表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一輪に両手を  作者: リン
111/120

55.親友・後編3(藤井由希・柏木沙耶)

 夏樹、振られたって言っていたのに、喜んでいたんだよね……。早瀬くんと何を話したのか気になる。

「由希、夏樹のこと、聞いたよね?」

「早瀬に告白したって話?」

「そう。何を話したのか気にならない?」

「気にはなるけど、そんなの突っ込むものじゃないよ」

「真面目だねぇ」

「沙耶、オバちゃんみたいだよ」

「やめてよ。まだピチピチの十四歳なんだから」

「もうすぐ十五だけどね」

「十五だってうら若い乙女でしょ」

 そういえば、昨年は早瀬くんから素敵な誕生日プレゼントをもらったな。恵や夏樹と遊びに行ったことを知った時には辛かったけれど、あれは片手間で選んだものじゃなかった。

 今年はきっと……少し、寂しいな。

「……まぁ、何となく、わかるじゃない」

「あ、悔しい。私がわかんないのに何で由希はわかるのさ」

「夏樹が何を伝えたくて、早瀬がどう受け止めるかを考えたら、大体わかるでしょ」

「うーん、でもさ、夏樹は振られたのに嬉しそうだったんだよ?」

「……沙耶も、そうだったでしょ」

「私は、凄く辛かったもん。嬉しいって思えたのは、少し時間が経ってからだよ」

「夏樹だって、そうだよ、きっと。その辛かった姿を、私達に見せてないだけなんじゃない?」

 そうか。私にとって由希がそうだったように、夏樹は恵に受け止めてもらったのかも知れない。

「むぅ。じゃあさ、早瀬くんは、夏樹にも喜ぶようなことを言ったってことだよね」

「優しいからね」

「ずるいなぁ。妬けちゃうよ」

「早瀬は友達なんでしょ。文句があるなら言っちゃえばいいのに」

「優しいところがいいんだから、文句なんて無いよ。ただ、ちょっと思い出を大事にしてるだけ」

「早瀬はたぶん……同じことは言わないよ。沙耶には沙耶の、夏樹には夏樹の、それぞれに贈った言葉があるでしょ」

 夏樹も由希も……早瀬くんのことを本当によく見ているんだね。

 私は、気持ちの大きさから負けていたのかな。

「由希も、二人だけの約束してたもんね」

「あぅ……ん、その――」

「手作りのミサンガとかプレゼントしてたもんね」

「――ごめんなさい」

「だから、無理しないでって言ってたのに。やっぱり、好きだったんでしょ。私はそっちの方が怒ってるんだからね」

「……黙ってたから甘えてたって言ってたじゃない」

「あ、反省してないな。そっちがその気なら」

「ふふ、甘いね。早瀬に私の気持ちを伝えてやるとか言ったとしても、どうせ沙耶はそんなことできないんだから」

「残念でした。交換日記を早瀬くんに見せ」

「ああ! ごめん! 沙耶、ごめんね。凄く反省してるんだ、私」

 ずっと、こんな風にしたかった。恋敵だって、構わなかった。本音で話して、冗談を交えて、一緒に笑って。欲を言えば、それで恋を勝ち取りたかったけれど……。

 やっぱり、由希がいてくれて良かった。

「ふふ。最近は夏樹のページも増えてきたから、絶対、夏樹に怒られるよね」

「私だって怒るよ。大体、沙耶は恥ずかしくないの?」

「ふーん。それは私の胸が小さいって言ってるんだね?」

「言ってないでしょ。カップの話以前に、恥ずか」

「スタイルいいから目立たないけど、由希は結構あるもんね」

「結構って、やっとは――」

「は?」

「――何でもないよ」

「は、って言ったね、今。いつ大台に乗ったの? 聞いてないよ、私」

「そんなのいちいち言わないでしょ。もう、そういう話は恵としなよ」

 恵は、見ているだけでも自尊心が崩れるから、あまり聞きたくない。

「あーあ。私の気持ちをわかってくれるのは夏樹だけかぁ」

「それ、結構失礼だよね」

「私は振られる気持ちのことを言ったの。失礼なのは由希だもんね」

「……嘘ばっかり」

「由希は仲間に入れてあげないからね」

「……ありがと。二人ともきっと、これから大きくなるんだよ」

「由希に言われると、嫌味に聞こえるんだけど」

 胸が追いついても、仲間入りなんかさせないからね。ちゃんと、早瀬くんの隣にいるんだよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