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オカルト研究部 田中祐一 今日も怪異あり  作者: waku


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弘子さんの部屋での対処

 祐一たちは、例のT字路の調査を始める事にした。まだ、原因は、分からないままだった。

 調査を一時中断し、祐一たちは弘子の住むアパートへと戻った。


T字路で感じた不穏な空気は、まだ四人の心に重くのしかかっている。

 弘子の部屋は二階の角部屋で、六畳ほどの小さなワンルームだった。窓からは、先ほどのT字路がある方角が見える。

「山田さん、まずは応急的な対処をさせてください」

 祐一はバッグから、白い布に包まれた小さな袋を取り出した。

「これは、お守りです」

 祐一が差し出したのは、手のひらに収まるほどの小さな布袋だった。中には、寺で祈祷を受けた護符が納められている。

「このお守りを身につけていると、悪霊などの霊的な存在が山田さんに近寄れないパワーがあるんです。なるべく肌身離さず持っていてください。それだけで、かなり安心できるはずです」

「あ、ありがとうございます……」

 弘子は震える手でお守りを受け取り、大切そうに握りしめた。

 

 次に、峯川が玄関に向かった。手には、白い和紙に墨で書かれたお札が握られている。

「玄関の内側、ドアの上に貼らせていただきます」

 峯川は慎重にお札の位置を確認すると、両面テープで固定した。

「これで、悪霊が山田さんの家に入ることはできません。結界のようなものだと思ってください」

 祐一は続けて、透明な袋に入った水晶のクラスターを取り出した。

「さらに、この水晶の浄化グッズを部屋に置くことで、場のエネルギーを高めて、悪いエネルギーを浄化するんです」

 祐一は部屋の中央、テーブルの上に水晶を置いた。光を受けて、水晶がきらきらと輝く。

「これで、いくらか対処できるはずです」

「本当に……ありがとうございます」

 弘子の表情に、少しだけ安堵の色が浮かんだ。


 星川が測定器を取り出し、部屋の中を測定し始める。

「室内の電磁波は正常値です。今のところ、異常はありません」

「よかった……」広末がほっとした様子で呟いた。

 祐一は窓際に立ち、T字路の方角を見つめた。夕暮れが近づき、空が少しずつ茜色に染まり始めている。


「山田さん、一つ聞きたいことがあるんですが」

「はい」

「あのT字路について、何か歴史的な情報をご存じないですか? 昔、何かあったとか……」

 弘子は少し考え込んでから、答えた。


 「詳しくは分からないんですけど……近所のお年寄りが、昔あそこで事故があったって言っていたのを聞いたことがあります。でも、いつの話なのか、どんな事故だったのかは……」

 峯川が手帳にメモを取る。


「分かりました。それも含めて、調べてみます」

「あの……」弘子が不安そうに尋ねた。「本当に、これで大丈夫なんでしょうか……」

 祐一は優しく微笑んだ。


「お守りとお札、それに水晶があれば、山田さんの身と家は守られます。ただ、もし何か異変を感じたら、すぐに連絡してください。二十四時間、対応しますから」

 祐一は自分の携帯番号を書いたメモを渡した。

「ありがとうございます……本当に、心強いです」

 弘子は深々と頭を下げた。

 四人は部屋を出る前に、もう一度室内を確認した。お札は玄関にしっかりと貼られ、水晶は穏やかな光を放っている。

「では、私たちは一度大学に戻って、あのT字路について詳しく調べてみます」

 峯川が最後に告げると、弘子は玄関まで見送りに出た。

「気をつけて……ください」

「山田さんも、何かあったらすぐに連絡を」

 祐一が念を押すと、弘子は小さく頷いた。


***アパートの外で***


  アパートの前に出ると、すでに辺りは薄暗くなり始めていた。

「これから、どうするかな?」広末が三人を見回した。

 峯川が腕時計を確認する。

「時間的に、今日はここまでだな。明日、図書館で過去の事故記録や地域の歴史を調べよう」

「賛成。あのT字路、風水的にも問題がありそうだ」

 星川が測定器をしまいながら言った。

「T字路は風水では『路冲』と呼ばれる凶相だからな。エネルギーが一方向に集中して、気の流れが乱れやすい。それに加えて、あの藪が長年放置されていることで、さらに陰の気が溜まっているのかもしれない」

「霊道が通っている可能性も考えられるな」峯川が付け加えた。

「霊道?」広末が首を傾げる。

「霊的なエネルギーが流れる道のことだ。特定の場所に霊が集まりやすくなる」

 祐一は再びT字路の方を振り返った。もう日が沈みかけている。

「いずれにしても、慎重に調査を進めないとな」

「ああ。今夜は早めに休んで、明日に備えよう」

 四人は車とスクーターに分かれ、それぞれの帰路についた。

 祐一がスクーターにまたがった時、ふと後ろを振り返った。

 弘子の部屋の窓に、小さな明かりが灯っている。お守りとお札が、彼女を守ってくれることを祈りながら、祐一はアクセルを踏んだ。


 夜の帳が、静かに街を包み始めていた。

 そして、あのT字路にも——

 購読、ありがとうございました。次回もお楽しみに。

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