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一輪に両手を  作者: リン
27/120

27.お告げがあったんだよ

 テルのやつ、先約があるとか言っていたが、わざわざ学校の外で会うということは村松じゃないな。

 少し歩いたところにある雑木林って、何でそんなところで――

「シュウ、来たのか」

「話があるって言ったろ」

 高校生らしい男が三人か。ニヤニヤしながら見られているところからしても、歓迎はされていないよな。

「……下らない話ならやめとけよ」

 テルの様子を見る限り仲良しグループとは違うようだが、確かに性質の悪そうなのとつるんでいるな。

 本人達をを目の前にして話すのは……参ったな。

「村松とはうまくいってるのか?」

「当たり前だろ。ラブラブに決まってる」

「よく言うぜ。利用してるだけのクセによ」

 ……利用? こいつら、何か知っているのか。

「テル。どういうことだよ」

「お前には関係ねえよ。先輩らも余計なこと言わんで下さいよ」

「いいじゃねぇか。どうせ用済みになるんだからよ」

 利用して用済み……?

「おい、テル。どういうことだよ」

「お前には関係ねえって言ってんだろうが。話はそれだけか」

「いいだろ、教えてやれば。テルくーん」

 三人だけが笑っている。つるんでいると言っても、対等には見えないな。

「テル、場所を移そう」

「まぁ待てよ。俺が教えてやるからよ」

「先輩! だからそれ以上は!」

「お前は黙ってろよ!」

 テルを軽々と突き飛ばした? こんなの三人と喧嘩にでもなったらどうにもならないぞ。

「おい、そろそろ高山さんとの約束の時間だ」

 テルも一緒に行ってしまった。

 詳しいことはわからないが、厄介なことになっているのは間違いないな。


 部活は冬期に向けて、走り込みが増えてきている。この時期は、技術練習が待ち遠しい。

「早瀬も成長したねぇ。昨年は少し走ったら死にそうだったのに」

「由希ちゃん。跳躍ドリルを一人でやりたいのかな」

「早瀬は死にそうでも一緒にやるでしょ」

 一体いつになったら俺はからかう側になれるんだ。

「生きてれば、な」

 ……あれ以来、何度声をかけてもテルは応じなくなった。

 村松のことは、はっきりしたことがわかるまで藤井には黙っておくか。

「ねぇ。私が手紙を渡せなくなったら、どうする?」

「渡せなくなるような何かがあったのか?」

「質問してるのは私」

 ふざけて言っている訳じゃないな。柏木と何かあったのか?

「元々、藤井に甘え過ぎなんだ。そうなったら自分達で何とかするのが筋だろ」

「じゃあ、大丈夫かな」

「今度はこっちの質問に答えろよ。何があったんだ」

「何も無いよ。もしも、の話でしょ」

 嘘を吐くなよ、くそっ。藤井の隠し事は本当にわからない。

 仕方無い――

「村松のことなんだけど」

「あ、恵のことはもういいの。解決したから。ありがとね」

 解決した? 利用されて用済みになったってことか?

 いや、藤井がそれを解決だなんて言うはずは無い。どうなっているんだ。

「藤井」

「お、真剣モード」

「茶化すなよ。本当に解決したのか?」

「うん。だからもう心配しないで」

「本当は?」

「しつこい男は嫌われるよ、修治クン」

「やっぱり隠し事をしてたんだな」

 普段の藤井は、俺が本当に真剣に話している時は冗談でごまかしたりしない。

「……何でそう思うの?」

「夢でお告げがあったんだよ」

「何バカなこと言ってんの」

 やっぱり、テルを問い詰めるしかないな。

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