【番外編】言葉のない会話
「アカネ、すまんが七面鳥を買ってきてはくれないか?」
ダイラ様…お父様が私に頼み事をしてくれるなんて!
「はい!もちろんです!大きいのがいいですか?そこで寝てるエビンは、ちゃんと後から手伝ってくれるんですか?」
エビンはぐーたらするのが好きみたい。
いつもソファで横になってるの。
「あぁ、そうだな。みんなで食べるから大きめのものを頼もうかね。」
お父様は少し悩みながら教えてくれた。
「はい!大きめの七面鳥、買ってきますね!」
外は雪が降り始め、こんこんと寒そうな景色を作り出している。
「ポップも行く?」
暖炉の前で丸まってるポップに声を掛ける。
この子は、本当に!可愛い!
いつも私と一緒に遊んでくれて、いつも私のことを気にかけてくれる。
エビンはポップを溺愛してるけど、私だって負けないもん!
上着を着て扉を開ける時、ポップが大急ぎで走ってきた。
「ふふ!ポップ、一緒に行こうね!」
市場に着くと私は驚いた。
こんなにも色んな鳥があるなんて。
どれが七面鳥なのか、全然わからない…。
「おや、お嬢ちゃん、捜し物かね?」
果物屋さんのおばあちゃんが気にかけてくれてる!
「あ、あの…大丈夫です!ありがとうございます!」
恥ずかしくて、聞けなかった…。
そんな時、ポップが私の足元をクルクル回り始めた。
「ポップ?どうしたの?」
ポップは鼻をクンクン鳴らしながら、ある鳥屋さんの方へゆっくりと、時折私を振り返りながら歩いていく。
そして、大きな鳥の前で立ち止まって、尻尾をブンブンと振りだした。
「え...これ?もしかして、これが七面鳥なの?」
ポップは一度だけ、私を見上げる。
茶色い瞳が、「そうだよ」と言っているような気がした。
「わー!!ありがとうポップ!!本当にポップは賢くて優しくてお行儀も良くて可愛いねー!!」
市場のど真ん中だけど、私は周りを気にしないでポップを抱きしめて撫でましてしまう。
ポップが悪いんだからね!
「すみません、この七面鳥1つください!」
お店の人がギロッと鋭い目で見てきた…怖い。
その時、ポップが私の肩に乗り、お店の人を見つめる。
すこし、驚いた顔をしたのがわかる。
「お、お嬢ちゃんそれがほしいのかい?…可愛い狐だね!」
お店のおじさんが、ポップを見て笑ってくれた。
この時、確かに感じた。
最初は私を舐めてたけど、本当にポップのことを可愛いと思ってくれてることを。
「はい!可愛いんです!名前はポップって言って、私の幼馴染が名付けたんです!!」
嬉しくなっちゃって、ついつい余計なことまでいっちゃう!
その後、お店のおじちゃんが飼ってる猫のことを話してくれて、話に花が咲いた。
動物好きってことで少し値引きもしてくれたよ!
後でお父様にも教えてあげなきゃ!
少し名残惜しさもありながら、重い七面鳥を抱えて雪の中を歩く。
ポップは私の足元を、時々先に走り、また戻ってくる。
「ねえポップ、ありがとうね。今日も助けてくれて。」
耳をピクっと動かし私を見つめる。
「あの世界では、あなた喋れたよね...。今、喋れなくなっちゃったけど、私もエビンもお父様も、みんなポップの気持ちとか、言いたいこと、全部わかるからね!!だから、安心してね!」
私の足元を1周して、肩に登って尻尾をブンブン振り回し、更に耳はぴこぴこしてる!
『そんなの、わかってるよー、わざわざ言わなくても、いいんだよー?』
そんな風に言ってるみたいだった。
いや、きっとそう言ってるに違いないよ!
「さ、帰ろう!みんなが待ってるよ!」
ーーー
「ただいまー!」
すっかり雪で頭が覆われてる私、
そして全身についた雪をブルブルとふるい落とすポップ。
玄関を開けると、暖炉の温かさが迎えてくれた。
「おかえり、アカネ。...おや、大きいのを買ってきたね。」
お父様が笑顔で出迎えてくれる。
温かい…。
「はい!ポップが教えてくれました!それに、お店の人と仲良くなって、少し安くしてもらえたんですよ!」
ソファで寝てたエビンが、むくっと起き上がる。
「あれ、おつかれアカネ。...ポップも一緒だったんだ?本当に仲良いなお前ら。」
エビンは寝ぼけ眼で言いながら、大きなあくびをした。
「もー、エビンったら。ポップって本当に賢いんだよ?!私のこと守ってくれるし!」
あれからぐーたらしてばかりだったエビン。
でも、私の言葉を聞いて、はっきりと言うの。
「...当たり前だよ。だって俺が名前つけたからな。」
お父様が、私たちを見て優しく笑う。
「さぁ、今夜はみんなでご馳走だ。アカネとポップ、ありがとう。夕飯の支度は私達でするから、少し休んでいなさい。」
おい、起きるんだ、ってエビンに言うお父様は、あの頃から全然変わらない。
「ポップ!お庭で雪遊びしよ!ちょっと寒かったから上着着てくるね!」
暖炉の前で丸まってたけど、すぐに耳をぴこぴこさせて駆け寄ってくれる。
そうして私は、ポップと遊ぶことが毎日の幸せの一部になった。
ありがとう、エビン。
みんなを救ってくれて。
私は今、家族といれて、とっても幸せだよ。
ー完ー




