49.本音の裏側2(佐野恭平・村松恵)
優勝が二人、か。シュウくんが凄いのは間違いないけれど、何だか変な感じ。
「お、メグちゃんじゃん。久しぶりだね」
「恭平くん? 何してん――」
ユニフォームにゼッケン……?
「何って、試合に決まってんでしょ」
「陸上、やってたんだね。ただの不良クンじゃなかったんだ」
「おいおい、俺の本業はこっちだよ。喧嘩は副業だって」
シュウくんみたいな冗談言うね。シュウくんの副業は学業だと思うけれど。
「ふーん」
「今日は彼氏の応援か。何に出るんだ?」
「テルくんは、出ないよ」
「は? じゃあ何でこんなところに一人でいんの?」
「テルくんは飲み物買いに行ってくれてるの。今日は一緒に、シュウくんの応援に来たんだよ」
「おー、おー。修治はいいねえ。俺もこんな可愛いコの応援が欲しいな」
誰にでも言うんだと思うけれど、悪い気はしない、かな。
「恭平くんの種目は何なの? それなりに凄いの?」
「あれ? 修治の応援してたんだろ? たった今、走高跳で優勝してきたんだけど」
「は? あれが恭平くん?」
競技能力まで似ているの?
「うわ、俺には全然興味ねえんだな。ショックだ」
「しょうがないでしょ。知らなかったんだから。知ってても応援するのはシュウくんだけど」
「いや、フォローになってねえよ」
「とりあえず、優勝おめでとう。シュウくんはどこ?」
「ああ、その辺にいると思うぜ。ついさっきまで一緒だったからな」
「そっか。テルくん戻ったら探してみる。ありがとね」
「あ、ちょっと待った。あのさ、走高跳やってる由希ちゃんって知ってる?」
「うん」
「どこにいるかわかれば、教えてくれねえかな」
「さっきはスタンドで試合見てたよ。時計の下辺りにいたかな。由希に用事?」
「優勝したらデートするって約束があってね」
は? 由希がそんな約束するはずが――
「由希は、好きなヒトがいるんだよ。他のヒトとデートなんて」
「ああ、修治に惚れてんだろうな」
知っているの? アタシもそうだとは思うけれど……。
「だったら、そんな約束は」
「落ち着けって。俺は、それを断りに行くんだよ」
「は?」
「納得いかねえだろ、こんなの。優勝が二人なんてさ」
「結構……フェアなんだね」
「いや、俺だけじゃなくてだな、由希ちゃんも修治も、みんな納得いかねえだろ」
「ねえ、由希のこと、好きなの?」
「もちろん」
由希がシュウくんの方を向いていても諦めないヒト、か。
「そういうのってさ、辛くないの?」
「修治だって、たぶん由希ちゃんに惚れてんだぜ。両想いのはずなのに、いつまでもくっつかない」
それは、沙耶に遠慮しているからだと思う。
「俺に振り向かせられればそれでいいし、ダメならダメで、その時は由希ちゃんも修治も素直になれるだろ。どっちにしろ、由希ちゃんは幸せにできるじゃん」
自分の気持ちに対しては、ドライなのかな。
「んじゃ、由希ちゃんがコール行く前に話したいから、そろそろ行くわ。教えてくれてサンキュ」




