名も知らぬ紅い蕾
名も知らぬ紅い蕾の木
陽に透ける葉の彩り
影の重なり
歩くとなるパキパキという音
少しずつ柔らかな葉の重なり
木の根の盛り上がりにわたしは腰を掛け、
おおきな幹に背をもたれる
まるであなたの膝の上、
やさしい空間に包まれ安らぐわたしに
鳥たちが枝に止まってきて囀る
あのひとの脈を感じられたなら
春の訪れを、陽のあたたかさを
あのひとの足元にまで届けられるようにしたいんだ
少しずつ少しずつ
世界は急ぎすぎるのか
春の息吹はあっというまだと言うように
全て流れ去ってしまってもただそこにある
月、星、紅い蕾
あのひとに伝えてほしい
名も知らぬ紅い蕾よ
鳥たちよ
あのひとに伝わってほしい