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オカルト研究部 田中祐一 今日も怪異あり  作者: waku


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供養前日・最終整備

 供養前日、寮、陽菜、春香、橘美紀が、

業者が設置する祭壇と碑の設置作業と共に浄化活動を行う事になった。

 供養の前日。T字路では、最終的な整備作業が行われていた。

 朝八時。業者のトラックが到着し、供養塔の設置と祭壇の組み立て作業が始まった。

「慎重に運んでください。大切なものですから」

 田村が作業員に指示を出す。

 供養塔が、ゆっくりとトラックから降ろされる。重厚な石碑が、朝日を浴びて鈍く光っていた。

 遼、春香、陽菜、橘美紀の四人も、早朝から現地に到着していた。

「それでは、始めましょう」

 寮が三人を見回した。


 「今日の作業中、霊たちが反応する可能性がある。警戒を怠らないように」

「了解」

 三人が頷いた。

 春香は供養塔の設置場所の近くに立ち、静かに経を唱え始めた。

「観自在菩薩、行深般若波羅蜜多時……」

 般若心経の言葉が、静かに響く。

 

 その声は穏やかでありながら、確かな力を持っていた。

 作業員たちが、供養塔をT字路の突き当たりへと運んでいく。

 地蔵の隣、まさに元々あった場所へ。

 その時だった。

 藪の奥から、黒い影がゆらりと現れた。

「!」

 陽菜が素早く反応した。

 手を掲げ、古代の言葉を紡ぐ。

「古き光よ、闇を払え——霊光弾!」

 陽菜の手から、青白い光の球が放たれた。

 光弾は黒い影に命中し、影は悲鳴のような音を立てて消えた。

「悪霊ね……供養塔の設置を妨害しようとしている」

 陽菜が警戒しながら周囲を見回す。

 また別の場所から、黒い影が現れた。

「まだいるわ!」

 陽菜が再び手を掲げる。

「霊光弾!」

 

二発目の光弾が放たれ、影を消し去る。

 さらに、藪の中から三つの影が同時に現れた。

「数が多い……!」

 陽菜が両手を広げる。

「霊光連弾!」

 複数の光弾が連続して放たれ、黒い影たちを次々と浄化していく。

 

遼が冷静に状況を見守っていた。

「陽菜、無理をするな。消耗しすぎないように」

「大丈夫、まだまだいけるわ」

 陽菜が自信を持って答えた。

 その間、橘美紀は少し離れた場所で、結界の儀式を行っていた。

 白袴姿で、手には陰陽道の護符を持っている。

「東方青龍、南方朱雀、西方白虎、北方玄武……」

 美紀が四方に向かって護符を掲げる。

「天地の理に従い、この地に結界を張る。悪しき霊は、この境界を越えることなかれ!」

 美紀が最後の護符を地面に置くと、T字路全体が淡い光に包まれた。

 目には見えないが、確かに結界が張られたのが分かる。

「これで、悪霊が外に逃げることはない」

 美紀が額の汗を拭った。

 

 結界の中で、陽菜が次々と現れる黒い影を浄化していく。

「まだ来るわね……」

 陽菜の手から、光弾が休みなく放たれる。

 四発、五発、六発……。

 黒い影は、次第に数を減らしていった。

 

 春香は、ずっと経を唱え続けていた。

 その声が、場全体を清めていく。

 悪霊たちが弱まり、陽菜の浄化が容易になっていく。

「もうすぐ終わる……」

 寮が呟いた。

 

 最後の黒い影が現れた。

 それは、他のものより大きく、濃い闇を纏っていた。

「これが、最後ね」

 陽菜が両手を合わせ、力を込める。

「古き光よ、すべての闇を払え——極大霊光弾!」

 これまでよりも遥かに大きな光の球が形成され、黒い影へと放たれた。

 光と闇が激しくぶつかり合う。

 

