祠の封印と次へ向けて
祠の封印に向けて祐一たちは、さらに立ち向かって行く・・・
祐一が深く息を吸い込み、全身に力を込めた。
「もう一度……!」
両手を前に突き出し、集中する。
白い霊光が、祐一の手から迸る。
光は一直線に飛び、最も大きな黒い影に直撃した。
「ギィィィィィ——!」
影が激しく身をよじり、そして——
光に包まれて、完全に消滅した。
「やった!」小川が歓声を上げる。
「祐一さん、すごい……!」さくらが目を輝かせた。
しかし、祐一は膝をついた。
「はぁ……はぁ……」
連続して霊光を放ったことで、かなり霊力を消耗している。
「祐一! 大丈夫か!」峯川が駆け寄る。
「大丈夫……少し、休めば……」
その時「完成しました!」橘の声が響いた。
橘の手の中で、封印の札が眩い光を放っている。
「今です! みんな、祠から離れて!」
全員が素早く後退する。
橘が札を高く掲げ、呪文を唱え始めた。
「天地四方、浄化の力よ——」
「この祠に宿りし古き封印を——」
「今、新たなる力をもって、強化せん!」
札が、橘の手から離れ、宙に浮かんだ。
そして、まるで意志を持つかのように、祠へと飛んでいく。
札が祠に触れた瞬間
***光の奔流***
眩い光が、祠から放たれた。
光は波紋のように広がり、周囲全体を包み込む。
残っていた黒い影たちが——
「ギャアアアアァァァ!」
悲鳴を上げながら、次々と消えていく。
霧も、光に押され、みるみるうちに薄れていく。
やがて、全ての影が消え、霧も完全に晴れた。
「……終わった、の?」松井が恐る恐る周囲を見回す。
寮が祠に近づき、手をかざした。
「……ああ。封印は、しっかり強化された」
「やった……!」星川が安堵の声を上げる。
小川が地面にへたり込んだ。
「はぁ……怖かった……」峯川が小川の肩を叩く。
「でも、よく頑張ったじゃないか」
「峯川さんも……ありがとうございます」
祐一は、まだ息を整えながらも、笑顔を見せた。(……なんとか、やれた)
***束の間の休息***
橘が祠の前で、改めて確認作業をしている。
「封印は……問題なく機能しています。これで、当分は大丈夫です」
由香が祐一の隣に座った。
「祐一くん、大丈夫? かなり霊力使ったでしょ?」
「ああ……でも、まだ動けます」由香が小瓶を取り出した。
「これ、霊力回復の薬草茶。飲んで」
「ありがとうございます」
祐一が薬草茶を飲むと、
「うわ・・・苦い」
由香が「はい、オレンジ ジュース」と
祐一に渡されたオレンジジュースを一気に飲み干す。
それと同時にじんわりと体に力が戻ってくる感覚があった。
さくらが、お供え物を整えながら言った。
「みんな、本当にお疲れ様……」
「さくらさんも。お供えの準備、完璧だったよ」由香が優しく微笑む。
星川が地図を広げた。
「次は……三つ目の祠ですね」
寮が頷いた。
「ああ。だが、少し休んでからにしよう。特に、祐一は霊力をかなり使っている」
峯川も同意する。
「そうだな。ここで無理して、次で動けなくなったら意味がない」
***不穏な気配***
十分ほど休憩を取った後、祐一が立ち上がった。
「よし……だいぶ回復した。行こう」
全員が立ち上がり、三つ目の祠へ向けて歩き出す。
しかし、林を出て、しばらく歩いたところで寮が急に立ち止まった。
「……何だ、この気配は」
由香も表情を曇らせる。
「感じるよ……何か、とても強い霊的なエネルギーを……」
祐一も、背筋に寒気を感じた。
(これは……今までとは、違う……)
遠くから、まるで地を這うような、低い唸り声が聞こえてくる。
「まさか……」橘が青ざめる。
松井が震える声で言った。
「三つ目の祠は……もう、封印が破れかけているのかも……」
その言葉に、全員の表情が引き締まった。
峯川が拳を握る。
「……なら、急ごう。手遅れになる前に」
祐一が先頭に立ち、一行は再び歩き出した。
まだ見ぬ、三つ目の祠へと、そして、そこで待ち受ける、より大きな脅威へと。
一行の戦いは、まだ終わらない。
***三つ目の祠***
一行が急ぎ足で進むと、前方に、三つ目の祠が見えてきた。
しかし、その周囲は、黒い霧に包まれ、不気味な気配が立ち込めている。
「あれが……三つ目の祠」
祐一が息を呑む。
祠の周りには、すでに無数の黒い影がうごめいていた。
「数が……多すぎるわ……」松井が顔を青ざめる。
その時、黒い影たちが、一斉にこちらを向いた。
そして、「ギィィィ……「ギャアアア……」
不気味な声を上げながら、一斉に襲いかかってきた。
「来る!」峯川が叫ぶ。
祐一が霊光を放とうとした、その時——
***寮の霊光弾***
「ここからは、僕も参戦する」寮が前に出た。
その目は、鋭く、そして静かな決意に満ちている。
寮が両手を胸の前で合わせ深く、息を吸い込んだ。
「霊光弾」寮の声が、低く響く。
その瞬間、寮の両手から、眩い光の球体が生まれた。
それは、祐一の霊光とは比べ物にならないほど、強力で、巨大だった。
光の球は、まるで太陽のように、周囲を照らし出す。
「これは……!」小川が目を見開く。
寮が、光の球を前方へ放った。
光の球は、一瞬で悪霊の集団へ飛びこみ悪霊の集団の前で、
ドォォォン!
