表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼き閃滅のドラゴンハート  作者: ドラソード
プロローグ
15/30

11話 薄れゆく意識の中で

第11話 薄れゆく意識の中で



クラーケンが触手を巧みにあちらこちらに振り回してくる。

先が鋭利な刃物状になっておりこの速さで当たったら致命傷は避けられないであろう。


俺と竜剣は斬撃を避けながら触手を切りつける、しかしいくら触手を切断してもその触手が無尽蔵に生えてくる。

さらにクラーケンは雷の魔術も合わせ放ってくるおかげで遠近全くスキが無い。


「キリがない、いくら攻撃してもこれではジリ貧になるだけだ、何か致命的な弱点は無いのか……」


俺には視覚不可能だったあの竜剣の強力な斬撃だが相手の回復力と速度、数、予測不可能の動きをする触手によりわずかながら押されてきている。


「無様な、先程までの意気込みはどうした!!」


次の瞬間竜剣の腕に刃が命中した。

血が滴り落ち竜剣は初めて苦悶の表情を浮かべた。


「……ッ!!」


「愉快、愉快だ……この体の男の肉体を奪い魔力を注入し身体を維持しているが流石ダーインスレイヴの欠片を埋め込まれていただけあって悪魔の憑依に十分に耐えきれるな……実験は成功だった様だな……フハハハハ!!」


クラーケンは高笑いを上げる。

俺もリザードマンを限界稼働させ、渾身の勢いで振る。

しかし今までの相手とは感覚が数段違う、斬ろうとも斬ろうとも致命傷を与えている感覚が全くない。


いくら能力に目覚めその影響で多少武器が使えるようになり戦えるようになった程度では限界があった。


「この触手の再生をどうにかして止められれば……恐らく魔力を送っている源を潰せば再生を止められる筈だ!!」


クラーケンの攻撃は激しさを増す。

雷が自分の体スレスレを通り抜け火花を上げる。更に触手が鞭のようにしなり破裂音をたてる。


「さて……そろそろお遊びもこれまでだ……」


クラーケンの触手の性質が変化更に鋭く鋭利な形に変化した、そして背中や触手から電極の様なものが露出し雷を纏い眩しく輝いている。

そしてそれらの触手が規律良く並びこちら側に向けられる。

次の瞬間それらの触手が超高速で無数の光となりこちらに飛ぶように襲ってきた。


「塵と化せ……下等生物!!」


俺は反応が遅れた、刃が迫り死を感じる。

だが次の瞬間竜剣が前へ出てきてその刃を刀で受け止めた。


竜剣はあの超高速の抜刀術を持ってして高速の突貫を全て受け止め逆に触手を切り払った。


「名付けて……そうだな、千本針山地獄(ヘルズスピアーズ)……何故だ?何故人の形を残している? 私の触手はどこに行った」


「判断が甘かったな、クラーケン。その突貫、発動時は硬質化させて強度を増し貫いているのだろう、先程までの柔らかさ、動きならばその性質上受け流すのはキツかったが硬く、更に規律良く襲い来るのならば受け流すだけならば容易にできる。全く本業の侍を舐めないで貰いたい」


