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Baby Blood  作者: YAMIDEITEI
26/27

第二十五話

 一人、傷付き戻ってきたのは、玉座の間。

 玉座の影に身を隠す。寄りかかり、荒く息を吐き出した。

 肌のぬらついた感覚は、血か、汗か。消耗は、自身を騙せぬ程度には根深く色濃い。

「本気を出せば、直ぐに終わる。何の意味も無い、何十年かに一度の手間、面倒。

 退屈な時間の繰り返しだと――十年前のあの日も、私は、そんな風に考えていましたの」

 他に気配の無い城内に、俺を追うリズの声が響いている。その声は、言葉は、熱っぽく。真摯で、それから懐かしむような優しい色合いを湛えていた。

「怠惰な私を掻い潜り、宝石を囲った人間達。何時に無く強力な人間の軍勢。

 多勢に無勢を危機と呼ぶならば、それはそう。

 けれど、私には、分かっていたのですわ。その時は、信じていたのですわ。

 このリーゼロッテ・アーベントロートに、他者が齎す危機等存在し得ず、又、害する事が叶う何者かが在ろう筈も無い――と」

 失った血肉は、どれ位か。

 失した力は、どの程度か。

 最初の攻防、唯、その場を逃れる為だけに、左手の万全を失った。

 次のやり取り、追い縋るリズを突き放す為だけに、右足の自由を失った。

 その後の、幾度かの攻防で何処がどれだけ傷んだか、考えるだけ憂鬱になる。

 魔女は、強い。正面切って戦ってどうにかなる――そういうレベルを超えて、強い。

 こと、俺に対する彼女は、カミラやそれ以外を相手にした時の余裕や遊びというモノが一切無く、余りに冷徹で完璧だった。

 最初から、最後まで完全無比な力押し。

 持てる力が究極ならば、まさにそれこそ戦闘論理そのものか。「本当に、愛してンのかよ」と聞いたら、「愛しているからこそ、ですわ」と来たモンだ。

「やれやれ……だ」

 だが、何も俺とて、無考えに退き、隠れた訳では無い。無論、あれだけの見栄を切っておいて、臆病風に吹かれた訳でも無い。

 リズは、強い。もっと言うならば、強過ぎる。だが、強過ぎる彼女は、競うべき相手を持たなかっただろう。その場を逃れた俺を、仕留め切れなかった事がまさに証左だ。

 つまり、彼女は、戦い慣れていないのだ。『狩り』では無い、『戦い』を殆ど知らぬ。

「愛しているから」という発言、又、今も続くリズの告白は、それを何より示していた。

 馬鹿正直に宣戦布告しておいて、搦め手に頼るのは、実にナンセンス極まりないが。

 それはある種、矜持の別問題。こうして、僅かでも時間を置けば、吸血鬼の強靭な肉体は、幾らかは、活力を取り戻すだろうし――

「もう、お分かりかとは思いますが――そんな私の前に現れたのが、ディルク様でした。

 黒騎士団『赤犬の群』の長。何でも、幾つもの戦場で、随分と派手な御活躍をなさっていたとか。まぁ、それは、兎も角として……

 フリードベルグの軍を囮にした貴方様は、人間の刺客として、切り札として私の前にお立ちになったのですわ。丁度、あのカミラ様と同じように――」

 ……俺のマントを被ったカミラの亡骸を見れば、負けられない想いが強くなる。

「当時の私も、貴方様が、人間にしては上出来な部類だという事は、分かっていましたの。

 ですが、それだけ。だからといって、一体何が変わりましょう?

