目標と準備
――午後の座学が始まる
「さぁ、お勉強を始めよう!」
「みんな席についてるな!」
子供達には、マユキが準備した資料が配られている。資料にはメモをする欄があり、メモを取る準備をしている。
マユキの授業にテストなんてないが、マユキが教える事が、生きていく糧になる事を子供達は、よくわかっている。
年齢の差はあれど、全員が真剣な眼差しだ。
マユキが元気に話し出す。
「今までは、帝国の語学や歴史を中心にやってきたが」
「今日からは少し他国に目を向けてみようと思う」
「はい!先生!質問です!」
年長の子ソータが手を挙げる
「どうした?ソータ言ってみろ」
マユキが嬉しそうに生徒の方を見る。
「はい!訓練では、流派の型をやるって言ってたけど、座学ではやらないんですか?」
ソータは、キラキラした目で質問する
マユキは、笑顔で答える!
「そうだな、よく覚えていたな!
もちろん流派の勉強もする!
そのための予備としてある程度、国の知識が必要なんだよ!」
「わかりました!ありがとうございます!」
なるほど!と納得した表情でソータは椅子に座る。
「他に質問はないか?」
マユキは、子供達を見回す
「大丈夫でーす」
子供達が返事をする。
うんうんと、マユキが頷き、話し始める。
「まず。資料を見てみよう」
マユキがトントンと資料を指差す
「この大陸が山を中心に4つの地域に分かれているのは 知っているな!
そして、それぞれに気候も違う。
そのため自然に4つの国家が生まれたんだ」
「成り立ちを話すと長くなるから、今後細かく説明する。今は、そういうものだと思っていてくれ」
子供達は、ウンウンと頷く。
マユキが、机を軽くパンパンと叩く
「ここからが本題だが、その4つの国には、それぞれ流派というものがある。
では、なぜ国単位で流派があるのかというと…
『戦玉』(せんぎょく)という宝玉が関係しているからだ!」
「はい!はい!はい!マユキ先生!」
ソータが手を挙げる。
「ソータ今日は、元気がいいな。どうした?」
マユキがソータを見る。
「戦玉って何ですか?なんかかっこいい!!」
マユキはニコリと笑う。
「そうだな、お前たちの好きそうな言葉だよな」
「一言では言えないが、その国の文化や精神性を具現化したようなものだ。」
子供たちは首をかしげている。
「とにかく!国の宝物ってことだ!そしてその宝が私たちに力を与えてくれている」
「お前達は、まだ使えないが『戦気』という力だが…お前達はまだ使えていないものだ」
マユキは、少し意地悪な顔をしている。
「だが!今からの勉強次第では使えるようにもなる!しっかり勉強しないとな!」
子供達の目が輝く。
「使いたい!かっこいい!教えてください!」
マユキが微笑んでいる。
「まぁまぁ、すぐに出来るものじゃない。
話を戻そうか。」
マユキが、真面目な顔になる。
「各国にある戦玉の力を上手く使えたものが強くなるって事になる。
だから、各国で長年かけて戦玉の力を上手く戦いに生かす戦い方を考えたわけだ。
それを体系化して戦いの型にしたのが流派だ」
マユキが構えをとってみせる。
「ここまでは、大丈夫か?」
子供達が「はーい」と答える。
「戦玉には、種類がある。
南のペン帝国の蒼玉
東のニャン華王朝の紅玉
北の森羅同盟国の翠玉
西のワン牙連邦国の黄玉この4つだ。
ここまではしっかり覚えておけ」
マユキは、少し間を空けた。
「しっかり確認されているわけではないが、他にも2種類の戦玉が存在しているらしい…が。まぁ、それは私も知らないから…覚えなくてもいい」
マユキは、チラッとペン汰を見る。
ペン汰は、首を傾げる。
「まぁ、まとめると各国の文化や精神性を具現化したような戦玉という宝があり、その戦玉が戦気という力を国民に与えている。
その力を使うための流派を、これから君たちは身につけていかなければならないと言うわけだ」
「わかったか!」
「はーい!」
子供達は頷く。
よしよしとマユキも頷く。
「では、休憩しよう。終わったら座学の後半をやる」
「はーい!」
子供達は食堂へ走る。
「ペン汰、ちょっといいか」
マユキがペン汰を呼び止める。
真剣な眼差しでペン汰を見る。
「最後に話した2種類の非公式な戦玉だが、お前が以前言っていた水に包まれたような感覚で魔獣を倒したという力」
「おそらく…その1種類だと思っている。その戦玉がどこにあり、どんな精神性なのかもわからない………だが…
お前の近くにあり、お前が持つ感情の中に精神性や文化があるのだろう」
ペン汰は、考え込む。
マユキは、笑いかけながら話す。
「いきなりすまなかったな、わからない事を考えても仕方ないな。その可能性があるって事だけ知っておいてくれ」
「まぁ、とにかく今は、蒼玉の蒼気を扱う為の努力が優先だ」
マユキは、ペン汰の肩をポンっと叩く。
「あの感覚…気になるけど、今は強くなる努力をします!
おじいちゃんを探しにいくために」
ペン汰は拳を握って、覚悟を決めた様子だった。