20.向こう側の世界2(遠藤輝彦・高山剛)
ゴウさんに頼りっ放しじゃあダメだ。俺が、こいつらを克服しない限り、ゴウさんを安心させることはできない。
「遠藤くん。メグちゃん、可愛いじゃねえの」
「……見たんすか? 可愛いっしょ」
メグは絶対に、守る。
「俺らも手荒なことはしたくねえからな。わかるだろ」
「心配しなくても、いちいちゴウさんを呼んだりはしないっすよ」
反吐が出る。ビビり過ぎなんだよ。
「あ、そうそう、実はメグよりもっといい女がいるんすわ」
「何だ、お前、あの女は遊びなのか」
「ま、そういうことっす。近々乗り換えるつもりだったんでね」
「へぇ。どんなコだよ。紹介しろよ」
本当に面倒なやつらだ。下手な嘘だと意味が無いからな。
「陸上やってる同級生っす。走高跳やってるんでスタイルも抜群っすね」
どうせこいつらに陸上のことなんかわかりはしない。
「あ、高山さん。忙しいところすみません。ええ。そうなんですよ――」
ゴウさんと電話? まさか、こいつ……!
「――遠藤がどうしてもって言うんで、わかってますよ。はい。それじゃ」
「先輩、今の電話……」
「藤井由希ちゃん、ね。嘘じゃなかったみたいで安心したわ」
「……嘘なんか、吐いたりしないっすよ」
迂闊だった……! 藤井、悪い……くそっ!
「心配すんな。俺らは手を出したりしねえからよ。手伝ってやるだけだ。任せておけよ」
「そんなに気を遣ってもらわなくても」
「遠慮すんな。まぁ、まずは色々聞かせてくれよ。仲良くしねえと高山さんも困っちまうからな」
笑っているんじゃねえよ……。
でも、ここでしくじる訳にはいかない。藤井のことは、あとで何とかケジメをつけるしかないな。
まずいな。どんどん情報が膨らんでしまう。シュウまで巻き込んだら、あいつは絶対首を突っ込んでくる。どうすれば――
「よし。んじゃとりあえず、週末、お前は遊びには行くな」
「は? どうしてっすか? まぁ、元々行くつもりは無かったっすけど」
糞真面目なシュウではメグと何かが起こることはあり得ないし、そもそも俺がいるとこいつらがいつ出て来るのかわかったものじゃない。
「だったらそれでいい。三人で遊ばせればいいだけだ」
「それ、何か意味あるんすか」
「お前より由希ちゃんに近い男を片付けりゃ、お前のモンになるだろ」
「片付けるって、手ぇ出すのは無しっすよ」
「わかってるよ。候補から片付けるってだけだ。評判を落として、色々迷いがある時に脅してやれば、コロっと落ちる」
「はぁ。流石っすね」
そんな下らない作戦が上手くいく訳があるかよ。
とりあえず、これでメグを盾にすることは無くなるだろう。




