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一輪に両手を  作者: リン
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18.先輩の姿2(名倉浩介・高山剛)

 懐かしいな。県大会に繋がる試合。昨年は、俺もここで投げたんだ。

「剛か、久しぶりだな。どうした、今日は応援でも無さそうだ」

 相変わらず鋭いな。だから、俺はここに来たんだろうな。

「遠藤のことで相談があるんです」

「何だ、お前もそんな色気づいた頭をして、一緒にヤンチャしているのか」

「まぁ、そんなところなんですが。あいつ、部活に戻れますか?」

「本人にその気があればな」

 今のあいつに、その気は……無い。

「先生から働きかけることはできませんか?」

「それは簡単なことだ。が、道を外れない限り、何を選ぶのかは輝彦の自由だと私は考えている。道を外れた時には、責任を持って連れ戻す」

「あいつの様子は知ってるんですね?」

「ある程度は知っている。今のところ、問題のある者と一緒にいることが多いだけで、本人は問題行動を起こしてはいない」

 ちゃんと情報も持っているんだな。いつでも動けるようにということか。

「あいつ、陸上が好きなんですよ。なのに、どれだけ戻れって言っても戻らなくて」

「戻れない理由があるんだろう」

 戻れない? あの連中は俺がもう、手を出させない。

「思い当たることが無いんです。どうしたらいいんですかね」

「誰にでも、できることとできないことがある。いいか、剛。他人の問題は、どうやっても解決なんてできないんだ。できるのは手助けだけ。あいつが何かを抱えているなら、待ってやれ」

「それは、俺が解決したはずなんですよ。だから、わからないんです」

「なるほど。お前はまだ、輝彦を信じていないようだな。それを考えるのも、経験だ」

 信じていない? 俺は、遠藤を何とか助けてやりたかっただけなのに……。

「もう一度言っておこう。あいつは大丈夫だ。へらへらしているが、自分の意思はしっかり持っている。お前はお前なりのやり方で、力になってやればいい」

「俺のやり方……間違ってないんでしょうか」

「輝彦がお前をどう見ているのか、それが答えだ」

 俺がどれだけグループを抜けろと言っても抜けず、それでも俺について来る。

 離れて行かないということは、間違ってはいない?

「剛、見てみろ。今、あの修治が六位なんだ。それも、出場選手の中で一番の浮きを見せている。あいつが今、ここまで成長できたのは、お前のお陰なんだ」

「俺は、早瀬には何も……」

「お前にそのつもりがあったのかどうかは、関係無い。修治がお前を見て、何かを得た。それだけで、修治にとってのお前は恩人なんだ」

 俺は、何もしてやれなかったと思っていた。

 俺が、俺らしくいることで、それだけで、力になってやれるのか?

「輝彦と修治は違う。だがな、二人ともお前を信頼しているのは同じなんだ。お前も、あいつらをもう少し、信じてやれ。それで上手くいかないのなら、私の責任だ」

「……俺がどうするべきなのか、見えてきた気がします。ありがとうございました」

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