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オカルト研究部 田中祐一 今日も怪異あり  作者: waku


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つばき壮への帰還と次に向けて

 祐一たちは、祠の封印を済ませ、帰還の途についていた。

まだ色々な謎が多く残されている様だった。

車内は重い沈黙に包まれていた。

峯川が運転席でハンドルを握り、祐一は助手席で窓の外を眺めている。後部座席では橘と星川が、疲れた表情で目を閉じていた。


やがて、橘美紀が口を開いた。

「……今回の件は、思っていたより、大変かも知れません」

その声には、いつもの自信に満ちた響きではなく、僅かな不安が滲んでいた。

峯川が深くため息をつく。


「確かに悪霊が現れたりすると、俺たちだけでは、厳しいな。他のオカルト研究会のメンバーたちが参加しても、大幅な戦力アップは厳しそうだ。小川と松井が加われば多少は霊的な存在に対抗できるかもしれないが……」


祐一も頷く。

「並の霊に対しては、対応できるかもしれないけど……」

言葉を濁す祐一の脳裏に、あの龍の目の残像が蘇る。

あれは、並の霊ではない。

もっと深く、古く、強大な何かだ。


星川が静かに提案した。

「寮さんに、相談してみよう」

全員が無言で頷いた。


***つばき壮での再会***


 つばき壮の玄関前に車を停めると、さくらが玄関に立って待っていた。

彼女の長い黒髪が夜風に揺れる。

「おかえり、みんな。どうだった?」

優しい声だが、その瞳には心配の色が浮かんでいる。

祐一が車から降りながら答えた。

「まあ、なんとか……」

言葉を選びながら、祐一は今日の出来事を簡潔に伝えた。


 さくらは真剣な表情で聞いていたが、やがて安堵の息を漏らす。

「みんな無事でよかった。寮さんがそろそろ戻って来る時間だから、また、相談してみるのが良さそうね」


そう話していると——


玄関の奥から、軽快な足音が聞こえてきた。

「ただいま」

寮が笑顔で現れた。いつものように、ゆったりとした雰囲気を纏っている。

「どうだい調査は?」

祐一が表情を引き締める。

「ええ……ただ、思っていた以上に厳しい可能性も出てきました」

寮は腕を組み、一瞬考え込むような仕草を見せた。

「そうか……ひとまず、裏のカフェで話そう」


***裏カフェでの作戦会議***


 つばき壮の裏手にある小さなカフェは、つばき壮のオーナーが経営する隠れ家的な空間だ。

温かな照明と木の温もりが心地よい。 


 今日は、つばきカフェのたこ焼きを注文した。

テーブルには、タコマヨ、ソース、しょうゆ、チーズと、色々なバリエーションのたこ焼きが並べられた。

湯気が立ち上り、香ばしい匂いがカフェ中に広がる。

寮がソース味のたこ焼きを箸で掴み、口に入れた。

「あつ、あつだ」

少し慌てて水を飲み、それから笑顔になる。

「やっぱり、僕はソース味が王道だと思うね」

祐一はタコマヨを食べ、橘はチーズ味を選んだ。峯川はしょうゆ味、星川はソース味を口に運ぶ。