『図式』が崩れる訳も無い。澱んだ私の時間がどう変わる訳でも無い――ふふっ、愚かな私は、蒙昧にそう信じ切っていたのですわ」

 リズの馴れ初め話は、終わらない。訥々と、告白のような思い出語りが続く。

 但し、その声は、ゆっくりと此方に近付いて来ている。

「澱の魔女とは、檻の魔女とも表します――

 そう言ったら、ディルク様は、不思議そうなお顔をなさっておいででしたわね。

 私の時間には、何時も変化が無かった。永久を約束されていた私は、時間と生に飽いていた。まさに、『魔女の時間』は、私自身をも例外に取らず、閉じ込め続ける檻だったのですわ。あの日、あの時、あの瞬間までは――」

 一体、何が聞けると言うのだろう。

 いい加減、十年前の俺を、恨みたくなる。

 何をした? 何だって、お前はこんな厄介なヤツに心底惚れられるような真似をした。

「ええ。私には、殆ど『その気』がありませんでした。

 ですから、時間を掛けるのも馬鹿馬鹿しいと。

 ディルク様の御命令を待つまでも無く――最初に向かってきた、馬鹿共の一団をあっさりと片付けましたわ。早々と、残ったのは、御自身を含むたったの六人だけ。

 ああ、内一人は、貴方様が『御庇いになった』馬鹿の内の一人でしたわね」

 らしくない真似をするじゃないか、昔の俺。

 右手には、抜き身の黒犬。握り締めた左手の中が、じゅくじゅくと焼け爛れている。その掌の感覚は、とうに無い。傷んだ右足は、まぁ、何とか動かす事は、出来る位だろうか。

 長口上が、有り難かった。万全には程遠いが、最低限の準備は、整っている。

「実は、それにも酷く失望しましたわ。

 結局、この方も、人間らしい方なんだな――とか。いえ、別にそれ自体を責めている訳では無いのですが、それでこの私に勝とうとは、余りにおこがましいお話。

 結論から申し上げますと、分かっていなかったのは、私の方だったのですけれど」

 ……という事は、勝ったか、十年前の俺。

 もし、そういう事ならば――今、まさに魔女とやり合う俺には、朗報だ。お前の余計な健闘のお陰で、ヤツは二度と油断してくれそうには、無いけどな。

「御存知の通り、私の能力をして、白兵主体の相手に敗れるのは難しい位。

 あの時のディルク様の御指示も、今と同じく的確でしたわ。一瞬で状況を把握した貴方様は、部下達に散開を命じられました。私の狙いが『甘い』と見るや、多角的な肉薄を仕掛け……まぁ、それでも、此方にとっては、鬱陶しい位の話だったのですが」

 キャストに殆ど時間を要しない、リズの魔術『奪う者』に弱点らしい弱点は無い。だが、強いて言うならば、指定空間ごと叩き潰すその大雑把な照準か。

 唯の雑兵にそれが叶うとは思えないが、訓練された一流の戦士ならば、外せる。知っていたならば、その一撃必殺『だけ』ならば。

「結局、数十秒と経たない内に、数は半減。ディルク様と、お庇いになった馬鹿が一人。残った一人は、大して印象に残っていませんけれど。

 数を減じれば、私の手間もそれだけ省ける。ディルク様は、勝負を賭ける覚悟を決めたかのように、私にお向かいになりましたわ。二人を前衛に、自らが続き。

 一人を殺し、後は二人。それで、終わる筈だったのです。

 不意に。本当に、不意のタイミングで。貴方様が、先にお庇いになられた男の腹から、黒い剣が生えるまでは!」

 静まり返った城に、リズの感極まったような声が、響き渡った。

「思えば、私は、油断しておりました。

 攻防から、襲撃者の実力を概ね理解し、知らぬ内に安心しておりましたのね。

 考えられないタイミングでしたわ。ディルク様は、『私がその時まで理解していた貴方様』からは、有り得ない実力を発揮し、お仕掛けになられましたのよ。

 それも、目隠しと奇襲の為だけに――先程、自分で庇って見せた部下の命を切り捨てて」

 中々、どうして。我ながら。

「結論から申し上げれば――

 貴方様は、この私と相対した瞬間から、徹底して『手加減』なさっておいででしたのね。

『部下』が残っている間は、御自身に危機及ぶ事も無かろうと。彼等が一方的に敗れ、殺戮されていく様を冷静に眺め、デモンストレーションに性格まで偽って見せて。

 徹底して、私が見誤るだけの材料を揃え、待っていた。

 私を――この一帯で、『夜の主』と呼ばれて久しい私を相手に『手加減』ですわよ?

