山中の小屋調査 オカルト研究会のメンバーの活動
寮と調査に向かった山小屋から帰還した祐一は、次に向けて考えていた。
***つばき壮での報告会***
山から戻って三日後、つばき壮の裏庭カフェに、祐一はオカルト研究会の調査に参加するメンバーを集めた。他のメンバーは相変わらず、色々な来活動に手いっぱいだった。
また寮に相談したところ、「今は他の取材が立て込んでいて、すぐには動けない。でも、オカルト研究会のメンバーなら信頼できる。祐一君が中心になって、調査を進めてみないか」と言われた。
テーブルを囲むのは、オカルト研究会のメンバーたち。
峯川──冷静沈着で廃墟の調査やアウトドア活動が得意。
星川──風水が得意で霊的知識も豊富で、実践経験もある。
小川──魔法の研究家で、魔術、霊術に長ける。
松井あゆみ──霊感が高く、霊術に長ける。由香からダウジング方法を学び、調査能力も高く隠されたものを見つける力がある。
広末──チャネリング能力を持ち、霊との対話ができる。
そして、祐一はオカルト全般の知識、風水、霊術、知識が豊富で経験を積み重ねていた。
「みんな、集まってくれてありがとう」祐一が口火を切った。「寮さんと調査した山守りの小屋のことなんだけど……」
祐一は、あの夜の出来事を話した。公園で見た老人、小屋での体験、三崎勘一さんたちの姿、そして「山を守ってほしい」というメッセージ。
「興味深いわね」松井あゆみが目を輝かせた。「山を守る……何か、山に異変が起きているのかしら」
「それを調べたいんだ」祐一が頷く。「寮さんは今スケジュールが合わないから、僕たちで調査に行けないかと思って」
「もちろん、行くよ」小川が力強く言った。「全力でサポートする」
「俺も賛成だ」峯川が腕を組む。「ただし、準備は万全にしよう。前回は寮さんがいたけど、今回は俺たちだけだ」
「私、ダウジングで山の状態を調べてみるわ」松井が言った。「何か隠されているものがあるかもしれないわね」
「私は、霊たちと対話してみる」広末が静かに言った。「彼らの想いを、直接聞いてみたいの」
「じゃあ、僕と星川で浄霊の準備を」小川が星川を見た。「星川、いいか?」
「OK。必要な道具は揃えておく」星川が頷く。
「決まりだ」峯川が地図を広げた。「じゃあ、作戦会議をしよう」
***準備***
調査の日まで一週間。メンバーはそれぞれ準備を進めた。
祐一は寮から借りた資料を読み込み、三崎勘一さんの経歴を調べた。地元の図書館で古い新聞記事も探した。
峯川は、周辺の地質調査データを集めた。山に何か地質的な変化があるかもしれないと考えたのだ。
星川は、浄霊に必要な道具を準備した。お香、お札、聖水、そして数珠。
小川は、チーム全体の装備リストを作成し、必要なものを揃えていった。
松井は、ダウジング用の振り子とロッドを磨き、精神統一の訓練を重ねた。
広末は、瞑想を続け、チャネリングの準備を整える。
そして、調査当日。
***山守りの小屋へ***
早朝、六人は祐一の軽バンと峯川の車、二台に分乗して出発した。
「前に来た時より、気配を強く感じる……」祐一が車を慎重に運転しながら呟く。
小屋が見えてくると、より強い、霊的な気配が強まった。
「すごい……」広末が目を見開いた。「こんなに強い想念を感じるのは初めて」
「霊たちが活発化しているのかもしれないな」峯川が周囲を観察しながら呟く。
全員、車から降り周辺を見渡す。
「祐一、前回よりどうだ?」
「はい。明らかに強くなっています」
車を降り、小屋の前に集まった。
「まずは結界を張って行こう」祐一が指示を出す。「峯川君は結果石を。星川君は周囲を見張って」
峯川と星川が、小屋の周囲に結界石を配置していく。祐一も手伝い、東西南北の四方に石を置いた。
「これで、ある程度は安全だ」峯川が頷く。「じゃあ、松井さん、ダウジングを頼む」
***松井のダウジング***
松井あゆみは、ロッドを両手に持って目を閉じた。
「山の精霊たちよ、私に教えてください。この山に、何が隠されているのかを」
静かに呟きながら、松井は小屋の周りを歩き始めた。
ロッドが、微かに動く。
小屋の正面、側面──反応はない。
裏側に回った時、ロッドが激しく交差した。
「ここ!」松井が目を開けた。「小屋の奥に、何かある!」全員が松井の元に駆け寄った。
小屋の裏手、さらに山の奥を指している。
「奥に……何があるんだろう」祐一が木々の間を覗き込む。
「行ってみよう」小川が決断する。「ただし、二人一組で。峯川と星川、松井と広末、そして祐一と僕」
三組に分かれ、距離を取って小屋の奥へと進んで行く。
