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大陸アニマ〜そのペンギンと紡ぐ世界〜  作者: garato
エピソード1: ペン帝国編
1/40

始まりの出会い


   ――ペンギンの赤ん坊が泣いている――

 あたりには、誰の気配もない――

街から離れたこんな場所には、誰か来るはずもない。

 泣きづける赤ん坊の肌を、冷たい風が無慈悲に吹きつける。この地は、大陸の中でも特に冷気が強い場所。


 

 この子のいる大陸はアニマ――

雲を遥かに超える岩山《天峰》(てんほう)

周囲に広がる山岳地帯を中心に、楕円形に広がる広大な大地。


 この大地を4つに割るように、全く異なる地形が広がる。そして、地形によって気候が全くちがう。


 北は、亜熱帯のような気候の森林地帯。


 西は、乾燥地帯で一部砂漠化も目立つ。


 東は、温帯地帯で暮らしやすい平地。


 南は、冷地で年中冷気が漂い、1年の半分は雪が降る。四季というほど規則性がある訳ではないが、ある程度暖かい時期もある。


 そしてこの4つの地形には、それぞれ異なった文化を持った動物達が国を作って生活している。



 ――ここは大陸の南

 ペンギン達が国を治めるペン帝国

 その更に南の端。

 静けさ漂う森の入り口

 

 心ばかりの布切れに包まれたペンギンの赤ん坊は、泣き続けている。


 そこへ、老いた白いカラスが足を止める。

 しかし、どこか威厳のある凛とした雰囲気の銀白の羽毛だった。食糧調達の帰りだろうか、腰のバックには魚が数匹。


 胸元には、ペンダントが光る。

 何かのカケラだろうか、銀色の装飾を纏う宝石。

 透き通った純白で、淡く光るこのペンダントは、不思議な力を感じる物だった。


 周囲を警戒しながらも、泣き続ける赤ん坊に近寄っていく。

 (こんなところに、可愛い赤子を置いていくとは……

  この時期は冷える。このまま置いていけばこの子の命はないだろう)

 

白いカラスが赤ん坊を抱きかかえた。その表情は怒りにも悲しみにも見える。

 

 周囲を見渡し、また、赤ん坊に目を向ける

(こんなところ、わし以外に誰も通らんしな、このままだとハグレ魔獣のエサだ。……置いていくわけにもいかんか。)

(これは、運命か――それとも偶然か。)

白カラスは、泣き続ける赤ん坊を見つめる。

「不自由かけるかもしれんが、わしと共にくらそう」

そう言って、1人暮らしの家に赤ん坊を連れて帰った。


 


白カラスの家は、街から離れた一軒家。

 他人との交流は、ほとんどない。むしろ避けているとさえ思えるほどに。

 何かから、身を隠しているのか――

 とにかく、ひっそりとした地で白カラスに拾われたペンギンの赤ん坊は、この老いた白いカラスと生活していく事になる。




 ここで問題が……

 白カラスは、子供を育てたことがない。

 泣いている赤ちゃんに戸惑うばかり。

 (何を食べさせたらいいのか…)

 (……うーん)

 (あまり気は進まないが…仕方ない。あの者に聞くしかないか)


 白カラスは、覚悟を決めて里に行く準備をした。

 目立たないように、辺りが暗くなってから出掛けた。


 里の端に、不思議な存在感のある孤児院がある。

 建物も大きく、何より戦闘訓練場があるというのが異質感を際立たせている。

 この孤児院の院長は、マユキという。


 コンコン――

 マユキの部屋の窓を白カラスがノックする。

「ん?…誰だい。こんな夜更けに」

 マユキがカーテンを開ける。

「これは、珍しいお客様だね」

 マユキは、驚いた様子。

 白カラスは、申し訳なさそうにして、赤ちゃんを抱いている。

「可愛い赤ちゃんじゃないか」

「…あんたの子…な訳ないか」

「事情があるようだね。中に入りな」

 周りを気にしながら、白カラスは、窓から部屋へ入る。


 マユキは、外を確認して、窓とカーテンを閉める。

「……珍しいね。事情は、見ればわかるが」

「つけられてないだろうね」

 マユキの顔が厳しい表情になる。


「それは大丈夫だ。夜更けに申し訳ない。」

 白カラスは、頭を下げる。

ふっとマユキの顔がほころぶが、

 すぐに、真剣な顔つきになる。

「それで…預かれと?」


 白カラスは、首を横に振る。

「この子は、わしが育てたい」

「伝えたいこともある…」と、赤ちゃんの顔を見る。

 ペンギンの赤ちゃんは、ニッコリ笑う。

 白カラスの表情は、とても穏やかでありながら、瞳は真っ直ぐに真剣さを物語っていた。


 マユキは、察した表情。

「そうかい。じゃあ食べ物から教えるよ……」

 そう言うと、マユキは赤ちゃんの育て方をメモに書いて、白カラスに渡した。

「数日分のすり身は、入れておくよ。あとは、頑張るんだね」

 マユキの顔は、母性に溢れていた。


 白カラスは「ありがとう、感謝するよ」と。

 深々と頭を下げる。


 マユキは、ニコリと笑う。


 しばらく沈黙が続いて、マユキが真剣な顔つきで話しかける。

「わかってると思うけど、影が動き出している。少しずつ国の内部が乱れてる」

「もう、私がどうこう出来る立場じゃない」

「うちには、子供達もいる、手助け出来そうにない……

 大丈夫なのか?あんたが最後なんだよ?」


 白カラスは、深いため息をついた。

「身を隠して、この子と出来るだけ静かに暮らしてみるよ」

「今のところは、居場所までは気づかれていない」


 マユキは、真っ直ぐ白カラスを見つめる。

「そうか、あんたが決意したのなら、私は何も言えないな」

「がんばりな」

 

 白カラスは、もう一度深く頭を下げて、家に戻った。

(わしが与えられるものは、全てこの子に与えてあげたい)

 深く決意をした。

 赤ちゃんは、スヤスヤと眠っている

 

 

 

 

 

 




初めての投稿作品です。作品の世界観伝えたくて、ちょっと説明多くなったかなって思うけど、小説大好きな皆さんからはどう見えてるのだろう?

会話の途中にも情景が伝わるように表情なども書いてみました。感想やアドバイスをコメントで貰えたら嬉しいです。


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― 新着の感想 ―
Xからおじゃましました(*´꒳`*) 白カラスさん、素敵です。 彼にどんな事情が隠されているのか気になります。 続きもゆっくりですが読ませて頂きますね。 garatoさん、ありがとうございました。
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