表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一輪に両手を  作者: リン
84/120

26.天秤2(遠藤輝彦・村松恵)

 最近は、デートの約束もほとんどキャンセル……テルくんらしくない。

「ねえ、テルくん」

「デート潰したのは悪かったって」

「そろそろ、話して」

「……何をだ?」

 あの高校生と、絶対に何か関係がある。

「テルくんと友達だっていう高校生に話し掛けられたんだ」

「なっ! いつ? 何もされてないだろうな?」

「ねえ、ちゃんと話してよ。アタシに隠したら、誰に弱音吐くの?」

「……正直に話しても、いいか?」

「それを、待ってるんだよ。ずっと」

「あいつらをメグから遠ざけたかったんだ。何をするかわからない連中だからな」

「テルくんの様子がおかしかったのは、随分前からだよね」

「俺は目の敵にされてるからな。周りのやつがどんどん巻き込まれちまう」

 だから、アタシに冷たかったのかな。流石に、最近はちょっと不安だったんだよね。

 嫌われていたんじゃなくて、良かった。

「もっと早く、言ってくれれば良かったのに」

「言えなかったんだよ。俺は弱いからな」

「テルくんは、強いよ」

「情けねえけど、ビビってんだ。身体が言うこと聞かねえんだよ」

「それでも、アタシに何かあったら守ってくれる」

「もう少しだけでいい。時間をくれないか」

「何の?」

「俺にはまだ、自信が無いんだ。いざって時にメグを守ってやれるかどうか」

「もう、嫌だよ。アタシはテルくんのそばにいる。あのヒト達と会う時だって、一緒に行くからね」

「……どうしても、か?」

「どうしても」

 アタシは、守ってもらうだけの女じゃない。テルくんの辛さや痛みも、ちゃんと知りたい。

「わかったよ。連れて来るって話を通すから、次からな」

「絶対だよ。約束破ったら、一人で行くからね」

「絶対守るから、やめてくれ」

「うん。じゃあ、これでデートもできるよね」

「来週末は秋季大会、か」

 やっぱり、陸上が好きなんだよね。素直になればいいのに。

「シュウくんの応援に行こっか」

「……いや、まだ、ダメだ」

「何でなのさ。そんなに意地張らないで、好きなことやろうよ」

 何をここまで気負っているんだろう。

「何だよ、俺とデートするより、シュウを見てる方がいいのか?」

「アタシは、好きなことやってるテルくんが見たいの!」

「俺が好きなのは、お前だよ」

 あまり言ってくれないから、急に言われると困る。

 何か、恥ずかしいな。

「ごまかそうったって、そうは」

「メグ。俺が陸上やりたいって言ったら、応援してくれるか?」

「当たり前でしょ」

「それで、メグとの時間を削ることになったとしても、か?」

 それが迷っている理由だったなら嬉しいけれど、そうじゃない気がする。

「アタシのことも考えてくれるなら、それでいいよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