凄まじい光が、爆発するように広がる。
「ギャアアアアアアァァァ!」
「グギギギギ……!」
悪霊たちが、一斉に悲鳴を上げる。
光の波が、悪霊たちを次々と飲み込んで行った。
一瞬にして、数十体以上の悪霊が、完全に消滅した。
「凄い……」祐一が、思わず呟く。
他のメンバーも、呆然と寮を見つめていた。
「……先に進もう。今のうちに、祠へ」寮が冷静に告げる。
***祠への突入***
「あれが、祠だ! みんな、急いで!」
由香が指さす方向にメンバー全員が、一斉に駆け出した。
黒い霧を掻き分け、悪霊たちの間を抜けていく。
寮が先頭を走り、祐一と峯川がそれに続く。
後方では、松井とさくらを、星川と小川が守っている。
橘は、すでに封印の札を手に準備を整えていた。
祠の前に到着すると由香が叫んだ。
「みんな、持ち場について! 封印の儀式を始めます!」
***封印の準備***
星川が素早くお香を取り出し、火をつけた。
「お香を焚きます!」
濃密な白煙が立ち上り、祠の周囲を包み込む。
煙が、結界のような役割を果たし始める。
峯川が浄化スプレーを取り出し「浄化スプレー、撒くぞ!」
シュッ、シュッ、シュッ!
祠の周囲に、何度も浄化スプレーを振りまく。
空気が、少しずつ清められていく。
小川が、地面に膝をついた。
「結界を……作ります……!」
手の中に、チョークを握りしめ——
地面に、複雑な魔法陣を描き始める。
円を描き、その中に幾何学的な模様を刻んでいく。
「完成……!」
小川が両手を魔法陣にかざすと——
魔法陣が淡く光り始めた。
光が、祠の周囲に結界を作り出す。
「簡易結界、展開しました!」
橘が祠の前に立った。
「封印の儀式を、始めます!」
橘の手の中で、札が強く光り始める。
***悪霊の猛攻***
しかし——結界を感じ取った悪霊たちが、より激しく、襲いかかってきた。
「ギィィィ!」
「グギャアアア!」
黒い影たちが、波のように押し寄せてくる。
「来るわ! 数が多い!」松井が叫ぶ。
寮が、冷静に周囲を見回した。
そして、再び、悪霊の気配を察知する。
「……右から三体。左から五体。後方から……四体」
寮が、静かに呟く。
そして、両手を左右に広げた。
「霊力解放」
寮の全身から、白い霊気が溢れ出す。
それは、まるで炎のように、激しく揺らめいている。
「浄化」
寮が、右手を右方向へ向けた。
白い光の波が、右から迫る三体の悪霊を包み込む。
「ギャアアァ!」
三体が、同時に消滅する。
寮が、左手を左方向へ向ける。
「浄化」
再び、白い光の波が放たれる。
左から迫る五体の悪霊が、次々と、光に包まれて消えていく。
「後方……」
寮が振り返り、両手を後方へ向けた。
「霊光弾」
小さな光の球が、四つ生まれ一瞬で後方の四体の悪霊が霊光に包まれ悪霊たちが、消滅していく。
「時間を稼ごう」
寮が、祐一たちに向かって言った。
「みんな、無理をしないで、耐えてくれ」
***全員の総力戦***
祐一も、霊光を放つ準備をした。
「僕も、やります!」
「祐一、無理するな! 霊力は温存しろ!」峯川が叫ぶ。
「でも……!」
「峯川さんの言う通りだ」寮が冷静に言った。「祐一、君はまだ霊力が回復しきっていない。ここは、僕に任せろ」
「……分かりました」
祐一は、悔しさを感じながらも、寮の言葉に従った。
峯川が浄化スプレーを構える。
「なら、俺たちは、サポートに回る!」
星川が新しいお香を取り出す。
「浄化のお香、追加します!」
さらに濃密な煙が、結界を強化していく。
小川が、必死に結界を維持している。
「結界……持ちこたえて……!」
小川の額に、汗が滲んでいる。
松井が、さくらを守りながら——
「さくらちゃん、大丈夫?」
「はい……大丈夫です……」
さくらは震えながらも、お供え物をしっかりと守っていた。
由香が、橘の隣に立つ。
「橘さん、どのくらい時間が必要?」
「あと……三分……いえ、二分です!」
橘の声が、緊張で震えている。
「分かった。寮くん、あと二分!」
「了解」
寮が、再び悪霊の集団に向き直った。
