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一輪に両手を  作者: リン
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04.お前達のグラウンドだ

 今日は新グラウンドで初めての部活動になる。種目別練習も行うということで、一年生は種目適正の見極めも行うらしい。

「納得いかないなぁ。毎日来てたの俺らだけっすよ。一回も来てないやつまで一緒にグラウンド使うってどうなんすか、ゴウさん」

「そう言うなよ、遠藤。陸上部のグラウンドができたんだ。喜べよ!」

 ゴウさんの嬉しそうな顔を前に、テルも引き下がった。

「集合!」

 グラサンが来て、全員が集まる。

「お願いします!」

「まず、一週間ご苦労様。頑張りの甲斐あって、立派なグラウンドができたじゃないか。特に、剛、修治、輝彦。毎日よく頑張った。自由参加だから誰が偉いということはないが、全員がグラウンドへの感謝を忘れることなく使って行くように。お前達のグラウンドだ」

 グラウンドへ入る前に整列して一礼。グラサンにするのと同じように、全員でお願いしますと挨拶し、ウォーミングアップを開始。

 野球部にもサッカー部にも気を遣わず、トラックを走ることができる。ただそれだけのことのはずなのに、妙に嬉しい。

 俺達のグラウンド、か。

 先輩達が種目別練習を開始すると、一年生が集められた。

「基本的には、高い適正が見られない限り、短距離ブロックだ。走力はどの種目でも基本だからな。本人の強い希望がある場合は、申し出れば考慮する」

 様々な距離を走ったり、鉄棒、幅跳び、ボール投げなど、スポーツテストのようなことを一通りこなし、発表の時が来た。

 俺は、特にやりたい種目がある訳じゃないが……何か適正があるのかな。

「まず、五十メートル走のタイムが良かった者、男女それぞれ上位三名ずつは長距離ブロック」

 五十メートルって短距離じゃないか。それが速かったら長距離ブロック? よくわからないな。

「勘違いするなよ。長距離はゆっくり走る競技ではない。勝負所、特に最後の競り合いでは、短距離に劣らないほどの爆発力が必要なんだ。辛くても前に出る姿勢と、絶対に負けたくないという気持ち。今日の走りにそれがあった者を選ぶだけだ」

 ……色々、理由があるものなんだな。長距離なんて、体力のあるやつが勝ちだと思っていた。

 これで、名前を呼ばれた六人のブロックが決まった。

 俺もテルも、まだ残っている。

「次、修治と由希。跳躍ブロックだ。お前達はそこそこのバネと身長がある。走高跳をメインにするぞ」

 走高跳? 体育の授業でやったことがあるだけで、得意でもないが……。

「残った者は全員短距離ブロックだ。当面、投擲ブロックは二、三年生のみだ。今後変更の可能性もあるが、練習はそれぞれのブロックで違うから、自分のブロックを覚えておけよ」

 ということは、テルは短距離ブロック、ゴウさんは投擲ブロック、俺は跳躍ブロックでバラバラなのか。

 少し寂しい気もするが、本格的な練習が始まるかと思うとワクワクもする。

「よろしく、早瀬」

 藤井……! 突然声をかけられても、どうしていいかわからないじゃないか。

 同じ一年生とは思えない大人びた顔立ちで、可愛いと言うより綺麗とでも言うのか、見惚れてしまう。

 そうか、これからは跳躍ブロックで一緒にやるんだよな。挨拶くらいは――

「あれ、私の名前、知らない? 藤井由希、ね。覚えてよ」

 知っている。陸上部員の名前くらい全員覚えている。

 突然女子に話しかけられて戸惑った……とは、言えないよな。

「ああ、よろしく。俺は早瀬」

「知ってるよ。さっき呼んだじゃない。変なヒト」

 そうだったな。俺は何を言っているんだろう。藤井は笑って離れて行った。

 すらっとした長身で、癖のない黒髪を揺らしながら歩く姿は、まるでモデル……いや、それは言い過ぎだよな。でも、モテそうだな。

 あれ? そういえば先輩って跳躍種目のヒトいなかったよな。跳躍ブロックって俺と藤井しかいないんじゃないのか? 練習とかどうするんだろう。

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