藪を掻き分け、獣道のような細い道を辿る。十分ほど歩いた時──。
「あれは……」
木々の間に、岩があった。
苔むした数メートル以上ある岩には、かすれた文字が刻まれている。
『山神之社』
「山の神様を祀っていた場所か……」峯川が石碑を調べる。「かなり古いな。江戸時代、いや、もっと前かもしれない」
石碑の周りには、崩れかけた石垣がある。かつては小さな祠があったのだろう。
「ここが……」松井が呟く。「ここが、この山の要なのね」
広末が石碑の前に座り込んだ。
「みんな、少し静かにして」
***広末のチャネリング***
広末は目を閉じ、両手を岩に当てた。
深呼吸を繰り返す。
そして──。
「……聞こえる」広末の声が、いつもと違う響きを帯びた。「たくさんの声が……」
祐一たちは、息を殺して見守る。
「山が……泣いている……」広末の頬に、涙が伝う。「守る者が……いなくなって……荒らされて……」
「荒らされている?」小川が小さく聞く。
「開発……木が切られて……土が削られて……」広末が苦しそうに顔を歪める。「山の神様が……怒っている……でも、悲しんでいる……」
「三崎さんは?」祐一が思わず聞いた。
「三崎さん……」広末の表情が少し和らいだ。「山を愛していた人……最後の守り人……今も、守ろうとしている……でも……力が足りない……」
「僕たちに、何ができますか?」
広末は少し黙った後、ゆっくりと答えた。
「祠を……直して……山を……守って……」
そして、広末は大きく息を吐いて、目を開けた。
「……ごめん。これ以上は、体が持たない」「十分だ」小川が広末を支えた。「よくやった」
***小屋へ戻って***
一旦小屋へ戻り、情報を整理する。
「つまり、こういうことか」峯川がまとめる。「この山では開発が進んでいて、山の神様を祀っていた祠が荒れている。三崎さんは、生前から山を守っていて、死後も霊として山を守ろうとしている。でも、一人では限界がある」
「僕たちに、山を守ってほしいんだ」祐一が言った。「だから、僕の前に現れた」
「でも、祠を直すだけでは不十分だろう」星川が言った。「まずは、三崎さんたちを成仏させてあげるべきだ。そうでないと、彼らは永遠にこの場所に縛られ続ける」
「そうだな」小川が頷く。「祐一、三崎さんに約束しよう。僕たちが、山を守ると」
「はい」
***浄霊の準備***
日が傾き始めた頃、メンバーは浄霊の準備を始めた。
小屋の前に祭壇を作る。白い布を敷き、お香を焚き、聖水を置く。
祐一が浄霊の教本を開き唱え始めると他のメンバーも一緒に経を唱える。
祐一は、春香から借りた霊符を手にした。
「日が沈んだら、彼らが現れるはずだ」峯川が空を見上げる。「その時に、浄霊を行おう」
松井と広末は、少し離れた場所で待機する。
「二人は、サポートに回ってくれ」小川が指示する。「何か異変があったら、すぐに知らせて」
「分かった」
そして、日が沈んだ。
***霊たちの出現***
闇が訪れると同時に、小屋から光が漏れ始めた。
前回と同じ、揺らめく橙色の光。
そして、四つの人影が現れた。
三崎勘一、女性、少年、子供。
彼らは、祭壇の前に静かに立った。
「三崎さん」祐一が一歩前に出た。「あなたの想いを、理解しました」
三崎の顔が、少し驚いたように見えた。
「この山を守りたいという、あなたの願い。僕たちが、引き継ぎます」
祐一は深く頭を下げた。
「だから、どうか──安らかに、お眠りください」
三崎の目から、光の粒が溢れた。涙のように。
そして、三崎は小さく頷いた。
***浄霊***
再び、メンバー全員でお経を唱え始めた。
低く、厳かな声が、山に響く。
祐一は霊符を掲げた。符が、淡い光を放つ。
星川が聖水を撒く。水滴が、空中で光の粒となって散る。
小川の数珠が、カチカチと音を立てる。
そして──。
四つの人影が、光に包まれ始めた。
柔らかい、温かい光。
女性が子供の手を握る。少年が老人に寄り添う。
四人は、最後に祐一たちを見て──微笑んだ。
「ありがとう……」
風に乗って、そんな声が聞こえた気がした。
光はゆっくりと上昇し、夜空へと消えていった。
静寂でも、それは恐ろしい静寂ではなかった。穏やかで、優しい静寂。
「……成仏されたな」星川が静かに言った。
「ああ」小川が頷く。
祐一は、涙を流していた。
「お疲れ様、三崎さん……」
その後、一旦メンバーたちは車に乗り、近くの旅館に泊まる事にした。
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