 ええ、私、すっかり騙されましたわ。何て事は無い、唯の人間の剣士が、いきなりあのカミラ様を上回る使い手に化けたのですから――

 自分に何が起きたのか、流石に一瞬、理解出来ませんでしたわ。件の部下ごと、刺し貫かれた事を自覚したのは、たっぷり一秒は過ぎた後」

 リズは、そこで一旦言葉を切った。鈍い音を立てて、扉が開く音がする。気配を完全に殺し直し、密かに視線をやれば、開け放った扉の前に、悠然と彼女が立っている。

 陶酔したような表情を、その顔に貼り付けたまま、ゆっくりと、最後の決戦の場になるであろうこの玉座の間に足を踏み入れた。

「それが、初めてでしたの」

 リズは、潜む俺に気付いているのか、いないのか。

 真っ直ぐに俺の潜む玉座に向けて歩を進めながら、ほうと、溜息を吐く。

「私の身体に傷を刻んだ、勝利した……初めての男。初めての存在。

 ふふ、心を奪われるというのは、あの事を言うのでしょうね? 意地の悪い顔で、気障に『悪いな』何て仰る貴方が急に愛しくて。誰よりも、美しく見えて……

 自分が、これから滅ぼされるのだという事も忘れて。貴方様に見入っておりましたわ。

 事実、あのパウル達が邪魔をしなければ、そうなっていたでしょう。いっそ、それでも良かったのかも知れませんけれど――」

 玉座の前で、足が止まる。

 ぞっとするような至近距離。両者の間合い。

 気付かれているならば、御終いだ。流石に、動悸が早くなる。

「どちらにせよ、あの瞬間から、私の錆びた時間は、動き出したのですわ。澱の魔女が、自身の檻から逃れ得た――それは、偏に貴方様との出逢いのお陰だったのです」

 そこで、リズは、話を結んだ。

 滅びても、滅ぼされても良かった――そう言うリズの真意は、分からない。だが、あながち完全な冗談を言っている風にも見えない。遠い日を懐かしむリズは、ハッキリ隙だらけ。

