院とマユキ
4話〜院とマユキ
「こらぁ!ペンタァァ!」
「何度言ったらわかるんだ!構えを崩すなぁ!!」
マユキの怒号が響き渡る
今は、剣術の訓練中
僕は、おじいちゃんを探して魔獣と戦った後倒れてしまったらしい。
マユキさんが言うには、運良く帝国兵に助けられたらしい。
その後、この孤児院に預けられたみたい。
僕は3日以上うなされていたらしく、その間ずっとマユキさんが看病していてくれたらしい。
おじいちゃんを探しに行きたいけど…
今のままだと、また魔獣が出てきたら生きていられるかわからない。
マユキさんに説得されて、ここで剣術の訓練をさせてもらうことになった。
でも…
「ペンタァ!何ボーッとしてるんだ!
さっさと構えな!」
マユキの顔が目の前にある
「は、はい」
ペン汰は、震えながら構えをとる
マユキさん…怖い…
「よし!お前達!今から30分構えを維持だ!」
子供達の持つ木刀は、大人用の木刀で、子供達が構えを維持するのは、なかなかに厳しい。
「……よし!30分だ。休憩!」
そう言うと、マユキはみんなの飲み物とおやつを取りに行く。
(ふぅ、きついな…こんなの続けられるかな)
ペン汰は、肩で息をしている。
「頑張ったな!ペン汰!最初はみんなきついから」
「そのうち慣れるさ!!頑張ろうぜ」
そう話してくれたのは、孤児院の年上のお兄ちゃん。
――この孤児院には、30名ほど子供達が暮らしている。他国との小競り合いで親を亡くした子供達がほとんどだ。
私のもとには、たまに帝国兵が話に来る。
その話の内容では、貧富の差が出てきており、不自然に格差が広がっているという。
それが原因となり、孤児になる子供もいる。
私が、この子達を立派な大人に育てないとな。
「おやつ持ってきたぞー!」
マユキがおやつのクッキーを持って戻った。
子供達は、駆け寄り美味しそうに食べている。
「うまいな!ペン汰!食べながらしっかり休むんだぞ!」
面倒見のいいお兄ちゃん達がペン汰に声をかける。
ペン汰は、笑顔で「うん!」と頷く。
マユキが立ち上がった。
「よーし!しっかり休んだな。」
子供達を見回す。
「それじゃ休憩終わり。次は構えからの一閃!100本だ!」
お兄ちゃん達は、次々と100本をクリアしていく。
ペン汰は、まだ30本…
「こんなの無理だよ」ペン汰は、泣きそうになる。
マユキが、木刀を肩に当てながら近づいてくる。
「こらこらペン汰!泣いたって終わらないぞ!」
「100本終わるまでご飯はないからな!」
マユキは、笑っているように見える。
(マユキさん…楽しんでる…こわ…い)
その笑顔を見て、ペン汰は、必死に剣を振る。
――夜になった。
昼間は必死に練習してるけど、夜になるとおじいちゃんの事で胸がいっぱいになる。
なかなか眠れない。ペン汰は、1人で泣いていた。
そこへ、マユキが隣に座る
「ペン汰、悲しいよな」
「私も白カラスとは長い付き合いだから、心配だし悲しい気持ちもわかる」
「今日は、一緒に寝よう。明日からまた、おじいちゃんのために頑張ろう」
そう言うとマユキは、ペン汰を抱き締めて眠る。
(あたたかい、おじいちゃんの羽に包まれてるみたいだ)
ペン汰は、少し安心して眠りについた。
ペンダントが優しく光っていた。
――ペン汰は12歳になっていた。
戦闘訓練も、かなり慣れてきた。
6年前は、構えだけでもきつかったけど、
今は、打ち込み100本やっても全然疲れない。
今日も、戦闘訓練が終わった。
マユキがみんなを集める。
「みんな、だいぶ基本は出来てきたな」
「次からは、流派の型に入ろうと思う。
なので、今日の午後の座学は、流派の勉強だ」
子供達は、喜んだ。
「やっと技を教えてもらえるんだね!」
「体力作りと打ち込みだけじゃ、面白くないもん!」
マユキは、苦笑いしている。
「お前達は、数年間本当によく耐えたよ。でも、その分しっかり基礎を固められたからな」
「午後の座学にしたって、みんな真面目に勉強してくれている」
「流派の訓練に入っても十分やっていけると確信してるよ」
マユキは、ニコッと笑った。
子供達は、照れ笑いしている。
「だってマユキ先生怖いもんねぇ!やらないと怒られるもん」子供達がそうだ!そうだ!と笑う。
マユキが怒ったような表情で「なんだって??」
と子供達に睨みをきかせる。
「わぁ!ごめんなさい」
子供達は、笑いながら謝った。
みんなで大笑い。ペン汰も、楽しそうにしている。
ペン汰も子供達と一緒に喜んでいた。
「さぁ、昼ご飯の時間だ!みんな手を洗って中にはいれ!」
「あ、ちょっと待て。ペン汰は、残ってくれ」
マユキがペン汰を呼び止める。
「この6年、白カラスの捜索を続けてもらっているが……まだ見つかってない。
それは、お前も知っての通りだ。悔しいと思うが、諦めろとは言わない」
マユキがペン汰の肩に手を置く。
「ただ…お前がずっと引きずり続けることを白カラスが望んでいるとは思えない。
だから、こう考えてくれないか。
この大陸には、4つ国がある。もしかしたら他国に身を寄せている可能性もある。
お前は帝国で、ある程度の地位まで登れ。
そうすれば、他国へ行く許可が正式にもらえる」
ペン汰がマユキをみる。
「なるほど!そしておじいちゃんを探すんだね!」
マユキは、ペン汰の肩を叩く。
「そうだ!だから、今は強くなる努力をしろ!」
「今は国が影に侵食されつつある。おそらくトップは気づいていない」
「お前が士官出来る歳になるまでには、どうにか入隊試験が受けられるように手を回しておく」
ペン汰が難しい顔をしている。
「影…って?
国が侵食されてるって…どう言う事?」
マユキは真剣な顔でペン汰を見る。
「今は、余計な事は考えなくていい。とにかく努力を怠るな!来るべき日に備えろ」
「白カラスの教えも忘れるなよ?」
ペン汰は、頷く
「うん!おじいちゃんとの日々はわすれない!
マユキさんの事も信じてる!
僕頑張るよ!」
マユキはニコっと笑ってペン汰の頭を撫でた。
大陸アニマを読んで頂きありがとうございます!
マユキがなかなかに面白いキャラになってきて、書きながらファンになりそうです笑
感想をコメントで貰えたら嬉しいです!