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オカルト研究部 田中祐一 今日も怪異あり  作者: waku


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T字路の土地 新たなる相談

T字路の浄化が済2週間が過ぎた頃、また、ある相談が寄せられることになった。

T字路の供養から2週間が過ぎた。


 青空大学・オカルト研究会の部室では、静かな緊張感が漂っていた。

祐一は、窓際の席で湯気の立つコーヒーを手にしながら、2週間前の壮絶な浄化の光景を思い返していた。

 

あの女の子の笑顔。

 異空間の亀裂。

 巨大な悪霊。

 すべてが、まだ夢の中の出来事のようだった。

 そんな時——


「田中君、ちょっといいかい?」河餅部長が部室に入ってきた。

 その後ろには、岡田副部長と、書類の束を抱えた星川の姿があった。

「部長、どうしました?」

「今回、T字路が完全に浄化されたおかげで、あの場所に新たにマンションが建つことが正式に決まったそうだ」

「マンション……ですか」

「そうだ。そして、不動産会社から風水対策やイヤシロチ化の方法について相談したい。という依頼が来た」

 部長は書類を机に置いた。

「ほら、これがその資料だ。建設予定図面と周囲の家相データだ」

 星川が祐一の隣に座り、小さく頷いた。

「田中くん、今回の仕事、僕も同行することになりました」

「星川君も?」

「ああ。不動産会社の佐藤常務から、前回の現場での働きが評価されたみたいで……また来てくれって」

 少し照れくさそうに笑う星川。

 祐一は、資料に目を通した。

 マンションは、T字路の突き当たりから少しだけ離れた位置に建設される予定になっている。

 しかし、周囲には気になる点がいくつかあった。

「……この配置だと、裏鬼門の方角にゴミ置き場が来るな」

「そうなんです。それに——」

 星川が図面を指さす。

「地下に溜まっている"気の残留"が、まだ完全に消えていない箇所があるみたいです」

「残留……?」

 祐一が眉をひそめた。

「T字路を浄化したとはいえ、長年の怨念が"土地そのもの"に残していった痕跡があるんです。悪霊は消えましたけど、土地の気が弱っているのはそのままみたいで……」

 河餅部長が腕を組む。


 「つまり、風水的に見ても、まだ病んだ土地というわけだな」

「はい。だから、不動産会社は開運物件として売り出したいそうで……そのためのイヤシロチ化を依頼したいとのことです」


 イヤシロチ——弥盛地。

 土地を活性化させ、住む人に良い影響を与える良い土地を作る技法。

 祐一は深く息を吸った。

「分かりました。僕と……星川君で行くんですね?」

「ああ。頼むよ、田中君。今回も、きっと君たちの力が必要になる」

 部長の言葉を聞きながら、祐一は遠くT字路の方向を思い浮かべた。

 あの場所は浄化された。

 霊たちは救われた。


 しかし——

「……何か、まだ残っている気がするんです」

 祐一が呟いた。

 星川も、同じように窓の外を見つめた。

「実は、僕もです。亀裂が完全に閉じたように見えたけど……あれは、本当に"終わり"だったんでしょうか」

 その沈黙を破るように、河餅部長が言った。

「現地調査は、明日の午前九時。つばき壮から出発だ。二人とも準備しておいてくれ」

「はい」

「了解です」

 部長が部室を出て行くと、静寂が戻った。

 祐一は自分の胸に残る重さを感じていた。

(あの光の向こう側に……何か、まだ隠れている)

 そんな直感が、消えることなく残っていた。


***現地調査:静まった土地と、残る違和感***


 翌朝九時。

 祐一と星川は車でT字路近くの建設予定地へ向かった。

 現地に着くと、かつての重苦しい圧は嘘のように消えていた。

 空気は澄んでおり、風も軽い。

 まるで、この一帯が長い悪夢から解放されたかのようだった。

「……ずいぶん、変わったな」

 星川が深呼吸をする。

 祐一も頷いた。

「前に来た時は、胸の奥がざわつくような嫌な感じがあったけど……今は、それがほとんど無い」

 しかし。

「ただ……普通の土地に戻っただけって気もするな」

「ああ。イヤシロチには程遠い。まだ中立というか……力が抜け落ちたままの状態だ」

 二人は資料を手に、敷地内を歩きながら細かい調査に入った。

 方位盤を片手に、土地の中心から四方をチェックする祐一。

 

