顔合わせ
俺、中岡大翔はこの寒空の下である場所に向っていた。俺は少年課の弁護士をしている。そしてこれから四人の少年達の担当をすることになるので今から引き取りに行くのが俺がこんな寒い中外に出ている理由。
「こんにちは」
警察署にある少年課の1室を覗くと疲れはてている一人の警察官と4人の少年達。
「遅いですよ」
明らかにホッとした様子で警察官の男が俺の方に歩いてくる。
「これ、この子たちの書類です。あとはよろしくお願いしますね。」
そう言い残して足早に去る警官。その後ろ姿を見送って俺は残された少年たちを見た。少年達も俺をみている。まるで値踏みするかの様にじっくりとみてくる。絡みついてくる視線がいたい。
「今日からお前らの担当をする中岡大翔だ。さ、ンじゃ、皆、帰るぞ」
俺が言うと少年らは明らかに拍子抜けした様子になる。鋭い目つきがふいとそらされた。
「帰るって、何処に?」
1人の少年が目を細めて聞いてきた。本当にわからないという様子で…大輝という名前らしい。書類には犯罪歴が10個以上記入されていた。
「決まってるだろ?俺の家だ。お前たちのな」
「何言ってるんだ、それは、アンタの家であって僕らの家じゃない」
今度はその隣の少年、隆弘がふてぶてしい口調でつげてくる。この子は犯罪歴に万引きという記入がぎ
っしり記入されている。
「これからは、俺とお前たちの家だ。俺のことはお兄さんとでも呼べ」
「馬鹿じゃねぇ?お兄さんってかオッサンだろ」
「まだ俺は25だ」
「オッサンじゃんかよ」
クスッと目つきも口も悪い少年が笑う。名前は雄大。どうやら喧嘩で相手を半殺し状態にして少年課に連れて来られたようだ。
もう1人の少年は俺が部屋に入った時からコチラを1回も見ようとしない。今も下を向いていた。
「それじゃ、行くぞ」
俺が言うと仕方ないというように少年らは立ち上がり案外と大人しく俺の後ろをついてくる。
これが俺とコイツラの
駆け引き生活のスタートだった。