 手に、力が篭る。残った力を、集中力を研ぎ澄ます。

 気付かれて居ないならば――勝負。

「――っ!?」

 爆音。

 こういう小器用さは、元人間故か。とうに詠唱を終え、発動の時を待っていた魔力の玉が、玉座に炸裂する。目の前で起きた爆発に、リズは、小さく息を呑む。

「やり直そうぜ、その最後」

 俺が飛び出したのは、その一撃と全く同時。一節の詠唱も、俺ならば超えられる。この距離ならば、超えられる。自身に言い聞かせ、姿勢を低く。あのカミラと同じように。

 やはり、正面衝突以外の戦いには、些か鈍い。

 禍々しい空気が全身を包んだのを理解したが、そちらにはもう構わない。身を翻しかけたリズ目掛けて、一閃。全身全霊を込めて、細い頸を狙って、黒犬を振り切る。

「――っ、あっ……!」

 鈍い、手応え。そして、女の悲鳴。肉を裂き、骨を断つ感触。リズの手が、あっさりと回転して宙を舞う。ぱたぱたと噴出した血が、頬に当たる感覚が生々しい。

 俺は、それで、この攻防に敗れた事を理解した。

 斬撃の行方を確かめるように待った後、空間が、圧縮。

 冷静に自覚出来たのは、そこまでだ。

「……ぐあっ……!」

 膝が砕ける。腕がひしゃげる。肉が出鱈目に削ぎ落とされ、視界が真っ赤に染まる。

「ぁ……ああああああ、畜生!」

 我が身を蝕む激痛に、凡そ自分のモノとは思えない無様な声が漏れた。

 右腕は捻じ切られ、両足はぐちゃぐちゃに押し潰された。どうする事も出来ず、床に崩れ落ちる。気迫の一撃を見舞った黒犬も、既に床に黒い破片を散らしている。

「――――」

 うつ伏せに倒れ、呼吸がし難い。激痛と消耗に、最早、満足に声も出ない。

 全力を振り絞って仰向けに転がり、何とか首を起こしかけると、視線の先には、左手首を押さえるリズが居た。

 手痛い一撃を被りながらも、俺を見下ろす視線には、憎悪のようなモノは無い。

 むしろ心苦しい事をしたような、そんな沈痛な顔をしていた。

 それで、今一度理解した。

 コイツの恋心を、あのパウルがからかった恋心を。魔女の恋とは、どうしてこんなに迷惑で、異常で、愛しいモノなのか。俺には、サッパリ分からない。

「……既にパウルは居りません。けれど、次の儀式も、私が必ず、成功させますわ」

 こればかりは、外見の印象を裏切らず。肉体的な強度は、然程高くは無いのだろう。見た事が無い位に消耗し、荒い息を吐いたリズが、俺の顔を見て、そんな風に決別を言った。

「トドメを……刺すか」

「ええ」

「加減が無ぇなぁ。ああ、思い……直した。死にたく無いから……お前を、受け入れる。そう言ったら、勘弁、して……くれんのかよ?」

 喉から血が溢れそうで――声も出し難い。自嘲気味に言って笑い、激しく咳き込む。

 リズは、『想い』を馬鹿にされても、怒る素振りも無く。

「ええ、勿論。でも、ディルク様は、仰いませんわ」

 滑稽な位、自信たっぷりに、そんな風に言いやがる。

「俺を――何も知らねぇ癖に……」

「ええ、私は、貴方様をまるで知らなかった。正しくは、今も、知らない。

 精々が、言葉を交わしたのは数分。知るのは、一面。かつての戦いの中で伺ったのは、『負けたら、カミラに叱られる』だとか。そんな子煩悩な軽口程度。

 けれど、私は、十年、常に眠る貴方様だけを想い、見続けてきたから。この二ヶ月、常に貴方様と共に在ったから――分かるのですわ」

 リズの言葉は、酷く論理性を欠いていた。

 だが、存外に説得力はある。実際、俺は死んでもそんな事を言う心算は無かった。

 ……いや、この場合、恋心に没論理を感じる俺が、どうかしているのか。

「ああ、まぁ……不本意だが、お前の言……通り、だ」

 あの衝撃にも、決して開かず、握り締めたままの左手だけが、奇妙に熱を持っている。

 右腕と違い、千切れなかったのは、僥倖だ。

 ああ、しかも辛うじて動くじゃねぇか。こりゃ、通り越して最高だ。

 苦笑し、又咳き込む。肺が破れているのか、ひゅうひゅうと嫌な音がした。こんな状態でも平然と生き永らえ、まるで死を感じないのは、まさに吸血鬼の面目躍如といった所か。

「だぁら、きっ、ちり……殺せ。

 お前、の『やり直し』に付……合うのは、些か癪だが――

 少なくとも、『今回は』、お前……赦せそうに無ぇ」

 一言に、リズは、泣き出しそうな位、惨めな顔をした。

 何時も、何時でも自信に溢れ、余裕の表情を崩さない、そんな魔女が、俄かに信じられない顔をしている。

「笑って……見せろよ。人を、食ったような……いつ、もの、顔で……

 今だから……言う、がな」

 先程の意趣返し。

「お前みてぇな女、嫌い、じゃねぇ。

 性悪で、したたかで、それに……かわい、げも、ありやがる……

 正直に真実を述べたなら、俺は受け入れてたかも……知れ、ねぇぞ」

 口を利くのが辛い。だが、言うのは、半ば、本心。もう半分は、仕返しだ。

「……っ、っ、だって、ディルク様は、人間で、私はっ……! 人間を殺し――」

「――知らねぇ、よ。見ず……知らずの連中なんて」

 本心だ。傭兵の俺が最初の戦いに参加したのは、結局、金なのだろうし。

 あのカミラの件が特別で無ければ――描けぬ未来とも限らない。そんな風にも思えた。

「見くび、るなよ。……なぁ……?」

 俺は、誰よりも、この城の王に相応しかったんだろう? そう、思ったんだろう?