いや、それは普通本業の侍にも絶対無理だろ、とツッコミを入れたかったが実際それをやってのけていたことには驚かされていた。


「侍? 受け流す? 甘い? ふざけるな……ふざけるなよ……ふざけるな!! 人間風情!!」


クラーケンは先程の体勢に入りまた高速の突きを繰り出してきた。

しかし竜剣が落ち着いた表情で再び受け流す。

しかし次の瞬間クラーケンは体勢を変えその巨大な口を顕にした、そしてクラーケンは黒い圧縮された墨の様なものを吹き出した。


竜剣はその不意打ちには対応できず食らってしまい壁に吹き飛ばされる。


「……ッ馬鹿な !!」


「そうだ墨だ、なんの紛れもない墨だ。しかしこれだけの量を喰らい壁に打ち付けられ視界は真っ暗で何も出来ぬだろう、無様なり!!」


クラーケンは高笑いを上げる、その声には最初の調子の良さが見えてくる。

反対に竜剣は壁に身体を強く打ち付け更にクラーケンの墨の影響により動く事ができない。

そこに再びクラーケンの刀が迫る。


「隆誠、手を出すな、こいつはお前の手には余る!!」


「餓鬼、今ならばこの無様な侍の恩情により見逃してやろう、どうだ? 何もできない自分が悔しいだろう?」


クラーケンは触手を振り上げ突く体勢に入った。

このままでは竜剣は殺される、そう考えてしまった瞬間、目の前に殺された悠里や隼人、そして隊員の姿が再び目の前にフラッシュバックする。

そして俺は我を失った様にリザードマンに力を限界まで込める。


「止めろ……止めろぉぉ!!」


普通ならそこで動けなくなり硬直している筈の俺だったが何を思ったか俺はリザードマンをクラーケンに向けた。魔力を最大まで込めたリザードマンの刀身が強烈に光り輝く。

だが無常にもクラーケンの触手は攻撃の体勢に入っていた。


間に合え、ただそう思い俺は魔力を最大、いやそれ以上に込め続けた。するとリザードマンが今までに無いほど光り輝きその姿を変えた。


特殊合金の刀身が砕けちり変わりに光の塊がそこにはあり、更に持ち手部分の装甲が開き内部構造が露出し強い光を放っている。そしてリザードマンから音声が漏れる。


『error発生、想定外のエネルギー反応によりリミッターに欠損、これ以上の使用は危険です、武器の使用を中止してください』


「喋った……!? いや、だがここで辞めるわけにはいかない、このまま押し切る!!」


俺は更に限界まで魔力を注ぎ込んだするとリザードマンに巨大なオーラの剣が出来た。


今までに無いほどの力に腕を持っていかれそうになるがそれでも俺は踏ん張りその剣を振り上げそして叩き落とした。するとそのオーラの剣は巨大な斬撃波となり飛んでいき一瞬でクラーケンの腕を何本も吹っ飛ばした。


「貴様ッ……!!見逃してはやったが餓鬼自ら死ぬ道を選ぶか……良いだろう、貴様から殺してやる、楽には殺さん!! 再生能力がある限り触手は何度でも……何だ?」


クラーケンはまた触手を復活させようとするが全く再生しない。むしろ端から腐り落ちて行っている様にも見える。


「馬鹿な、何が起きている!?」


「恐らく隆誠のオーラにより魔力供給が阻害されたか、あるいは隆誠のオーラには特殊な能力があるのか……良くはわからないが今ならば!!とどめを刺すぞ隆誠!!」


竜剣は今のスキに体制を戻してその場に立っていた。

竜剣の掛け声を聞き俺はクラーケン目掛け走り再びリザードマンに力を込める。

すると途端に身体が軽くなった、いや武器に引かれるようにして高速でクラーケンに一直線に飛んだ、身体が光に包まれる。


「餓鬼が!! 今すぐに……クソッ!! 体もうまく動かない……だと!? まさか体の持ち主が抵抗……を」


次の瞬間クラーケンは一瞬表情を変えた。それは苦しみ耐える人間の表情にも見えた。


「すまない……私が不甲斐ないばかりに君達無関係な人間にも大変な思いをさせてしまった……コイツは留めておく、早くトドメを……」


「あんた……その体の元々の主か、わかった。隆誠、さっさとやるぞ、来い!!」


竜剣も刀を握り締め抜刀の構えに入った。


「息子を……生きていたならば息子を……頼ん……だ」


そして俺がクラーケンを貫くと同時に竜剣が青白い炎を纏った刀身で何重にも切り裂いた。

目を潰されていても的確に狙うその太刀筋、これが侍が使うとされる心眼と呼ばれる物なのだろうか。


「ガッ……バカ……な……ギニャアアアアアアアアアアアッ!!」


クラーケンは最後の一言を言い切れず肉塊となり四散した。


辺りには黒い血と肉塊が飛び散ちり青い炎が燃えている。その中心には黒く赤い光が走るナイフの様な何かの欠片があった


「やったな……」


辺りに静寂が訪れる。

竜剣は既に顔を拭いナイフの様なそれを懐から用意した機械のケースのようなもので回収し歩いてきた。


「大丈夫か? 隆誠」


「頭がかなりぐらつくけど何とか……」


頭の中が真っ白になり目の前が何も見えなかったが少しずつ前が見えてきた。

この前の俺は倒れたが今回はすぐに体調が戻った。真希奈のリザードマンのおかげなのか自分が成長したのか。


「まあなら良い。クラーケンの体内からダーインスレイヴの欠片と思われしものは回収しておいた。まさか貴重な研究対象を捕虜に使うとは予想外所の話では無かった。相手も追い込まれているのか。さて……扉を開けるか。まあ大体察しは着くが。こんな悪趣味な場所に長居もしたくないしな」


