4 ミオンは光速
「それで、どうやって責任をとるの恋次?」
正座をさせられている俺の前に仁王立ちの幼なじみが問いただしてくる。
「そうです、猫人族にとって異性の顔を舐めるという行為は夫婦の間柄でしかできない行為です!どう責任をとっていただけるのでしょう?恋次様?」
自己紹介を済ませたあと、幼なじみの横で同じく仁王立ちのミオンが責任を追及してくる。責任かぁ、マタタビを投げただけだからなぁ。
「マタタビのせいなんだし理性がなかったことってことで許してもらえたり?」
「理性なく異性の顔を舐めたなんて知られたらわたくし村を追い出されてしまいます」
「俺達が黙ってたらわからなくない?」
「猫人族の嗅覚が貴方の顔に付いたわたくしの匂いに気づきます、顔を洗ったとしてもわかってしまいます、これが猫人族が浮気できないと言われる種族のゆえんなのです」
たしかに、旦那猫が浮気をしたら匂いですぐさま嫁猫にバレる動画があったなぁ。
「んーーどうするか…」
「わたくし第二婦人でも大丈夫ですよ?」
唐突な提案に俺の思考が止まる。
「…第一婦人がいないのに第二?」
「え?こちらのおかたが第一婦人なのでは?」
ミオンが手を涼子のほうに向ける。
「わたし?わたしは違うわよ?」
「え、ですが恋次様が倒れてるあいだ結構な心配ようでしたが」
「そ、それは、お、幼なじみとしてよ」
「幼なじみ…そうですか、わかりました第一婦人は保留ということにいたしましょう、さて、恋次様これからわたくしの村に来ていただけるのでしょ?」
「あ、ああ、温泉があるみたいだし、風呂に入りたいしな」
「それでは向かいましょう、村まではそう遠くないです」
俺とミオンが歩きだすがそのうしろをついてきている涼子がしきりに保留、保留とつぶやいていた。
村まであとすこしというところの岩場で休息しているとミオンが能力の話をしてきた。
「そう言えばお二方は凄い能力をおもちですね」
俺と涼子の能力は歩いている最中教えていた。
「そうか?涼子は凄いが俺はなにもできない能力だぞ」
「いえいえ、本当になにもできない能力はわたくしの能力です」
「そう言えばどんな能力なんだ?ミオンのは?」
俺の問いにミオンの顔がわずかに曇る。
「わたくしの能力は流星と言います、自分の目で見た速度をそのまま自分で体現できるという能力でございます」
「え?見た速度をそのまま自分が出せるってこと?チート能力じゃないか」
例えば、名前の通り流星を見たら流星の速度を出せるってことだよな?チート過ぎないか?涼子もそのことに気づいたのか二人で目を見合わせた。
「チートというのがなにかわかりませんが、確かに他の種族が身につけたら最強の能力の一つだそうです、ですが猫人族のわたくしには役に立たない能力なのです、なぜなら猫人族が速度に関してはこの世界では最速なのですから」
そうか、確かに自分達より速く動ける存在が無いなら無駄な能力かもな。ん?でも流星は。
「なぁ、夜空からたまに流れる光は見たことはないのか?」
「え?ありますよ」
「あるのか?あるのに能力で速くなれなかったのか?」
「だって、遅いじゃないですかあの光」
あ、ああ、そうか、この世界の文明がまだ光速について知らないのか。
「涼子、光速について教えてもダメかな?」
「ダメじゃない?たぶんこの能力は直に見ないといけなから言葉でいくら伝えても無理じゃない?」
「そうだよな…」
俺はどうにかできないかと考えた。そして、考えてるうちにいつの間にかステータス画面を開いていた。そしたら、あった、俺のステータス画面の中に流星が。
「ライトニングソード」
俺は考えたことを実践しようと光の短剣を手の平に出した。そして、そのまま数メートル先の木に向かって構えた。
「スターゲイザー!」
そう叫んだ俺の手の平から光の短剣が光の速度で発射された。発射された光の短剣は何本もの木をくり抜いて見えなくなった。
「な、なんですか?いまの速度は!?」
「いまのが光の速度だ、どうだ見たか?」
「はい」
「出せそうか?いまの速度?」
「…試してみます…」
ミオンが目を閉じ深呼吸する。俺は息を呑みながら見守っていた。
「…スターゲイザー」
そのひと言をミオンが放った瞬間、ミオンの身体が光と共に消えた。そして、次の瞬間ミオンが現れた。時間にして本当に一瞬だ。
「あの、これ」
ミオンはいつの間にか手に物を持っていた。それを俺に差し出してくる。
「なんだ?これ?」
それを受け取ってミオンに聞くと。
「先ほどのワーウルフの魔石です、取るのを忘れてましたので取ってまいりました」
ワーウルフ?ああ、あの狼頭そんな名なのか、それにしてもあそこまで一瞬で行って帰って来たのか、まさに光速だな。
「凄い!凄いじゃないか!」
「はい!凄いです!わたくし、間違いなくこの世界の猫人族の中でも最速です」
いや、たぶん宇宙でも最速だと思う。
「…そう…良かったわね、それはそれとして、どうして恋次がスターゲイザーを使えたのか教えてもらえるかしら?」
喜びあっている俺とミオンの後方から涼子が蔑んだ目をしながら冷めた声をかけてきた。ライトニングソードが出現してる、これは返答を間違えれないな。