そして——

 光が勝った。

 黒い影は、完全に消滅した。

 陽菜が膝をつく。

「ふう……これで、全部かしら」

「お疲れ様、陽菜」

 寮が駆け寄り、陽菜の肩を支えた。

「大丈夫。ちょっと疲れただけ」

 陽菜が笑顔を見せた。

 春香が経を唱え終え、ゆっくりと目を開けた。

「浄化されました。もう、悪霊の気配はありません」

「結界も安定しています」

 橘美紀が報告する。


「よし」

 寮が頷いた。

「これで、明日の供養も安全に行えるだろう」

 作業員たちは、何も気づかずに作業を続けていた。

 供養塔は、無事に元の位置に設置された。

 そして、その周りに木製の祭壇が組み立てられる。

 祭壇の上には、お供え物を置く台や、お香を焚くための香炉が設置された。


「これで、準備は完了です」

 田村が確認を取る。

「明日の朝、住職が来られる前に、お供え物を並べます」

「よろしくお願いします」

 寮が頭を下げた。


  業者が引き上げた後、四人だけがT字路に残った。

 供養塔と地蔵、そして祭壇。

 すべてが整った。

「今日の悪霊は、供養を妨害しようとしていたのでしょうか」

 春香が尋ねた。

「おそらくね」

 遼が答える。

「この土地に、長く居座っていた悪霊たち。彼らは、自分たちの居場所が奪われることを恐れていたんだろう」

「でも、もう大丈夫」

 陽菜が自信を持って言った。

「すべて浄化したわ。明日の供養は、きっと上手くいく」

「ええ。そうね」

 橘美紀も頷いた。


 四人は、最後にもう一度、供養塔の前で手を合わせた。

「明日、この場所に眠るすべての魂が、安らかに旅立てますように」

 遼が静かに祈った。

 夕暮れの空が、T字路を優しく照らしていた。

 明日が、その日だ。

 

 すべてが決まる日。

 四人は、静かにその場を後にした。


 ***供養当日・夜明け前***

 

  供養当日の朝は、静かに訪れた。

 祐一は夜明け前に目を覚ました。

 窓の外は、まだ薄暗い。だが、東の空が少しずつ明るくなり始めている。

 今日が、その日だ。

 

 祐一は身支度を整え、写経で使う筆を手に取った。

 心を落ち着けるため、短い経文を一つ、丁寧に書く。

 筆を走らせながら、祐一は心の中で祈り続けた。

 すべてが上手くいきますように。

 すべての霊が、安らかになれますように。

 写経を終えると、外が明るくなり始めていた。

 朝食の時間。

 食堂には、すでに遼、さくら、弘子が集まっていた。

「おはよう、祐一君」

「おはようございます」

 皆、緊張した面持ちだった。

「よく眠れた?」

 さくらが心配そうに尋ねる。

「ええ、大丈夫です。さくらさんは?」

「うん……弘子と一緒だったから、安心して眠れたわ」

 弘子も小さく頷いた。

 朝食は質素だったが、誰もが丁寧に箸を運んだ。

 これから始まる大事な儀式のため、心身を整える。

 食後、遼が立ち上がった。

「それでは、準備を始めよう。九時には出発する」

「はい」

 全員が、それぞれの準備に取りかかった。

 祐一は、オカルト研究会のメンバーに連絡を取った。

 峯川、広末、星川。そして、河餅部長。

「みんな、準備はいい?」


 『ああ、問題ない。現地で待っている』

 峯川の落ち着いた声が聞こえた。


 「ありがとう。じゃあ、後で」

 電話を切ると、祐一は窓の外を見た。

 快晴だった。

 

 雲一つない、澄み渡った青空。

 まるで、この日を祝福しているかのように。

 時計を見ると、八時半。

 もうすぐ、出発の時間だ。

 祐一は深く息を吸い込んだ。

 いよいよ、始まる。

 

長い物語の、最後の章が——。


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