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蒼き閃滅のドラゴンハート  作者: ドラソード
プロローグ
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第6話(後編) 戦うという意味

第6話(後編)

戦うという意味



周りの障壁が完全に展開され俺と竜剣はお互いにフィールドの反対側に立った。


「じゃあ……行くよ」


竜剣の雰囲気もさっきまでとは全く違う、真剣な表情だ。


「この日本刀に限らず君の体の一部が触れたら終了、こちら側の勝ちと言うことで?」


「ああ、手段は問わない、触れたら終了だ」


フィールドの外からは他の隊員の声が聞こえる。


「竜剣さんに直々に稽古を付けてもらえるのか……?あの少年」


「なる程な……あの少年が噂の新入りの少年か」


「まあ……結果は見えているけどな


俺はこの前悪魔と戦った時に自らの腕に握られていた光の感覚をできる限り思い出す。


確かに俺は武器を使った事などない、あの時になぜあそこまで光の剣を使えたのかはわからない、恐らく能力に目覚めた事が関係しているのだろう。


俺は日本刀を鞘から抜きこの前の感覚を思い出しながら竜剣に向かい日本刀を振りおろした。


「たあァッ!」


竜剣の動きが想像以上に速い。それにこの前の光の剣と違いかなり重くうまく身体が動かなく全く手応えを感じない。


この前の魔物の時とはお互いに動きから違う、それに恐らく能力を使えていたとしてもこの動きには着いていけないだろう。


竜剣は闇雲に突撃してくるゾンビ、悪魔もどきとは違いこちらの手を一つ一つ完璧に見切り無駄の無い動きで避けている。


「遅いね、闇雲に振り回し過ぎだ」


やはりこの前の様には行かないのだろうか? 体が前回と違い全く動かない、まるで小学生の戦いごっこみたいだ。それに刀の重みも加わり刀を振るうだけで限界になっている。


「まだまだッ!!」


「今度は型を気にしすぎて軸が逆にぶれている」


刀が音を立てながら空を斬る。

竜剣は汗一つ出さず、無駄な動きを見せず確実に一手一手を避けている。その顔には表情1つない、集中した、いやむしろ何も考えていない様な顔にも見える表情だ。


「はぁッ!!」


今度は今までとはパターンを変え一撃一撃を軽くし様々な角度からの攻撃に変えてみた。


頭の中から常識を消しとにかく触れようとあらゆる事を試行錯誤し刀を抜く、だが結果は変わらない。

何度も刀が空を切る音だけが響き渡る。


「どうした? 人に刀を振るのは怖いか? 刀の動きや表情が濁っている。これが戦うと言う意味だ。死がそこにある、文字通りの死闘だ。さあ俺は刀くらい大丈夫だ、思う存分殺す勢いでかかっていいよ」


「……ふぅ、ハァッ!!」


刀は変わらず空を斬る。その間も竜剣は何もせず表情一つ変えずただこちらの攻撃を避け続ける。


「当たれッ!!」


「先手を読んでいない、今度は当てることを考え過ぎだ」


何度も、何度も刀を振り下ろす、だが毎回結果は変わらない、自分の中では確実に当たる範囲に感じていた、だが物に当たったと言う感覚が全くない。


「……んー……」


竜剣は俺の攻撃をよけながら何かを考えている。


「青いね……今の君にはやはり、と言うか当然だがまだ武器を振るう重さが無い」


突然竜剣が口を開いた。


「武器を振るう重さ?」


「まあ確かに君は能力に目覚めた。こうして今刀を振るっている。しかし君にはまるでその意味が感じられない。まあ戦いに関わったことがない人間、それも子供なのも確かだ。だが今の君はただ偶然能力に目覚め、僕達を流れだけで手伝おうとしているのが見え見えだ」


「……!!」


「図星、か」


いや、俺には戦う覚悟も死がそこにあると言うことも理解しているつもりだ。現に仲間の死も見た。悪魔に殺されそうにもなった。


「まあ別にそれがどうしたって事ではないし僕にもその気持ちはかつてあった、が……これから君自身の意思で戦っていく、というのはならばそれでは確実に誰も殺せないし逆に殺される、それでは足でまといになられるだけだ」


