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7 猫人族族長に俺はなる?

「お姉様!なんてことをしてくれたの!」


 正気に戻ったリオンの叫びが部屋に響き渡る。まぁ当たり前だな、初めて会った男に会った瞬間、無理矢理好きになるように言われたみたいなもんだしな。普通の女の子なら切れて当然だ。そして、猫人族ならなおさら許せないだろうな。


「ごめんなさい、リオン、でも承知して、この村のために」

「村のため?それほどのかたなのか?」


 この村の村長、カオンがミオンに尋ねる。


「はい、お父様、我が夫、恋次様は全ての猫人族より速いおかたです、そして恋次様よりわたくしはその速さを与えられました」

「全ての?…それが本当なら娘達どころかわたしの地位、そして、この村も差し上げなくてはならなくなるな」

「はい、そうしてください、お父様」

「証明できるか?」

「できます、村の皆を広場に集めてください」

「…わかった」


 当事者そっちのけで話が進み、カオンはそう言うと部屋から出ていった。俺が説明を求めようとミオンに声をかけようとしたら。


「お姉様、わたしの気持ちはどうなるの?気になる男の子がいたのに!」

「ああ、あの子ですか、あの子なら脈は無かったですよ」

「なんで、お姉様にわかるのよ!」

「わかりますよ、あの男の子の視線はいつも胸の無い女の子ばかりでしたからね、あなたのその邪悪な胸じゃ振り向いてもらえなかったでしょうね」


 ミオンがにくにくしそうにリオンの胸を見る。俺も釣られて見てみると確かに身体は中学生くらいなのに胸はにくにくしかった。ふと、一緒に倒れた時のリオンの胸の感触を思い出そうとするが、横にいる涼子に軽蔑の眼差しを向けられ止めた。


「そ、それは、わたしも気づいてたけど…」

「大丈夫よ、姉様を信じなさい、恋次様ならあなたの夢を叶えてくださるわよ」

「昔に諦めたあの夢のこと?無理でしょ?わたしの夢は王族になることよ?どうやって叶えるの?」


 王族?そりゃ無理だな、なんせ今の俺は人間の王族から逃げてるくらいだ。


「このあとわかるわよ」


 ミオンの含みを持たせた発言のあとカオンが戻って来て村人全員を集めたと言って来た。


 広場に村人が数百名集まっていた。皆なにごとだろう?って顔をしている。


「集まってくれましてありがとうございます、族長カオンにかわりまして、わたくしミオンから皆さんに報告があります、このたびここにおられる恋次様を夫に迎えることになりました」


 集まった住民からおおっと歓声が上がる。人間の男なのにもの凄い喜んでるな。


「見ての通り、恋次様は人間の男性です、猫人族の歴史上初めてです」

「初めて?」

 

 俺は横にいたリオンに尋ねた。


「そういえばあなたは人間の男性ね、さっきは動転して気がまわらなかった、そう、猫人族の歴史上人間の男性が夫になったことは無いの、女性はいっぱいいるんだけどね、理由は簡単、女性は見た目で好かれたら良いだけなんだけど、男性は猫人族より速くないとダメなの脚でも投擲でも速ければなんでもいいんだけどね、いままでそんな人間の男性はいなかった」


 そうだったのか。


「そして、恋次様は歴代猫人族の誰よりも速いおかたです、それをいま証明します、それを未婚の女性が見るかどうかは各自の判断で、それでは恋次様、お願いいたします」


 ミオンにうながされ俺は前に進み出る。広場に居る全員の眼差しが俺に向けられた。このあと俺がすることを見せたら、俺はミオンと結婚することになるだろう、正直ミオンのことは可愛いとは思うが好きではない、俺が好きなのは今も昔も涼子ただ一人だ。


 それは、ミオンにも伝えてある、ミオンは、構いません、わたくしを利用してくださいませ、と言われた。確かにこの猫人族の村を出て、また涼子にあてのない旅をさせることになることを考えると、選択肢は一つしか無かった。俺は片手を空に向けた。


「ライトニングソード……スターゲイザー!」


 俺の手のひらからライトニングソードが出た次の瞬間、光となって空へと消えた。


「オオオオオオオオッ!」


 大歓声が上がった次の瞬間には広場にいた猫人族の大半が両手の手のひらを上にして、前に出したまま土下座をしていた。


「な、なにをしているんだ?」

「猫人族最上級の服従の証です、主に猫人族の王族にしかしません」


 ミオンが答えてくれる、うしろを見ると族長のカオンも同じ体勢をしていた。


「凄い!凄い!旦那様!」


 いつの間にか呼びかたが旦那様になったリオンが俺の背中に抱きついてきた。にくにくしい物が背中にあたる。おお、こ、これは、背中じゃなく是非とも正面から抱きついて欲しい。


「…正面から抱きつかれてたら…」


 いつの間にか涼子の手にライトニングソードがあった。目は蔑んでいるのに顔が笑っている、人ってそんな表情できるんだな。


「みなさん、いまので証明ができたと思います、次はわたくしが恋次様より与えられた力を見せます、城門を開けて、道を開いてください」


 ミオンがそう指示をだすとものの数分で城門が開きその城門への道が開けた。ミオンは開けた先を見据えた。


「…スターゲイザー!」


 次の瞬間、ミオンの身体が光となって消えた。ミオンが帰って来たのは一分後だった。その手には2枚の紙が握られていた。


「これに見覚えのあるかたはいますか?」

「はい、カ・イ・ライ王国で貼り出されてた手配書です」

「そうです、今、王国に行って取って来ました」

「オオオオオオオオッ」


 また、大歓声が上がる、それもそうだろうな、歩きで一週間分の距離がある、あの王国にたった一分で行って戻ってきたのだから。


「さ、最速だ!」

「こ、こんな猫人族はいままでいなかった!」

「俺達の村は安泰だ!」


 そんな嬉しそうな声がそこかしこから聞こえた。


「そうです、安泰です、この力を与えてくださった恋次様がいれば、それを、このカ・イ・ライ王国は手配書を作って捕まえようとしています、わたくしはそれを許しません!」


 ミオンは持っていた手配書をビリビリに破いた。その行為にまた歓声が上がる。


「そうだ、許すな!」

「あの、王国がなにかしてくるなら流通を止めてやる!」


 そんな、声が上がる。その村人達を見て、俺と涼子はお互いを見合って微笑んだ。

 

 その日のうちにカオンは族長を引退し、俺に譲ってきた。俺は猫人族で初めて人間の男の族長となった。





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