それぞれが好みのたこ焼きを味わいながら、少しずつ緊張がほぐれていった。


***報告と新たな提案***


 祐一が今日の出来事を、順を追って説明した。

洞窟の奥で見つけた第二の封印。

内側から破られかけた痕跡。

そして——悪霊の群れとの戦闘。

寮は黙って聞いていた。

時折頷き、時折眉をひそめながら、すべての情報を整理しているようだった。

橘が付け加える。

「封印は強化しましたが、あくまで応急処置です。根本的な解決には、まだ遠い状況です」

星川も続けた。

「それに、あの影……ただの悪霊ではありませんでした。もっと知性を持った、古い存在のように感じました」

峯川が拳をテーブルに置く。

「正直、次に同じような状況になったら、俺たち四人だけじゃ対応しきれないかもしれない」

寮は最後のたこ焼きを食べ終え、ゆっくりとお茶を一口飲んだ。

そして——


「そうだ、今度の休日、由香と一緒に僕も行くよ」

祐一が顔を上げる。

「由香……さん?」

寮が穏やかに微笑んだ。

「由香は、僕の幼馴染で、今では、占い師としても一流だ。ハーブの調合や、浄化スプレーも由香が作っているんだ」


 峯川が驚いたように声を上げる。

「え、あのスプレー、寮さんが作ってたんじゃなかったんですか?」

「ははは、僕はただの仲介役さ。由香の方が感覚が鋭い。それに——」

寮は少し真剣な表情になった。

「由香は、こういった封印されている場所や霊的な位置を探し出すエキスパートなんだ。今回のような複雑な事態には、彼女の力が必要になるだろう」

さくらが嬉しそうに声を弾ませた。

「由香さんが来てくれるの? 久しぶりね!」

寮が頷く。

「ああ。今日連絡したら、ちょうど時間が空いてるって。それに——」

寮は祐一をまっすぐ見つめた。

「君が見たという龍の目。それについても、由香なら何か知っているかもしれない」

祐一は息を呑んだ。

あの龍の目について、自分は詳しく話していなかったはずだ。

しかし寮は——

まるで、すべてを見通しているかのような表情を浮かべている。


「休日まで、あと三日ある。それまでは無理な調査はせず、準備に専念しよう」

橘が頷く。

「分かりました。それまでに、用水路周辺の情報を集めておきます」

星川も続けた。

「僕も、古い文献を調べてみます。この地域の霊道について、もっと詳しく知る必要がありそうです」

峯川が力強く拳を握る。

「俺は、小川と松井に声をかけてみる。もし戦闘になった時のために、バックアップ要員は多い方がいい」

寮が満足そうに微笑んだ。

「いい心構えだ。じゃあ、今日はこれでお開きにしよう。みんな、ゆっくり休んでくれ」


 ***夜の静寂***


カフェを出て、メンバーと分かれ祐一は、部屋へ戻った。

祐一は自室のベッドに横たわり、天井を見つめた。

(由香さん、か……)


寮が信頼を寄せる占い師。

そして、封印術に詳しい人物。

(もしかしたら、あの龍の目の正体も……)

考えれば考えるほど、謎は深まるばかりだ。

しかし同時に——

少しだけ、希望のようなものが見えてきた気がした。

自分たちだけではない。

寮がいて、さくらがいて、そして由香が新たな協力者として加わる。

(次の休日……)

