プロローグ
僕は今、死にかけている。
人は生まれながらにして何か一つ、スキルを持っている。例えば、一般的な物だと<炎魔法>や<剣術>など。勇者は<剣聖><聖剣>といったスキルと他のスキルの2つ、持っているらしい。
しかし、僕が持っているのは普通のスキルでも無かった。
けど、勇者の持つようなスキルでも無かった。
僕のスキルは<ボール>だ。
神官がこのスキルはユニークスキルだと言った時、皆が凄く驚いていた事を覚えている。ユニークスキルは100年に1人いるかどうかのスキル。だけどしばらく経って周りの人から絶望され、哀れまれ、馬鹿にされる様になった。
それもそうだ。このスキルはゴム球を作って、投げる。それだけしか出来ないスキルだと分かったのだ。それも元の期待があまりにも大きかったから、そのせいでもあるだろう。
まだ周りから馬鹿にされる前の子供の頃はよく使った。ああ、あの頃皆でボール遊びするの楽しかったなぁ。
けれども僕は馬鹿にされながらも僕は可能性を求めてスキルレベルをひたすら上げた。でも、10歳を最後にレベルが上がる気配がなくなった。
今のレベルは9。あと1で一番上のレベルになる。せめてそこまで行っててくれれば諦めもついた。けど、上がる気配は一向に見えなかった。
そして他の人に距離を離されて行き、果てには町では同年代の子供にも蔑まれるまでにもなった。
その頃からだろうか。誰にも自らの思いを言う事は無くなった。
そして何も変わる事なく、外へ出れば子供には馬鹿にされ、心無き大人には無視される毎日を送り大人となった。
僕は16歳になった夜、誰にも言わず町を出た。誰も悲しむ者は居ないだろう。喜ぶ者も居るだろう。
目的地は決まっていた。王都の冒険者ギルドだ。そこまで約3日の道のりだった。
本来なら持っているスキルで職業を考える物だが、持っているのはこんな何の役にも立たないスキルだ。それもユニークスキルがために前例も存在しない。だから決まった職業がなかった。だからよく読んでいた伝承の勇者の物語に憧れ、冒険者になる事を選んだ。その為にずっと知識を蓄えていた。結局、冒険者になる事は出来たが、登録の際に勧められた仕事は荷物持ち。
そして成り行きでそのまま「千の剣」というパーティーの荷物持ちをすることになった。
リーダーで<剣術>の上位スキルの<剣技>を使うダイザス、
魔術師で<地魔法>を使うアレン、
ヒーラーで<治癒魔法>をつかうリーナ、
タンクで<盾術>を使うグレイの4人パーティーだ。
Bランクのパーティーで冒険者の上位5%の実力を持つパーティーらしい。
僕はそんなパーティーに<ボール>Lv.9で使えるボールを浮かばせて移動されられる能力を荷物持ちとして買われた。
今日はBランクダンジョン、【赤霧】での探索をしていた。いつも戦闘中は後ろで待機しとく様に言われていた。だから今日も待機していた。表向きの理由は僕の安全の為と言っているが、実情は自分が邪魔だからだろう。自分の仕事は何が何であろうと荷物持ち。パーティー内で行われている会議も一度も見たことが無い。一度4人が普段と違う場所へ向かった事があった。気になってこっそり付いて行ったら、見えたのは4人で乾杯をしている姿だった。あの時の悲しみは今も覚えている。
そんな事を思いながらいつも通り待っていた。そして剣がぶつかる金属音が止んだ。戦闘が終わったのだろう。
普段だったらそこから少し時間が経ってからこっちへ来るが、今回は違った。大した時間も経っていないのに全員がこちらへ戻って来た。それも大分焦った様子で。
「どうしたんですか?」
「なんでも無いから、そこで待ってろ」
僕が聞くとダイザスがそう言い放ってボールにかけてあった荷物を取り、4人は僕と数十メートルほど距離を取った。
そしてアレンがこちらへ杖を向けた。
「アースウォール!」
その瞬間、僕の思考が停止した。
聞こえて来たのは<地魔法>の地面を操作して壁を作るスキル、アースウォールだった。
アレンが地魔法を使って通路を塞いだのだ。
完全に塞がれる前、微かに奥で4人が笑っていた姿が見えた気がした。
おそらく、僕は身代わりにされたのだ。
そして奥から、4人が逃げてきた方からAランクの魔物、ミノタウロスがやって来た。
あの4人、いやあいつらだったら倒せるはずの敵なのに、あいつらは戻ってきた。
後ろは塞がれている。だから少しでも止める為にボールを作り、投げた。だけど僕が作れるのはただのゴム球。相手に何一つ傷らしいものは作れない。
こちらへ来る速度は落ちる事なく、僕の目の前まで直ぐにやって来た。
ミノタウロスは本来よりも何故か、筋肉が数倍に膨れ上がっていて、狂気に満ちた目をしていた。そして、僕へと斧を振り上げていた。
ああ、もう終わるのか。短い人生だった。
誰も聞かない遺言を吐こうとした。来世はもっと一般的な能力を持って生まれたいと。
けど、そう考えていたのに口から出て来たのは全く違う言葉だった。
「いやだ、死にたくない!まだ、まだ、僕は、何も成せてない!」
それは、心からの叫びだった。それは、子供の頃から言わなくなった本音だった。
そして最後の力を振り絞ってボールを作り、投げつけた。
主人公可哀想だね(小物感)