竜剣は淡々と告げていく、その口調からは今までの雰囲気は消えあの時最初に出会った和服の男と被って見える。


「武器を振るう、と言う事は誰かを殺すと言う事だ。だが今の君の振り方には目の前の誰かを殺す、と言う意思が欠けている。まるで刀を振っているだけだ」


「誰かを殺す……」


「誰かを守る、と言う事は誰かを殺す訳だ。普段君も何気なく見てるであろう子供向けアニメ等でもいい。ほとんどの敵は倒され事実上主人公により『殺されている』筈だ」


言われてみればそうだ。ヒーローが良く悪を倒す、とかやっつける、等とよく表現されているがそれは1つ何かを殺している、何かを守るために何かを奪っている、と言う事だ。


だがそれが俺の刀の振りと何か関係があるのだろうか。


「まあ、今の君には覚悟と死に対する恐怖がかけているとだけ言っておこう。実戦の恐怖を知らな過ぎる」


そこまでいった次の瞬間、竜剣が今までとは明らかに違う構えをとった。


「見せてやる、戦場、戦いと言う物の一部を」


次の瞬間竜剣は一種のスキも見せず光のような速さで腕を振るった。途端刀の刀身が音を立てずに寸断されていた。


「刀が……!?」


刀の刀身部分が綺麗に無くなっていた、乱れ無く、全く同じ大きさに、12、13分割程に切られ地面に落ちていた。


「仮に僕が最初から君を騙していたとしよう。そして本当に殺そうとしていたのならば君はその刀と同じになっていた、今僕は一瞬の内に13回、手刀で刀身を切り落とした、これが理解できるかい?」


冷や汗が止まらない。刀を? 手刀で? 斬った?


「これが、戦いだ。これが、殺意だ」


今俺の真横を刀すら切り裂く手刀の刃が通り抜けていた、その事実が1秒、2秒と進む事に増して恐怖として襲ってくる。


「現実は、アニメや漫画程甘くない。これが、現実だ」


心臓が脈打つ、昨日まで知らず知らずのうちに俺は最強の能力者と言われたことに自惚れていた、これは事実だ。

それならば流れでそのうちどうにかなるだろうと言う考えが俺の反応を鈍らせている。


今の斬撃を受けた事によりそんな感情は一瞬できっぱり頭から消えていた。変わりに死に対する恐怖が再び蘇った、あの隼人や悠里の殺された情景が蘇り目の前に映し出される。


「確かに君はこの前はあの状況で追い込まれたことにより能力が発現した。魔力の量だって普通の一般人、いや僕達ですらたどり着けない量だったかもしれない。しかしハッキリ言わせてもらう、今の君にはあの力を発揮する事はできない」


何も言い返すことができない、正論だ。俺はいつの間にか竜剣に圧倒されていた。


「今は目の前の存在に対する感情を無にしろ。君がもし、それでもまだ本当に誰かの為に戦いたい、世界を救ってみたいと思うならば覚悟を決めろ。逆に目が覚めたならその刀を置け」


俺はその場に立ち竦んでいた。竜剣の口調が今までにないほど強くなる。この威圧感、これが本当の戦士の闘気と言う物か。


「これが最終手続きにして最終試験、もし君が本当に悪魔を倒したい、世界を救ってみたいと思うならば……さあ君の全てを、意思を試させて貰う。さあ隆誠、僕に、君の本当の力に触れて見せろ。君の本心を、君の魂の鼓動を見せてくれ!!」


「俺の……魂の鼓動……」


今頭の中では様々な事が錯綜していて混乱している、だが今の状況でやるべき事は完全に把握した。


ああ、目が覚めた。俺は無言でその刀身の無い刀を握り締め竜剣へと再び向かっていった。

体が急に軽く、動きがまた速くなってきた。まるでこの前の悪魔との戦いの時の感覚に似ている。


「動きが変わった……ッ!!」


頭の中がやけに冴える。身体中にさっきまでとは段違いの感覚があった。

言葉とやらが先程よりもかなり濃く浮かんでくる。気が付くと俺の体はうっすらとだが青い光を纏っていた。


「魂源に再び辿り着くまで後少しの用だね……」


俺の握る刀身が無いはずの刀、しかし良く見ると青色のオーラの刀身が安定こそしていないもののできて来ていた。


「俺は……もう悠里や隼人、俺みたいな悪魔の被害者を生みたくない……」


「そうだ、自分を深く見つめ直せ。僕の斬撃を見て恐怖を感じていただろう、普通の人間ならあそこで止めていたはずだ。だが君は違う、こうして魂属の覚醒へとまた一歩、一歩と進んでいる!!」


「悪魔を……闇を……刃向かう敵を全て……殺す……肉一欠片も残さず葬り去る閃滅の一撃……」


光が肥大化し薙ぎ払うと同時に衝撃波が辺りの障害物を吹き飛ばす。


「君が本当にやりたいと言うならば、僕は君に力を貸そう。光一さんが目指す……誰も死なない平和の世界の為に」


周囲に光の粒子が溢れ出す。気が付くとこの前の悪魔戦時、はたまたそれ以上の力が体の底から湧いてくるのを感じた。


「俺はまだ未熟者だ、その剣は直ぐに折れ、守れどやがては壊される。速さは鳥をも追い越せず、鋭さは茨の棘にも届かない。だが俺には輝きがある、無限の可能性を秘めた、あらゆる物を打ち壊せる蒼き竜の息吹が、可能性の『魂』の波動がッ!!」


