表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一輪に両手を  作者: リン
102/120

46.想うほど遠く4(中島夏樹・渡辺祐樹)

 もう三年生、か。新入生が可愛く見える。私も、こういう風に見えていたのかな。

「あ、中島さん。また修治くんと同じクラスなんだよね。いいなぁ」

「クラスのまとまりとか大事だから、二年生から三年生になる時はあまり変えないらしいよ。だから、担任の先生も、ほとんどのクラスが同じみたい」

「何で僕は違うクラスに……放課の度に、修治くんに会いに来るのが大変なんだ」

「渡辺くん、早瀬くんと本当に仲良いよね。小学校も違うし、去年、初めて同じクラスになったんだよね?」

「何ていうか、修治くんは、僕の恩人みたいなものだからさ。一緒にいると、成長できる気がするんだ。まぁ、修治くんには迷惑なのかも知れないんだけどね」

「ふふ。そんなことはないと思うよ」

 早瀬くんも、渡辺くんから何か学んで高め合えると思っているから……だから、一緒にいるんだよね、きっと。

「あ、そうだ。今、バレー部の勧誘してるんだけどさ、もう少ししたら、デモンストレーションで試合するんだ。良かったら、後で見に来てよ」

「ついに選手なんだ? 凄いじゃない。生徒会の方の用事が済んだら、見に行くね」

「まだレギュラーにはなれないんだけどね。でも、頑張るよ」


 随分、遅くなっちゃったな。バレーの試合はまだ――

「ナイッサー!」

「一本! 止めるよ!」

 凄い熱気……!

「クロス来るぞ! 当たれ!」

「トスこっち!」

 体育の授業と全然違う。

「ナイスレシーブ!」

「祐樹! 決めろ!」

「アウト! ゲームセット!」

 あれが……渡辺くん?

「あ、中島さん。来てくれたんだね。最後、チャンスだったのに失敗しちゃったよ」

「凄い……凄かったよ! 最後に少しだけ見たんだけど、目が離せなかった」

「あれを決めるのが僕の仕事なんだけどね。あんな絶好球を失敗しちゃうようじゃ、レギュラーはまだ遠いや」

「渡辺くんは、スパイクを撃つポジションなんだ?」

「そう、ウイングスパイカーっていうんだよ。あ、よくわからないか」

「うん、セッターとリベロしかわかんない。ごめんね」

 バレーのことはよくわからないけれど、レギュラーと一緒にコートに立って、専門的なことを楽しそうに話す姿は……格好良いね。

「こっちのチームにはレギュラーのセッターがいて、有利だったんだよ。でも、僕の決定力が足りなかったかな、やっぱり。ウチのエースは向こうのチームだったんだけど、格好良いんだ、これがまた」

 新入生が集まっているところにいるヒトかな。

「渡辺くんのアタック、凄かったよ?」

「そっか、中島さんは僕のしか見てないよね。もうね、違うんだ。スイングの速さから、ボールを撃つ音から、正確さまで」

「素人でもわかるくらい違うの?」

「そりゃあ、もう。だから、ほら、あんなに人気者でしょ」

 そうだとしても――

「渡辺くんは、凄かったよ」

 新入生の誰一人わからなくても、周りと比べて普通のスパイクでも――

「ありがとう。何か、嬉しいな」

 渡辺くんがあのスパイクを撃つ為に、どんなに苦労してきたのか――

「ほんの少しだけど、私は、知ってるからね」

「バレーのこと? ポジションもよくわからないのに?」

「笑わなくてもいいじゃない。せっかく応援してるのに」

「中島さんの色眼鏡じゃ、他のヒトには見えないよ」

「ふふ。冗談も言うようになったんだね」

 きっと、素敵な先輩になれるよ、渡辺くん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