***寮の奮闘***
悪霊たちが、さらに押し寄せてくる。
その数は——
もはや、数え切れないほどだった。
「……数が、多いな」寮が、小さく呟く。
しかし、その表情には、恐れはなかった。
ただ、静かな決意だけが、宿っている。
「なら——一気に、やるか」
寮が、深く息を吸い込んだ。
そして、両手を、高く掲げた。
「集束霊光弾」寮の両手の上に巨大な光の球が、生まれた。
それは、先ほどの霊光弾よりもさらに、巨大で、強力だった。
光の球は、脈動するように輝いている。
「行け——!」
寮が、光の球を放った。
光の球は悪霊の集団の真ん中へ一瞬に現れ、凄まじい光の爆発が、起こった。
光の波が、全方向へと広がっていく。
「ギャアアアアアアアアァァァ!!」
悪霊たちが、一斉に悲鳴を上げる。
そして、数百体以上の悪霊が一瞬にして、消滅した。
「凄すぎる……」峯川が呆然と呟く。
小川も、信じられないという表情で寮を見つめていた。
しかし、寮は、膝をついた。
「はぁ……はぁ……」
「寮くん!」由香が駆け寄る。
「大丈夫……少し、霊力を使いすぎただけだ……」
寮の額には、汗が滲んでいる。
「無理しないで!」
「大丈夫だ……まだ、やれる……」
寮が、再び立ち上がろうとした、その時、、、
***封印の完成***
「完成しました!」橘の声が、響いた。
橘の手の中の札が、眩い光を放っている。
「今です! 封印を——!」橘が、札を高く掲げた。
「天地四方、浄化の力よ!この地に宿りし封印を今、新たなる力をもって、完全に強化せん!」
札が、橘の手から離れ——
祠へと、飛んでいった。
札が祠に触れた瞬間、ゴォォォォォォ!
凄まじい光が、祠から放たれ光は、波紋のように広がり周囲全体を、包み込んでいく。
残っていた悪霊たちが「ギャアアアアアアアァァァ!!」と断末魔を上げながら光に飲み込まれ次々と、消滅していく。
黒い霧も光に押され、みるみるうちに消えていく。
やがて全ての悪霊が消え、黒い霧も、完全に晴れた。
静寂が、訪れた。
***戦いの終わり***
「……終わった……?」
松井が、恐る恐る周囲を見回す。
橘が祠に近づき、手をかざした。
「……封印は、完璧に強化されています。これで……三つ目も、完了です」
「やった……!」星川が、安堵の声を上げる。
峯川が、地面に座り込んだ。「はぁ……疲れた……」
小川も、へたり込む。「もう……動けない……」
祐一は、寮のもとへ駆け寄った。「寮さん、大丈夫ですか!」
寮は、小さく笑った。
「ああ……大丈夫だ。少し……疲れただけだ」由香が寮の肩を支える。
「無茶しすぎだよ、寮くん」
「すまない……でも、みんなを守りたかったんだ」その言葉に全員が、寮を見つめた。
そして「ありがとうございます、寮さん」
祐一が、深く頭を下げた。
「寮さんがいなかったら……僕たち、やられていました」
「そうだよ。本当に、ありがとう」由香も微笑む。
「寮さん……カッコよかったです」さくらが、目を輝かせる。
寮は、少し照れくさそうに笑った。
「……いや、みんなの力があったから、やれたんだ。一人じゃ、無理だった」
峯川が立ち上がり、寮の肩を叩いた。
「まあ、とにかく……お疲れさまです。」
「ああ……峯川も、お疲れ」
橘が、地図を広げた。「これで……三つの祠、全ての封印が強化されたようね」
「じゃあ……これで、終わり?」小川が尋ねる。
橘が頷いた。
「はい。これで、この地域の霊的なバランスは、安定するはずです」
全員が、安堵のため息をついた。
「よかった……」松井が、笑顔を見せる。
祐一も、笑顔になった。(……みんなで、やり遂げた)
空を見上げると——
雲の間から、陽の光が差し込んでいた。
まるで彼らの勝利を、祝福しているかのように。
「……帰ろうか」
寮が、静かに言った。「ああ……帰ろう」
祐一が頷く。
一行は、疲れた体を引きずりながらも——
笑顔で、帰路についた。
長い戦いは、ようやく、終わりを迎えたのだった。
***数日後、部室にて***
オカルト研究部の部室には、いつもの穏やかな空気が戻っていた。