竜剣は研究室の奥にある鉄の扉を開けた、するとすぐに血と何かの腐敗した臭いが合わさった物が辺りに広まった。


「まあ……あの感じゃそうなるよね」


中には白衣の科学者達が腹や胸を刺され皆息絶えていた。恐らくクラーケンがやったのだろうか。

俺は吐き気に襲われその場にうずくまる、それに心臓の辺りが脈打つ様に痛い。


「行こう、俺達にはもうどうしようもない。見ていても辛いだけだ」


竜剣は部屋をそっと出ていこうとした。その顔は寂しさとも、悔しさとも、怒りにも見える表情だった。


だが俺はそこでふと声が耳に入った。


「父さ……ん」


「生存者が……中に生きている人がいる!!」


その感情はまた初めて感じた感情だ。

人を救えるかもしれない……初めての嬉しさが、安堵がそこにはあった。


竜剣はすぐさま死体の山の中の1人の少年の元に走った。少年は脇腹に怪我をして血を流している


「大丈夫か!!」


少年は呼吸が弱く意識が朦朧としている。このままであれば死ぬのは時間の問題であろう。


「しっかりしろ、俺達は君を助けに来た、絶対に助かる……いや助ける!!」


竜剣はすぐさま措置を施し背中に抱えた。


「急ぐぞ、早急に外に出て基地に連れて帰る。このままでは少年も死ぬ」


俺達は急いで来た道を引き返し走り続けた。

途中の敵は殆ど狩り尽くしており居なくスムーズに基地の外には出られた。あとは廃ビルを少し走ればすぐに地上だ。


「この廃ビルを出れば転送で帰れる。あと少しだ!」


すると通信装置から再び緋崎の声が漏れた。


『応……しろ……応答しろ竜剣、隆誠!!』


「つながったか、生存者一名確認、あとダーインスレイヴの欠片は回収しておいた。転送装置の準備を!!」


『それどころでは無い、気をつけろ!! その先に配備させていた外部からの侵入者を監視させていた監視班の隊員が超強力な熱源反応により消失した。早くその場から』


すると突然通信装置が止まり竜剣が立ち止まった。


「おい!! どうした緋崎!!」


すると先から甲冑の歩く様な音が聞こえてきた。


「全く持って変わらんな竜剣、貴様の正義の心とやらを見ていると反吐が出そうになる」


向こう側から何者かが近寄ってくる。辺りに金属の当たる音と刃物が擦れる音が響く。

途端に空気が、空間が重くなるかの様な威圧を感じた。


「お前は……やむを得ない隆誠、この少年を連れて下がっていてくれ、お前達には勝てない相手だ。いや、俺にも勝てるか正直確信が持てない」


俺は竜剣から少年を受け取り物陰に下がった。竜剣のその焦った表情、俺には一瞬だが見えた。

竜剣ですら焦るその様子にただならぬ状況であるのは察した。


「なぜお前がここ居るんだ、イグニス」


「何だ、久しぶりの宿敵との再開じゃないか。そんな険しい顔をせずとも良いだろう」


その巨大な槍を構え全身を甲冑で覆った悪魔、イグニスは圧倒的な覇気を周りに放っている。

先程背後に感じた気配と同じ、いや遥かそれ以上の物を感じた。


「悪いがお前に構っている暇は無い。早々に退いてもらいたい」


「そうか。まあこちらからも同じ様に返させてもらうと悪いがお前らにはダーインスレイヴの欠片を渡してもらいここで死んでもらいたい」


「そうか、だがこちらも悪魔に味方を殺され対象物を持ち帰れず拐われた科学者を救えずと言ったら死んだ後も司令に合わせる顔が無い。無理にでも退いてもらうぞ」


「流石は聞き分けの悪い地球人の雑種だ、それらば仕方が無いか」


イグニスが槍を構えると途端に炎が吹き出る。同時に竜剣も刀を召喚し居合いの構えを取った。


「死んでルシファー様の糧となれ!!」


イグニスはこちら側に高速で移動し槍を竜剣に振り下ろした。

動きが全く見えない、今の一瞬で何が起きたのだろうか。

しかし竜剣はその目視不可なその攻撃を受け止め素早く斬撃を放つ。


傍から見ると何が起きているのかわからない、お互いが高速で移動しながら一進一退の攻防を繰り広げている。

