表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一輪に両手を  作者: リン
PR
49/120

49.何も聞いてなかったのか

 こいつは一体、何を言っているんだ。

「いや、だから由希ちゃんとデートだって」

 冗談じゃ……無さそうだな。

「どういうことだよ? 優勝したらデート?」

「ああ、約束だったからな。デートに誘ったのは俺だけど、条件を持ち出したのは向こうだし」

「藤井がそんな約束したってのかよ? いつ?」

「お、随分気にしてんな。昨年の合宿の後だよ。ここまで長かったぜ」

 声を掛けるって言っていた時のことだよな。あの時にそんな約束を……?

「優勝したらデートするって、そう言ったのか?」

「いや、修治が出てる大会で優勝するって条件だったな。だから、昨年の秋季大会は本気で参ったぜ。あそこで優勝逃したせいで、半年待つハメになったんだ」

 『猛練習して、春にはこの借りを返してやるからな。待ってろ!』

 やけに燃えていたのは、そういうことだったのかよ。

「由希ちゃんは『無理だと思うよ』って笑ってたから、てっきり修治も知ってるもんだと思ってたよ。何も聞いてなかったのか」

 待てよ、合宿……? あの時期……!

 『約束、守るよね』

 『約束を破ったら男じゃないだろ』

 『守るよね』

 『……もちろん』

 あの、意味のわからなかった会話! やっぱり真剣な話だったんじゃないかよ! 何も聞いていないことは無かったんだな。

 『しつこいなぁ。そこまで責任感じるんだったら、二度と負けないで』

 『約束する』

 俺にとって、一番大切な約束。

 俺が出ている大会で優勝するには、俺に勝つしかない。俺が負けなければ、恭平の優勝は無い。

 藤井は、俺が約束を守ることを信じて……?

「ま、とにかく、優勝は優勝だ。デートのことは、どうだったか話してやるから心配すんな。んじゃ、お疲れ」


 藤井と恭平が……デート。

 もし、嫌だったなら、最初から約束自体しなければ済んだ……いや、俺が負けなければ……。

 あれ? よく考えたら、俺、負けてはいないな。勝ってもいないが。

「よう。本当に優勝しやがったな」

「格好よかったよ」

 テルも村松も、この暑い中、長時間日なたで見てくれていたな。

「応援のお陰かな。サンキュ」

「お、なかなか素直だね。お祝いにチュウしてあげよっか」

「テルの前で何つーことを言うんだ」

「おや? じゃあ見てないところならいいのかなぁ。シュウくんもワルだねぇ」

「別に、俺の前でしても構わないぜ」

 二人とも笑っている。信頼し合っているってことだよな。

 俺には……真似できないかもな。

「テルの調子はどうだ?」

「まぁサボってた期間が長いからな。とりあえずは体力からつけてるよ」

「頑張ってるんだな。安心したよ」

「とか言うけど、たまに『今日は休み』ってサボろうとしてるでしょ」

「そういう時は、村松が背中押してやってくれよ」

「もう押されてんだよ。休めなくて困ってるくらいだぜ」

 亭主関白なのかと思っていたが、案外尻に敷かれているのか。

「あ、そうそう。夏樹も来てるんだけど、シュウくんとは会わないって言ってるんだよ。まだいると思うから、声掛けてあげてよ」

「柏木や藤井の応援に来たんだろ? 中島が俺と会わないって言ってるなら、俺から声掛けるのは――」

「シュウくん。わかるでしょ。言わせたら怒るよ」

 ……テルが尻に敷かれている理由がわかったような気がする。

「――大事なことだと思ってたんだよ、うん。探してみるよ」

「たぶん駐輪場の辺りにいると思うから、急いでね」

 前は可愛らしいと思った笑顔だが、村松の笑顔は舐めてかかったらいけないな。気を付けよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