34.一途な想い3(村松恵・中島夏樹)
また、早瀬くんと出かける機会が……今度は沙耶ちゃんも一緒だから――
「夏樹、聞いてよ」
「うん。嬉しそうだね」
「わかる? じゃーん」
「可愛い指輪だね。遠藤くんから?」
「そう。テルくんは色違いでお揃いのなんだ」
「へぇ、いいなぁ。ペアで何かつけるのって憧れるよ」
「いいでしょ。学校でしてると取り上げられるから、しまってるんだけど」
恵ちゃんが前みたいに悩んでいる感じがしない。
きっと、解決したんだね。良かった。
「で、夏樹は何を悩んでるの?」
「何でわかるの?」
「顔いっぱいに早瀬くんって書いてあるからね」
嘘だよね……? どうしよう、恥ずかしい。
「やっと告白する気になったのかな?」
「そんな! まだ、無理だよ」
「シュウくんと、何かあったの?」
「ううん。これから、あるの」
「告白するの?」
「だから、違うってば。一緒に、遊びに行くかも知れないの」
「夏樹はデートなんて絶対誘えないと思ってたよ。成長したんだね。お姉さんは嬉しいよ」
だったら良かったんだけれど……ね。
「早瀬くんの友達と……沙耶ちゃんも一緒なんだ」
「は? 悪いけど、シュウくんの友達だけ邪魔じゃない?」
「そんなこと言ったら可哀相だよ」
「何でまた、そんなややこしい組み合わせにしちゃったの?」
「私が決めたんじゃないよ。その早瀬くんの友達に誘われたの。だから、たぶん――」
「その彼と夏樹がセット、と」
やっぱり、そう思うよね。
「沙耶ちゃんは、早瀬くんと二人だったら行けないよね、きっと」
「何か、言いそうなことが見えてきたんだけど」
「行くって返事したら、どう思われるのかな?」
「誰に?」
「渡辺くん……早瀬くんの友達に」
「いや、もっと他に考えることがあるでしょ」
「早瀬くんと沙耶ちゃんの邪魔はしないように気をつけるよ」
「あのさ。夏樹、何しに行くの?」
「私だけ早瀬くんと話したままなのは、ずるいから」
「だから、あれはアタシが仕組んだことでしょ」
沙耶ちゃんに隠れて、早瀬くんに近付くのは嫌。ちゃんと、同じところから始めて、胸を張って気持ちを伝えたいから――
「ダメ。そうしないと、私も踏み出せないの」
「……ちゃんと、考えてるんだね。だったら、応援するよ」
「渡辺くんに……悪いかな」
「はっきり告白された訳でもないんでしょ。その時が来たらちゃんと夏樹の気持ちを言えばいいことだよ」
「うん。ありがとう」
「さて、そろそろ由希のお祝いに行こっか」
もしかしたら、由希ちゃんも……気のせいなのかな。