それは先程のクラーケン戦の竜剣の動きのそれとは全くもって別次元の動きだった。


「流石、四天極(してんきょく)幹部、火星の管理者にして『炎鬼将イグニス・マーズ』といった所か。」


「どうした!!平和ボケしたせいで腕が鈍ったか、『魔穿断(まがたち)の竜剣』!!」


「生憎あれからも平和と呼べる状況は無くてな、お前こそ長い封印で腕が鈍ったんじゃないのか?」


その竜剣の白い軌跡を残し静かに対象を葬る不可視の刀裁きとイグニスのあらゆる存在を否定し破壊し焼き尽くすように燃え盛る槍裁きがぶつかりあい、周囲には突風と炎が飛び散り瓦礫と埃が舞う。

影に隠れている自分達も正直かなり危険な状態だ。


「どうした、全く本気を出していないではないか。そんな餓鬼2人を巻き込まない為に本気を出さないのか?このままではあの2人だけでなくお前も死ぬハメになるぞ?」


竜剣とイグニスの槍と刀が鍔競り合いになり辺りの地面が歪み火花が散る。

天井からは砂ぼこりが落ち地面は微かに揺れていた。その迫力は今までに見てきたそれとは全く違う別次元の物だった。


「ッ……無理か……!!」


「お前が本気を出さないと言うのならば私も本気を出すまでだ。烈槍・炎花、出力60%、ストライクピアーズ!!」


次の瞬間イグニスの槍が炎に包まれ完全な炎の槍となった。そして炎の 勢いが増すと同時に槍を構え一直線上に熱線を放った。


竜剣は間一髪で回避したが撃ち出された熱線は壁やあらゆる物を吹き飛ばし壁に穴を開けた。

俺は離れた柱と瓦礫の影に隠れていたがその後ろにいても肌が焼けるような熱さを感じた。


「当たっていれば楽に逝けた物を……」


「このままでは僕は大丈夫でも隆誠と少年が危険か……ここは退くのが得策かね」


次の瞬間竜剣はイグニスを弾き出し体勢を崩しその隙に叫んだ。


「隆誠、少年を連れて基地まで全力で駆ける、急げ!!」


その言葉を聞き俺は少年を担ぎ竜剣の元へ走りそしてビルの外へとひたすら走り続けた。


「戦場で相手に背を向け逃げるとは……腐ったな竜剣。その騎士への愚行、その命を以て地獄の釜の糧とする!!」


後ろからイグニスが槍を構え突撃して壁やあらゆる物が破壊される。後ろから迫る絶対的な恐怖から俺達は必死に走り逃げ続け1階へとたどり着き外の光が見えた。


「聞こえるか、緋崎!!」


『ああ、ようやく回線が復活した、今ゲートを開く!!』


外に白い光が見えそこには基地の内部が映し出されていた。あと少し……そう思った次の瞬間、背後からまたかなりの熱気を感じた。それも先程の熱線以上の物を。


「絶対に逃がさん……炎花出力100%、必滅炎星(アナイアレイト・コロナブラスター)!!」


途端にイグニスの手元を離れた槍は炎の塊となり空を切りながらこちらに飛んできた。

間に合わない……ここで死ぬのか……だが次の瞬間竜剣が俺と少年を庇いゲートに対して突き飛ばした。


途端に背後に身を焼かれる様な熱さを感じ吹き飛ばされた。目の前がぼやけ意識が薄れていく……周りは一面の紅、炎の眩しさに目も開けられず、またしても意識は光の中に消えて行った。


そうだ、結局生きて帰るなんて夢は潰えた。


全ては無意味。


全ては夢。


結論は最初から決まっていた。


だがここで終わるのがこの話では無い。いや終わっちゃったら世界が悪魔に支配されて終了だからな。

この話はそんな何のためにあるのかわからないバットエンドの話では無い。


むしろようやくここでこの話は始まりを迎えた、要するに序章の終了だ。

始まりはここに示された。



と言ったわけで序章終了です。ここまで視聴ありがとうございます。次回からこれといってなんか変わる訳ではありませんがようやく話が動き始めます。

ダーインスレイヴを狙い動き始める2つの組織と新たなる勢力や悪魔の精鋭である四天極、そして1人日常を送っていた隼人、とりあえずそんな感じの話が沢山来るので期待してくれる人は期待していてください(笑)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