祐一は目を閉じた。

遠くで、用水路の水音が微かに聞こえる。

まるで、何かが——

彼を呼んでいるように。


***オカルト研究会部室での報告***


 翌日の放課後。

祐一はオカルト研究会の部室のドアをノックした。

「失礼します」

部室の中では、河餅部長が古い書物を読みふけっていた。眼鏡の奥の目が、真剣な光を宿している。

「おお、田中くんか。昨日の調査、どうだった?」

祐一は椅子に座り、昨日の出来事を詳しく報告した。


洞窟での第二の封印。悪霊の群れとの戦闘。そして、封印の奥に潜む巨大な存在の気配。


 河餅部長は腕を組み、深く頷きながら聞いていた。

「……なるほど。想像以上に、事態は深刻だな」


 祐一が続ける。

「次は用水路の調査を行う予定です。ただ、今回の状況を考えると……」

言葉を選びながら、祐一は提案した。

「新たな助っ人として、小川君と松井さんの同行をお願いできないでしょうか」

河餅部長は少し考え込むような仕草を見せた。

窓の外では、校庭で部活動に励む生徒たちの声が聞こえる。

やがて、河餅部長は力強く頷いた。

「了解した」


***戦力の増強***


 河餅部長が立ち上がり、部室の奥にある棚から二つのファイルを取り出した。

「小川の魔法と松井あゆみの霊術が加われば、いくらか戦力アップにつながる」

ファイルを開きながら、部長は二人の能力について説明を始めた。

「小川君は、西洋魔術を独学で習得し攻撃魔法の才能は確かなものがある。ちょっとした悪霊なら撃退できるだろう」

祐一は頷く。

小川のことは、これまで部活の集まりで何度か活動して来た事がある。

魔法陣を描く時の集中力は、まるで別人のようだった。


「それから松井あゆみは霊感が強く、祐一君と一緒に霊術についても学んでいる」

河餅部長が続ける。

「彼女の霊術は、攻撃よりも探知や防御に特化している。松井の能力があれば、霊の存在を探知しやすくなる。見えない敵を相手にする時、これは非常に重要だ」

祐一は安堵のため息をついた。

確かに、この二人が加われば——

少なくとも、昨日のような悪霊の群れには対応できるだろう。

「ありがとうございます、部長」


 河餅部長「礼を言うのはまだ早い。二人には、私から話をしておこう。ただし——」

部長の表情が真剣になった。

「田中くん、君が見たという龍の目だが……」

祐一の背筋が伸びる。


「それは、おそらく普通の霊とは次元が違う。小川や松井が加わっても、万全とは言えない」

「……分かっています」

祐一は拳を握りしめた。

「でも、だからこそ——」

「ああ、分かっている」


 河餅部長が優しく微笑んだ。

「田中くんは逃げないで立ち向かう勇気がある。それが君の強さだ。だが、無理はしないことだ。仲間全員の命がかかっているんだからな」

「はい」

祐一は深く頷いた。


***新たな仲間との顔合わせ***


 その日の夕方、部室に小川と松井あゆみが呼ばれた。


「失礼します……」

続いて入ってきたのが、松井あゆみ。

二年生の彼女は、長い黒髪を後ろで一つに束ね、凛とした雰囲気を纏っている。

目元には薄く隈があり、霊感が強い者特有の繊細さが滲んでいた。

「祐一さん、河餅部長から話は聞いたよ、頑張りましょう」松井が落ち着いた声で言う。


「用水路の調査、協力しよう」小川も頷いた。


「ありがとう、小川君、松井さん」祐一が二人に向かって一礼する。


河餅部長が三人を見回した。

「では、簡単に作戦の確認をしておこう」部長が地図を広げる。

そこには、用水路周辺の詳細な地図が描かれていた。

「用水路沿いには、古い祠が三つある。橘さんの話では、そのうちの一つが特に危険だという」

部長が地図上の一点を指さす。

「ここだ。北側の祠。水の流れと霊道が重なる地点だ」

松井が目を細めた。

「……確かに、この配置は危険ですね。水は霊的なエネルギーを増幅させます」

小川も地図を凝視する。

「僕の魔法でも、水辺では効果が変わるかもしれません……」

河餅部長が頷く。

「だからこそ、事前の準備が重要だ。田中、休日の調査まで、あと二日ある」

「はい」

「その間に、小川と松井には装備の確認と、簡単な訓練をしてもらう。峯川や星川とミーティングを行った方ほうがいい」


祐一は頷いた。「分かりました。この後、つばき壮に集まってもらえますか?」


 松井が少し驚いたように目を見開く。「寮さんも一緒なんですね」


 「はい。そこが今回の調査拠点として使っています」


 小川が、少し緊張気味に呟いた。

「寮さんや橘さんがいたら足を引っ張らないか心配だな」

祐一が優しく微笑んだ。

「大丈夫。僕だって同じさ——」

祐一は二人の目を見つめた。

「今回は、一人で戦うわけじゃない。みんなで力を合わせれば、きっと乗り越えられるさ」


松井が微笑み、小川も少し安心したような表情を見せた。

「……ありがとう田中」小川が小さく頷く。

河餅部長が満足そうに腕を組んだ。


「よし、では今夜、つばき壮でミーティングだ。田中、寮さんに連絡を頼む」

「はい」

祐一はスマホを取り出し、すぐに寮へメッセージを送った。

数秒後、返信が来る。

『了解。みんなで夕食を囲もう。今夜はカレーだ』

祐一は思わず笑みを浮かべた。

寮らしい、温かい返事だ。

「今夜、六時につばき壮に集合です」

祐一が告げると、小川と松井が同時に頷いた。

こうして——

新たな仲間を加えた調査チームが、動き始めた。


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