25.プライド2(藤井由希・佐野恭平)
水色が好きだって言っていたからそれを基調にして、オレンジとバイオレットでアクセント、かな。これだけあれば、足りるよね。
「藤井由希ちゃん、だよね」
……このヒト、誰だろう?
「ちょっと話があるんだよ」
「私、急いでるんです」
「まぁ待てって」
痛い……。男子ってこんなに力があるものなの?
「だから、そういうのはダメだって言ったじゃないすか」
「お前は黙ってろよ!」
遠藤がいる……! このヒト達、遠藤の知り合い?
「や、由希ちゃん。お待たせ」
佐野くん? お待たせって、何?
「何だ、男いるのかよ」
「おい、話が違うじゃねえか」
「俺も知らなかったんすよ。まぁ、面倒なんで手を引きましょうよ」
何の話だろう。遠藤ってこういうのとつるむタイプだったかな。
「なぁ、アンタさ。そろそろ由希ちゃんの手、放してくれねえかな。痣になったら困るんだけど」
「あ? 調子に乗ってんじゃねえぞっ!」
いきなり殴らなくても……痛そう。
「先に手を出したのはアンタだぜ。後悔すんなよ」
「おい、何やってんだ。自分から手を出すんじゃねえって言ってあるだろうが」
高山先輩? もしかして、遠藤とこのヒト達を繋いでいるの……?
「……すんません、高山さん」
「ちょっと待てよ。俺は殴られたまま引き下がるつもりはないぜ。横から邪魔すんなよ」
「ウチのが悪かったな。すまん。ここは退いてくれないか。お前も女連れで揉め事は面倒だろ」
「……そいつの面は、覚えたからな」
「いい面構えだ。女は大事にしろよ」
佐野くん、ちょっと腫れているみたい……。
「あの、ありがとう。顔、大丈夫?」
「ん? ああ、大丈夫、大丈夫。何とも無いよ」
「いや、どう見ても痛そうなんだけど。ごめんね」
「何で由希ちゃんが謝るんだよ。これは由希ちゃん、関係無いぜ」
「いや、だって、私の為に」
「最初はね。で、その後で俺が余計なことを言って挑発したから、殴られた。わかる? 悪いのは俺と、あいつ」
こういう、訳のわからないことを言って気遣ってくれるところとか、そっくり。
「ふーん。じゃあ、お礼はしなくてもいいよね」
「あ、最初の分くらいはしてもいいんじゃないかなぁ、うん。まぁ、たまたま通りかかっただけなんだけど」
「喫茶店でいいかな? 今月あまり余裕無いんだよね」
「男がおごってもらうとか、無いだろ。最悪でも割り勘だな」
「変な拘りだね」
「男だからね、俺は。そんじゃ、またね」
「え? まだ何もしてないんだけど」
「いや、お礼が欲しかった訳じゃないし」
それはわかるよ。
「でも――」
「ああ、あのさ。約束あるじゃん。抜け道禁止してるんだよ、俺。だから、今、誘われても俺が困っちゃうんだよね。もったいないけど」
本当に、そっくり。
「変な……拘りだね」
「男だからね。そうだ、礼代わりにちょっと教えてよ」
「何?」
「それ。何か作るんだろ?」
「うん。ミサンガ」
「誰かにあげんの?」
誕生日プレゼント……の予定。
「うん。好きなヒトに、ね」
「お、言うね。よし、俺のことが好きになったら、それ、俺にも作ってくれよ」
「なるかなぁ」
「こう見えて、俺は結構モテるんだぜ」
「そうだろうね」




