3 猫人族はマタタビに弱い
王都から逃げるように出発してから一週間が過ぎた。この一週間俺は涼子に頼りっぱなしだった。炊事洗濯をしてくれて、サバイバルの知識まで知っているうえ、戦闘面でも助けられていた。
なんどもモンスターに襲われたが全て涼子が退治してくれた。俺も戦おうとしたがこの三秒しかもたない短い短剣では敵に近づくことすらできなかった。
「涼子!」
いまもゴブリンに襲われている最中で、俺はゴブリンが涼子を後から棍棒で殴ろうとしているところを涼子に覆い被さって代わりに棍棒を背中で受けた。
「恋次!…この!」
涼子が俺の身体の脇から光の剣をゴブリンに突き刺す。
「ぎゃ!」
ゴブリンは断末魔をあげると身体が消え、石が地面に落ちた。それを俺は痛む背中を気にしながら拾い上げ袋に入れる。ゲームの知識でただの石じゃないことはわかってるから集めていた。
「もう、またわたしをかばって」
俺の背中を涼子がさすってくれる。
「これしかできないからないまの俺には…」
「だからって傷だらけじゃない、そのうち身体が耐えられなくなるわよ」
「この傷がお前につくほうが耐えられないな」
「…もう」
俺の真剣な言葉に涼子が恥ずかしそうに沈黙する。事実耐えられない、片思いの好きな女にこんなに助けられて自分の身体もはれないなら好きでいる資格がない。
その日の夜、いつものように焚き火をしていると。
「だ、だれか、助け、て」
女性の助けを求める声が森のほうから聞こえ、涼子と二人で森に急いだ。声の主を見つけると狼の頭をした人型モンスターに襲われている瞬間だった。
モンスターが手に持っている鉈のような武器を倒れている女の子に振り下ろしたが、すんでのところで涼子が出したライトニングソードに阻まれた。
「ぎゃ、おおん?」
狼のモンスターは手に持っていた鉈のような武器が持ちての木の部分を残し消失していて驚きの声を上げた。まぁそうだろうな涼子のライトニングソードは某映画のライトセイバーそのものだ。触れただけで勝ち確だ、ただ…。
「ごめん十秒」
そう、涼子のライトニングソードは一度なにかに当たると次に使えるまで十秒またないといけない。そして、その十秒を繋ぐのは俺の仕事だった。
「ああ、任せろ」
俺は地面から砂を掴みモンスターの顔めがけて投げつけた。砂がモンスターの目に入ると、モンスターが両手を広げてグルグルその場で回転を始めた。
「おい!こっちだ!」
涼子からモンスターを離すようにしばらく立ち回ったが目が慣れたモンスターに俺は一瞬で身体を捕まれ
た。
「あ、あぐ、あ…」
モンスターの力が強すぎて抜け出せないでいると、モンスターがどんどん力を込めていく。俺を握りつぶすきか、でもそれは無理だな。俺は薄れゆく視界の向こうにライトニングソードを構えて走ってくる涼子が見えた…。
「もう、無茶しすぎよ、恋次」
目を開けた瞬間、涼子にそんなことを言われた。俺は仰向けに寝ていて涼子が膝枕をしてくれているみたいだ。
「無茶のしがいがあったな」
涼子が最後に膝枕をしてくれたのは中学生のとき以来だ。俺はその時のことを思い出し身体を裏返そうとした瞬間。
「…もし中学生のときにしたことをまたしようとしてるならおすすめはしないわよ?」
視界の端に涼子の冷めた笑顔が映り身体を仰向けに戻す。ちょっと裏返って涼子のスカートの匂いを嗅ごうとしただけなのにな、まぁ中学生のときにそれをやって以来膝枕はしてもらえなくなったが後悔はしていない。
「身体を張った幼なじみに冷たいな」
「一週間まともにお風呂に入ってない女の子の匂いを嗅ごうとする幼なじみは冷たくされて当然じゃない」
「あなた達、一週間も風呂に入ってないのですか?」
俺と涼子の会話を聞いていたのか助けた女の子が話しかけてきた。
「ええ、とある事情でね」
「そうですか、それならわたくしの村に来てください、温泉があってお風呂に入れます」
「本当?やった」
涼子がこの世界に来てから初めて満面の笑顔になった。
「あ、名乗りが遅れてしまいました、あたくし猫人族の族長の娘でミオンと申します、このたびは助けていただいてありがとうございます」
「猫人族?」
俺の疑問符に、ミオンと言った少女は被っていたフードを外した。猫の耳が頭からピョコンと飛び出す。
「はい、猫人族を見たことがなかったのですか?」
「うん、ちょっと事情があってね」
涼子がそう答えるが俺の意識は猫耳に全部いっていた。なぜなら俺は大の猫好きだからだ普段から野良猫を探してはとある物で身動きができなくして存分に撫でさせてもらっている。
俺は条件反射になっていたその行動をついやってしまう、学生服のポケットにいつも入れているとある物をミオンに向かって投げてしまった。
「なんですか?こ…れ…」
ミオンがそれを受け取った瞬間目がトロンとなり、イキナリ俺に覆い被さって来た。
「あんた、マタタビを投げたの?」
涼子の声を聞きながら理性の無くなったミオンに顔中を俺は舐められた。
しばらくしてミオンが正気に戻ると。
「猫人族は旦那様になる人の顔しか舐めてはいけないのです…責任…とってもらいますからね」
と言われ、幼なじみからは蔑まれた目で見られるようになった。




