廃墟清掃の依頼
オカルト研究会に、また新たなる依頼が入る事になった。今回も清掃活動が中心になるが、心霊現象の噂もある場所だった。
空き地の清掃活動が終わって、しばらく経った頃のことだった。
青空大学の近くにある古民家の清掃依頼が、オカルト研究会のもとに舞い込んできた。
しかし、ただの清掃ではなかった。
その家は長年放置され、いわゆる「ゴミ屋敷」と化していたのだ。
庭も建物の中も粗大ごみが山のように積まれ、挙げ句には不法投棄までされているという。
さらに厄介なのは、その家にまつわる“噂”だった。
夜になると人の声が聞こえる。
屋根裏を歩く足音、障子の隙間を横切る光の玉――。
近隣の住民はその道を避け、日が暮れる前に足早に家路を急ぐという。
部室で依頼書を眺めながら、河餅部長が腕を組んだ。
「今回も、よくある怪談話の類だと思うが……清掃を兼ねて調査も進めよう」
祐一が苦笑しながら肩をすくめる。
「心霊現象の調査だけならいいけど、粗大ごみの片付け付きとはなあ。今回も重労働だね」
星川はメモ帳を取り出し、興味深そうに言った。
「でも、古民家の構造や土地の由来を調べるにはいい機会だと思う。データも取れるしね」
こうして今回の活動計画が立てられた。
まず初日は、建物の外回り――庭や敷地に散乱した粗大ごみを撤去し、雑草を刈り整地する。
その後、簡単な浄化を行う。
二日目以降は建物内部の清掃、不要物の撤去、そして本格的な浄化活動へと移る予定だ。
初日のメンバーは、河餅部長、祐一を中心に田中、峯川、小川、星川、佐藤、織田。
二日目からは岡田副部長、松井、広末、鮎川が加わり、仕分けと記録を担当する。
***廃墟の清掃活動開始***
現場に到着したのは午前十時過ぎ。
噂の古民家は、想像以上に荒れ果てていた。
崩れかけた塀、蔦に覆われた庭、軒先には古びた家具や家電が無造作に積まれている。
風が吹くたび、どこからともなく金属の軋む音が響く。
祐一は息をのんで呟いた。
「……これは、想像以上だな」
河餅部長が全員に目を配り、低い声で指示を出す。
「よし、まずは庭から始めよう。足元に注意しろ。何が出てくるかわからん」
手袋をはめ、マスクをつけた部員たちは作業を開始した。
金属のぶつかる音、木片が崩れる音――。
時おり吹き抜ける風が埃を舞い上げ、静まり返った廃墟にだけ、その音が響いていた。
その瞬間、遠くの古井戸のほうで、何かがわずかに動いたように見えた。
だが、誰もそれに気づかなかった。
***昼下がりの休憩***
草木を軽トラックに積み込み、処理センターへ運び終えたのは昼過ぎだった。
一同は庭の片隅で弁当を広げ、木陰で息をつく。
祐一が空を見上げながら言った。
「思っていたより、作業に時間がかかりそうだな……」
峯川がうなずき、水を飲み干す。
「ああ。見た目以上に量が多い。枝や粗大ごみ、まだ半分も終わってない」
一年生の佐藤が、のこぎりを置いて肩を回した。
「いくら枝を切ってもキリがないっすよ。これ、いつ終わるんですかね?」
隣で織田がため息をつく。
「こっちもだ。あの裏の積み木、何層あるんだか……。本当に片付くのか?」
祐一が笑って肩を叩く。
「まあ、いつかは終わるさ。焦らず行こう」
織田は苦笑しながらも、少し声を潜めた。
「でも、ここって心霊スポットの噂もある場所だし……慎重に行かないとな」
ちょうどそのとき、軽トラックで戻ってきた峯川が、その言葉を聞いていた。
「確かに、廃墟系のスポットは危ない場所も多い。霊的にも、物理的にもな」
「了解です、峯川先輩」
織田が小さくうなずいた。
夕暮れ、沈む陽とともに
午後四時半。
作業を終え、現場の空気がゆるやかに沈む。
小川が辺りを見回しながら言った。
「そろそろ撤収しよう。カメラの設置も終わったし、浄化用の塩も配置した」
祐一が頷きながら周囲に視線を走らせる。
「霊的な気配も少し強くなってきてる。今日はここまでにしよう」
そのとき、庭の奥――井戸のほうから、かすかな風鈴の音が聞こえた。
この家には、そんなものは吊るされていないはずなのに。
佐藤が首をかしげる。
「……今、聞こえました? チリンって音」
全員が動きを止めた。
風は止んでいた。だが、どこかで――たしかに鳴っていた。
小川が言葉を飲み込み、無理に笑う。
「気のせい、だろ。……たぶん」
だが、その笑いはすぐに消えた。
夕焼けの中、井戸の縁のあたりで、何かがゆらりと揺れていた。
それは布のようにも見えたし、人影のようにも見えた。
――誰も、その正体を確かめようとはしなかった。
こうして、古民家清掃の初日は幕を下ろした。
しかしこの日、彼らが持ち帰った映像の中には、
誰もその場にいなかったはずの姿が、はっきりと映り込んでいた。
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