」
次の瞬間男は俺に何かを投げ渡した。
「拳銃だ、悪魔にはトドメは刺せないだろうが時間稼ぎ位にはなる、使い方は」
と俺はごく一般的なハンドガンを渡された。この男が使っているのとは違いわりかし新しい型ではある。
「わかる、この手の拳銃なら余裕で扱える」
「どうやら君も普通の人間では無い質か」
「まあ、ただの軍事ヲタなだけですよ・・・むしろ本当はあんたこそ何なんだ」
気がつくと男と背中合わせの状態で立っている。周りには影の塊が辺りを取り囲む様に多数居る。
「続きの話は後だ、まずはこいつらを片ずける、行くぞ!!」
気が付くと空は夜より暗き深淵に包まれていた。おつかいだ暇だなんだのと言った話は頭から完全に消えていた。今そこにいるのは拳銃を構えた大小二つの影だけだ。
俺もこうなった以上どうなるかはわからない。生きて帰られるか、いや皆で生きて帰られるか、人生とはとにかく急で突然な物だった。
こうして長い長いおつかいが始まった。