8 リオンのレア能力で某古代王の技ができた?
翌日、俺は寝室のベッドの上でステータス画面と格闘していた。気づいたら能力が五つ増えていたからだ。
「この、次元穴がリオンの能力なんだな?」
「はいです、旦那様」
俺の股ぐらからリオンが声を発した。胡座をかいている俺の足にリオンが頭を乗せて寝転んでいた。
「どんな、能力なんだ?」
「ええと、荷物がいっぱい入るよ」
「…それだけか?」
「それだけ」
「…ミオン、レア能力って言ってなかったか?」
俺はベッドの横に座っているミオンに言う。
「リオン、能力の説明はきちんとしなさい、あなたの次元穴は中に入れた物の時間も停止させるでしょ」
「時間停止?!ホントか?だとしたら凄いぞ!」
ホントに凄い、この能力があればあの技が出来てしまうかも知れない。某古代王のあの技が。
「えへ、凄い?じゃあナデナデして?」
リオンが頭を差し出してきたのでその頭を撫でてやる。気持ちよさそうに猫人族のリオンがするから俺は野良猫にするように耳や喉を撫で回してしまった。
「…野良猫と人間の違いわかる?わからない?わからせてほしい?」
「…いや、大丈夫」
いつの間にか俺の首筋にライトニングソードが光っている。ついでに、涼子の蔑んすんだ瞳も光っていた。
「第一婦人が嗜めてますよ、リオン、自重しなさい」
「ええ?仮でしょ?聞いたよ姉様から、それなのに嫉妬するの?」
「…嫉妬じゃないわよ、幼なじみへの教育よ」
「男女の仲を教育する幼なじみなんて聞いたことな〜い」
「う」
誰かに言い負かされている涼子を見るのは初めてだな。それが新鮮すぎて俺の顔がほころんでいく。
「なにが面白いの?」
涼子は俺の表情が気に食わなかったのか突っかかってくる。
「い、いや、そ、それはそうと、リオンはやけに甘えん坊だよな、ミオンが猫人族は触れ合うことを避ける種族だって聞いたが」
「我が村でリオンくらいです、こんなに触れ合うのが好きな娘は」
個体差かな、元の世界の猫にもやたら人間に懐く猫がいたからな。
昼食を皆ですませたあと。俺は一人でとある実験をしていた。
「うん、やっぱりできそうだ!」
その実験とはライトニングソードをリオンの能力、次元穴に入れられるんじゃないかと思って入れてみたところ中に収納できた。次元穴の中は時間が止まってるからライトニングソードの三秒ルールが適用しない。
「そして…スターゲイザー!」
目の前に広がる次元穴からライトニングソードが光速で空へと射出された。
「よし!あとはライトニングソードを作っては次元穴に入れるだけだな、まさに某古代王の技そっくりだ」
この日から俺は三秒ごとにライトニングソード作っては次元穴に入れる作業をする。涼子達をこの力で守ると心に誓って。
俺が猫人族の族長になって一週間ほど過ぎたころ。
「族長!大変です!ワーウルフの集団が攻めてきました!」
寝室に猫人族の男性が駆け込んで来た。
「ワーウルフ?あのとき襲ってきた狼頭か」
俺はリオンの頭を撫でる手を止めずにたんたんと言った。
「恋次様!いますぐ支度をしてください」
「ん?どうしてだ?」
「なにを落ち着いてるんですか、あのときたった一匹に殺されかけた相手が大勢で攻めて来てるんですよ?逃げるんです!村は壊されてしまいますがしかたありません」
その言葉に涼子の目が光る。
「逃げる必要はないぞ、この村は俺が守るから」
今の俺ならワーウルフが何体いても勝てるはずだ。
「あたしもいるわよ、あたしの温泉に手出しはさせないから」
ワーウルフの話がでてからずっと震えているリオンを落ち着かせてから、俺達は城壁に向かった。
城壁の上からこちらに向かって来るワーウルフの集団を見る。ざっと二、三百体はいた。
「多いな、涼子、半分頼めるか?」
「わかった、まかせて……ライトニングソード…最大出力…温泉を脅かす者は消えなさい!」
涼子が最大出力のライトニングソードをワーウルフの集団に向けて放つ、城の天井を跡形も無く消し去った光がワーウルフ達に向かっていく。光が止むとワーウルフの集団の半数が消し飛んでいた。
「次は俺だな……ディメンションホール…ライトニングソード✕五十」
空中に現れた次元穴から五十個のライトニングソード(短剣)が覗くように出てくる。その様は本当に某古代王の技だ。
「…スター…ゲイザー!」
俺の発声と共に次元穴から五十個ものライトニングソードが射出される。一本ですら木々をくり抜く光速の弾丸が五十発も発射された結果は俺の思い描く通りだった。
そうして、ワーウルフの集団は俺と涼子だけで殲滅できたのだった。
その夜、ワーウルフを撃退した宴が開かれた。そしてその日から涼子を見る猫人族の目が変わった。いままでのような遠慮気味の目ではなくなり尊敬が交じった眼差しへと変わっていた。