「非道い方。本当に、本当に――非道い方」

 見れば、リズは、何度も鼻を鳴らしていた。

 時折、小さく嗚咽を漏らし、まるで、童女のように、歳相応の顔をして。

 そんな姿に、少しの躊躇いを覚えないでもない。

 これを倒す事に――罪悪感を覚えないでもない。

 だが、自問すれども答えは変わらぬ。俺は、今生こいつを赦さない。

「一つ、頼んでも……いいか?」

 大きく息を吐き出すように言葉を吐く。

「何、なりと」

 美しい人形の貌を歪めたリズが、しゃくり上げながら応えた。

「最後に、抱きしめ、させろ」

「――――」

 このリズの顔を、何て表現したらいいんだろう。

 言い知れぬ、様々な感情が綯い交ぜになった顔。こんな時に、こんな風に言われれば、当たり前とも取れる反応。

 唯一つ、そこから当然の疑念が、抜け落ちていた事のみを除いたなら。

 こんな馬鹿げた提案が、文字通りの殺し文句になる――そんな事実を除いたならば。

「……どうした? 『命令』が聞こえねぇ、か?」

 戯言だ。従う意味も、理由も無い。なのに。それなのに。

「ぁ――」

 リズは、強い言葉に応え、ふらふらと俺の前に屈む。その無防備な身体を晒す。

 手馴れた女なら、かかるまい。リズに、自身で言う『生涯一度』の『正真正銘』の恋心が無かったならば、かかるまい。それが、間違いの無い下策の下策。下衆の策。

 腕が足りないからバランスが悪い。最後の力を振り絞り、僅かに身を起こす。

 ……奇妙な、愛しさを感じた。キスすら出来そうな距離で、長い編み髪が俺の肌をくすぐっている。僅かに香るリズの香は、普段の毒花の色には、感じない。

「いい女、だよなぁ?」

 そんな事実で、遅れて気付く。俺が、コレをどんな風に想っていたのかに。

 この唾棄すべき最悪の魔女に、どんな感情を抱いてきたのかに――

「感謝す……ぜ――」

 お前が、馬鹿がつく位、可愛い女だった事に。

 まさに、最初で、最後の機会だった。

 肘までの右手を背に回し、慎重に左手の中を握り直す。

 刀身の拒否に焼き爛れ、血濡れた手の中には、魔を払う鋼の星。娘が遺した宝剣の切っ先。僅か数センチにも満たない刃だが、この間合い、無防備なリズには、十分過ぎる。

「お陰で、俺は、お前に二度勝てる」

「……ぇ……?」

 強く、抱き締めた。詐術だけでは無く、半ば本気で。

 頬に口付け、耳を甘く噛む。その小さな背に、隠し持った刃を突き刺して――その姿勢のまま囁いた。

「『もろもろの血肉ことごとく滅び、人もまた塵にかえるべし』」

 抵抗等、無いに等しい。想いが、十重二十重にレイズする。この俺の魔力、あのカミラの比では無い。愉快な位、派手に吹き飛ぶ血肉。衝撃にも、抱き締めた腕を離さない。

「今更言うがな。恐らく、俺も、お前を愛してる」

 俺は、そんな風に、考え得る限り、最低最悪の勝ち方をして。

 至近距離で、茫と泣き笑いの表情を浮かべるリズに、優しくゆっくりと口付けた。

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