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【番外編】クリスマスの日に

雪がパラパラと降り始め、すっかり辺りは銀景色となった12月25日。

ここに来てそろそろ3ヶ月が経とうとしていた。

ダイラの家は大きな三角屋根が目を引き、暖かい雰囲気をしている。

家の前には庭が広がり、小さな川が流れている。


庭では、もこもこに着込んだアカネと、自前のもこもこ毛皮を纏ったポップが元気に遊び回っている。

俺は微笑ましく窓からその姿を見守りながらダイラと夕飯の準備をしていた。


「なぁ、ところでなんでダイ…父さんは若返ったんだ?」


ついこないだまで、アホアホ言い合っていたダイラを”父さん”と呼ぶのは少し照れくさい。

俺はまだ、照れ隠しで直視することが出来ないでいた。


「あぁ、あれはな私の本当の願いをロイゾが叶えてくれたんだろうよ。」

え?!正直ちょっと呆れた。

「なんだよ、父さんは若返ることが本当の願いだったのか?安直だなー、もっと志高いことだと思ってたのに!」

あーあ呆れた、がっかりだよ、とぼやき続ける俺に対して、ダイラは豪快に笑い飛ばす。


「はっはっは!エビンいいか、表面だけでは決して物事の真実に気付くことはできない。裏を見なさい。表面に隠された、裏の真実だ。」


裏の真実…。

なんだろう?


「結論から言おう。私はお前さんを守るというアルゼルとの約束を果たすために若返ったのだと思っておる。魔力が最高潮だった頃にな。」


!!

魔力が最高潮だった頃…!


「そうだな、お前も少しは知っているだろう?わたしとアルゼルのことを。」

お世辞でも”手馴れた手つき”とは言い難い手つきで七面鳥を捌くダイラ。

俺はそんな不器用ながら一生懸命なこの人が好きだ。

「あぁ、なんとなくだけど…。」

ダイラは時折、魔法を使う時の仕草をすることがある。

その度に”あぁ、もう使えんのだったな。”と残念そうに呟く。

今もまさに七面鳥に向かって何か魔法を使おうとしてた。


そんな姿を見ながら、俺は思い出していた。

あの時。

俺は直感していたんだ。


「…俺がみんなと一緒に帰れなかった理由さ。俺、気づいたんだよ。」

人参を切る包丁の手が止まる。


「アカネは、心の中で俺の気持ちの整理も願ってくれてたんだ、って。…父さんとの、気持ちの整理。」


あの時のことを思い出すと、やっぱりなんというか不思議な気持ちになる。


「アカネは本当に優しい子だからな。エビン、私とアルゼルはこの世界からの親友だったんだ。」

手を休めるんでない!とまたいつもの小言がすかさず飛んでくる。


「アルゼルが戦争の被害に会う時、私に言ったのだよ、エビンを頼んだエビンを守ってくれ、とな。」

それを聞いて思わず目頭がきゅっとなる。

「戦争が終わってから私はあの孤児院を設立した。お前とアカネを迎え入れたのは私だったんだ。」


さらっと告げるダイラだけど、七面鳥のお腹があらぬ方向に切れてしまってるのを見ると、集中力が切れ始めてる。


「え、父さんが連れてってくれたのか?知らなかった…。」

全然知らなかった。

施設でたまにダイラを見かけることはあったけど、特別なにかする訳でもなかったし。


「まぁな。特別扱いするわけにゃいかんだろ。アカネの世界に行ってからも”室長”になってたのにはビックリだな!」

そりゃあんたが優しくて頭いいからだろ…。

「そんな事があったんだなー。」

俺はもう何も気にしてなかった。

適当な返事をしてしまう。


「ま、そんなところだ。私が若返った理由、少しは理解してくれたかな?」

オーブンに七面鳥を入れながら問いかけるダイラ。


「うん…全部俺と父さんのためだったんだな。ありがとう。」

やっぱりちょっぴり恥ずかしい。

いつか、この恥ずかしさはなくなるのだろうか。

なくならなくてもいいような気もする。


「さ!アカネとポップを呼んでこよう。みんなで暖炉を囲もうではないか。」


今日はクリスマス。

家族と一緒に過ごす大切な日。


「俺呼んでくる!!父さんはゆっくりしてて!…あ!ポップのご飯も用意出来てるっけ?!」


急に慌ただしくなる俺を見て、ダイラはまた笑っている。

「あぁ、もちろん出来てるよ。エビンが1番初めに用意してたじゃないか!…まるで忘れん坊のサンタクロースだな。」


あ、そうだった。最初に用意してたんだった。

無意識だった…。


「アカネー!ポップー!もう少しでご飯できるから戻ってきてみんなでぬくぬくしようぜ!」


父さん、俺は今とても幸せだよ。

ダイラは父さんとの約束を果たしたよ。

あの壮絶な戦いで、これでもかと俺を守り通してくれた。

そして今も、俺たちの父さんとして守り続けてくれている。

だから、安心して大丈夫。


無邪気な笑顔は寒さで鼻とほっぺが赤らんでいた。

「はーい!今行くー!ポップいこ!」


2人が家に入り、扉をそっと閉めた。


暖炉の前で七面鳥が焼き上がるのを待つ。

ホットチョコレートを飲みながら、明日のこと、明後日のこと、未来のこと。

たくさん話すんだ。


アカネとポップと父さんと一緒に。


メリークリスマス!

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