5 猫人族は異世界配達人
「さぁ、説明してよ、なんで!あなたが!ミオンの!能力を!使えるのかをね!」
また正座をさせられているいる俺の前に立ち、右手に持ったライトニングソードを左手にペシペシと叩きながら涼子がまくし立ててくる。そうか、自分で出したライトニングソードは自分に影響ないのか。大層な剣幕の涼子を尻目にそんなことを考えていると。
「聞いて、る、の?」
涼子が顔を俺の顔にくっつきそうなほど近づけてきた。あいかわらず、綺麗で可愛いいなぁ…。
「綺麗で可愛いいなぁ」
俺は口に出していた。
「は、はぁ?なに言ってるのよ、一週間お風呂に入ってないのよ?綺麗なわけがないでしょ?」
「綺麗だよ、涼子は、どんな時も、その思いだけは昔から変わらない」
初めて会った時から涼子を好きになって十年、俺の涼子への思いは変わってない、そして、この十年涼子以外の女性を好きになったこともない。
「そ、そう…そうよね、あんたは変わらないわよね…それじぁ…」
「ああ、たぶん」
俺と涼子は二人でもう一人の人物を見た。
「はい?なんでしょうか?」
ミオンがキョトンとした顔で見てくる。
「あなた、もしかして、こいつのこと好きなの?」
「ええ、旦那様になる方ですから」
「顔を舐めただけじゃない」
「関係ありません、猫人族にとって顔を舐めるという行為をした瞬間から相手をどんなに嫌っててても好きになるようになっている種族なのです、ですから本来は顔を舐めるという行為は真剣に慎重になるんですけどね」
「それでいいの?感情は大事じゃないの?」
「はい、大丈夫です、先ほど本当に恋次様を好きになりましたから」
「え?」
「え?」
二人で同じ言葉を口にした。
「猫人族が恋人に求める条件は顔や体格やお金を持っているかではありません、速度、速さなのです、この速さは走る速さでも良いですし、道具を使って出した速さでも大丈夫です、ただ速ければ猫人族の女性は好きになってしまいます、種族の本能ですね、恋次様は最速の猫人族ですら出せない速度をお出しになられました好きにならない理由がありませんわ」
確かに光の速度は出せないだろうな、まぁここは異世界だから断言できないが。
「そう、わかったわ、それで、恋次は彼女を好きになって?」
「無いな、でも、能力は使えた、だとしたら考えられるのは」
「方思われでも能力発動するのね、凄いじゃない、そこら中の女の子を好きにさせたら?」
涼子が満面の笑顔で言い放ってくるが、目が笑っていないのに気づいて返事が俺はできなかった。
「恋次様を好きになったらその女性の能力が使えるということですか?それはもの凄い能力ですわね」
ミオンの目がキランと輝くなにか思いついたのか、あの子の能力を旦那様に、とか理由のわからないことを呟き始めた。
それから、数時間歩いて辿り着いたミオンの村の前で俺と涼子は立ち尽くしていた。村が村じゃなかったからだ正面の門が立派に立っていてその周りを城壁が村を囲っていた。
「…村だって言ってなかったか?」
「言ってませんでした?猫人族はこの世界の配達人をしています、つまり流通の全てを猫人族が担っています、ですから普通の人間の村とは違い猫人族の村は立派になっています」
「そうなんだ、だとするとお風呂は」
「はい、期待してください豪華ですよ」
涼子がミオンの言葉に生きる希望が生まれたかのような表情する。まぁ、そうだろうな、この世界に来る前の涼子は日に二度も入る時があるくらい風呂好きだったからなぁ。
「良かったな涼子は一日に二度風呂に入るくらいだもんな」
「…なんで知ってるのよ…二度入ってるって?」
希望に染まっていた涼子の顔が剣呑な顔に変わっていく。それから俺は、教えなさいっとまくし立てる涼子から逃げ回った。
「ふぅ、生き返ったわ、本当にありがとう」
「いえいえ、助けられたのですから、こちらこそありがとうございます、このお風呂は好きに使っていただいて構いませんからね」
「いいの?助かる、もうここから離れない!」
そんな二人の会話が聞こえた。涼子がここから離れないのなら俺もこの猫人族の村に居着くことになりそうだ。なぜなら涼子がいる場所が俺のいる場所だからな。
「なぁ、混浴なんだから一緒のところにいたいんだが」
「うるさいわね、こっちに来たら殺すわよ?」
「それでしたら、わたくしが恋次様のほうに」
「…あっちに行ったら殺すわよ?」
「はい、第一婦人様の言うことは絶対です、なのですみません、恋次様」
なにやら序列が出来上がってるみたいだが。
「第一婦人ならなおさら、一緒のところに…」
俺の軽口に。
「第一婦人じゃないわよ、殺すわよ?」
保留中の第一婦人がそう言い放ってくる。早く保留が終わらないかな、と思いながら夜が更けていく。