言葉が浮かぶ、この前の悪魔との戦いの時よりかなり強く、俺の頭の中で響く。


「本当に良いんだな? それが君の答えか。そこから先にはもう日常なんて無いぞ?」


「これが俺の……答えだ!!」


光が辺りを照らす。


さあ腹を括るぞ。


『我が魂属は竜、先方より伝わりし万物を司る竜の血筋を力とし、全ての根源とし、地を喰らい、天を裂き、海を吹き飛ばし、やがては星をも貫きよう。星海より来でよ夢幻、御剣•天翔『蒼空龍星剣』ここに示せ……絶対の竜爪‼︎』


途端に体のオーラは輝きを増し俺を包み込んだ。辺りは眩い光に包まれ外から見ていた悠里は唖然としている。刀の青いオーラの刀身は確実に刀の刃となった。


「再覚醒終了、とね。見せてもらったよ君の本音……さてと、僕も少し本気を出させてもらいますか!!」


竜剣は拳を握り締めた。俺もこのオーラで強化された刀を握り締め向かっていった。


「完璧だ!! 完全に魂元にたどり着けたな、まさかここまでの力だったとは……これは歴史を変えるに値する強さだ!! 素晴らしい……最高の成果だ!!」


次の瞬間竜剣はこちらに一瞬で移動しその拳を突き出した。その拳は俺の腹部に直撃し吹き飛ばされVR空間の岩にぶつかり砂埃を立てた。


場外では見ていた隊員や悠里が心配そうに見ている。


「さあ・・・来い!! 今の君には痛みはさほど無いであろう。それが魂の力、魂属だ!!」


次の瞬間俺は砂埃を払いのけ竜剣へと飛んでいった。オーラの刀で何度も何度も切りつける。


お互いの刀、拳が強く当たり青と白の光が周りに飛び散る。既に訓練は終わっていたのだが体が斬ることを止めない。


自分でもわかったが今、俺は殺意に、闘争本能に意識を喰われているのだろうか。とにかく目の前の人間に対しての攻撃をやめられない。


「どうだ、今までとは明らかに違う力だろう? これが魂の力、君が望んだ悪魔を倒せる希望の力だ!!」


俺は刀を構え右から振り上げる体勢に入った。竜剣はまた回避の体勢に入った、がそこには


「刃が・・・・・もう一つ!?」


俺が刀を振るう方向の逆から更に体のオーラで斬撃を作り挟み撃ちとした。


「この一時でここまでの技術を……だがッ!!」


竜剣は普通の人間なら無理であろう強引な挙動で上に飛び上がろうとする、だがそこには


「まさか驚かされたよ、はははは……刃がもう一つあるじゃないか、あっぱれだ」


次の瞬間3つのオーラの刃が直撃し光をあげ爆発した。周囲に再び砂埃が舞い散る。暫くの静寂の後に竜剣は再び姿を表した。


「当てたか……!?」


「いやー、まさか、まさか攻撃を当てられるとは、僕の考えの負けだな」


「当てられるとは……?」


砂埃が晴れ竜剣が姿を表した、服が一部破れて汚れており当たった事が確認された。


しかし体にはほとんどダメージが通っておらず傷一つ無い。


「あっぱれ、だ。君と来たら数分で能力を使いこなすとは……お手上げだ」


「つまり自分は……」


「ああ、合格だ。君は真に正式な基地の隊員となった。ようこそ、秘密結社セイグリットへ」


気が付くと竜剣は手を差し伸べていた。


そうだ、俺は変わり映えの無い平凡な毎日に飽き飽きとしていた。

昔は確実にあった俺の中の意思、しかしありきたりな毎日を過ごし現実を突きつけられていくうちに俺の中の『正義の味方』になるなんて言う夢は無くなり、中学生の癖して冷めきった考えを持ち現実しか見れない奴に成長ようとしていた。それは事実だ。


恐らく俺は知らず知らずのうちに今回の騒動でその失われた夢を、その夢に再び近づけるけるんじゃないかと内心ワクワクしていたのかもしれない。


つまり俺も内心こんな事態に巻き込まれて楽しんでいたのかもしれないと言う事だ。


今までは地上でのこれからや日常が引っかかりこの意思を阻害し隠していた、だが今純粋に戦うことだけを意識して気が付いた。


『結局俺楽しんでんじゃん、この非日常を』


余分な事を考えて余計に話をこじらせていたのは自分の心だった。

なんだか笑いが込み上げてくる、自分がまるでアニメやなんかの主人公になった気がしてだ。


俺はその手を受け取り握り締めた。良く鍛えられた、武士の手だ。


「こちらこそ、人類の明るい未来のため、宜しく……お願いします」


そうだ、今この瞬間世界を救う、最初の『契り』が交わされた。


「さて、これから大変だぞ?」


俺と竜剣はお互い微笑みフィールドを後にした。






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