つばき壮・催し会場での作戦会議
次の活動の為、祐一たち調査グループが結成され、つばき壮で会議を行う事になった。
河餅部長の話を聞いた後、祐一たちのグループはつばき壮に向かった。
つばき壮には、普段は使われていない催し会場がある。広々とした部屋で、大人数での会議に最適だ。
床の上には、既に大きなテーブルが用意されていた。寮とさくらが、お茶とお菓子を並べてくれている。
「さあ、みんな座ってくれ」
寮が笑顔で全員を迎えた。
祐一、峯川、星川、橘、そして新たに加わった小川と松井が、テーブルを囲むように座る。
「では、次の対策について検討してみよう」
祐一が立ち上がり、テーブルの中央に地図を広げた。
***調査ルートの確認***
「まず、河川についての調査ルートだが——」
祐一が地図上の用水路をなぞる。
「ここから北上し、三つの祠を順番に回る。最終目的地は、この北側の祠だ」
星川が地図を覗き込む。
「地形的には、途中に二か所、足場の悪い場所がある。ここと——ここだ」
星川が二つの地点を指さした。
峯川が頷く。
「了解。マップを確認しながら、ルートのナビを俺が担当する。危険な場所は事前に知らせるよ」
橘が冷静に付け加える。
「封印の手順については、私が担当します。ただし——」
橘の表情が少し険しくなった。
「前回の洞窟と同様、封印が破られかけている可能性があります。その場合、応急処置だけでも時間がかかるわ」
「分かった。その間の警戒は、僕たちが担当する」
祐一が小川を見る。
「小川君と僕は、周囲の警戒と対応をする。何かあったら、すぐに対処しよう」
小川が真剣な表情で頷いた。
「はい。魔法陣の準備も、事前にしておきます」
***悪霊遭遇時の対応***
松井が静かに口を開いた。
「もし、悪霊や霊的な存在と遭遇した場合は——」
祐一が続ける。
「まず、松井さんに周辺の霊的存在を感じ取ってもらう。何か感じたら、すぐに知らせてほしい」
「分かりました」
松井が真剣な眼差しで答える。
寮が腕を組んだ。
「霊的な存在に対しては、橘さんと僕が主に対応する。それと——」
寮が一瞬、視線を窓の外に向けた。
「今回、僕の知り合いの由香も同行することになった」
***由香という存在***
小川が興味深そうに尋ねる。
「由香さん……どんな方なんですか?」
寮が穏やかに微笑んだ。
「由香は占い師だが、ただの占い師じゃない。封印された場所や、霊道の位置を正確に探り当てることができる」
さくらが嬉しそうに付け加える。
「それに、とても優しい人よ。きっとみんな、すぐに打ち解けられるわ」
峯川が拳を握る。
「それなら心強いですね! 由香さんがいれば、目的の場所を探りながら、安全に進めそうだ」
星川も頷いた。
「霊道の専門家がいるのは、大きなアドバンテージです」
橘が地図を見つめながら言った。
「由香さんの力があれば、封印の状態も事前に把握できる。それによって、準備すべきものも変わってくるわ」
***チームの連携確認***
祐一が全員を見回した。
「では、もう一度確認しよう」
祐一が指を折りながら説明する。
「松井さんは、周辺の霊的存在を感じたらすぐに知らせる」
「はい」
「星川君は、地形チェックを担当」
「了解です」
「峯川は、マップを確認しながらルートのナビ」
「任せてくれ!」
「小川君と僕は、周囲の警戒と対応」
小川が力強く頷く。
「そして、霊的な存在に対しては、橘さんと寮さんが対応する」
橘と寮が同時に頷いた。
「由香さんには、目的の場所を探りながら、全体の霊的な状況を把握してもらう」
祐一が深呼吸をする。
「これで、ある程度の連携は取れるはずだ」
***所持品の準備***
寮が立ち上がった。
「では、次に所持品の準備について話そう」
寮が部屋の隅から、大きな箱を持ってきた。
「まず、これは浄化スプレーだ。由香が調合したものだよ」
小さなスプレーボトルが、人数分並べられる。
「悪霊に直接吹きかけることで、一時的に弱体化させることができる」
橘が付け加える。
