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一輪に両手を  作者: リン
69/120

69.約束だもんね

 全国大会男子走高跳、優勝。記録200cm。

 俺は、やっとここまで、辿り着いたんだ。

「修治、よくやったな。これが、途中で投げ出さず、最後までついて来たお前の成果だ。おめでとう!」

「ありがとうございました! 先生のお陰です!」

「お前の努力の結果だ。自信を持て」

「はい!」

「しばらくしたら、種目別表彰式がある。それに出たら、後は帰りまで自由行動でいいぞ」

 確か、学校から渡された日程表では、帰りの新幹線が十五時過ぎ。

「あと二時間弱ですよね」

 表彰式のことも考えると、ほとんど時間は無い、か。

「あと二時間で帰りたいか?」

「え?」

「試合は終わったんだ。せっかく遠出しているんだから、遊んでから帰ってもいいんだぞ」

「あ、でも藤井の予定のこともありますし」

「藤井には確認済みだ。お前の希望次第では十八時頃までなら遅らせても大丈夫だ」

「じゃあ、ぜひ、お願いします!」

「表彰式に出るのを忘れるなよ。時間に遅れたら置いて帰るぞ。わかったなら、しっかり思い出を作って来い」

 グラサン……最高だよ!


 競技中にいた席にも、ベンチにも、藤井がいなかった。他に心当たりは、あの噴水広場――

 やっぱり、いた。

「藤井、お待たせ」

「……優勝、おめでとう」

 泣いている、のか?

「傘も差さないで、何やってるんだよ」

「きっと、もうすぐ上がるよ」

「俺の競技が終わったから、か?」

「そう」

「寒くないか?」

「大丈夫」

「俺、この後で表彰式だけ出て来るから、その後でソフトクリーム食べに行こうか」

「この天気で?」

「上がるんだろ」

「そうだったね」

「帰り、少し遅くしてもらったから、デートしよう」

「約束だもんね」

「表彰式が終わったらここで待ってるから、ちゃんと着替えて来いよ。びしょ濡れじゃないか」

「早瀬もでしょ。じゃあ、また後でね」


 表彰式なんて、結構どうでもいいんだよな。早くやってくれないかな。

「いたいた、シュウくん。やっほー」

「やっほー。おいおい、何でこんなところに」

「もちろん、応援に来たんだよ。ね、テルくん」

「違うっつーの。偶然近くに遊びに来たついでに寄ったんだよ」

「こんなこと言ってるけどね、テルくんがどうしてもこっちへ行くんだってんん」

「もう、メグは黙ってろ。すげえな、シュウ。全国のトップになっちまったか」

「凄かったよね! 格好良かった! 200cm跳んで優勝決まった時なんて、感動しちゃったもん」

「ありがとう。二人も応援し続けてくれたお陰だよ」

「よしよし。お祝いにチュウしてあげよっか」

「んじゃ、してもらおうかな」

「あ、積極的なシュウくんも嫌いじゃないよ。でも、ちょっと困っちゃうかなぁ」

「おい、テル。もうちょっと縛っておかなくて、いいのか」

「いいんだよ。メグはどこへも行かねえから」

「アタシとしては、もうちょっと束縛された方が愛を感じるんだけどね」

「嘘吐くな」

「何で二人揃って言うの!」

 表彰式の放送が入っているな。そろそろ行くか。

「じゃあ、俺はこれから表彰式行くから。二人とも、わざわざありがとう」

「シュウくん。最後の勝負所、頑張るんだぞ」

「わかってるよ」

「じゃあな、シュウ。上手くいくといいな」

「サンキュ、テル。またな」

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