祐一は、河餅部長の前に立ち、今回の調査と封印強化の報告をしていた。
「……以上が、三つの祠の封印強化についての報告です」
祐一が報告書を部長に渡す。
河餅部長は、報告書に目を通しながら、何度か頷いた。
「なるほど……三つとも、無事に封印を強化できたのか」
「はい。橘さんの指導のおかげで、なんとか完了しました」祐一が答える。
河餅部長が、報告書を閉じた。
「それで、空き地の状況は?」
「はい。これで、ひとまず、空き地への影響も遮断されたみたいです」祐一が説明する。
「あの空き地周辺の霊的なエネルギーの流れが、かなり安定しました。以前のような、強い悪霊の出現は、抑えられると思います」
河餅部長が安堵の表情を見せる。「そうか……よかった」
しかし、祐一の表情は、完全には晴れていなかった。
「ただ……まだまだ、色々と謎も残っています」
「謎?」
「はい。三つの祠が、なぜあの場所に配置されているのか。そして、あの空き地の地下に、何が眠っているのか……」
祐一が、真剣な目で部長を見つめる。
「完全に解決したわけでは、ありません。封印を強化しただけで、根本的な原因は……まだ、分かっていないんです」
河餅部長が、腕を組んだ。
「……確かに、そうだな」
「ですので——」祐一が続ける。
「しばらくの間、空き地周辺の調査と浄化活動も、行ってみます」
「分かった」
河餅部長が頷いた。
「ああ、頼む。ただし、無理はするなよ」
「はい。ありがとうございます」祐一が、深く頭を下げた。
***メンバーの意見***
部室の隅では——峯川、星川、小川、松井、さくらが、今回の件について話し合っていた。
峯川が腕を組みながら言った。
「簡単に済んだようだけど……まだ、何か引っかかる所もあるな」
「引っかかる?」小川が尋ねる。
「ああ。三つの祠の封印を強化したことで、確かに空き地への影響は抑えられた。でも……あの地下に眠っているという、強大な存在については、何も分かっていないんだ」
峯川が窓の外を見つめる。
「本当に、これで済めばいいんだけどな」星川も、同意するように頷いた。
「確かに……物足りないけど、これ以上の活動は、我々だけでは力不足だろうな」
「力不足……」小川が俯く。
「今回の戦いでも、寮さんがいなかったら……僕たちだけじゃ、絶対に無理だった」
小川の言葉に、全員が黙り込む。
それは、全員が、痛感していることだった。
松井が、静かに言った。
「今回は、比較的低級の悪霊だったから、なんとかなったけど……数が多かったよね」
「ああ……」峯川が頷く。
松井が続ける。
「もし……強い悪霊も現れていたら……寮さんや橘さんがいなかったら……」
松井の声が、少し震える。
「私たちだけじゃ……きっと、やられていたわ」
さくらも、不安そうに呟いた。
「私なんて……お供え物を準備するくらいしか、できなかったし……」
「さくらさん、そんなことないよ」
松井が、さくらの肩を抱く。
「お供え物も、大切な役割だったんだから」
「でも……」
***小川の推測***
小川が、少し考え込んでから言った。
「……ボス的な存在が、眠っているのは分かるけど……」
「ボス的な存在?」星川が尋ねる。
「ああ。あの地下に眠っているという、強大な霊的存在のこと。おそらく、あの空き地一帯を支配している、何か大きな存在がいるんだと思う」
小川が、真剣な表情で続ける。
「でも……今は、動いては来ないみたいだから、こっちから無理に刺激する必要もないだろうね」
「確かに……」峯川が同意する。
「下手に刺激して、目を覚まされても困るしな」
星川も頷いた。
「三つの祠の封印が強化されたことで、その存在の力も、ある程度は抑えられているはず。今は、様子を見るのが賢明だろう」
「でも……いつかは、向き合わないといけない時が来るのかな……」
さくらが、不安そうに呟く。
峯川が、さくらの頭を優しく撫でた。
「その時は、その時だ。今は、できることをやるしかない」
「……うん」さくらが、小さく頷いた。
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