「それから、護符も必要ね」
橘がカバンから、いくつかの護符を取り出した。
「これは防御用の護符。身につけておけば、ある程度の霊的攻撃から身を守れるわ」
峯川が護符を手に取る。
「おお、これは心強い……」
星川が静かに尋ねた。
「他に、必要なものはありますか?」
寮が少し考え込むような仕草をした。
「そうだな……懐中電灯、予備のバッテリー、それから——」
寮が真剣な表情になる。
「万が一の時のための、退路の確保だ」
***退路の確保***
全員が寮に注目する。
「今回の調査は、前回以上に危険が伴う。もし、手に負えない状況になったら——」
寮が全員を見回した。
「躊躇せずに撤退すること。命より大切なものはない」
祐一が頷く。
「分かりました。その判断は、僕がします」
「頼んだよ、祐一くん」寮が優しく微笑んだ。
峯川が地図を指さす。
「退路として使えそうなルートは、ここと——ここですね」
「そうだ。事前に確認しておこう」
星川がメモを取る。
「緊急時の集合場所も、決めておいた方がいいかもしれません」
「それはいい考えだ」
寮が地図上の一点を指さした。
「ここに、小さな神社がある。何かあったら、ここを集合場所にしよう」
***最終確認***
作戦会議が終わりに近づいた頃——
松井が静かに手を挙げた。
「あの……一つ、気になることがあるんですが」
「何かな?」
寮が優しく尋ねる。
「封印の奥にいる存在……それは、本当に悪いものなんでしょうか?」
その問いに、一瞬、全員が沈黙した。
祐一が、あの龍の目を思い出す。
確かに——あれは恐ろしかった。
しかし同時に、どこか悲しげでもあった。
寮が深く息を吐いた。
「それは……正直、僕にも分からない」寮が窓の外を見つめる。
「ただ、封印されているということは、かつて誰かが『封印すべき』と判断したということだ」
橘が続ける。
「その理由が何であれ、今、封印が破られようとしている。それを放置すれば——」
「この街に、何が起きるか分からない」
星川が静かに付け加えた。
小川が拳を握りしめる。
「だから、僕たちが調査するんですね」
「その通り」
祐一が全員を見回した。
「封印されているものが何であれ、まずは真実を知ることだ。そして——」
祐一は決意を込めて言った。
「もし、対話が可能なら——対話を試みる。それでも無理なら……」
「その時は、力で対処するしかない」
峯川が力強く頷いた。
***決意の夜***
会議が終わり、メンバーがそれぞれ帰路につく中——
祐一は、もう一度地図を見つめていた。
「大丈夫かい?」
寮が、お茶を淹れ直しながら尋ねた。
「……はい。ただ、少し緊張しています」
「それは当然だ」
寮が祐一の隣に座る。
「でも、君なら大丈夫だ。君には、仲間を信じる力がある」
「仲間を……信じる力」
「そうだ」
寮が穏やかに微笑んだ。
「一人では乗り越えられないことも、みんなで力を合わせれば乗り越えられる。今日の会議で、それが証明されただろう?」
祐一は、今日のメンバーの顔を思い出した。
峯川の力強い笑顔。
星川の冷静な分析。
橘の確かな技術。
小川の真摯な姿勢。
松井の繊細な気遣い。
そして——寮とさくらの温かさ。
「……はい。みんながいれば、きっと大丈夫です」
「その意気だ」
寮が立ち上がる。
「さあ、今日はもう休むといい。明日から、最終準備が始まる」
「はい」
祐一も立ち上がった。
部屋を出る前に、祐一は振り返った。
「寮さん」
「ん?」
「由香さんって……どんな人なんですか?」
寮が少し懐かしそうに微笑んだ。
「それは——会ってからのお楽しみだよ」そう言って、寮は優しく笑った。
祐一は部屋に戻った。
窓の外では、用水路の水音が響いている。
(あと二日……)
祐一は、ベッドに横たわった。
休日の調査。
そこで、すべてが明らかになる。
その予感だけが——
祐一の心に、強く残っていた。
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