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#1 始まりと出会い

気がつくと、僕は草原の上に横たわっていた。

見渡す限り、建物はない。

慌てて学生鞄をさぐり、スマホを取り出す。

――圏外。

それだけで、不安が一気に膨れ上がった。

「先輩ー!」

叫ぶ。だが、返事はない。

此花先輩は無事なのだろうか。

……分からない。

そもそも、ここはどこなんだ。

 



途方に暮れ、空を見上げると、真っ白な雲が流れていた。

その中に、一つだけ、異様に黒い塊がある。

ゆっくりと――いや、確実に、こちらへ近づいてきている。

やがて、轟音が響いた。

風が唸る。

その瞬間、理解する。

あれは雲なんかじゃない。

巨大な“何か”だ。

翼がある。空を裂くように羽ばたいている。

まるで――ドラゴンのような。

……ドラゴン?

じゃあ、僕は。

エサ、なのか?

恐怖が思考を塗り潰す。

助けを呼ぼうとしても、喉から出たのは、言葉にならない悲鳴だけだった。

意識が遠のきかけた、そのとき――

目の前に、人影が割って入った。

振り下ろされる爪。

それを受け止める、一振りの剣。

金属音が、空気を震わせた。

視界がはっきりしたとき、そこに立っていたのは――

“英雄”という言葉が似合わない、どこか場違いな男。

強いて言うなら、そう――会社の社長のような雰囲気の人物だった。




ドラゴンVs社長、という意味不明な戦いが始まった。

炎が吐き出される。

社長はそれを紙一重でかわし、間合いに踏み込む。

剣が閃き、爪とぶつかるたびに火花が散った。

重い一撃。速い反応。

現実離れした攻防に、逃げることすら忘れて見入ってしまう。

決着は、意外にも早かった。

気づいたときには、ドラゴンは空の彼方へと逃げ去っていた。

社長は剣を下ろし、ゆっくりとこちらを見る。

そして、状況を理解したように一言。

「立てるか?」

そう言うと、僕の体を軽々と抱え上げ――そのまま宙へ浮かんだ。

……もう、驚かなかった。

悲しいことに、この状況に慣れ始めている自分がいる。



しばらくして、巨大な建物が見えてきた。

その周囲には、集落のように家が並んでいる。

“社長”はそのまま、建物の中へと入っていった。

(見た目があまりにもそれっぽいので、勝手にそう呼ぶことにした)

白く、重厚な外観。

どこか、ホワイトハウスを思わせるような造りだった。

聞きたいことは山ほどある。

ここはどこなのか。あのドラゴンは何なのか。此花先輩は――

先に口を開いたのは、相手の方だった。

「君は、どこから来た?」

言葉に詰まる。

……なんとなく、分かってはいた。

ここは、元いた世界とは違う場所だ。

――いわゆる“異世界”というやつなのだろう。

だが、それをどう説明すればいいのか分からない。

正直に言って、信じてもらえるとも思えない。

口ごもっていると、“社長”はあっさりと言った。

「分かっている。異世界から来たんだろう」

「……え?」

思わず声が漏れる。

「最近ね、“異世界から来た”なんてことを言う人間が現れた、という報告があってね」

――此花先輩だ。

直感でそう確信した。

「僕と一緒に来た人です!」

一歩、踏み出す。

「その人のところに、連れて行ってください!」

“社長”は一瞬だけこちらを見つめ、わずかに考える素振りを見せたあと――

静かに言った。

「……なるほどな」

そして、淡々と続ける。

「いいだろう。ただし条件がある」

嫌な予感がした。

「それじゃあ君には、ここで働いてもらおう」

次回予定 3月22

早まるかも

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