23.一途な想い2(村松恵・中島夏樹)
どう考えてみても、恵ちゃんが嘘を吐いていたとしか思えない。何でそんな嘘を――
「どしたの、夏樹。アタシのこと、好き?」
「うん」
「あ、アタシは女のコはちょっと、ね」
「ねえ、恵ちゃん、私に嘘吐いたよね」
「サイズは少し鯖を読んだけど、カップは本当なんだよ?」
「何で?」
「……シュウくん、好きなんでしょ?」
「うん」
「じゃあ、良かったじゃない」
確かに、私は楽しかったけれど、沙耶ちゃんは――
「悪いよ」
「夏樹は、知らなかったんだよ? アタシが無理やり連れてったんだから、しょうがないよ」
「違うでしょ。私が頼んだんだよ」
「アタシが嘘吐いたから、ね」
いつも、そう。私の為に――私だけじゃない。誰かの為に一生懸命になって、痛いところは自分が背負って……。
「何で、あんな嘘言ったの?」
「夏樹、勘違いしたらダメだよ? アタシは、アタシがいいと思ったようにやる。夏樹の為じゃないよ」
「それも、嘘」
「いいコちゃんだね、夏樹は。そんなんじゃ悪い男に騙されるぞ」
「早瀬くんは、いいヒトだから大丈夫だもん」
「あのね。夏樹は周りのことを気遣い過ぎなの。沙耶とシュウくんが付き合ってるの知ってたら、本当に何もしないで終わっちゃうでしょ」
だって……沙耶ちゃんに悪いじゃない。
「そう、かも知れないけど」
「アタシ達、親友でしょ」
「うん」
「沙耶も、友達でしょ」
「うん」
「じゃあ、いいじゃない」
……何が?
「ごめん、よくわかんない」
「アタシは嫌だな。友達が自分に遠慮して、好きなヒトに好きって言えないなんて、さ」
「あ……!」
そうか。恵ちゃんは、私のことも、沙耶ちゃんのことも、どっちも考えてくれていたんだね。
「正直にぶつかるのと、隠して応援するのと、どっちが正解なのかなんてアタシにはわからないよ。だから、アタシがいいと思ったようにやるの」
「ありがとう。恵ちゃんみたいにはなれないけど、私なりに、頑張ってみるね」
「夏樹は夏樹でいいよ。夏樹にできないことは、アタシが一緒に頑張ればいいでしょ」
「うん。恵ちゃんと親友で、良かった」
「あ、アタシは女のコはちょっと、ね」
私に無いものをたくさん持っていて、憧れちゃうな。
「遠藤くん一筋だもんね」
「うん。最近ちょっとだけ、冷たいんだけどね」
「照れ隠しじゃなくて? 喋り方とか、元々ぶっきらぼうな感じだったよね?」
「うーん、そういうのとは違うかなぁ。ただ、何となく伝わってくるっていうか」
私もいつか、恵ちゃんの力になれるといいな。