 レーザー距離計と簡易コンパスで地形の蛇行や低地の偏りを記録する星川。

建設予定地は、一見すると広くて開放的だが、地形は微妙に歪んでいた。

 とくに南西(裏鬼門)側に、気の溜まりが生じやすい凹みがある。

「場合によっては……炭を地中に埋めて、気の流れを整える必要があるかもな」

「水晶は中心点。炭は四隅。あと、磁場の調整用に備長炭を多めに入れるのもアリですね」

 祐一は現地の気の流れを感じながら、鎮めのグッズの配置を思案していた。

 そのとき星川が、不意にT字路方向を見た。

「……やっぱり、あの道が気になる」

「T字路の向かい突きか」

「風水的に衝突する殺気がこの敷地の端に当たっている。浄化で悪霊はいなくなったけど、形が持つ気の流れまでは変えられue」

 祐一は腕を組んだ。

「T字路の突き当りには塀を作って、真正面からの流れを遮断するのは、どうだろう?」

「ありだと思います。塀か、あるいは植栽でも良いですね。生きた木の方が気を和らげますし」

「土地に入る道路の取り方も工夫したい。真正面から入れるより……横から少しズラして敷地に入れる形にすれば」

「気の衝突を避けられる。その方が、対策になる」

 二人の意見は、ほぼ一致していた。

 整地作業が始まる前に、

 ●土地の中心点の確定

 ●気の流れの改善

 ●水晶・炭の埋設位置

 ●T字路からの殺気対策

 などを、まとめて提案する必要がある。

 祐一が周囲を見渡すと、土地の中央、ほんのわずかな窪みの場所で風が揺れた。

「……星川君、ここ。気が集まってる」

「本当だ。中心点になる場所ですね。ここの気を"上げる"必要があります」

 水晶を埋めるなら、まさにこの位置だった。

 二人が測量用の杭を打ち込み、中心点をマーキングしていると——

 突然、祐一の首筋を冷たい風が撫でた。

(……?)


  一瞬だけ、微かなざわつき。

 かつて感じたあの気配ほど強くはないが、紛れもない違和感だった。


 星川も同じ瞬間、動きを止めた。

「今……何か来た?」

「ああ。弱いけど……残ってる」

 祐一は周囲を見回した。

 だが何もない。風が吹き抜けていくだけだ。

「あれだけのものを浄化したんだ……跡が全て消えるわけじゃない、か」

「土地の記憶が、まだ微かに残ってるのかもしれないね」

 二人は、風が止むまで黙っていた。

 その後、調査を再開しながらも——

 どこか、胸の奥がざわつくような感覚が離れなかった。

(やっぱり……終わってないのかもしれない)

 祐一の予感は、静かな土地の奥深くで眠る"何か"が目を覚ましつつあることを、確かに告げていた。


***霊道の再調査と橘美紀の参加***


 イヤシロチ化計画を不動産会社に説明すると、担当の佐藤常務は緊張した面持ちで祐一の言葉を聞いていた。

「……つまり、この土地は、浄化は済んでいるものの、周辺の霊道がまだ残っている……そういう事なんですね?」

「はい。土地そのものは回復しつつありますが、周囲の霊道がそのままだと、また悪いものを呼び込む可能性もあります。周囲にある霊道の封印と浄化が必要です」

 祐一の説明に、佐藤常務は深く頭を下げた。

「お願いします。」

 

 部室に戻った二人は、すぐに河餅部長へ状況を報告した。

「なるほど……やっぱり霊道が周囲にもあったのか」

 部長は机の地図を広げると、隣接エリアの古地図や地形図、過去の道路図まで重ねて見せた。

「見てくれ。このライン……山側の古い祠から、問題のT字路へ伸びている。さらに、別の方向に抜ける霊道もある。複数が交差している」

「……だから、あんな強力な悪霊が潜んでいたわけですね」

 星川が呟くと、部長はうなずいた。

「土地そのものは普通に戻っているように見えても、霊道が生きていれば、また呼び寄せる。完全なイヤシロチにするには周辺の結界整備が必要だ」


 「地図を元に、霊道スポットを一つずつ回って浄化するんですね」

「そうだ。今回は、橘にも同行してもらうことにした」


 河餅部長が「さっき寮さんから連絡があって、橘さんが来るそうだ」


「こんにちは、寮さんから、霊道の調査と封印を頼まれて来ました」

 橘美紀——陰陽道の家系に生まれ、式神を操り、封印や結界術にも長けていた。


 祐一「橘さん、本当に来てくれるんですか?」

「はい。この前のT字路の件から遼さんも何か引っかかる所があると言ってたので……」

 彼女は祐一の顔をちらりと見て、微笑んだ。


「T字路からあんな悪霊が現れて来るなんて普通では。ありえない事だったから」

 祐一と星川は息を呑んだ。

「……ありえない事って?」

「ええ。霊道の流れが変調してる。まるで、何かが逃げていくみたいに」

 橘の霊感は、時に核心を突く。

「だからこそ、今のタイミングで封じないと厄介よ。変に移動されると、次はもっと広範囲に広がるかもしれない」

 祐一は覚悟を決めた。

「分かりました。じゃあ、三人で行きましょう」

 星川も頷く。

「まずは例の霊道ラインを実地で確認して、主要な三カ所を先に浄化しましょう。山側の祠、古井戸跡、小さな溜池跡……この三つが軸になりそうです」

「そうと決まれば、出発ね!」橘が立ち上がる。


 河餅部長が、そうだ、峯川君も一緒に行ってもらう事にしよう。廃墟巡りのエキスパートだからね。

「了解、部長」


 こうして——

 翌日、祐一・星川・橘、峯川の四人は、霊道をたどる浄化へと向かった。

 それが、今までとはまったく違う新しい異変"へつながっていくことをまだ誰も知らなかった。



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